俺の顔を潰す気か! ※父視点※
話は、少し前に遡る。
娘が家出した日の夜。いつものように、家に帰ってきた彼は──娘がいなくなったことを、しかも午前中にはもう家を出ていったことを妻から聞かされて声を荒げた。
「何で、もっと早く知らせなかった!?」
「だって、あなたはお仕事中でしたし……お仕事の邪魔を、しちゃいけないって思って」
「子供がいなくなったのに、何を言ってるんだ!」
そう、娘がいなくなったのに。
しかし本人は気づいていないが、続けられた言葉は『普通の』親のものではなかった。
「これじゃあ、あの子を紹介出来ないじゃないか……俺の顔を、潰す気か!」
「あなた……」
「警察に行くぞ。確か捜索願は、何時でも出せる筈だ。すぐ見つけられたら、しばらくは体調不良で誤魔化せる。ああ、置き手紙とやらを持っていくぞ」
「え」
「手紙を残していったが、親としては心配だからと言えば、少しは焦ってくれるだろう」
「は、はい」
妻が頷いて娘の部屋に向かうのに彼はタクシー会社に電話をし、自宅に来たタクシーに妻と二人で乗って最寄りの警察署へと向かった。
……けれど、その結果は彼らの期待や予想とは異なった。
「解りました。それでは、警察のデータベースに登録させていただきます」
「……えっ? それだけですか? 娘が、いなくなったんですよ? 今すぐ、探してくれないんですか?」
「あなた」
三十代くらいの警察官の言葉に対して、彼は思わず問い詰めた。そんな彼と、警察官に抗議する彼に焦って声をかける妻に、警察官は逆に尋ねてくる。
「あの、お嬢さんは成人ですよね?」
「え? いえ、子供で……」
「立場ではなく、年齢として立派な成人です。そんなお嬢さんが、この手紙を残されたんですよね?」
そう言うと、警察官は娘が残した手紙を彼らに見せてきた。
『大学進学を許可してくれなかった両親と、距離を置きたいので家を出ます。
事件や事故の心配もないですし、自殺するつもりもありません。
落ち着いたらいつかは帰るので、探さないで下さい』
「ええ、そうですよ。ただ、いくら本人が自殺しないと言っても、親としては心配で」
「そうではなく……事件や事故に巻き込まれたのではなく、また未成年でもない場合、自分の意志で家を出たのなら見つけても帰宅を促すまでは出来ますが、強制的に連れ戻すことは出来かねます。データベースに登録することで、パトロールする警察官に情報は共有されますので」
「チッ……見つかったらすぐ、連絡して下さい!」
淡々と、けれど全く彼らの希望を叶えてくれない警察官に、彼は苛立ち舌打ちした。そして強い口調でそう言うと、妻と共に警察署を後にした。
……警察官の言う通り、データベースに登録されたので市内だけでなく、全国で実緒の情報を調べられるようにはなった。
けれど市内ならまだしも、成人している実緒が家を出たことは『犯罪』ではない為、全国で積極的に探されることはなく──数日後、彼は『体調不良』を理由に娘のバイトの紹介を辞退するのだった。
嫌なキャラなので、なかなか出力出来ませんでしたが…ようやく、書けました。次からは、主人公視点に戻りますm(__)m




