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第二話 「魂の決断」

ワタシブネと名乗る男が言った言葉に僕はなんともピンとこなかった。


交換屋・・・・一体それはどんな仕事なんだ?


僕の頭の中ではその言葉がぐるぐると回っていた。


魂を導くとか言っているし、誰かと魂を交換しあう見たいな仕事なのだろうか・・・。


でも、そんな単純な仕事だろうか?もっと意味のある仕事なのではないか?


僕がそんなことを模索していると、ワタシブネは付け加えるように言った。


「簡単に説明いたしますと、魂を交換して差し上げるお仕事です!!」


そのまんまだった・・・・。


さらにワタシブネは言った。


「つまり交換屋とは迷える魂に希望を与えて差し上げるサービス業なのです!!」


・・・サービス業なんだ。


「どうです!わかっていただけましたか!!」


ワタシブネのキラキラと輝く目が僕を直視する。


正直そんなキラキラした目で見つめられても気持ち悪いだけだったので、僕は適当に答えた。


「ハァーだいたいは・・・。」


こうは答えたが、本当になんとなくしかわからなかった。


わかったことは交換屋という仕事とは魂を誰かと交換してあげる仕事だということと、サービス業だということぐらい。


そもそも、なぜこのワタシブネと名乗る交換屋は僕の前に現れたんだ?


僕は別に魂の交換なんて望んでない。


それにどうやらここは黄泉の世界ではないそうだし、そうなると僕はまだあの世界に存在するのか。


でも、消えていないのならなぜ僕はこんなところにいるんだ?


やっぱりあの日僕は何かしたのか?


僕が色々と悩んでいると、ワタシブネが予想もしていなかったことを言い出した。


「仕事の説明も終わりましたし、さっそく魂の交換についての契約といきますか~。」


・・・・契約!?


「いや~こんなに順調に進むの久しぶりですよ~!!」


待って僕は別に誰とも魂の交換なんて望んでないぞ!?


「あの・・・すいません。別に僕は魂を交換したいなんて一度も言ってな・・・。」


「まずですね~!魂の交換につきましての注意事項からですが・・・おっと!その前にお名前の確認からでしたね。」


人の話を聞け!!


「いや~忘れるところでした、お名前の確認しとかないと上司がうるさいんですよ~。」


こいつ・・・人の話まともに聞かずに話し進めるつもりだな。


「あのちょっと人の話を・・・。」


僕がワタシブネに言い寄ろうとした時、ワタシブネのポケットから着信ベルが鳴った。


・・・携帯?


「もしもし~ウキブネ先輩?」


どうやら仕事仲間からの電話のようだ。


「どうかしましたか~?こっちめちゃくちゃ順調にいってますよ。」


どこが順調!?全然順調どころか、あんたがかってに進めてるだけじゃないか!!


「そっちはどうです~?うまくいってますか?」


ワタシブネが電話していると、するとワタシブネが急に叫んだ。


「えっ!?逃げられた~!!それどういうことですかウキブネ先輩!?」


どうやら電話の相手の方でトラブルがあったようだ。


逃げられたって一体何に逃げられたんだ?


「ちょっとそれ困りますよ先輩~ここがどういう世界かわかってますよね。何かあったらどうするんですかぁ~!」


きっとよっぽどしてはいけないことをしたのか。


「知らないって・・・先輩お願いですからもう少し仕事に意欲みせてください。後で上の方から怒られるの僕なんですからね!!」


ワタシブネは電話の相手にかなり怒っていた。


「先輩!!私の話聞いてますか先輩!?あっ・・・切られた。」


真っ白な空間の中に電話の切れる音が響き渡った。


ワタシブネは数秒ほど固まったあと、急に叫んだ。


「上司なんて・・・上司なんて大嫌いだ~!!!!!」


そしてそのまま持っていた携帯を真っ白な空間に投げ捨てた。


・・・なんて惨めなやつ。


だがこれはチャンスだ、これで僕の話も聞くはずだ、さっきの上司に感謝しなければ。


「あのワタシブネさんでしたっけ?ちょっと人の話を聞いてください!!」


ワタシブネは惨めな声で「・・・はい?」と答えた。


「僕は別に魂の交換なんてん全然望んでないんです!!」


「えっ!そんなんですか!?」


そうだ僕はただあの世界から消えたいだけだ!


「だから僕のことはほっといてください!!」


「えー、そんなこといわれましても困るんですけど~崎谷光さきたにこうさん?」


なっ・・こいつなんで僕の名前を知ってるんだ?


僕は一度も名前を名乗ってないぞ。


「なんで・・・なんであなたが僕の名前を知っているんだ!?」


ワタシブネはくすくすと笑った。


「簡単なのことですよ~私があなたについてのリストを持っているただそれだけですよ?」


リスト・・・?左手に持っているあれか?


「先ほども説明したとおり、交換屋とは魂を交換して差し上げるお仕事です。それゆえ魂の交換に当たりましては個人的な情報も必要となりますので、これはそのための資料といったところです。」


ワタシブネは左手に持っているリストをペラペラとめくった。


「あなたはどうやら自分が生きている世界がお嫌いだったみたいですね~。」


そんなことまであのリストには書いているのか・・・。


「でも残念ですね~あなたはまだあの世界から消えていない。」


・・・・・やっぱりそうなのか。


僕はまだあの世界から消えていないのか・・・。


「で・す・が!!あなたの魂は今この狭間の世界に来ています。つまりあなたは今死を彷徨っている最中なのです!!」


狭間の世界・・・?僕が死を彷徨っている・・・?


「ですから、このままではあなたは一生この狭間の世界にいなければならないことになります、それよりも私と魂の交換の契約をして新たな人生を歩んでみませんか~。」


新たな人生を歩む・・・なんだそれ?


僕はそんなこと・・・。


「そんなことどうでもいいんです・・・・。」


「はい?」


ワタシブネは僕の言葉にキョトンとしていた。


「僕は・・・本当にただあの世界から消えたかっただけなんです。魂の交換とかどうでもいいんです、ただ僕は消えたいだけなんだ!!」


それの何がいけないっていうんだ・・・。


ワタシブネは急に真剣顔付きで僕の方を見た。


「あなたは可能性というものを信じないのですか?」


・・・可能性?


「たとえあの世界からあなたという存在は消えなくとも、今あなたの魂はこの狭間の世界にいて、私という交換屋と出会い、今あなたは魂を交換できるという立場にいるのです。」


「魂の交換をすればあなたの望む場所に100%行けるとはいいません。でも、あなたが消えたいと願っていた世界よりはマシな可能性があります。」


「決めるのはあなただが、あなたはこの可能性を無にするおつもりですか?」


決めるのは・・・僕。


僕はワタシブネにもっとも聞きたかったことを聞いた。


「・・・・それで何かが変わるでしょうか?」


僕がそう問うと、ワタシブネは少しほほえんで答えた。


「それはあなた次第だ。」


僕・・・次第。


僕にこう告げたワタシブネは真剣顔から元の顔にいつの間にか戻っていた。


「どうします~?私と契約するんですか?しないんですか?」


僕は本当にただあの世界から消えたいだけだ・・・・。でも、もし本当に僕が望む世界がある可能性があるのだとしたら僕は・・・僕はその可能性に懸けたい!!



「僕は・・・魂を交換したいです!!」



そして、それで何か変われるのならそれを確かめたい!


ワタシブネは僕の方を見てにっこりと笑った。


「そうですか~、では契約と参りましょう。」






この決断は僕にとっては始まりに過ぎなかった。









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