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放課後異世界トイレ同盟  作者: くなり
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第二章 勇者は説明を求めている

ユウは石造りの廊下をふらふら歩いていた。ミリアが横で優雅に歩きつつ、ちらちらとこちらを心配そうに見ている。

「勇者様、体調は本当に大丈夫ですか?」

「いや……なんだろう……すごい……すごい出した……」

「それは良きことです。あなたの排泄はこの世界を救います」

「言い方……」

廊下の奥で、王猫バルサミコ三世が玉座からひょこっと降りてきた。王が歩く姿はとても可愛いのに、声はやたら重厚だ。

「勇者よ。まずは召喚の経緯を説明せねばなるまいな」

「あ、はい。というか説明してください。てかトイレの個室返して」

バルサミコは咳払いをして、意味深に語りだした。

「この“フローラ王国”は、排泄エネルギーによって魔力を循環させておる。この仕組みを“大いなる流れ”と呼ぶのだ」

「名前カッコよくする努力やめてね?」

「しかし今、その流れが滞り、各地に腹痛が蔓延しておる」

「腹痛が国家レベルで問題なの?」

「当たり前だろう?腹痛が日常に支障をきたすのは万国共通だ」

なんか普通の正論を言われて反論しづらい。

「そして滞りの原因は——“腹痛魔神ガス=ペイン”の復活だ」

「絶対ふざけてるだろその名前!!!」

ミリアが補足する。

「本当なんです。ガスペインの瘴気はこの世界中に広がり、人々は常に“ギリギリ状態”になってしまっているんです」

「そんな地獄がある?」

「あなたも召喚前に腹痛があったでしょう?」

「あったわ……あれも魔神のせい!?」

「そうです。あなたは“瘴気に触れても死なず、むしろ力に変換できる稀有な体質”らしく……」

「いやそんな体質いやすぎるって!!!

バルサミコ三世が王冠を揺らしながら言う。

「ゆえに——我らはそなたを“排泄特化型勇者”として召喚した」

「ジャンルが特殊すぎるだろ!!職業欄どうすんだよ!!」

ミリアが真面目に説明を続ける。

「ユウ様の排泄エネルギーは特別なんです。普通の人が10出すところを、勇者様は100出しました」

「そんなスーパーマンみたいな言い方すんな!!!」

バルサミコが胸を張る。

「その力で瘴気を浄化し、いずれガスペインを再封印する。それがそなたの役目だ」

「やりたくなーーーい!!!」

ユウが叫んだ瞬間、城の外から爆音が響いた。ゴオオォォン!!!

「な、何!?また!?」

「ミリア、急げ!また“流れの詰まり”が発生したかもしれん!」

ミリアが杖を握りしめ、ユウを振り返る。

「勇者様!ついてきて!戦いの場を見れば、状況がもっと理解できます!」

「いや戦うって何!?俺排便しただけの人だよ!?」

「その排便こそが強さです!!」

「褒められてる気がしないよ!!!」

仕方なくミリアに引っ張られ、ユウは城の外へ走った。外の街には、住民が腹を押さえてうずくまり、魔法使いらしき兵士たちが何かを必死に抑えている。

「ぐっ……また影が……!」

「詰まってるぞ!者ども押し出せぇぇ!!」

その中心に——黒いもやのような“影”が渦巻いていた。ドロドロしながら、呻くような音を発している。

「あれが……“詰まりのシャドウストール”です!」

ミリアが叫ぶ。

「名前のセンスどうなってんだこの国!!!」

影は苦しげに歪みながら、ユウのほうへじわじわと迫ってきた。ミリアが身構える。

「うぅぅお腹が痛い……勇者様、下がってください!あれは瘴気の集合体です!普通の人間なら近づいただけで腹痛で倒れます……」

ミリアは今にも倒れそうにそう言った。

「怖すぎる!!!」

だが、その影がユウに近づいた瞬間だった。——ユウの腹が、“ドクン”と波打った。痛みじゃない。むしろ逆。影の黒さが少し薄れていく。

「え……?なんで……?」

ミリアが息を呑む。

「ユウ様……あなた……瘴気を吸収してる……!?」

「いや吸収って何!?俺はなに!?空気清浄機!?」

影がさらにユウへ揺らぎながら伸びる。だが次の瞬間、ユウの腹の奥が“グゥゥゥ……”と鳴った。

「待って!!めっちゃ腹痛い!?」

「え、祓いたい?……そんなことを言ってくださるなんてさすが勇者様です、、」

「いやいや違うよ!!腹が痛いんだって!!」

「やはり……伝説は本当だったか。瘴気を吸収して、便に変える……“万物排泄循環体質エブリシング・トイレ・ループ”……!」

「そんな伝説やめろ!!」

ユウはトイレに急ぎ、どデカい音をたてながら排便した。

「……ふうぅ。気持ちよかった」

すると影は完全に薄れ、霧のように消えていった。周りの兵士たちが歓声を上げる。

「流れが戻ったぞ!」

「腹痛が治っていく……!」

ミリアがユウの手をぎゅっと握った。

「勇者様……あなたの力は、本物です……!」

ミリアが尊敬の目で見てくる

「や、やめろ……そんな目で見るな……俺はただ……トイレしたいだけなんだ……」

ミリアは微笑む。

「あなたの排便は、世界を救う排便です――」

「だから言い方ァァァ!!!」

こうして、ユウは正式に“トイレ勇者”として王国に認められ、本格的な腹痛と世界の運命を賭けた冒険が幕を開ける。

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ユウくんのツッコミがいいね!排便が世界を救うならおじさんも勇者だね!
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