第12話 誕生日パーティー⑧
「……う、うぅ?」
強烈な光りが輝きそれが収まると、僕は瞬きをする。先程の光は何だったのだろうか。誰かの魔法だったのだろうか、僕は首を傾げる。
「シルバー、大丈夫か?」
「あい!」
兄様は僕の顔を覗き込み、状態を確認する。矢張り兄様は優しい。僕が元気に返事をすると、兄様は少しだけ微笑んだ。
「ブラック殿下、シルバー殿下! お怪我はございませんか!?」
「問題ない。……モロバ侯爵は如何だ?」
僕と兄様の周囲に騎士さん達が集まり、それに対して冷静な対応をとる。
「はっ! 先程の光りを浴びて倒れておりますが、捕られてございます」
兄様の言葉を聞くと、僕たちを囲んでいた騎士さんたちが左右に分かれた。すると床に倒れたモロバ侯爵が、数名の騎士さん達に拘束されている。
「うっ……ここは? ブラック殿下? 私は一体何を……」
「……言いたいことは多々あるが、暫く自重せよ。後程、父上より話しがあるだろう」
目を覚ましたモロバ侯爵は、何が起きているのか分からないような様子に見える。あれだけ不気味だった視線が、今は何も感じない。不思議なことにモロバ侯爵の瞳は、綺麗な青色をしている。
「モロバ侯爵は隔離せよ」
「はっ!!」
兄様の命令で騎士さん達に拘束されながら、モロバ侯爵はこの場を後にする。喚き散らして抵抗するのではないかと思ったが、その様子は一切ない。大人しく従う姿が、先程まで対峙していたモロバ侯爵と同一人物かと疑いたくなるぐらいである。
「シルバー。今の光りは、お前の魔法か?」
「んぅ?」
兄様の声が頭上から響き、僕は兄様を見上げる。少し心配そうな色を浮かべた赤い瞳と目が合う。しかし僕は兄様の質問に答えられない。先程の光は僕が放った魔法か、僕自身にもそのことは分からないのだ。魔法を使うことが出来なのならば嬉しいが、そもそも僕は魔法の使い方を習っていない。僕が魔法を使用することが出来るとは思えないのだ。
「ブラック! シルバー! 無事かい!?」
「二人共、怪我はありませんか!?」
父様と母様の声が響く。横を向くと、焦った様子で両親が駆け付けた。如何やら挨拶などで少し離れた場所に居たようだ。
「大丈夫です。父上、母上」
「あい!」
蒼褪めた表情をする両親に兄様が対応をする。僕も父様と母様を安心させるように返事をした。
「そうか……良かった……」
「ええ、本当に二人が無事で良かったわ……」
兄様に抱えられた状態で、更に父様と母様に抱きしめられる。本当に僕たちのことを心配してくれていることに胸が熱くなる。温かく大切な家族であり、兄様と共に守るべき存在だ。
「父上、母上。モロバ侯爵についてお話しをしたいことがございます」
「嗚呼、分かっているよ」
近い距離であるが、声を潜めて兄様が父様と母様に報告をする。すると二人は頷いた。モロバ侯爵については色々と不思議なことが多いのだ。是非とも僕も兄様達の話を聞きたい。
「くわぁ……」
僕の口から自然と欠伸が漏れた。情報収集をしたいが、僕の身体は限界のようだ。今日は兄様と一番長く、一緒に過ごすことが出来て大満足である。
「おや、シルバーは疲れてしまったようだね」
「そのようですね。ブラック、シルバーを抱えるのを代わりましょうか?」
うとうと、と揺れる意識の中で父様と母様の声が響く。
「……いえ、大丈夫です。もう少しこのままで……」
兄様の優しい声を子守歌に、眠気に負けた僕は瞼を閉じた。




