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魔法少女プリティ・タンク  作者: かきのたね


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2/2

最終話 さらば、魔法少女プリティ・タンク!

 戦い抜いた商店街の残骸の上に、汗にまみれたるなが立っていた。


「ククク……よくぞここまでたどり着いたっピ、るな。そう……ようやく気づいたみたいだな……怪物を生み出していたのは……僕だっピ!今ここに素晴らしい筋肉……最高の筋肉は完成したっピ!さあ、るな!僕と一緒に世界のボディビル大会を」


 キュピ太郎が饒舌に語る中、るなの瞳から光が消えた。


 キュピ太郎の言葉が終わるより早く、彼女の右足が大地を穿つッ!

 商店街の舗装アスファルトが、彼女の内側広筋(ないそくこうきん)外側広筋(がいそくこうきん)が生み出す爆発的な推進力に耐えきれず、まるでガラスのように粉砕されたッ!

 発生した膨大なエネルギーは、寸分違わず下腿三頭筋(かたいさんとうきん)から大腿四頭筋(だいたいしとうきん)、そしてハムストリングスへと、筋肉の伸縮によって完璧に伝達されるッ!膝関節のロック、骨盤の前傾、脊柱のわずかなアーチ、その全てが最適化されたキネティック・チェーンの通りに機能し、寸分のロスもなく腰椎へと流れ込むッ!

 更にッ!腹直筋(ふくちょくきん)腹斜筋群(ふくしゃきんぐん)が、まるで巨大な金床のように体幹を固定ッ!腰から伝達されたエネルギーは、一瞬にして爆発的な捻転力へと変換され、広背筋(こうはいきん)へと集約されて背中がきしむッ!

 フリル付きのボレロの下で、背中の筋肉がまるで翼のように、あるいは巨大な盾のように隆起し、僧帽筋(そうぼうきん)が首の付け根から盛り上がるッ!

 その強靭なバネが、三角筋(さんかくきん)を押し出し、上腕へとエネルギーを送り込まれるッ!

 可愛らしいパフスリーブの中で、上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)上腕三頭筋じょうわんさんとうきんが、それぞれ長頭と短頭、三つの頭で分かれ、極限まで収縮ッ!肘関節は、完璧な軌道を描いて伸び、前腕の腕橈骨筋(わんとうこつきん)総指伸筋(そうししんきん)が、もはや人体の限界を超えた速度で拳を押し出されたッ!

 キュピ太郎の目の前で、るなの拳の先、わずか数ミリの空間で空気が断熱圧縮ッ!想像を絶する高温が発生し、空気がプラズマと化したッ!

 超高圧、超高温に達した空気の壁が、キュピ太郎の周囲の空間そのものを歪ませ、その存在を原子レベルで粉砕したのだッ!


   ボッ


 乾いた音がした……。

 空気の壁は、キュピ太郎の声を、光を、存在そのものを、一瞬にして無へと変えたのだ。

 残されたのは、るなの拳の先に開いた、何もない、小さな空間だけ。

 諸悪の根源はこれで消滅したのだった……。


 光の中から、可愛らしいコンパクトが現れる……。

 無音の世界に、変身が解ける光の粒子が舞い散る。

 るなは、一撃を放った姿勢のまま、ゆっくりと腕を下ろした。

 そこに立っていたのは、いつもの見慣れたワンピース姿の、華奢な少女。

 しかし、その背中は違った。

 小さく、しかし、世界中の重責を一人で背負ったかのような、広大な哀愁を漂わせていた。

 彼女は、振り向かない。

 ただ、夕暮れに染まる空を見上げ、小さく呟いた。


「……あんた。最後は筋肉に裏切られたわね」


 その声は、街の残骸に、虚しく響き渡った。

 彼女の冒険は、終わったのだ。ありがとう、魔法少女プリティ・タンク!

 しかし、彼女の内に刻まれたマッスルメモリーは、永遠にその身体に残り続けるだろう。


(完)

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