第16話 潜入者の影
朝の光が街を淡く照らす中、
アイラは宿の窓辺で身支度を整えていた。
長剣を背中に背負い、
探索者カードを手に取る。
昨日のダンジョンでは、
罠を避けながら大型ゴブリンを倒し、
視聴者は千百人を超えていた。
「……今日も、気を引き締めよう」
胸元の配信端末を確認すると、
コメントが絶えず流れ、
視聴者は千二百人に達していた。
数字の大きさに緊張しつつも、
胸の奥には小さな喜びが芽生える。
街を歩きながら、
掲示板に貼られた依頼を確認する。
中規模ダンジョン。
危険度は中。
報酬は昨日よりさらに高めだ。
カードを提出し、許可を受ける。
通行証を手に、階段を降りる。
薄暗い通路。
湿った床を踏むたび水滴が跳ね、
壁には淡く光る結晶が埋め込まれていた。
胸元の端末を確認し、配信を開始する。
「こんにちは、探索者のアイラです」
視聴者は千二百人を超え、
コメントも次々と流れる。
「見てくれて、ありがとうございます」
通路を進むと、小型の魔物が現れる。
スライムとゴブリンの混合型。
素早く攻撃してくる。
「……慎重に」
一歩下がり、距離を取りながら観察する。
隙を見て斬撃を入れる。
――コメント:
「安定してる!」
――コメント:
「集中力すごい!」
胸の奥が温かくなる。
誰かが見守ってくれている感覚。
通路を進むと、分岐が現れる。
右は狭く暗い通路。
左は広く明るい通路。
「……どっちに行こう」
配信画面に向かって説明する。
「右は少し危険ですが魔物は少なめです」
「左は戦いやすいですが、数が多くなります」
――コメント:
「左がいい!」
――コメント:
「右は危険」
「じゃあ、左にします」
剣を握り直し、慎重に一歩踏み出す。
広い通路にはゴブリン三体。
一体は盾、二体は棍棒。
「……やっぱり強い」
間合いを取り、突進を受け流す。
横から斬りつけ、一体ずつ倒す。
――コメント:
「判断いい!」
――コメント:
「焦らないで!」
奥に進むと、薄暗い影が揺れる。
「……誰かいる?」
壁際に不自然な影。
よく見ると、人影の気配があった。
「……潜入者か?」
剣を握り直し、慎重に進む。
端末に向かって声を出す。
「みんな、少し驚くかも。
でも、落ち着いて対応します」
――コメント:
「え、誰かいる?」
――コメント:
「気をつけて!」
影の中から、銀色の鎧を着た探索者が現れた。
明らかに自分と同じギルドではない。
「……あなたは?」
鋭い眼差し。
アイラの心臓が少し早く打つ。
しかし、攻撃の兆候はない。
静かな対峙が続く。
小型ゴブリンの群れが襲いかかる。
二人は無言で剣を抜き、連携して斬る。
魔物が倒れ、静寂が戻る。
視聴者のコメントが増える。
――「二人組、すごい!」
――「連携プレイ最高!」
胸が温かくなる。
誰かと戦う楽しさ、伝わる興奮。
奥から大型の魔物が現れ、牙と爪で威圧してくる。
「……一緒に戦うしかない!」
二人で距離を保ちつつ戦う。
一撃を受け流し、隙を狙う。
連続斬撃で倒すと、視聴者は千三百人を超えた。
街に戻る途中、アイラは端末を見つめ、
深く息を吸った。
「……無事だった」
宿に戻り、装備を外す。
胸の奥に小さな達成感。
潜入者との遭遇も、
危険ながら戦いを楽しむ経験になった。
一方、ギルド長室。
男はモニターを見つめ、低く呟く。
「……潜入者か。
娘の成長を見守る者は増えるな」
遠くで守る父、近くで戦う娘。
その距離は短く、しかし危険を孕む。
こうして、
小さな剣士アイラは、
潜入者との初接触を経験し、
新たな冒険と試練の世界に足を踏み入れた。
視聴者との絆も深まり、
物語は次の局面へと静かに動き出す。




