女主
植田緑が女性の主マスターの御前へ連れて行かれる。
ヨーロッパ連合・イベリア半島北部
リッスンブール王国・首都ルレンベルク市
ルレンベルク王宮殿
首都ルレンベルク市を素早く駆け抜けた後、装甲リムジンは王宮殿に入った。
車内では緑がティアラ型装置を念のため、被っていた。
緑の右隣に警官の制服を着たここの主の護衛隊のローラ隊長が座っていた。
「カーミラ女公爵はどんな方でしょうか。」
緑は不安を隠しきれず、ローラに質問した。
「とても穏やかなお方です。あなたに会いたがっている、植田緑様。」
ローラは柔らかく、護衛隊の隊長と思えない優しい声で返事した。
装甲リムジンが宮殿の地下駐車場へ入った。
緑を含む5人の護衛隊員がリムジンから下りた後、地下駐車場の奥にあった
巨大な鋼鉄の扉の前に立った。
「地下指令シェルターで我が主がお待ちです。」
ローラは緑に案内した後、目の前の巨大な扉が開いた。そこにまた豪華なエレベーターの扉が見えた。3人の護衛は外で待機し、ローラと緑だけがエレベーターになった。
緑は緊張と恐怖、そして妙な期待感と好奇心を入り交じった感情で最下層へ下りるエレベーターの中、永遠に終わらないと思える時間の流れを感じた。
エレベーターが最下層に着いて、すぐにドアが開いた。
大きく、暗い空間が目の前に広がった。その奥に王座があった。
そこに黒い女性のシルエットが座っているのを緑がはっきりと見えた。
「どうぞ、植田緑様。」
ローラは緑に主の間に入るように促した。
緑が全身を圧倒するオーラを感じた。
ここの主が出していたオーラがとても大きく、畏怖の念を感じさせるものの、
何処か和む優しさも感じさせていた。
ローラが跪いて、頭を下げた。
緑がそれをすぐに真似た。
「我が主、新たなる系統の眷族である、植田緑様を連れて参りました。」
王座に座ってたシルエットはゆっくりと立ち上がった。
「頭を上げよ、愛しいローラ。植田緑を私の前に連れて参れ。」
女性の主の声が巨大な空間に響いた。
「仰せの通り、我が主。」
ローラが甘い地声で返事した。
2人は立ち上がり、王座へ向けて歩きだした。
オーラの威圧に潰れそうと感じながら、緑が一歩一歩を歩いた。
隣に歩いてるローラの横顔を見た、彼女が幸せそうな表情を浮かべていた。
王座の前に着いたら、主が立ち上がり、浮遊しながら
2人の前に下りて来た。
圧倒的な覇王のオーラを受けながら、緑が主を見た。
長く、つやのある綺麗な黒髪で大きな赤い目をしていた。
肌が白く、見た目はローラ同様、20歳を超えないように思えた。
絶世の美女だった。
女性の主がローラに近づき、顔を手で優しく撫でて、情熱的なキスをした。
「愛しいローラよ、私は寂しかったぞ。」
地声でローラの目を見ながら、優しく伝えた。
「カーミラ様、我が主、私もです。」
ローラは赤面しながら答えた。
古い系統では主と眷族が恋愛関係になるのは珍しいことではなかったが、緑には新鮮に見えた。
カーミラ女公爵が優雅に振り向き、緑を見た。
「あなたは例の系統の植田緑さんね。」
声ではなく、地声で聞かれたので緑が更に驚いた。
「はい、カーミラ女公爵様。」
慌てて主に答えて、緊張のあまり、緑が赤面した。
「あなたを連れて来させた理由は一つです、植田緑さん。お願いしたいことがある。」
緑は更に驚いた。
「はい、何でしょうか。」
期待と恐怖を感じながら、緑が答えた。
「あなたの能力を我が系統のものにしたい。」
「私の能力でしょうか。」
「はい、植田緑さん。私の系統にあなたの能力が一番合致するの。」
「私は大した能力を持ってないのです、カーミラ女公爵様。」
「それが私が判断する。こちらにおいで、あなたを上書きする。」
カーミラ女公爵が優しく両手を緑の方に乗せた後、突如女公爵の顎が割れて、口も含めて大きく開き、4つの鋭くて大きな牙で緑の首を噛んだ。
同時刻
ルレンベルク王宮殿近辺
太陽光対策の黒いワゴン車の中で畠田が座っていた。
ジル・ド・レの眷族になって間もないが、
すぐに主で命令でリッスンブール王国へ向かった。
畠田の隣にドイツ人のヴィリー・ヘロルトという眷族が座っていた。
「畠田さん、初任務を楽しんでいるか。」
このドイツ人が陽気に聞いてきた。
「はい。楽しいね。」
畠田が笑顔を浮かべて答えた。
お互いの視線が再び宮殿へ戻し、2人の顔から嘘の笑顔がすぐに消えた。
主の能力で操られ、不満も不平も言えない、恐怖しかない
永遠の命を生きるはめとなった。
畠田が宮殿を双眼鏡で見て、思った。
カーミラ女公爵眷族の多くが女性で全員が美しく、とても強い。
「遊びたいな、カーミラ女公爵の可愛い娘たちとね。」
畠田がいやらしい笑顔を浮かべて、双眼鏡で宮殿を監視続けた。
日本語未修正。