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第15話 迷宮の入り口


 朝の光が街を淡く照らす中、

 アイラは宿の窓辺で身支度を整えていた。


 長剣を背中に背負い、

 探索者カードを手に取る。


 昨日のダンジョンでは、

 ライラと協力して大型魔物を倒し、

 視聴者は九百人を超えていた。


「……今日も、気を引き締めよう」


 胸元の端末を確認すると、

 コメントが絶えず流れ、

 視聴者は千人近くに達していた。


 数字の大きさに少し驚きつつも、

 胸の奥には小さな喜びが芽生える。


 街を歩きながら、

 掲示板に貼られた新しい依頼を確認する。


 中規模ダンジョン。

 危険度は中。

 報酬は昨日よりさらに高めだ。


 カードを提出し、許可を受ける。

 通行証を手に、階段を降りる。


 薄暗い通路。

 湿った床を踏むたび水滴が跳ね、

 壁には淡く光る結晶が埋め込まれていた。


 胸元の端末を確認し、配信を開始する。


「こんにちは、探索者のアイラです」


 視聴者は千人近く、

 コメントも次々と流れる。


「見てくれて、ありがとうございます」


 通路を進むと、小型の魔物が現れる。


 スライムとゴブリンの混合型。

 素早く、攻撃パターンは複雑だ。


「……焦らずに」


 一歩下がり、距離を取りながら観察。

 隙を見て斬撃を入れる。


 ――コメント:

 「安定してる!」

 ――コメント:

 「見応えある」


 胸の奥が温かくなる。

 誰かが見守ってくれている感覚。


 通路を進むと、分岐が現れる。


 右は狭く暗い通路。

 左は広く明るい通路。


「……どっちに行こう」


 配信画面に向かって説明する。


「右は魔物が少ないですが逃げ場がありません」

「左は戦いやすいですが、数が多くなります」


 ――コメント:

 「左だ!」

 ――コメント:

 「右は危険」


「じゃあ、左にします」


 剣を握り直し、慎重に一歩踏み出す。


 広い通路にはゴブリン三体。

 一体は盾、二体は棍棒。


「……やっぱり強い」


 間合いを取り、突進を受け流す。

 横から斬りつけ、一体ずつ倒す。


 ――コメント:

 「判断いい!」

 ――コメント:

 「焦らないで!」


 奥に進むと、暗がりの中に微かに光るもの。


「……何だろう?」


 足元を見ると、薄い線が床に引かれていた。


 罠だ。

 踏めば矢が飛び、毒や衝撃の可能性がある。


「……危ない」


 慎重に距離を取り、斜めから進路を探る。

 端末に向かって声を出す。


「みんな、少し緊張します。

 罠に注意しますね」


 ――コメント:

 「気をつけて!」

 ――コメント:

 「慎重に!」


 罠の線を避けながら進む。

 心臓が少し早く打つ。

 剣を握る手にも力が入る。


 通路を抜けると、小型ゴブリンの群れが待ち構えていた。


「……来たか」


 二歩下がり、距離を取りながら斬る。

 連続で斬撃を入れ、一体ずつ倒す。


 ――コメント:

 「ナイス!」

 ――コメント:

 「集中力すごい!」


 群れを突破すると、通路の奥に影が揺れる。


 大型ゴブリン。

 牙と爪が鋭く、一撃が重い。


「……やっぱり、戦いが待ってる」


 剣を握り直し、距離を取る。

 一撃を受け流し、次の隙を狙う。


 ――コメント:

 「危ない!」

 ――コメント:

 「頑張れ!」


 連続斬撃で倒すと、

 視聴者は千百人を超え、コメントが流れ続ける。


 街に戻る途中、アイラは端末を見つめ、

 深く息を吸った。


「……無事だった」


 宿に戻り、装備を外す。

 胸の奥に小さな達成感。

 初めての罠も突破し、

 戦いに一つ自信が生まれた。


 一方、ギルド長室。


 男はモニターを見つめ、低く呟く。


「……成長しているな。

 このまま順調に行けば、

 娘はもっと強くなる」


 遠くで守る父、近くで戦う娘。

 その距離は短く、しかし危険を孕む。


 こうして、

 小さな剣士アイラは、

 新たなダンジョンに挑む準備を整え、

 冒険の世界はますます深まっていった。


 視聴者との絆を胸に、

 物語は次の局面へと動き出す。


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