避難先
ルリタニア王国に到着した小島たちに思わぬ罠が待っていた。
ルリタニア王国 首都ストレルサウ市
クイーン・フラビア国際空港
2025年3月某日 午後13時頃(現地時間)
小島たちが乗っていたC-17輸送機は無事国際空港に着陸した。
着陸する前、無線機で亡命希望であることを管制塔に連絡し、
エルフバーグ家の現当主に保護を求めることを伝えた。
管制塔より政府関係者の一団が来る旨を案内され、
機内で待つように指示された。
「小島よ、待つことと言われて、おかしくないか?」
不可触民は声で小島だけに聞いてきた。
「はい、確かにおかしいです。」
声で小島が答えた。
C-17輸送機は滑走路から遠く離れた、空港の奥にある設備用の格納庫に誘導された。
機体が格納されてすぐ10台の黒装甲リムジンが格納庫を埋め尽くした。
30人の黒服の男が下りて来て、機体を囲んだ。
「罠か。」
小島が唇を噛みながら呟いた。
機体の真ん前に止まったリムジンから1人の背の高い洗礼された仕草の男性が下りて来た。
コックピットの前に立ち、笑顔を浮かべていた。
「私はルリタニア王国警備隊、隊長のハンス・グルーバーである。国王の命であなた方を保護しに参りました。どうぞ、ゆっくり機体から下りて来てください。」
彼が話終わる前にまた15台のフクス装甲兵員輸送車が格納庫の前に到着した。
重装備の兵隊100名が格納庫を囲むように散らばった。
ハンス・グルーバーと名乗った男は終始笑顔だったが、目が笑っていなかった。
小島が男を見て、すぐに転化人であることを見抜いた。
「小島殿、遠慮なく下りて来ていただきたい、我が国王、ルドルフ8世がお待ちである。」
小島はコックピットの小さな窓を開けて、作り物の笑顔で男を見つめた。
「お迎えにして少々大げさ過ぎませんか?グルーバー隊長殿。」
洗礼された動作と仕草、完璧なまで綺麗な制服と手入れした髭の顔から、笑顔が消えた。
「小島殿、あなた方は亡命者ではなく、犯罪者であるとタウレッド王国の外務大臣より連絡を受けて、捕まえに参りました。この近辺の国々であなた方を受け入れる国がありません。」
その時だった、格納庫に居た全員の頭の中に大きな声が響いた。
「転化人ごときで余を止められると思うな。」
不可触民の声だった。
真の怒りに満ちた雄叫びであった。
グルーバーの顔に笑顔が戻った。
「止める?まさか、あなたを滅ぼす使命を授かっています、不可触民よ。」
驚くほど冷静な声で隊長が、不可触民に言い放った。
小島が驚いた。
ハンス・グルーバーを名乗る男はどれだけ強いのかを試してみたくなった。
「我が主ここは私たちが止める。」
不可触民ことショーン卿は小島を鋭く睨んだ。
「下がれ小島よ、余には糧が必要だ。」
小島は背筋が凍る感覚を始めて感じた。
ショーン卿は宙に浮き、オーラの圧でC-17輸送機の天井に中から穴を空けた。
「余を怒らせたことを後悔するが良い、うじ虫どもよ。」
ショーン卿は大きな声で吠えた。
ハンス・グルーバーと名乗る男は相変わらず品よく振る舞い、冷たい目で
宙に浮くショーン卿を見た。
「舐められては困ります、我々はあなたを狩るため、特別にノートルダム会長の手で創られた死神族だ。」
「犬風情が。」
ショーン卿は軽蔑な眼差しで隊長を見て、地声で呟いた。
「狩人隊集合!!」
宙に浮きながらグルーバー隊長が地声で怒鳴った。
黒服の男たちの中から長い髪の筋肉質の白人男性のカール、その弟のトニー、アメリカ人のエディー、東洋人のユーリ、イタリア人のマルコ、ドイツ人のハインリッヒとフリッツ、フランス人のフランコ、国籍不明のアレキサンダー、ジェームスとクリストフが隊長と同じく宙に浮き、ショーン卿を囲んだ。
全員銀でコーティングされたサーベルを持って、構えていた。
「数を集めても、余には勝てん。」
ショーン卿は軽蔑の籠った地声で彼らに言い放った。
「我々は数だけではありません、元々は我々の系統は隣国のルータ王国クロロック伯爵だ。これだけ言えば、あなたもわかるはずです、不可触民よ。」
ショーン卿の顔を一瞬歪んだ。
クロロック伯爵は19世紀の終わり頃に突然滅びた弱小の主だったが、彼の系統の特徴はその能力であった。ショーン卿は思い出した。
「まさか、貴様らは【多次元】使いか。」
「そうだ。」
グルーバー隊長は冷たく答えた。
ショーン卿は恐怖した。その能力は恐ろしく、円卓同盟と一緒に葬ったはずだった。
どんなに上書きをされても、最初の主の痕跡を消さず、上書きされた系統の能力だけを取り込む恐ろしいもで取り組んだ能力を複数同時に使うことができるものだった。
ワトソン博士の能力を最大限に使い、その存在及び記憶を消したはずだが、断絶系統が生き残ってた。
「消したはずだ、あり得ない。」
「今はこの国を影で操る、新たなる我が主王妃フラビアが残りました。」
グルーバー隊長は冷たい笑顔でショーン卿に伝えた。
「そんなばかな。」
ショーン卿は驚いた表情をした。
「テオ、攻撃パターンの指示を任せる。」
グルーバー隊長は声で空港の管制塔にいるもう1人の隊員、テオに伝えた。
「了解隊長。」
黒人青年の姿をした隊員が答えた。
この青年の能力【視力】で複数の眷族、人間、動物などの目を通して、瞬時に監視及び行動予測を行うおそるべし個人能力だった。
「冗談じゃない。貴様ら、死ぬが良い!!」
ショーン卿は怒り狂った声で叫んだ。
「世界の王者となる者、ノートルダム会長の命によりあなたを滅ぼします、不可触民よ。」
グルーバーが地声で叫んだ後、彼の隊、全員でショーン卿に突撃した。
同時刻
小島とヴィクター・フランケンシュタイン博士がコックピットから戦いを見ていた。
「どうも、気になります。」
ヴィクター・フランケンシュタイン博士が呟いた。
「私もです、博士。」
2人はこの上に更なる罠があるのではないかと疑っていた。
「レーダー探知機を確認しろ!!」
小島がトーレス准尉に命令した。
准尉はレーダーを確認し、恐怖の表情を浮かべて、叫んだ。
「未確認飛行物体4体、急速接近中!!こちらに3分以内に着弾する見込み!!」
小島がしまったという表情を浮かべた。
「おそらくMGM-140 ATACMSでしょう。」
ヴィクターが呟いた。
小島も同様の結論だった。
袋の鼠状態になった。
ノートルダム会長のおそるべし先見性の能力と緻密な計画性、大量の予備計画を
同時進行できる器用さに驚かされた。
そして彼から逃げて正解だったことも同時に思った。
「全速力で逃げるぞ。」
小島が全員に命令した。
日本語未修正。