第13話 初めての罠
朝の光が街を柔らかく染める中、
アイラは窓辺で身支度を整えていた。
長剣を背中に背負い、
探索者カードを手に取る。
昨日のライラとの協力戦で、
大型魔物を倒したことが胸に残る。
「……今日も、頑張ろう」
胸元の配信端末を確認すると、
視聴者は五百五十人を超えていた。
数字の多さに緊張するが、
心の奥には小さな喜びが芽生える。
街を歩きながら、
掲示板に貼られた依頼を確認する。
中規模ダンジョン。
危険度は中。
報酬はやや高め。
カードを提出し、許可を受けると、
通行証を手に階段を降りる。
薄暗い通路に足を踏み入れる。
壁には淡く光る結晶が埋め込まれ、
床は湿っていて踏むたびに水滴が跳ねる。
胸元の端末を確認し、配信を開始する。
「こんにちは、探索者のアイラです」
視聴者は昨日より増え、
六百人を超えていた。
「見てくれて、ありがとうございます」
通路を進むと、
小型の魔物が現れる。
スライムとゴブリンの混合型。
素早く、攻撃パターンも複雑だ。
「……落ち着いて」
一歩下がり、距離を取りながら観察。
隙を見て斬撃を入れる。
――コメント:
「安定してる!」
――コメント:
「見応えある」
胸の奥が温かくなる。
誰かが見守ってくれている感覚。
奥に進むと、通路は二手に分かれる。
右は狭く、暗い。
左は広く、明るい。
「……どっちに行こう」
配信画面に向かって説明する。
「右は魔物が少ないですが、
逃げ場がありません」
「左は戦いやすいですが、
数が多くなります」
――コメント:
「左にしろ!」
――コメント:
「右は危険」
「じゃあ、左にします」
剣を握り直し、慎重に一歩踏み出す。
広い通路には、ゴブリン三体。
一体は盾、二体は棍棒。
「……やっぱり強い」
間合いを取り、突進を受け流す。
横から斬りつけ、一体ずつ倒す。
――コメント:
「判断いい!」
――コメント:
「焦らないで!」
奥に進むと、暗がりの中に微かに光るもの。
「……何だろう?」
足元を見ると、
薄い線が床に引かれていた。
罠だ。
踏めば矢が飛び、毒や衝撃の可能性がある。
「……危ない」
慎重に距離を取り、
斜めから進路を探る。
端末に向かって声を出す。
「みんな、少し緊張します。
罠に注意しますね」
――コメント:
「気をつけて!」
――コメント:
「慎重に!」
罠の線を避けながら進む。
心臓が少し早く打つ。
剣を握る手にも力が入る。
しかし、視聴者の声が心を落ち着かせる。
通路を抜けると、
小型ゴブリンの群れが待ち構えていた。
「……来たか」
二歩下がり、距離を取りながら斬る。
連続で斬撃を入れ、一体ずつ倒す。
――コメント:
「ナイス!」
――コメント:
「すごい集中力!」
群れを突破すると、
通路の奥に影が揺れる。
大型ゴブリン。
牙と爪が鋭く、一撃が重い。
「……やっぱり、戦いが待ってる」
剣を握り直し、距離を取る。
一撃を受け流し、次の隙を狙う。
――コメント:
「危ない!」
――コメント:
「頑張れ!」
連続斬撃で倒すと、
視聴者は六百五十人を超え、
コメントが流れ続ける。
街に戻る途中、
アイラは端末を見つめ、
深く息を吸った。
「……無事だった」
宿に戻り、装備を外す。
胸の奥に小さな達成感。
初めての罠も避けきれた。
一方、ギルド長室。
男はモニターを見つめ、
低く呟く。
「……罠も突破か。
成長しているな」
遠くで見守る父、
近くで戦う娘。
その距離は短く、
しかし危険を孕む。
こうして、
小さな剣士アイラは、
初めての罠を乗り越え、
冒険の世界で少しずつ強くなっていった。
視聴者との絆も深まり、
物語は新たな局面へと進む。




