15章――少年は……――
「……痛いんだけど」
「あはは。ごめんごめん」
ちっとも悪いと思ってない笑顔で謝るミラ。
「むぅ~」
「まあまあ。久しぶりに会ったんだし。今日は僕が奢るから何か食べようよ」
そうカルラさんが言うとミラは目を輝かして走り去っていった。
大方、レストランでも捜しに行ったのだろう。
「相変わらず食べるのが好きだなぁ……」
あきれたようにカルラさんは言う。
「私にはカルラさんがうまいこと追い払っているようにしか見えないんですが」
「あはは。君は鋭いんだね。でも聞きたいことがあるんでしょ?それもミラに聞かれたくないことで」
「私よりカルラさんのほうが鋭いと思いますけどね。まあばれているなら聞きますよ。ミラのことが本当に好きなんですか?」
私がそう言うとカルラさんは少し困ったような表情をした。
「僕も自分の気持ちが分からないんだよね。いまこうして会ってみても何の感情も湧かないし。
だから僕はもうミラのことが好きじゃないかもしれないしどうだって良いのかもしれない。
でも、そんなことはミラが一番分かってるんだよ?
僕がミラはいたら嬉しいけどいなかったらそれまでの存在だって分かったうえでミラは僕と結婚したんだから。
それに僕の心はもう壊れてるんだ。竜帝になったその時からね。そのことは話すと長くなるし僕も話したくない。だから聞かないでくれ
ミラも同じように話したくないことを抱えてると思うし君だったら聞きだせると思うけど興味はないかな」
「そう……なんだ。ああ、あと一つだけ聞いてもいいかな。と言うか聞くけどミラはいつもあんなテンションなの?」
「ん?いや、あれは久しぶりに会えてはしゃいでるだけだと思うよ」
そこまで話したときミラが走って帰ってきた。
「ねえねえ。広場前においしそうなパンを売ってる店ががあったんだよ~!よしいくぞ~!」
私たちの反応を聞く前にミラは私たちの手を引っ張って走り出していた。
今のミラを見ていると辛い過去があったようには見えないが本当にそんなことがあったのだろうか。
「楓。僕は嘘なんて付かないよ」
まるで心を読んだかのようにカルラさんは私に言った。
ミラは聞こえているのか聞こえていないのか走り続けている。
「楓。何食べる?」
「いや、何があるか知らないからどうしようもない気がするんだけど」
「あっ。そうだね。じゃあ急ぐぞー」
そういってミラは速度を上げた。
本当に楽しそうだった。
だけどなんというか雰囲気がいつもと違った気がした。