仇
バークとロビン隊長の因縁が明らかになる。
遡って
英国首都・ロンドン市
カムデン区・リンカーンズ・イン・フィールズ広場近辺
1955年2月20日(日)
夜10時頃
ロビン・フッド、リーのリチャードとタック元修道士は巡回をしていた。
最近ソ連の諜報活動が活発となり、MI6などの情報機関は神経をすり減らして、
対策に追われていた。
「新しい議長はどう思う、ロビン?今度対話できそうかな?」
リチャードは屋上の塔屋に座って、パラペットに立っていたロビンに聞いた。
「わからないな。ブルガーニン新議長は非スターリン化する意見があるものの、共産主義に変わりないのでイマイチ信用できない。」
広場を見ながらロビンが答えた。
「赤は赤、民を圧制する主義は信用に値せず。」
塔屋の斜壁にわざと立っていたタックは軽くつぶやいた。
「もうちょっと信じましょうよ、なロビン、タック先生?」
リチャードは笑顔で2人に声をかけた。
「リチャード、君は楽観的過ぎるよ。その楽観的な考え故、いつか滅ぼされるぞ。」
タック元修道士は真剣な表情でリチャードを叱った。
「タックさん、そこはリチャードのいいところだ。」
ロビンは笑顔を浮かべて、2人に伝えた。
2人は肩をすくめて、笑った。
リチャードは生まれつきの楽観主義で底の知れない優しさを持っていた。
昔は騙されて、担保にしていた土地が奪われそうとなり、悲観になった時もあったが、
ロビンは彼を助け、仲間にした。
ルスヴン卿はロビンとその仲間を転化人にした後、
リチャードはその明るさを失わず、アラン・ア・デイルと共、隊のムービーメーカー的な役割を果たしていた。
今回の任務はソ連の諜報員の正体を探るものだった。
陸軍の将軍、国会議員と現役のMI6の諜報員も最近捕まっており、
全員強烈な外見をした男性に説得されて、ソ連のため、諜報活動を行い、
英国を不利な立場に追い込むほどのダメージを与えていた。
その男は今夜現れる可能性の高い3か所にフッド隊のメンバーを配置し、
現れるのを待つことになった。
「謎の男はボクレフスキー公爵の眷族かな?」
リチャードはロビンに質問した。
「そう考えるのは妥当だが、まだわからない。もしかしたら能力持ちの人間かも知れない。」
「それもあり得る。」
タックは付け加えた。
広場を監視していた3人は自分たちの後ろに妙な気配を感じた。
同時に振り向き、色白で強烈な外見と黒いトップハット、黒いスーツ。人をえぐるような大きな目をしている男を見た。
「何者だ?」
リチャードは聞いた。
「お探しのソ連諜報員の元締めですよ。」
男は気味の悪い笑顔で答えた。
「転化人か?」
ロビンは男に質問した。
「その通り。」
男は大きな目で3人を睨んだ。
最初に動いたのはタック元修道士だった。
猛スピードでサーベルを抜き、男を切ろうとした。
男はロングソードを抜き、タックのサーベルを止めた。
「ボクレフスキーの犬め、滅ぼしてやる!」
タックは男を罵った。
「ボクレフスキー?私は彼の眷族ではないぞ、タック修道士。」
男は笑いながら答えた。
ロビンとリチャードは男に切りかかり、男はタックの剣を押し退けて、大きなジャンプで
ビルから下りて、人まばらの広場へ落ちて行った。
「逃がすな!」
ロビンは怒鳴った。
3人はジャンプで下りて、男を追いかけた。
ロビンは違和感を覚えた。男は逃げているようには見えず、誘っているように見えた。
「止まれ!これが罠だ。」
タックとリチャードに命令した。
ロビンが気付くのは遅かった。
タックは後ろへ飛んで、男と距離を稼いだが、リチャードは猛スピードで男に切りかかった。
「捕まえたぞ、スパイめ!!」
リチャードは笑顔で謎の男に伝えた。
男は気味の悪い笑顔でリチャードに向けて、つぶやいた。
「催眠発動。」
リチャードの目が白くなり、動かなくなった。
「戻れ、リチャード!!」
ロビンは命令したものの、男の能力の罠にかかったリチャードには声が届かなかった。
タックとロビンは男から15メートルの距離を取った。
広場にいた人間たち、夢遊病患者のような動きでロビンたちの周りに集まって来た。。
「罠にはめられた、ロビン。」
タックは周りを見ながら、ロビンに話した。
「ああ、最初からあの男の罠にはまった。」
ロビンはサーベルを構えながらタックに答えた。
男は2人を見て、大きな笑い声を上げた。
「フッドよ、罠にかかった気分はどうだい?」
「貴様、何者だ?」
「私か?ギスボーンのガイは我が兄であり、エドワード・C・バークだ。」
「ガイの弟?」
ロビンは驚いて、質問をした。
「我が兄の仇だ。フッドよ、貴様を滅ぼす!!」
男は狂気じみった笑い方でロビンとタックを睨んだ。
「腰抜けガイの弟か?仮にも英国人なのに何故ソ連のため?」
タックは男を罵りながら質問した。
「英国が嫌いだ。この国の王族と吸血鬼の主もだ。」
「何故だ?」
ロビンは質問した。
「おのれらの主は我が主を滅ぼしたからだ。」
「貴様の主?」
とロビンは質問した。
「ああ、モラ伯爵。」
男は答えた。
ロビンとタックは思い出した。
モラ伯爵、弱小の主だった。
700年以上前にルスヴン卿は彼を一対一の勝負で滅ぼした。
「断絶系統か?」
タックは軽蔑の目で男を見た。
「ああ。。フッドよ、お前は我が兄を殺し、お前の主は我が主を滅ぼした。貴様らは私から全てを奪い、のほほんと存在していることが許さん。」
男が怒りの表情を一瞬浮かべた後、また気味の悪い笑顔に戻った。
「私はソ連に戻るよ。あそこなら私の価値がわかってくれるからな。その前に一つだけ見せよう。」
男は動かなくなったリチャードの前に立ち、手刀で胸を貫き、心臓を潰した。
「止めろ!!」
ロビンが叫び、タックと共に動こうとしたが、広場にいた人間は一気に彼らに襲いかかってきた。
心臓が潰されたリチャードの体が燃えだして灰となった。
「バーク、貴様!!」
ロビンは怒鳴った。
「怒る暇がないぞ、フッドよ。ここにいる人間は我が能力に支配されているぞ、そして冥途の土産だ。彼らは自爆もできるぞ。」
男は狂気的な笑い方をしながら、素早く走り、広場の近くにあったTR2車に乗り、夜に消えた。
ロビンとタックは襲ってくる人間をかわし、近くにあったマンホール蓋を外して、避難した。
間一髪だった。彼らは避難した直後、大きな爆発音が響いた。
広場にいた40数人の人間は一斉に爆発した。
歴史はこの出来事をリンカーンズ・イン・フィールズの悲劇と名付けた。
表向きには国内の親ソ連共産主義テロリストの仕業にされた。
現代
英国・ロンドン市郊外 南東48キロメートル
ヒーバー城 地下運動場
2025年3月某日 午前10時05分頃
ロビン・フッドは真剣な眼差しで構えた。
「来いよ、バーク。」
バークは笑顔で彼に襲いかかってきた。
「滅ぼしてやる、フッドよ。」
目に追えぬ速さで2人は激しく戦いだした。
日本語未修正。