第?話
「許してください皆さん。
私は、もっと強くならなければいけないんです。」
「レイ姉様!!」
「…貴女は私が必ず守ります。
だから、待っていてください。」
「待てよ!!
強くなって妹を守るために、妹も何もかも置いてヤベー奴らの仲間になるってのかよ!!」
「貴方にはわからないでしょうね。
最初から強く、恵まれていた貴方には。」
「あぁ、わからない!!
だから、話をしよう!!」
「そんな時間はありません。
このタイミングを逃すわけにはいかない。」
「…お前と話をするために、去ろうとするお前を止める!!」
「やめてください。
私が強くなるまで、貴方には身を粉にして妹を守ってもらわなければいけない。
こんなところで怪我をされては困ります。」
「お前もここで俺と一緒に強くなればいい!!
俺と一緒にお前の妹を守ればいい!!」
「…説得は無駄のようですね。
第一魔法雷光。」
20m程離れた場所にいたレイの姿が一瞬で掻き消えた。
瞬きの瞬間、背中を大きな衝撃が襲った。
衝撃で吹き飛ばされ地面を数回転がった。
「っ!!レイ!?
なんだ今の攻撃は?
お前の第一魔法に攻撃力はないはずだ。」
レイの第一魔法雷光は雷の如き速さで移動できる魔法だが、加重はされず通常の運動能力以上の攻撃や衝撃は生み出すことができない速さのみの魔法。
第二魔法の取得には未だ至っていないレイには無理な芸当だった。
「これは、私の第二魔法の能力です。」
「いつの間に第二魔法を!?」
「組織では構成員を洗脳し強制的に定められた自己を植え付けています。
定められた自己には定められた自己理解の解があります。
私は私の一部を洗脳で殺し生まれ変わることで容易に第二魔法の取得に至りました。」
「そんなことを続ければ、いつか自分を見失うぞ!!」
「大事なことさえ覚えていれば、たった一つ忘れてはならない存在を覚えていれば、自分なんてものは必要ない。
貴方ごときが私の覚悟を測ろうとしないでください。」
「第二魔法激浪の槍。」
「第二魔法業火の剣。」
「貴方に私が斬れますか?
その剣は、業火の名の通り使用者である貴方の善悪の識別によって大きく性能を変えるそうですね。
私は、貴方にとってどれほどの悪でしょうか。
仮に私を善と判断していた場合、その剣に纏われている火は私を焼かず、剣の攻撃力は木の棒にも劣るほどに下がるはず。
逆に私のこの槍は自己を植え付けられたものなら誰もが使用できる汎用的な衝撃波を纏った槍、あなたの剣を折ってしまうかもしれませんよ。」
「勝てるとか勝てないとかじゃないんだよ。
今ここで動くか動かないか、自分の心に従うかどうかなんだよ!!
俺はお前を止めて、ここで一緒にお前の妹を守る!!」
「…おしゃべりが過ぎましたね。
想定より時間がかりました。
一瞬で終わわせます。」
「第二魔法業火の剣、炎獄!!」
炎でできた檻をレイを中心に造り、レイを閉じこめた。
「第一魔法雷光、第二魔法激浪の槍、瞬撃三連波。」
その言葉の最後を言い切った瞬間、炎の檻は崩壊しそれとほぼ同時に俺の体には2連の衝撃波が伝わった。
先ほどとは違い、転がることなく数十m先の壁まで吹っ飛び、体は壁に埋まった。
骨の折れる音が何度かした。
レイは俺に向かって軽く頭を下げた後、消えた。
追いかけようとしたが、手も足も動かない。
薄れる意識に抗うが、どうにもできず、俺は意識を失った。




