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3ー42 魔法学校ってどんなとこ?

「そう言えば、ジュールはランスを先輩って呼んでるけど、それは水使いの先輩だから?」

 ロワメールがふと、かねてから疑問だった質問をする。


 水色の裏地を持つランスは、水と風の二色持ちだ。土使いのように、同属性として仲間意識が強いのかと思ったが、ジュールは首を振った。


「いえ、魔法学校の先輩だからです。慣例的に、同じ校舎で学ぶ二個上の上級生までを先輩と呼ぶんです」

「へー」

 魔法使いの裏事情に、ロワメールは好奇心を刺激される。


「今もですけど、学生の時も親切にしてもらいましたし、模擬戦の相手もよくしてもらっていたので、ボクは親しい先輩だと思っています」


 ジュールは入学当初から、周りから頭ひとつ飛び抜けていた。エリートになるのは確約されており、二色持ちのランスもそれは同じである。おのずと、二人の距離は近くなった。


「模擬戦? 魔法学校では、そんな実践的なこともしているのか?」

 ジュールの言葉に、別の意味でセツが驚く。


 徒弟制度が一般的だったセツの子ども時代に魔法学校はなく、知っていることは魔力のないノンカドーとかわらない。


 魔法学校入学は十三歳。模擬戦をするにはいささか早い気がした。


「模擬戦を本格的にするのは、高等部になってからです。戦闘職志望の生徒が、選択授業で選ぶ実践魔法の授業で……」

 そこまで続けて、セツとロワメールが話しについてこれてないのをジュールは理解した。


 そこで、魔法学校についてザックリと説明する。

「まず魔法学校と一口に言っても、初等部と高等部に分かれています」


 魔力を持った十三歳から十八歳の子どもたちが、魔法使いになるため通う全寮制の学校、それが魔法学校である。

 全国に一校のみ、ユフ島のギルド本部に併設されており、皇八島中から魔法使いの卵たちが集められていた。

 生徒たちはそこで、黒のローブならぬ黒のケープを纏い、勉学に励むのだ。ちなみにこのケープは魔道具ではなく、単なる制服である。


 初等部は基礎教養、一般礼節、魔法基礎などを学び、高等部では引き続き基礎教養、礼節を学びながら、初等部より深く魔法理論を学び、高度な魔法学習を行う。


「初等部も高等部も一年生から三年生までで、校舎も寮も分かれているので、二つ上までの先輩と面識があるんです」

 今年の春に学校を卒業したジュールと二十歳のランスは、通算二年間、学校で顔を会わせていた。


「魔法以外の勉強もするんだね」

「ええ、それはもうガッツリと……」


 基礎教養と言っても、算術や地理から歴史まで、幅広い分野を修めさせられる。礼節の授業も、子どもの内から品位を叩き込んでおこうという魂胆で、魔法使いの品格を重んじたいギルドの肝入りだ。

 その本気さは、ジュールのうんざりした表情が物語っている。


「そんなことまで勉強してたのか」

「はい。貴族や商人相手にも契約を結びます。彼らとも対等に会話ができるよう、学校での授業は多岐にわたるんです」

「なるほどな」

 セツは腕を組み、納得している。


 高等教育を受けている貴族や頭の回転が速い商人に、足もとを見られぬための基礎教養だ。

 不当な契約を防ぐのは、魔法使いを守ることと同義である。


 おかげで魔法使いは、知識人としても人々から尊敬されていた。学生時代に勉学に追われたことは、無駄にはならないのである。






「君の友達……怪我、大丈夫なの?」

 カードを繰りながら、ロワメールがついでのように聞く。


 カードはジュールが、退屈な馬車の旅のお供にと持参したものだ。一から十三までの数字と四つのマークが合わさったもので、外の国から入ってきたものである。


「レオですか? ご心配ありがとうございます。無事に退院しました」

「別に心配してるわけじゃ……」

 ロワメールは何故か、ゴニョゴニョと言い訳した。


 ロワメールがレオに良い感情を持っていないのは、ジュールも知っている。

 なにせ第一印象が最悪である。初対面の時に、セツを『魔法使い殺し』と大声で読んだのが原因だ。

 レオはその二つ名をカッコいいと思っているが、ロワメールにとっては忌むべき呼び名である。


(まあ、その他にも色々、レオの態度がマズかったんだろうな)

 その点に関して、ジュールはロワメールの味方だった。


 最強の魔法使いに敬意を。

 ジュールも口を酸っぱくしてレオに注意しているが、レオは魔法学校時代から礼節の授業が苦手だった。本人も反省しているが、考えるより先に口を開いてしまうらしい。

(レオらしいと言えば、レオらしいけど)


 面白いのは、ロワメールは自身に対する言動には至って寛容であるということだ。

(基本、ロワサマはお優しいよね)

 だから嫌いなはずのレオのことも、気にかける。

 ただセツに関してのみ、一切妥協する気はないようだった。

(それだけ、大切なんだろうな)


 そして、セツもロワメールを大切にしている。

 馬車に揺られながら隣り合って座る二人は、楽しそうに話している。

 穏やかに流れる優しい時間。


(ずっとこんな時間が続くように、ロワサマの力になりたい……)


 貴族の身分と魔法使いという立場があれば、できること。

 貴族であり、魔法使いでなければ、できないこと。

(ボクにしか、できないこと……)

 ジュールはずっと、模索していた。


❖ お知らせ ❖


 読んでくださり、ありがとうございます!


 3ー43 王子宮ってどんなとこ? は11/29(金)の夜、22時台に投稿を予定しています。

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