表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/20

第11話 増え続ける視線


 朝の街は、昨日の戦いの余韻もなく、

 穏やかな光に包まれていた。


 アイラは窓辺で身支度を整える。

 長剣を背中に背負い、

 探索者カードを手に取る。


 昨日のダンジョンでは、

 大型ゴブリンの群れと遭遇し、

 視聴者二百人以上の前で戦った。


「……無事でよかった」


 胸元の端末を確認すると、

 視聴者はさらに増え、

 三百人を超えていた。


 数字は大きく、

 緊張も生むが、

 心の奥に小さな喜びも芽生える。


 街を歩きながら、

 アイラは今日の依頼を思い描く。


 掲示板には中規模ダンジョン。

 危険度は中。

 報酬はやや高め。


 カードを提出し、許可を受けると、

 通行証を手にした。


 地下への階段を降り、

 薄暗い通路に足を踏み入れる。


 壁には淡く光る結晶。

 湿った床を踏むたびに水滴が跳ねる。


 胸元の端末を確認し、

 配信を開始する。


「こんにちは、探索者のアイラです」


 視聴者は三百人を超え、

 コメントも次々流れる。


「見てくれて、

 ありがとうございます」


 通路を進むと、

 小型の魔物が現れる。


 スライムとゴブリンの混合型。

 素早く、攻撃パターンは複雑だ。


「……焦らずに」


 一歩下がり、距離を取りながら観察。

 隙を見て斬撃を入れる。


 ――コメント:

 「安定してる!」

 ――コメント:

 「見応えある」


 胸の奥が温かくなる。

 誰かが、確かに見守ってくれている。


 進むにつれて通路は分岐する。


 右は狭く、暗い。

 左は広く、明るい。


「……どっちに行こう」


 配信画面に向かって説明する。


「右は魔物が少ないですが、

 逃げ場がありません」


「左は戦いやすいですが、

 数が多くなります」


 ――コメント:

 「左で!」

 ――コメント:

 「右は危険」


「じゃあ、左にします」


 剣を握り直し、慎重に一歩踏み出す。


 広い通路には、ゴブリン三体。

 一体は盾、二体は棍棒。


「……やっぱり強い」


 間合いを取り、突進を受け流す。

 横から斬りつけ、一体ずつ倒す。


 ――コメント:

 「判断いい!」

 ――コメント:

 「焦らない!」


 奥に進むと、影が揺れる。


 大型のゴブリン。

 牙と爪が光り、一撃が重い。


「……来た」


 剣を握り直し、距離を取る。

 一撃を受け流し、隙を狙う。


 ――コメント:

 「やばい!」

 ――コメント:

 「頑張れ!」


 斬撃を決め、大型ゴブリンを倒す。

 視聴者は四百人を超え、

 コメントが流れ続ける。


 通路を進むと、前方に人影。


「……また、ライラ?」


 鋭い眼差しの少女が立っていた。

 長剣を背負い、軽装鎧。

 初めて会ったときよりも、

 戦闘に慣れた雰囲気が漂う。


「こんにちは、アイラ」

「やあ、ライラ」


 互いにうなずき、無言の緊張が通路に流れる。


 突然、小型ゴブリンの群れが襲いかかる。

 二人は剣を抜き、連携して斬る。


 魔物が倒れ、静寂が戻る。


 視聴者のコメントが増える。


 ――「二人組、かっこいい!」

 ――「協力プレイ最高!」


 胸が温かくなる。

 誰かと戦う楽しさ、

 伝わる興奮。


 奥から大型の魔物が現れ、

 牙と爪で威圧してくる。


「……協力して!」


 二人で距離を取りつつ戦う。

 一撃を受け流し、隙を狙う。


 連続斬撃で倒すと、

 視聴者は五百人を超えていた。


 街に戻る途中、

 アイラは端末を見つめる。


「……もっと、

 頑張ろう」


 一方、ギルド長室。


 男はモニターを見つめ、低く呟く。


「ライラか……

 娘にいい刺激を与えるな」


 警戒と期待が混ざる。

 遠くで守る父、

 近くで戦う娘。


 その距離は短く、

 危険を孕む。


 こうして、

 小さな剣士アイラは、

 視聴者と共に戦いの喜びを知り、

 新たな冒険の幕を開けた。


 そして、

 父の目は遠くで見守り続ける。

 これから迫る試練を予感しながら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ