お弁当事情から見えてくる日台の同異点
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」と「Ainova AI」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
昼休みを迎えた大学の教室でお弁当を開けた私は、隣席から注がれる興味津々な視線に気付いたんだ。
「あれ、どうかしたの?私の弁当、そんなに変わった物でも入っていたかな?」
視線の主であるゼミ友に問い掛けながら、私は改めて自分の弁当箱の中身を見直したの。
卵焼きと一口ハンバーグを詰めた白ご飯のお弁当は至って平凡な内訳で、そんな奇抜な物じゃないと思うけどなぁ。
「ううん、そうじゃないの。蒲生さんの弁当箱って、パステルカラーのプラスチック製じゃない。そういう華やかな弁当箱を見ていると、『ああ、私は日本に留学しているんだなぁ…』って改めて実感しちゃうんだ。」
「台湾だと違うの、美竜さん?」
私の質問に、台南市出身の王美竜さんは「我が意を得たり」とばかりに頷いたんだ。
「高校時代の私もそうだけど、お弁当を持って来る時は大抵ステンレス製の容器に入れていたよ。」
女子高生が持つにしてはストイックで質実剛健な趣味だね。
でも、それは私の早合点だったみたい。
「何せステンレスの方が温める時に便利だからね。蒸した時の熱伝導率や保温性も段違いだし。」
「えっ、蒸すの?」
美竜さんの話によると、台湾の学校やオフィスには弁当箱を加熱する為の蒸飯棚や電鍋があって、昼休みになるまでひたすら蒸して保温しているんだって。
確かに学生や社員が一斉に電子レンジで再加熱したら物凄い行列になっちゃうから、纏めて蒸しちゃうのは確かに合理的なのかもね。
「成る程ねぇ…美竜さんが大学生協の丼物をテイクアウトしたのも、温かい物を好む医食同源の考えからか。その味噌カツ弁当、まだ余熱で温かそうだもんね。」
「それもあるけど、メニュー選びの決め手は懐かしさって要素が大きいかな。この味噌カツ弁当、台鉄で食べた排骨便當によく似てるんだ。」
どうやら台湾の鉄道には日本と同じ駅弁の文化があるらしいの。
その中でも、中華風トンカツの排骨を主菜に据えた駅弁が特に人気なんだって。
「この駅弁の容器もステンレスで出来ているから、熱々の状態で食べられるんだよ。普段使いにも回せるから、お土産に持ち帰える人もいるね。」
「へえ…日本の釜飯弁当みたいな物かな。」
そういえば私の家の食器棚にも、何処かの釜飯の容器が鎮座していたっけ。
きっと美竜さんの実家にも、台鉄弁当のステンレス容器が眠っているんだろうな。
たとえ気候や文化風俗は違っても、こういう庶民感情に関しては世界共通なのかも知れないね。




