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第3話 ベースキャンプ

 ハヤトたちがいるベースキャンプは、地下200メートルまで広がる巨大なダンジョン「ゲート」を改装したものである。

 全13階層から成り、各階層には改造により多くの小部屋が作られている。

 床や壁は魔法の力で平坦に均され、居住性が可能な限り高められていた。


 さらに、各部屋や通路には魔法の明かりが灯されており、その明るさは時間によって自動調整される。

 そのため、昼夜の区別がつくようになっている。


 ハヤトやメイドたちが使う階層は、ちょうど真ん中にあたる7階層に位置していた。

 ハヤトはこの階層に専用の小部屋を与えられていた。

 ほかのメイドたちは複数人でひとつの部屋を共有していたが、ハヤトが優遇されていたわけではない。

 実際は、ほかのメイドたちと同じ部屋にするわけにはいかなかったからだ。


 この7階層には、食料庫や厨房も設置されている。

 厨房には排気口があり、地下で火を使っても煙が外に排出される仕組みとなっている。


 そのほかの階層は、以下の通りである。


 1階層は、敵対的生物の襲撃に備えた守備隊の詰め所として使われている。

 ここには騎士団と兵士団から交代で人が派遣され、常時50人ほどが滞在している。

 特に仕事がないため、彼らは自身の鍛錬を行っており、この階層は訓練所としても機能している。


 また、地上のベースキャンプの入り口には、常時騎士2人と兵士3人が歩哨として立っている。

 さらに、入り口を中心とした半径500メートルの範囲では、定期的に8人の兵士が哨戒行動を取っている。

 これまでのところ、危険な生物の接近は確認されていない。

 

 2~5階層は、兵士団の住居として利用されている。

 兵士団の主な仕事は、ベースキャンプの修理や改修、食器や椅子などの日用品の作成、食料の収集、防衛や警戒任務など多岐にわたる。

 ベースキャンプが快適に保たれているのは、兵士団の働きによるところが大きい。


 6階層には、冒険者の一団が入っていた。冒険者は6人だけだが、彼らは探索のプロであり、この危険な大陸を自由に歩き回るだけの戦闘力を有している。

 冒険者のリーダーである英雄エイブラは、剣も魔法も一流の腕を持つ人物だ。

 そのため、このベースキャンプでも一目置かれている存在であった。


 なお、6階層には、食堂として利用されている大部屋がある。

 その隣の部屋は大きな厨房になっており、ここで大半の料理が作られている。

 さらに、温泉が湧く場所もあり、共用風呂として使われていた。

 ただし、シアをはじめとする一部のものは共用風呂を利用せず、ここから湯を運び出して自室で利用している。


 温泉の存在は士気の向上に大いに役立っており、ハヤトもこの温泉のおかげでなんとかここの生活に耐えられているようなものだった。


 8~9階層は、騎士団の住居だ。

 騎士たちは、この軍団の主力であり、攻撃と防御の要となっている。

 騎士団は、複数の騎士で構成された調査隊をいくつか編成している。

 この調査隊が、新たな「ゲート」を求めて、ベースキャンプの外を探索している。

 王国への帰還は彼らにかかっており、調査隊が戻ったときには、兵士や騎士だけでなく、メイドたちもよく出迎えに行っていた。


 10階層は、魔術師団の住居である。

 魔術師たちは、メルヴィアの下でこの大陸の情報分析や探索計画の立案を担当している。


 しかし、騎士や兵士たちは、魔術師たちを役人的だとみなしており、その評判は芳しくない。

 元々、王国にいた頃から両者は犬猿の仲だったことを、ハヤトはエルルから聞かされていた。


 今回の遠征軍では、魔術師の半分が女性で構成されている。

 そのため、王国にいた当時ほどの対立はないが、それでも9階層と10階層の間には、冷たい隔たりが存在していた。


 11階層は、フロア全体をメルヴィアひとりが使用している。

 ハヤトが掃除を任されている書斎のほか、彼女の寝室や魔法実験室、会議スペースが配置されていた。

 会議スペースの掃除はほかのメイドが担当しており、メルヴィアの寝室や実験室については誰も掃除をしていなかった。

 ハヤトは書斎の状態から察して、恐ろしい光景が広がっているのだろうと想像していた。


 この階層に出入りするのは、ハヤトやメイドたちのほかには、会議室を利用する魔術師たちくらいだった。

 メルヴィアは魔術師団のトップであるためか、騎士や兵士たちから距離を置かれているふしがある。

 しかし、ハヤトは彼女の性格も少しは――いや、大いに――関係しているに違いないと思っていた。

 

 12階層は、シアと近衛、そして専属のメイドたちの住居となっており、限られたものしか入ることが許されていない。

 ハヤトは当然、入ることを許されておらず、シアには初日以来会っていない。

 もっとも、ハヤト自身もシアに会う必要は感じていなかった。


 シアや近衛は、風呂や食事を自室で済ませており、ハヤトだけでなく、ほかの一般兵の前にも姿を見せていない。

 それでも、兵たちの間でシアに対する忠誠心は少しも陰ることはなかった。

 6階層にある食堂でハヤトがほかのメイドと共に食事をしていると、兵士や騎士たちがシアの身を案じる会話をしているのをよく耳にした。


 兵士たちの間で、シアが絶大な人気を誇るのは、彼女の可憐な外見や上品な物腰、そして王女であることを考えれば当然だろう。

 だが、ハヤトにとってはどうでもいいことだった。


 近衛は全員が女性で構成されており、剣と魔法のエキスパートだ。

 実際のところ、純粋な戦闘力では騎士たちのほうが上であった。

 しかし、どんな場面でも勝利ではなく、シアを護ることを目的とする近衛にとって、魔法が使えることによる高い対応力は、うってつけであった。

 なお、近衛たちも、騎士や兵士の間で高い人気を誇っている。

 

 13階層は巨大な空洞となっており、そこには「ゲート」を「ゲート」たらしめる異世界転送装置が鎮座している。

 この装置は、ハヤトをこの世界に召喚するのにも使われたものである。

 メルヴィアたちはそれを「装置」と呼んでいるが、実際にはそれが人工物なのか自然物なのかはまだ判明していない。


 「装置」は、床にそびえ立つ巨大な石板のような外見をしている。

 石板には大小さまざまな窪みがあり、そこに空間を歪める物質が充満していた。

 その物質をもとに、異世界から生物が転送される仕組みになっている。


 魔術師団の分析によれば、転送は確率的な事象として捉えることができ、物質量が多くなるほど転送が起こりやすくなると考えられていた。

 物質を放置すると、異世界から生物が送り込まれてしまうため、その処分も兼ねて、魔術師団は異世界からの勇者召喚を提案した。

 本来なら、王国への転移門を開きたかったのだが、それには物質が足りていなかったのだ。


 騎士団は激しく反対したが、最終的にシアが決断し、ハヤトが喚び出されたのである。

 その結果、現在は「装置」に燃料がなく、新たな燃料を得るためには、新たな「ゲート」を探さねばならない状況であった。


 人員の構成は、以下の通りである。


 兵士236人。騎士73人。冒険者6人。魔術師14人。近衛10人。メイド48人(うち10人はシア専属)。

 ここにハヤト、シア、メルヴィアが加わり、総勢390名になる。


 軍団はシアを頂点とし、その下にメルヴィア、騎士団長ゼノン、近衛団が並列で並んでいる。

 メルヴィアの下には、魔術師団と冒険者団が配置され、騎士団長ゼノンの下には騎士団と兵士団がいる。

 近衛団は、シア直属の独立した組織だ。


 メルヴィアは、軍団総司令の地位にあり、ベースキャンプ内で起こるさまざまな問題に対処している。

 とはいえ、総司令といっても上にはシアがいるため、騎士団や近衛団に直接命令を下すことはできない。

 実質的には、魔術師団のトップとして目されていた。


 個人で目立っているのは、シアとメルヴィアを除けば、騎士団長ゼノン、冒険者の英雄エイブラ、魔術師団参謀長マドールの3人である。

 この3人の中で誰が一番強いかは、兵士たちの良い暇つぶしの話題となっていた。


 剣の腕前ではゼノン、魔力の大きさではマドールに軍配が上がると見なされていたが、剣と魔法の両方を使いこなすエイブラこそが最強だというのが、兵士たちの多数派の意見だった。


 以上、約400人が暮らすベースキャンプは、ちょっとした軍事基地として機能している。

 ここを拠点に、日々精力的に探索が進められている。


・ベースキャンプ

 シア            生存

   メルヴィア       生存

     魔術師団(14人) 健在

       参謀長マドール 生存

     冒険者団(6人)  健在

       英雄エイブラ  生存

   騎士団長ゼノン     生存

     騎士団(72人)  健在

     兵士団(236人) 健在

   近衛団(10人)    健在

(非戦力)

 ハヤト           生存

 メイド団(48人)     健在

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