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第13話 白銀の竜①

 

「むぅ……?」


 沈んでいた意識が浮き上がる。ゆっくりと身体を起こし、未だ立てない僕は座ったまま周囲を見渡す。すると僕は真っ白な空間に居る事が分かる。確か眠る前の記憶では、誕生日パーティーが行われていた。

 そしてお祝いの言葉を来賓から貰っていると、一人の男性の順番になった。その老人はモロバ侯爵と名乗り、雰囲気が怖かったのだ。塗りつぶしたように真っ黒な瞳であるのに、ぎょろぎょろと不気味に光っていた。何だか僕のことを探るような視線を感じ、彼の第一印象は苦手である。

 それからモロバ侯爵は僕に対して色々と尋ね、悪口大会が始まった。僕にはよく分からないことが多かったが、兄様の機嫌は明らかに悪くなってしまい。兄様の魔力が放出されれば、パーティー会場が無事ではすまないことはゲーム内で学習済みだった。優しい兄様がその様なことはしないと信じていたが、モロバ侯爵の態度と雰囲気に嫌な予感を覚えた。

 そのため頑張って兄様を落ち着かせようと僕は頑張った。そんな僕の頑張りを嘲笑うかのように、モロバ侯爵が更に兄様を煽った。僕を馬鹿にされ、兄様が爆発寸前になり僕は大いに焦った。兄様が僕の為に怒ってくれるのは嬉しいが、兄様が魔力を放出させるほうが心配だったのだ。

 怒りを露にする兄様に対して、モロバ侯爵は暴言を吐いた。


『嗚呼、ブラック殿下! 貴方のお力は戦場でこそ本領発揮をする! 他国を蹂躙し、我が国を豊かにするのです! それが貴方様の存在理由だ!!』


 僕の優しい兄様をそんな風に言って欲しくない。その気持ちを込めて両手を前に出した。すると眩い光りが辺りを包み込み目を開けると、モロバ侯爵の不気味さが消えた。

 その後は、僕は眠気に負けて寝てしまったのだ。


「うぅ?」


 兄様や父様と母様は何処に居るのだろう。僕は再度周囲を見渡すが、誰の姿もない。只、白い空間が続いているだけである。


「にぃ……」


 僕だけしか居ない空間というのは、転生してから初めてである。兄様はモロバ侯爵に言われたことに傷ついていないだろうか。少しだけ不安になる。


『目が覚めたか、愛し子よ』

「うぅ? …………うぁ?」


 凛とした声が響いた。僕しか居ない空間だったが、誰か居るのだろうか。再度周囲を見回すが、やはり誰も居ない。僕は首を傾げる。


『……こちらだ、上だ』

「うぅ? ……わぅ!?」


 声の指示に従って上を見上げようとした。すると僕の体が後方へと傾く。赤ちゃんは頭が重く、よく転ぶことを忘れていた。この空間は座ることが出来るなら、床が存在し頭をぶつければ痛い筈である。咄嗟に目を瞑る。


「……うぁ?」


 想像した痛みは訪れず。代わりに背中をしっかりとしたものに支えられていることに気が付く。ゆっくりと瞼を開く。


『大丈夫か?』

「……う?」


 僕を覗き込むように、大きな白銀の竜がこちらを見ていた。



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