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第51話 書類の山

 第11階層の一番奥にあるメルヴィアの書斎。

 

 ここは、ときどきユキナが訪れる以外、人が来ることのない部屋だ。

 今日もこの静寂な空間で、メルヴィアとハヤトがそれぞれの仕事――すなわち散らかしと清掃――に励んでいた。

 

 本来、メルヴィアの「仕事」は散らかすことではなかったが、片付け役のハヤトから見れば、結果的にそうとしか思えなかった。


 ハヤトは次々と投げ捨てられる紙を、床にしゃがみ込んで拾い上げていた。

 ちらりとメルヴィアの様子をうかがうと、彼女は眉間に深いシワを寄せながら、書類とにらめっこをしていた。


 ここ最近、メルヴィアの機嫌はずっと悪いままだった。

 ハヤトには、彼女の不機嫌の原因に心当たりがなかった。

 

 自分が何かやらかしたわけではないのだろう――たぶん。

 

 おそらくハヤトの知らないところで何かしらの問題が悪化しているのだろうが、下手に聞いてやぶ蛇になり、さらに機嫌を損ねるのが怖かった。

 「触らぬ神に祟りなし」と自分に言い聞かせていると、ふいにメルヴィアのほうから声をかけてきた。


「ちょっと肩をもんでくれないかしら」


「わかった」


 ハヤトは立ち上がり、拾い集めた紙を棚に置いて、メルヴィアの後ろに回り込んだ。

 彼女の頭頂部には、以前ハヤトが贈った髪飾りがささっていた。

 銀色に輝くその飾りは、メルヴィアの赤い髪に美しく映えている。


 毎日使ってくれているところを見ると、どうやら気に入ってくれたらしい。

 ハヤトとしても悪い気はしなかった。

 

「結構こってるな。毎日書類とにらめっこで大変か?」


 ハヤトは手際よくメルヴィアの肩をもみながら尋ねた。

 毎日肩もみをさせられているおかげで腕前は上達し、いまや文句を言われることはほとんどなくなっていた。

 

「そうよ。調査結果の分析の進捗管理に、食料収集計画の策定、ベースキャンプ内で起こるさまざまな問題や陳情への対応……。やることが多すぎて目が回るわ」


 メルヴィアは書類をめくる手を止めることなく応じる。

 机の上には山のように積まれた書類が乱雑に広がっていた。

 それだけ、彼女の判断を仰がねばならない問題が多いということだ。


「あ、そうだ」


 メルヴィアは書類を机の上に置くと、胸元から何かを取り出した。そして背後にいるハヤトに、その手を肩越しに差し出す。


「これ、直しておいたわ」


 どこから取り出したのかと少々面食らうハヤト。

 メルヴィアの手には紅い宝石がついたペンダントが握られていた。

 

 それは前回の遠征で傷つけてしまい、長らく修理中だったものだ。

 すぐに直るだろうと思っていたが、予想以上に時間がかかり、すっかり忘れていたところだった。


「ありがとう。悪いな」


 ハヤトはペンダントを受け取ると、灯りにかざして状態を確認する。

 傷ついていた宝石は、見事に元どおりの輝きを取り戻していた。


「すごいな。きれいに直ってるよ」


 満面の笑みを浮かべるハヤトに、メルヴィアはちらりと視線を向け、少しだけ口角を上げた。


「直すの、本当に大変だったんだからね。次からは気をつけなさいよ」


 そう言いながらも、メルヴィアはすぐに机上の書類に視線を戻した。


「今度のは、以前よりもっと丈夫にしておいたわ。だから、ちょっとやそっとのことなら壊れないと思うけど」


「大事にするよ。本当にありがとう」


 ハヤトはさっそくペンダントを首にかける。その瞬間、不思議な感覚に包まれた。

 まるで欠けていた何かが満たされたような、安堵にも似た心地よさ。

 いつの間にか、ペンダントをつけていることが自然に感じられるようになっていたようだ。




 

 その後もハヤトはメルヴィアの肩を黙々ともみ続け、メルヴィアは山のような書類を次々にさばいていった。

 もっとも、彼女がさばいた書類の大半は、床に投げ捨てられたのだが――。


「訓練はどう?」


 ふいにメルヴィアが書類から目を離さずに尋ねてきた。


「順調だよ。それなりに上達したと思う」


 ハヤトは肩をもみながら答えた。


「付け焼き刃でどうにかなると思わないでほしいわね」


「なんだよ。おまえまで否定的なのかよ」


 ハヤトは抗議するが、メルヴィアは書類をめくりながらそっけなく言い放つ。


「そうよ。私は最初から反対だったわ。素人がちょっと訓練しただけでどうにかなるほど、この地は甘くはないわ」


「俺、勇者だと思ったけど」


「肩書きだけよ。魔力はその辺の子供以下。なのに、シアときたら……」

 

 メルヴィアは一瞬手を止めると、険しい顔をして宙を睨んだ。

 ハヤトはその横顔が少しだけ見えたが、何を考えているのかまではわからない。


「魔力といえば、騎士のひとりがクロスボウの矢に魔力を乗せて撃ってたんだけど、あれめちゃくちゃ強くないか? なんで騎士はあまり飛び道具を使わないんだ? この間の遠征でも狩り用に少し持っていっただけみたいだし」


 質問を受け、メルヴィアは眉間に軽くシワを寄せながら答える。


「効率が悪いのよ。内向型は体から離して魔力を使うのが苦手なのよ」


「内向型?」


 聞き慣れない言葉にハヤトは首を傾げる。

 

「外側に漏れる魔力を抑え、内側へと集中させるタイプよ。騎士や兵士は内側に向けたその魔力を、自身の肉体や身につけた武具の強化に用いるの。

 その逆に、外向型である魔術師は魔力を外に向けるのを得意とする。

 騎士と魔術師との違いは、魔力を内と外のどちらに向けるか、とも言えるわね」


「なるほどな……」


「この技術の両立は難しいわ。だから騎士は魔法を使った攻撃ができないし、その逆に、魔術師は魔力で肉体を強化することができないの」


 騎士ですら使えるものが少ない灯りの魔法を、単なるメイドが使える理由がようやく腑に落ちた。

 メイドたちも、いわゆる外向型なのだろう。


「両方できるものもいるけれど、そんなに多くはないわ。統計的には女性のほうが両立できるタイプが多いわね。ただ、両立型はどちらの技術も中途半端になりやすいのよ。例外が英雄エイブラ。彼はどちらの技術も一流よ」


 兵士たちがよく話題にする最強談義。その中で一番名前が挙がるのがエイブラだったことをハヤトは思い出す。

 しかし、ハヤト自身はエイブラとの接点がまったくなく、これまでに食堂で数回見かけたことがあるだけだった。

 そういえば最近はずっと見ていない。


「さすが最強と噂されるだけあるな。ところで、最近エイブラたちを食堂で見かけないけど、外に探索にでも行っているのか?」

 

 何気なく聞いたハヤトの質問に、メルヴィアの手が止まった。

 読み進めていた書類を閉じ、彼女はしばらく押し黙っていたが、やがて口を開いた。


「探索に出たエイブラ率いる冒険者たちの帰還が遅れているわ」


「遅れてるってどれくらいだ?」


 ハヤトは首をかしげる。

 この間の遠征だって、ハヤトたちは一日帰還が遅れた。

 不測の事態というのは起こりうるもので、帰還が多少遅れることはあり得るだろう。

 

 だが、続いて出たメルヴィアの回答は、ハヤトを驚かせるものだった。


「すでに二週間遅れているわ」


「二週間!?」


 いくらなんでも遅れすぎに思えた。悪い想像がハヤトの頭に浮かんでくる。


「それ、やばいことになってるんじゃないか?」


 ハヤトの言葉に、メルヴィアはしばらく無言で考え込んでいるようだった。やがて、静かに答える。


「…………これまでにも一週間ぐらい遅れることはあったわ。彼らは納得がいくまで探索を続けるから、予定通りに帰ってきたことはないのよ」


「それにしても二週間というのは……本当に大丈夫なのか?」


 最強と呼ばれるものが探索から戻らなかったら、戦力の大きな損失になるだけではなく、軍団全体の士気にも大きな影響を及ぼすだろう。

 ハヤトはそんな不安を隠せずに尋ねた。


「戻る。戻ってくるわ」


 メルヴィアはそう断言した。その声には、どこか自分に言い聞かせているような響きがあった。


「彼ら冒険者にはどんな状況にも対応できる柔軟性がある。心配する必要はないわ」


 その言葉がただの希望的観測なのか、それともたしかな根拠に基づいたものなのか、ハヤトには判断がつかなかった。

 だが、考えても仕方のないことだ。帰還を待つ以外に方法はない。


「そうだな。どっかで道草食ってるだけだろう」


 ハヤトは肩をすくめ、そう言ってみせた。


「本当はエイブラたちには次に攻略予定のゲートの調査を頼みたかったんだけど、予定が狂って困るわ」


 メルヴィアは書類を軽く指で叩きながらそう付け加えた。

 攻略予定のゲート。その名が出ると、ハヤトは自然と背筋が伸びた。

 それは、次の遠征で自分も帯同することになっている場所だ。

 

「次のゲートの戦力はどのくらいなんだ?」


「調査中よ」


「出発日は?」


「調査の結果しだいね」


 メルヴィアはそっけなく答えた。いつもの得意のはぐらかしだ。

 ハヤトは思わず肩をもむ手を止めると、彼女の横に回り込む。

 そして机に手をつき、顔を覗き込んだ。


「俺の訓練にも関係あることだろ。ちゃんと教えろ」

 

 メルヴィアは無言のままハヤトを見返した。

 その瞳に何かの揺らぎを見たような気がする。それが何であるか、ハヤトにはわからなかった。


 やがて、メルヴィアは観念したように口を開く。


「調査を済ませなければ出発の日を決められない。調査の結果次第では攻略を見送ることもありえるわ」

 

 そう言うと、一度息をつき、さらに続けた。


「ゲートの戦力を見極めるには、試しに潜ってみるのが一番早いのだけれど、冒険者チームが不在だから、その手段は使えないの。

 だから、時間はかかるけれど、すべてのゲートの出入り口を監視して、出入りする生物の数から内部の戦力を推定するしかないわ」

 

 ハヤトは、随分と手の込んだやり方をするんだなと感心する。

 たしかに、直接潜るよりも安全だが、その分、結果が出るまでの時間と労力は膨大なものになりそうだった。

 

「それで、それはどのくらい時間がかかりそうなんだ?」


「いまの調子だと最低でも2ヶ月」


 その言葉に、ハヤトは思わず眉をひそめる。

 

「ずいぶんと時間がかかるな」


「すべての出入り口を抑えないといけないから、その探索に時間がかかるのよ。途中でエイブラたちが戻ってきて、彼らが内部に潜ることになると思うわ」


「なるほど」


 どうやらメルヴィアは、エイブラたちは帰ってくるものとして計算しているらしい。

 その楽観的な姿勢に、ハヤトは少し安心した。

 

「仮にエイブラがいま帰還したとして、すぐにゲートの調査に送り込んだら、調査の完了にどれくらい時間がかかるんだ?」


「休息もなしに送り出すなんて酷い話だけど、仮にそうしたのなら十日ってところね」


「十日か……」


 少なくともハヤトには十日の訓練期間が確保されることになる。

 実際には、彼らが休憩を取ってから調査に取りかかるだろうことを考えれば、最低でも二週間の猶予があると見ていいだろう。

 これまでの二週間での訓練成果を思い返し、ハヤトはなんとかなるような気がしてきた。


「あんた、十日かそこらの訓練で実戦で使えるレベルになれると思ってないわよね?」


 メルヴィアがハヤトの内心を読んだかのように問いかけてきた。


「結構、的にあてられるようになったんだぜ」


 実際、ハヤトは10メートルの距離ではほぼ確実に命中し、20メートルの的にも9割近く命中させるまでになっていた。

 だが、メルヴィアは首を横に振る。


「聖王国が大きな戦争をしたとき、取り立てられた農民が二週間の訓練で弓兵として戦場に出されたことがあったわ。

 でも、実戦では練度不足で大きな犠牲を出すことになったの。

 本来、兵士として最低レベルの練度を得るには二ヶ月の訓練が必要よ。そして、本当に兵士として戦えるレベルに達するには一年を要するわ」


「銃は……、たぶん弓よりも簡単なんだよ。狙いをつけてトリガーを引くだけだし」


「訓練と実戦を一緒だと思わないことね」


「一緒だとは思ってないけどさ……」


 ハヤトは前回の遠征で危険生物と戦ったときのことを思い出す。

 あの緊張感の中で、訓練通りに動けるかどうかは、たしかに自信がなかった。


「いいわ。実戦で経験を積ませてあげる」


「え?」


「今度、大規模な食料収集部隊が編成される。そこに参加して、銃で狩りをしてきなさい」


 そう言いながら、メルヴィアは机の書類のひとつを取り出すと、ペンを走らせた。

 どうやらハヤトの名前が書き込まれているようだった。


 第1階層には騎士および兵士が合わせて百人近く集まっていた。

 普段、防衛および訓練に従事している部隊に加え、この度の食料収集部隊として招集されたものたちで空間は溢れかえっている。


 ハヤトもそのひとりだった。

 迷彩服にサブマシンガンと小さなリュックを背負った出で立ちで、人混みの中に佇んでいた。


「あ、勇者さん♪」


 人をかき分けながら近づいてくるのは、弓とアサルトライフルを背負ったリノだった。

 彼女はいつもの黒シャツとタイツの上に革鎧を身に着けている。


 兵士たちの間で一般的な装備は鎖帷子だが、革鎧を選ぶ者は少数派だ。

 おそらく彼女は、飛び道具を扱うために機動性を優先したのだろう。


「リノちゃん、今日はよろしく」


「うんうん。頑張ろうね。動いているものを撃つのは、的を撃つのとは全然違うからね」


「いっぱい練習したからな。頑張るさ」


 ハヤトはそう言いながらサブマシンガンを軽く掲げてみせた。

 そして、リノの背負うアサルトライフルに視線を移す。


「代わりに持ってもらって、ごめんね」


「いいんだよ。両方の銃を練習しないといけないしね♪」


 リノはにっこり笑うと、「点呼があるから待たね」と言い残し、その場を離れた。

 彼女の背中を見送っていると、背後から声がかかる。


「ハヤト発見」


 聞き覚えのある声に振り向くと、ローブをまとい、短い杖を手にした銀髪ショートの小柄な少女――クレアが立っていた。

 彼女はミリアの同僚魔術師だが、ミリアとは対照的におとなしい性格をしている。

 もっとも、少し風変わりなところがある少女だ。


「おう、クレア。ひさしぶりだな。クレアも今回の食料収集に行くのか?」


「うん」


「ミリアも一緒か?」


「……バカなの?」


 顔を合わせるとすぐにこれである。

 いまではもう慣れてしまっているので、ハヤトもいちいち気にはしなくなっていた。


「ミリア殿は更迭されましたからな」


 クレアの後ろに立っていた中年ぐらいに見える男が、柔らかな口調で口を挟んだ。

 黒い髪と細い目を持つ彼は、人懐っこい笑顔を浮かべている。


「申し遅れた。私は魔術師ラグラス」


「知ってる」


 ハヤトは軽くうなずいた。ラグラスはメイドたちの間では有名で、ハヤトもその名を聞いたことがあった。


「ほう?」


「このベースキャンプで一番おいしそうに飯を食う人間として有名だ」

 

「ははは。まいりましたな。そんなことで有名になっていたとは」


 屈託のない笑顔を浮かべるこの男は、曲者ぞろいの魔術師の中では比較的常識がありそうな人物だと、ハヤトは見立てていた。

 少なくとも、彼が食堂で問題を起こしたという話は聞いたことがない。

 

「それより、さっき言ったミリアが更迭って、どういうことだ?」


 ハヤトの問いに、ラグラスは片眉を上げて少し驚いた顔を見せた。


「おや? 知りませんでしたかな。ミリア殿は、前回の遠征での責任を問われ、参謀の座を降ろされたのですよ」


「責任?」


「前回の遠征で、ミリア殿が立案した作戦により遠征団が危機に陥りました。そして、その成果として持ち帰った――」


 ラグラスは、ハヤトの持つサブマシンガンに視線を向ける。


「――その『銃』が、結局、勇者であるあなたにしか扱えないものでした。この二点が問題とされ、責任を取らされました。いまは自室で軟禁状態ですよ」


「そんなことになっていたとは……」


 最近、食堂でミリアを見かけないと思っていた。

 同僚のクレアやユーナも同様に姿を見せなかったことから、忙しいのだろうと軽く考えていた。

 ハヤト自身、訓練で忙しかったこともあり、深く気に留めていなかったのだ。


「しかし、何も軟禁までしなくてもいいだろう」


「責任は取らなければなりませんからな。騎士団の手前、示しをつける必要があったのでしょう」


 ラグラスの言葉に、ハヤトは前回の遠征を思い出した。

 そのときミリアは騎士たちと衝突していた。騎士たちの間に彼女への怒りが溜まっていたのは明らかだった。

 その怒りを爆発させないためには、こうした処置が必要だったのかもしれない。


「それはシアが決めたのか?」


「いえ、メルヴィア様ですよ。あの方が賞罰の裁定権を持っていますからな」


「あいつが決めたのか」


 魔術師団と騎士団の間は仲が悪い。

 メルヴィアが魔術師団のトップである以上、身内に甘い裁定を下すことはできなかったのかもしれない。


「ハヤト、メルヴィア様に赦免をお願いして」


 それまで黙っていたクレアが静かに口を開いた。

 その淡々とした口調や普段と変わらない表情からは想像しづらいが、彼女がミリアのことを心配していることは伝わってくる。


「わかった」


「ありがと、ハヤト」


「でも期待するなよ。あいつが俺の言うことを聞くとは思えないからな」


「それでも、ほかに意見できる人はいないから」

 

 クレアの言葉に、ハヤトは軽くうなずいた。そのとき、周囲の兵士たちが慌ただしく動き出した。

 訓練に励む兵士たちの横で、列を作りながら点呼が始まる。


「どうやらそろそろ出発らしいですな」


 ラグラスが言うのに合わせて、ハヤトたちも兵士たちの列の横に適当に並んだ。

 

 やがて、列を整え終えた兵士たちの前に、十人ほどの完全装備の騎士たちが並ぶ。

 その中で、フルフェイスの兜を小脇に抱えたひとりの騎士が前に進み出た。


 あごひげが精悍な顔立ちの騎士――ラダンだ。


「諸君、今日は食料収集のため遠出する。日帰りで危険も少ないと思われるが、何が起こるかわからぬのがこの大地だ。油断することのないように」


「はっ!」


 兵士たちが一斉に応える。

 ラダンは兵士たちを見回すと、目線をハヤトたちにも向けた。


「これは勇者の訓練も兼ねている。諸君らも勇者の射撃の腕をよく見ておくといい」


 「おお」と感嘆の声が兵士たちの列からあがる。

 どうやら彼らも噂となっている銃への興味があるらしい。


「なんかプレッシャーかかってやりづらいなあ」


 ハヤトがぼやくと、ラグラスが耳打ちをしてきた。


「兵士たちにかっこ悪いところは見せられませんな」


「あんたまで俺にプレッシャーかけるのかよ」


「プレッシャーを力に変えるのが勇者というものです」


「ぜってー適当なこと言ってるだろ」


 ラグラスは答えず、ただ口端を上げて微笑んだ。

 

 ハヤトは周囲の視線を感じる中で、どうにかやってみるしかない――そう自分に言い聞かせた。

 

・食料調達部隊:63名

 ラダン        生存

   騎士団(9名)  健在

   ハヤト      生存

   クレア      生存

   ラグラス     生存

   兵士団(50名) 健在

     リノ     生存

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