これでおしまい。
王子とその妃の結婚式が、晴れた日の夕方、盛大に行われていました。
お城のテラスから手を振る二人の真ん中には、ガラスの靴が置かれています。
『君をもう一度見つけることができたのは、この靴のおかげだ』
『この靴を、いいえ………貴方と出会ったあの日の私をくれたのは、魔法使いさんなんです』
『魔法使い?』
『はい。とても優しくて……最後まで優しくて……十二時までの魔法が解けても、この片方の靴は消えなかった…』
『では、その魔法使いさんにも、お礼を言わなくてはいけないね』
『ですが、あれからいくら探しても…………』
妃は悲しそうに眉をひそめました。
その肩を王子が優しく抱きよせます。
『では、笑顔で手を振ろう』
『………え?』
『そんなに優しい魔法使いさんなら、きっとどこかで見てくれているよ』
『……そうです、よね。………はいっ』
妃は顔を上げ、笑顔で王宮の広間に集まる人々を見渡しました。
その隣で王子も、嬉しそうに人々に手を振ります。
『ありがとう、魔法使いさん。彼女を僕に引き合わせてくれて…』
『ありがとう……!』
その日一番の笑顔で、二人は手を振りました。
『ところで、なぜ夕方に結婚式をしたかったんだい?』
『ふふっ、王子様。知っていますか………?』
妃はガラスの靴を両手で持ち上げました。
『この靴はこうやって………夕焼けに透かして見ると、一番綺麗なんです』
『ああ……本当だね』
『きっと、夕焼け空が大好きなんです……』
『そうかも、しれないね………なんて美しい…」
夕焼けを映したガラスの靴の光は、二人を祝福するように暖かくキラキラと輝きます。
そのガラスの靴で結ばれた王子とその妃は、いつまでもいつまでも仲良く健やかに暮らしました。
『……めでたし、めでたし…なんて、私には似合わないんだけどねぇ』
箒に腰かけた一人の魔女が、その光景を遠くで眺めていました。
『ま、私の好きな夕焼けも綺麗なことだし…何もしないであげるよ』
そう言いながら、ゆるりと飛び去った魔女に気付いた人は誰もいませんでした。
――――――――――めでたし、めでたし。
『シンデレラの魔法使いが男で、もしシンデレラに恋をしたら?』
そんな気持ちから書きあげた作品です。
初めは王子が最悪な性格で、魔法使いのとのハッピーエンドで考えていましたが、まとまらず…。
少し悲しいお話になりました。
王子の代わりにぐいぐい出てきたのは、魔女さんです。
初めはこんなツンデレ(?)な人ではありませんでした…。
なのに、書いているうちにこんなキャラと登場率に…。
……魔女さん、大好きです。
ちなみに、このシンデレラは魔法使いの顔も髪の色も知りません。
魔女の使い魔ですから、主以外には姿を見せてはいけないという決まりがあったり……。
主以外のために魔力を使ってはいけないという掟があったり……。
なんて、細かい設定は色々考えてみたのですが……。
まとまらなかったので後書きで少し書いてみました。
蛇足ですみません…。
文章が拙く、伝わりにくいのでもう少しだけ補足。
ガラスの靴の片方を魔法が解けても、戻らないようにしたのは魔女さんです。そのついでに、ガラスの色を少しオレンジにしちゃいました。
シンデレラが魔法使いの髪の色を知らなくても、彼女の心にその色が残るように。
と、魔女さんが思ったのかは定かではありませんが…(笑)
少しでも楽しんでいただけれは、幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!