第9話 誕生日パーティー⑤
「今日は我が息子、シルバー・クラインバルの誕生日会に集まってくれたことを感謝する!」
大きな扉が開き僕たちが誕生日会場に入場する。そして父様の挨拶をすると、割れんばかりの歓声が響き誕生日パーティーが始まった。
誕生日パーティーの会場は王城の大広間であり、豪華絢爛な内装が輝きを放つ。集まった人達も着飾り、オーケーストラの生演奏が始まりキラキラとした空間が広がる。王族の誕生日パーティーは、前世の誕生日パーティーとは色々と次元が違うようだ。
「シルバー殿下、おめでとうございます」
「あぅ!」
僕は沢山の人達からお祝いの言葉を貰う。貴族の人達は沢山居るようで、挨拶の列が途切れることはない。僕の誕生日を祝う為にわざわざ集まってくれたのだ。僕はちゃんと全員に挨拶を返す。
予定通り僕は人間関係を観察する。挨拶をしてくれる人達を観察するが、今のところ怪しそうな人物は居ない。来賓は兄様にも挨拶をするが、定型的のようなもので関わりは浅いようだ。此処が王城で近くには父様と母様が居て、騎士達も多くいるこの場で怪しい動きをする人物を探す方が難しいかもしれない。
兄様は第一皇子である。そんな兄様に影響を与えるとしたら、それなりの地位に居る人物だろう。家族関係は良好であり、家族を除外すれば限られてくる。地位がある人物ならば、誕生日パーティーで必ず挨拶にくる筈だ。根気強く待つしかない。
矢張り情報収集をするにも、兄様とお話しを出来るようになる為にも早く喋れるようになりたいものだ。
「大丈夫か? シルバー、疲れていないか?」
「んぁ! ……にぃ?」
挨拶が終わった貴族が帰る間に、兄様が小声で僕に声をかける。僕は兄様に抱えられているだけなので、至って元気だ。寧ろ疲れていないか兄様の方が心配になる。僕が元気だと伝えた後に、兄様をじっと見上げた。
「……私は大丈夫だ。シルバーは軽いからな」
「ん、にぃ!」
僕の意図を汲み取った兄様が温かく微笑む。僕を安心させるように頭を優しく撫でる。赤ちゃんとはいえ、僕は一歳児であり重たい筈だ。父様や母様のような大人であれば、大丈夫かもしれないが兄様はまだ子どもである。僕を部屋からずっと抱えているのは重たく負担な筈であるが、兄様は嫌な顔一つしない。寧ろ僕を気遣ってくれることに感謝する。
こんなにも優しい兄様を絶対に悪役化なんてさせない。
「おやおや、仲睦まじい御様子ですね……」
兄様との温かい時間を過ごしていると、背後からしゃがれた声が掛けられた。




