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第66話 作戦決定

 ラダンは御前会議で、ゲート3の偵察結果について報告をしていた。


「――ゲート3から外に出た個体は群れることなく、一見でたらめに歩き回っているように見えた。だが、各個体の移動範囲は重ならず、何らかの方法で連携を取って周辺を探索しているものと思われる」


 対面に座るマドールがすぐに口を開いた。


「確認ですが、ゲートから出てくる危険生物はすべて同一種でしたか?」


「ああ、すべて例の人型の魔法生命体だった」


 ラダンは質問に答えながら、ちらりと部屋の様子を見渡す。

 マドール以外、とくに反応を示すものはいない。

 エレオは相変わらずうつむいたままだし、隣のテオドールは目を閉じ、腕を組んで石像のように動かない。

 ふたりとも話を聞いているのかどうか、まったく怪しい。

 

 それでもラダンは気にせず、視線を正面に戻した。

 この会議での自分の報告が重要な判断材料となる。余計なことに気を取られるわけにはいかない。


 ラダンは淡々と続けた。


「ゲートから外に出ていく個体の数は、戻ってくる個体より多い。毎日2から10体ほど出ていき、一週間の平均では1日あたり5体というところだ」


「単純計算では、ゲート内の危険生物が毎日5体減ることになりますが、実際は新たに転移してきているのでしょうね」


「おそらくそうだ。つまり、あの危険生物は毎日5体増えている、と考えるべきだ」


 実際には、危険生物の転移は毎日ではなく、不規則な間隔でまとまった数が転移し、その後徐々に外に出ていると推測されている。

 だが、いずれにせよ時間とともに数が増えていくのは間違いなかった。


 沈黙していたテオドールが、突然舌打ちをしながら低くつぶやく。


「面倒であるな」


 その言葉にラダンは少し安堵した。どうやら話を聞いていたらしい。

 ラダンは続ける。


「外に出た個体のひとつを丸一日追跡してみたが、攻撃性が極めて高かった。ほかの動物を見つけしだい、即座に攻撃をしかけていた。そして、その個体は丸一日休むことなく歩き回ったあと、再びゲート内に戻った」


「休まずに活動する……。となれば、行動範囲もかなり広いものになりそうですね」


 マドールは顎に手を当て、小さくうなずきながら何かを考え込むようだった。

 しばしの沈黙が会議室に漂う。


 その静寂を破ったのは再びテオドールだった。

 彼は小さく舌打ちし、ぼそりと呟く。


「一月放っておいたら、あんなのが150体も増えるとか勘弁してほしいものだな」

 

 危険生物たちは攻撃性が高いため、出会えば互いに殺し合う。

 したがって、実際には毎月150体も増えるわけではない。

 多くのゲートではすでに周囲との均衡が取れ、全体の個体数はある程度安定していると考えられている。


 しかし、ゲート3は最近になって入り口が開いた可能性が高い。

 そのため、ゲート3から湧き出る危険生物は、しばらくの間増え続ける恐れがある。

 さらに、ゲート3の危険生物はこの地でよく見かけるほかの危険生物よりも強力であり、殺し合いを経ても生き残る個体が多くなるだろう。

 一方、ゲート2の虫たちはむしろ逆に殺されることのほうが多かった。そのため、ゲート3の脅威は一層深刻に思えた。


 ようやく考えがまとまったのか、マドールが静かに口を開く。


「何よりも問題なのが、ゲート3がこの拠点に近いということですね。ゲート3から溢れた危険生物は、やがてここに到達するでしょう。一匹や二匹なら問題にはなりませんが、もしここに関する情報を持ち帰られ、集団で襲撃を仕掛けられた場合、大きな被害が予想されます」


 個体としての危険生物は知能が高くないように見える。

 しかし、集団となると、危険生物たちは不思議なほど知性的な行動を見せることがある。

 それが本能によるものなのか、それとも別の何かの力が働いているのか――ラダンには判断がつかなかった。


 そのとき、黙って話を聞いていた騎士団長ゼノンが重々しく口を開いた。


「やはり、こちらから攻撃をしかけて潰してしまわねばなるまいな」


「はい。調査中のゲート2よりも、こちらを優先すべきだと思います」


 ゼノンはうなずき、さらに続けた。


「虫たちは多少増えたところで、我ら騎士団の敵ではない。しかし、あの魔法生命体は増えれば手に負えなくなる可能性がある」


 ゲート2はこの拠点から距離があり、放置してもベースキャンプに直接的な危険はない。

 ゼノンの言うとおり、まず近い場所にあるゲート3の攻略を優先するべきだとラダンも思った。


「ゲート3の危険生物は魔法生命体である可能性が高いため、食料の運搬状況から内部の個体数を推測するという手段は使えません。そうなると、最終的には内部の偵察を行うしかないでしょう。ですが、肝心の冒険者たちは現在不在です」


 ゲート内に少数で突入し、内部を調査する任務には、剣と魔法を使いこなす冒険者たちが適していた。

 このベースキャンプの攻略時も、まず冒険者たちが突入し、攻略可能かを判断した経緯がある。


 そこでテオドールがつぶやくように問いかけた。

 

「その冒険者たちだが、もう戻ってこないのではないか?」


 一瞬、室内に緊張が走った。


 ――エイブラたち冒険者一行は全滅したのではないか。

 それはベースキャンプ内でささやかれている憶測だった。

 

 彼らの帰還予定日は、すでに1ヶ月以上も過ぎている。

 調査隊の帰還も遅れることは稀ではないが、それでも数日程度の遅れに留まる。

 これほどの遅れが生じる合理的な理由を考えると、全滅以外の可能性を見つけるのは難しかった。


 だが、数々の危険地帯を探索し名を馳せた冒険者たちが全滅したなど、誰も認めたくはない。

 そのため、「単に帰還が遅れているだけ」というのが、いまのところ公式見解となっていた。


 とはいえ、もはや作戦を立案するにあたり、冒険者たちを戦力として組み込むべきではないのかもしれない――ラダンはそう考えた。

 

 沈黙を破ったのはマドールだった。


「……何らかの事情で帰還が遅れているだけで、いずれ冒険者たちは戻ってくるでしょう。しかし、すぐには期待できないかもしれません。となれば、別の手段を考える必要があります」


 少し考え込んでから、マドールはラダンの方を向いた。


「調査隊で内部を偵察するのは可能ですか?」


「可能か不可能かでいえば可能だ。ただし、犠牲は避けられないかもしれない」


「では、魔術師を何人か同行させましょう。あの魔法生命体を剣だけで相手にするのは困難です」


「いや、それではかえってやりづらい。威力偵察をするのであれば、ほぼ常時走り続けることになる。魔術師たちがその速度についてこられるとは思えない」


 ラダンの言葉にマドールが考え込む様子を見せると、テオドールがぽつりとつぶやいた。

 

「威力偵察か……」


 ラダンが目を向けると、テオドールは眉間に皺を寄せ、不満げな表情を浮かべていた。


「何か問題でも?」


 マドールが問いかけると、テオドールは少し間を置き、確認するように語り始めた。


「ゲート3は新しくできたわけではなく、単に入り口が閉じていただけで、もともと存在していたと推測されているのだな? そして、あの危険生物は魔法生命体で、食料を必要としない存在だと言っていたな?」


「その通りです」


 マドールが短く答えると、テオドールは腕を組み直し、少し語気を強めた。


「では、ゲート3の中はあいつらで溢れているのではないか? 毎日5体ずつ増えていると言っていたな。これまで出口がなかったのだから、中に全て溜まっているはずだ」


 その言葉に、マドールは即答せず、一瞬考える素振りを見せてから慎重に口を開いた。


「その可能性は確かにあります。しかし、魔法生命体といえども存在を維持するために魔力を消費します。そのため、無尽蔵にゲート内で増えることはできないでしょう。内部にどの程度の数がいるかは、偵察を行わなければわかりません」


「ふん。そんなとこに少数でしかも調査隊の軽装備で突入したら、全滅するのではないか? 私はやりたくないぞ」


 テオドールが苦々しげに吐き捨てた。

 

「そうですね。仰ることは理解できます。では、こうしましょう」


 マドールが冷静に提案を続けた。


「威力偵察ではなく、最初から殲滅部隊を送り込みます」


「なんだと?」


「ただし、この殲滅部隊の目的はゲート最深部の到達ではありません。もちろん可能であればそうしますが、主目的はゲート内に巣食う危険生物の数を減らすことです。深く潜ることを急がず、階層をひとつずつ制圧していきます。そして、敵の数が多ければ余裕のあるうちに撤退します」


 マドールの説明を聞くと、テオドールは目を細め、ゆっくりとうなずいた。


「なるほど。このベースキャンプを攻略したときのようなやり方か」


 ラダンはマドールの提案について、頭の中で考えを巡らせていた。


 階層をひとつずつ制圧するというやり方は、すべての危険生物と戦うことを意味する。

 ゲート攻略の基本戦術は、可能な限り戦闘を避けながら最下層に潜り、最深部にある装置から転送物質を回収。装置を封印、もしくは破壊した上で脱出するというものだ。


 装置さえ停止させれば、たとえ転送物質が残っていても、ゲートから湧き出る危険生物の数は激減する。

 あとは放置しておけば、自然と数が減少していくはずだ。


 しかし、このベースキャンプの攻略では、拠点としての利用を目的としていたため、すべての危険生物を排除する必要があった。

 その結果、五人の騎士が犠牲となり、うち三人は最深部到達後、各層の制圧時に命を落とした。

 

 最深部に至るまでに排除した危険生物の数は約50体。各層の制圧時にはその倍以上の数と戦うことになったのだ。

 これを教訓に、ゲート攻略は「戦闘を最小限に抑え、迅速に最深部を目指す」戦術が策定された。


 マドールの提案する「殲滅部隊を送り込む方法」は、包囲されて全滅するような事態を回避できる一方で、犠牲を完全には避けられないだろう――ラダンはそう考えた。


 ラダンの思考をよそに、テオドールが話を進めた。


「ゲート内の危険生物をすべて排除するなら、武器が大量に必要になるだろう。このベースキャンプとの往復を何度も繰り返すことになるな」


 しかし、マドールは首を横に振り、予想外の提案を口にした。


「殲滅部隊は、魔術師を中心に編成したいと考えています」


「何だと? 魔術師だと?」

 

 テオドールは椅子から身を乗り出し、驚きと怒りが入り混じった表情を見せた。

 そんな彼に構わず、マドールは笑みを浮かべながら説明を続ける。


「あの魔法生命体には、魔術師の攻撃が最も効果的です。遠距離から接近させずに倒します。もちろん、不意の接近戦もあり得るため、騎士の皆さんには護衛をお願いする形となります。そして、魔力が切れそうになったら撤退し、後日改めて続行します」


 ラダンはこの策について、理屈は通っているものの危うさを感じざるを得なかった。

 ゲート内部は入り組んだ迷宮のような構造をしている。

 このベースキャンプも整備される前は複雑に通路が絡み合っていた。


 仮に階層をひとつずつ制圧したとしても、予期しない通路が存在していて、裏から危険生物に襲撃される可能性は十分にある。

 そのような事態になれば、撤退は敗走に近い形になるだろう。その場合、魔術師たちを守る騎士たちの負担は計り知れないものとなる。

 

 どのチームも、この護衛任務を引き受けたがらないだろう。ラダン自身も同じだった。

 それどころか、いっそ調査隊による威力偵察を行ったほうが、まだマシかもしれないとさえ思っていた。


 ラダンは視線を横に向け、ゼノンとテオドールの表情をうかがった。どちらも険しい顔をしている。

 恐らく同じ考えを抱いているのだろう――そう考えたラダンが威力偵察を提案しようとしたそのとき、マドールが先に話し始めた。


「シア様。この作戦、いかがでしょうか?」


「いいと思います。ただし、魔術師だけではなく、勇者――ハヤトさんも連れていきます」


「勇者も……ですか?」


 マドールは珍しく困惑した様子を見せ、部屋の後方で控えるメルヴィアのマジックドールに目を向けた。


「ええと、勇者の訓練はまだ途中だと聞いております。今回は時期尚早かと……」


 勇者を連れて行かないというのは、どうやらメルヴィアの意向らしい。

 ラダンもその意見に賛同していたため、口添えをすることにした。


「シア姫。私も、勇者をゲート攻略に投入するのはまだ早いかと考えます」


 しかし、シアは強い意志を込めた声で即答した。


「いえ、連れていきます。これは決定事項です」


「は、御意……」


 シアの確固たる意志を感じたラダンは、頭を垂れて承諾の意を示した。

 だが、この決定により護衛の負担がさらに増すことは明らかだった。


「――待ちなさい」


 そのとき、後方で控えていたメルヴィアのマジックドールが突如声を上げた。

 あまりにも不意の出来事で、ラダンは驚いて飛び上がりそうになったが、なんとか堪えた。

 顔を伏せたまま、メルヴィアの続く言葉を待つ。


「何か意見があるのですか、メルヴィア?」


 シアが静かに促すと、メルヴィアは淡々と話し始めた。


「魔術師に勇者、そしてあなたを護る騎士たちの負担は決して小さくないわ。いざというとき、全員を護るのは極めて困難でしょう」


「ハヤトさんは連れていきます。目的を達成するには勇者の力が必要ですし、戦いに慣れてもらわなければなりません」


「勇者を連れていくのはわかったわ。ただし、私も出陣するわ」


 その言葉にラダンは驚きを隠せなかった。

 顔を伏せたまま横目でマドールを見ると、彼もこわばった笑みを浮かべて固まっている。

 どうやらこの件はマドールも聞かされていなかったらしい。

 

「それはなりません。あなたにはベースキャンプの防衛の任があります」


 シアが毅然とした声でメルヴィアの提案を却下する。

 しかし、メルヴィアはひるむどころか、最初から却下されることを織り込んでいたかのような余裕を見せ、視線をゼノンに向けた。


「ここの防衛はゼノンに任せるわ。今回は魔術師主体の攻略になるのだから、騎士たちの大半は残していける。いいわよね、ゼノン?」


「……ベースキャンプ防衛の任、承った」


 不意に話を振られても、ゼノンに動揺した様子はない。

 落ち着いた声で承諾の意を示す。


「これで問題ないわね、シア?」


 メルヴィアがそう問うと、シアは一瞬黙り込んだあと、冷静な声で確認する。

 

「あなたが出るということは、あなた自身が戦うということですね?」


「もちろんよ。勇者は戦闘を見学するだけで終わることになるわ。今回は、不確定要素も多いし、攻略を優先すべきよ」


 シアはメルヴィアをじっと見つめていた。その表情からは感情を読み取ることはできない。

 やがて小さく息を吐くと、静かにうなずいた。


「……わかりました。あなたの出陣を認めます」


 シアの言葉が告げられると、会議室の空気が一変した。

 メルヴィアの出陣は、ただごとではない。


 ラダンは思わずマドールの顔を見る。

 そこには笑みはなく、複雑な表情が浮かんでいた。しかし、それもすぐに消え、いつもの柔らかな笑みに戻った。


 メルヴィアが出陣することについて、魔術師団はどう考えているのか――

 ラダンは問いたかったが、この場で聞くわけにはいかなかった。


 静まり返った空気を切り裂いたのは、再びメルヴィアの声だった。


「もうひとつ、要望があるわ」


「なんでしょうか?」


 シアが促す。


「騎士は2チーム連れて行くわ。そして、そのうちのひとつをラダンの部隊に任せたいわ」


 その言葉にラダンは心臓を掴まれるような感覚に襲われた。

 尋常ではないほど汗が流れ、拳はいつの間にか汗でびっしょりになっている。

 体が硬直し、言葉が出ない。

 断りたい気持ちが全身を駆け巡ったが、そんなことはできるはずもなかった。


「よろしいですか、ラダン?」


 シアの声で硬直していた体が緩む。

 ラダンは一呼吸置いてから、伏せていた顔を起こし、シアを見据えた。


「はっ。承知いたしました」


 シアはうなずくと、会議の終了を告げた。


「出発は3日後とします。それまでに準備を怠らぬように。人選や具体的な計画は、明日の会議までに提出してください。今日はここまでとします。ご苦労さまでした」


 よりによって、今回の護衛を任されるとは。

 できれば――いや、絶対に避けたい任務であった。


 会議が終了し、シアたちが退出したあとも、ラダンは椅子に座ったままだった。

 肩の力が抜け、机に突っ伏しそうになるのをなんとか堪えていると、背後からテオドールが肩に手を置いた。


 振り向いたラダンの目に映ったのは、まるで「ご愁傷さま」とでも言いたげなテオドールの表情だった。

 その顔にイラッとしたラダンは、心の中で決意を固めた。


( もう1チームはテオドールの部隊にする。ゼノン殿に推薦してやる。絶対にな)


「お疲れさまです」


 マドールが軽く声をかけ、ラダンたちの横を通り過ぎていく。その後ろを新参謀のエレオが続いた。


「おつかれさまでーす!」


 エレオはにこやかな笑顔で挨拶をしている。

 さきほどまで縮こまっていたのが嘘のような明るさだ。


 それを見たテオドールが呆れたように声を上げた。


「会議が終わった途端、あれか……」


 暗く沈んだままの様子よりはマシかもしれないが、会議中に何も発言しないのは相変わらずだ。

 だが、いまはエレオのことなどどうでもいい。


 ――護衛の任務に集中しなければならない。


 ラダンは頭を抱えた。

 部下たちに何と説明したものか。彼らが泣き崩れる姿が容易に想像できた。

 なんとかしてなだめるしかない――もう決まった以上、やるしかないのだ。


 そう決意し、ラダンは立ち上がった。


「ひとつ茶でも飲んでいくか」


 のんきそうな声を上げるテオドールの顔を見て、ラダンは心の中で静かに誓った。


(――絶対にこいつも連れて行く。絶対だ)


 




 その後、ラダンはゼノンにテオドールの名を推薦した。

 だが、ゼノンはそれを却下した。テオドールは次回のゲート2攻略に連れていくため、今回は休ませるのだという。


 ――それに引き換え、ゲート2を発見したラダン自身は、ゲート3の攻略に参加することになっている。


 この理不尽さに歯噛みしながら、ラダンはその日の夕刻、テオドールと顔を合わせた。

 こちらが口を開くよりも早く、テオドールが笑いながら言う。


「ははっ、その顔は俺を推薦したな? でも、却下されただろ?」


 その軽口に、ラダンの理性が危うく揺らぐ。

 だが、ぐっと拳を握りしめて怒りを抑え、静かに言葉を返した。

 

「ゲート2に行くんだってな」


「ああ、そうだとも」


「おまえがうらやましいよ……」


 ラダンの言葉に、テオドールは怪訝そうに首を傾げた。


「うん? おまえはゲート3で、オレはゲート2だ! そこになんの違いもありゃしねぇだろうが!」


「違うのだ!!」


 ラダンの声が鋭く響き、テオドールは驚いたように眉を上げる。

 その視線を受けながら、ラダンは続けた。


「ゲート2はオレが発見したものだ! 本来ならオレが先頭に立つべき場所なんだ!」


 その言葉に、テオドールは、一瞬言葉に詰まったようだった。

 だが、次の瞬間、軽い笑みを浮かべて肩をすくめた。


「そういや、そうだったな。……ま、決まっちまったもんは仕方ないだろ?」


 軽く手を振ると、テオドールはそのまま部屋を出ていくかと思われた。

 だが、出口でふと足を止め、振り返った。


「……貧乏くじ引いたな」


 口元に笑みを浮かべ、ププッと小さく笑いながらそう言い残すと、今度こそ部屋を出ていった。

 ラダンはその背中をじっと見送りながら、心の中で湧き上がる怒りを噛みしめた。

 拳を握りしめた手には、うっすらと汗がにじんでいる。


「くそ……なんでオレだけ、こうなるんだ……」


 低く漏れたその声には、やり場のない悔しさが滲んでいた。

 拳を握りしめたまま、ラダンはしばらく動けずにいた。

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