表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後異世界トイレ同盟  作者: くなり
5/9

第五章 勇者ユウ、王都で便座型の勲章を授かる

紙龍ワーム撃破から三日後。ユウとミリアは王都ルクシアへ戻るため、森を抜けて舗装された石畳の道を歩いていた。森の瘴気はユウの《大解放》で完全に消え、紙魚たちは元気に紙を運ぶ健全な姿へ戻っていた。ミリアはほっとしたように微笑む。

「勇者様……本当にありがとうございました。紙龍ワームを倒したことで、この地方の紙資源は完全復活です」

「いや俺はただ……腹痛に負けただけだから……」

ユウが弱々しく答えると、ミリアはふふっと笑った。

「それでも世界を救った事実は変わりませんよ」

王都へ入ると、様子がいつもと違った。住民が道の両脇にずらっと並び、紙吹雪ならぬ“紙片”をひらひら降らせている。子どもたちはトイレットペーパーを振り回し、兵士たちまで巻き紙を肩に掛けて敬礼している。

「なんだこれ……?なんかお祭りやってるの……?」

「勇者ユウ様ーーッ!!!」

人々の喝采が爆発するように響いた。ミリアが照れ笑いをしながら耳元で囁く。

「王国が……あなたの帰還を祝うため、祝賀式を開いてくれたようです」

ユウは目を丸くする。

「いやそんな……俺ほんとにトイレしてただけなんだけど……」

王宮に着くと、巨大なホールが用意されていた。白い大理石の床に赤い絨毯。天井からは豪華な紙ランタンが吊られ、中央の壇上には金色に輝く“便座の形の何か”が安置されている。

「……ねえミリア。あれ……もしかして」

「はい。勇者様が授与される“浄式勇者勲章”です!」

ミリアが誇らしげに言う。しかしユウは戦慄していた。

「いや便座じゃん!!完全に便座じゃん!!これ胸につけんの!?胸に便座つけんの!?」

ミリアが悪気なく頷く。

「ええ、王国最高位の装飾です!」

やがて大広間の扉が開き、王・バルサミコ三世が入場した。立派なローブをまとい、頭には王冠……ではなく“金の巻き紙王冠”をつけている。

「勇者ユウよ……よくぞ戻った!」

王は声を震わせながら言った。

「そなたは“浄化トイレ技《大解放》”により、大紙危機を終息へ導いた。これは歴史に残る偉業である!」

ユウは恐縮しながら頭を掻いた。

「いえ俺、ただ腹……」

「黙れ。謙遜はよい」

ミリアが小声で

「勇者様……いまは言わないほうが……」

と制止する。バルサミコ三世は豪奢な布を捲り、金色に輝く便座型勲章を持ち上げた。幅は胸より大きく、細かい彫刻がびっしり施されている。中央には“流す”を意味する古代文字のエンブレム。ユウはガチの困惑顔になる。

「……え、これ重くない?てか付く?」

「勇者よ、胸を張るがよい!」

ユウがしぶしぶ姿勢を正すと、王が巨大勲章を首に掛けた。ずしんッ!!!

「お、おお……重っ……!首が……折れる……!!」

「似合っておりますぞ!!勇者殿!!」

会場の貴族たちが拍手喝采し、兵士たちはトイレットペーパーを高く掲げて敬礼し、町の子どもたちは

「うんこの勇者だー!!」

と無邪気に叫んでいる。ユウは涙目になりながらミリアに囁いた。

「なんかもう……恥ずかしいんだけど……」

「わたしは……勇者様が誇らしいです」

その瞬間、会場がざわめいた。王の横に立つ老魔導師が杖をつきながら言った。

「勇者ユウよ……《大解放》を使ったということは、そなたの腹にはまだ“更なる力”が眠っておる」

「いやいやいやいやいや!!これ以上出ないって!!!」

ミリアは真っ赤になりながらも真剣に言った。

「勇者様……あなたはまだ成長できます……!」

「俺の腸に成長要素求めるのやめて!!?」

式典は大盛況のまま幕を閉じ、王国中に“便座勲章の勇者”の名が広まった。だがユウは知る由もなかった。これからさらなる“腹の試練”が押し寄せてくることに――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ケツを拭く手が止まらないほど面白い!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ