弟者
ハイドたちとルスヴン卿の眷族との戦いが始まる。
英国・ロンドン市郊外 南東48キロメートル
ヒーバー城 地下運動場
2025年3月某日 午前9時30分頃
エドワード・ハイドご一行は城へすんなり入った。
入り口で待っていた女性の長寿者、マリアン女史は彼らと適度な距離を保ちながら地下運動場まで案内した。
「誘っているかな、マリアンさんよ。」
ハイドは下品な笑い方をしながらつぶやいた。
彼は笑顔を浮かべていたが、周りを見た後、怒りの表情に変わった。
「罠か?お前たちが俺を止められるとでも思っているのか?」
ルスヴン卿、妻の和美・ルスヴン、ホームズ司令官、フッド隊長、そしてマリアン女史が運動場の真ん中で待っており、フッド隊は周りを囲んでいた。
「罠だよ、ミスター・エドワード・ハイド。」
ルスヴン卿は真剣な表情で告げた。
「全員でかかって来い、食ってやるぞ。」
怒りの籠った声でハイドが怒鳴った。
「全員?いいえ、一対一で戦いでどうですか?仲間に活躍の場を与えなきゃね。」
和美は笑顔でハイドに伝えた。
「美味しそうなあんたがそう言うなら、やろうじゃないか。そしてこいつらは仲間じゃない、捨て駒だぞ。」
ハイドはまた下品な笑顔を浮かべた。
「ではミスター・ハイド、先鋒を決めてください。」
和美は恐ろしいほど美しい笑顔でハイドに聞いた。
「おい、パブロ、行け。」
ルデニャ兄弟の弟、パブロ・ルデニャは前に出た。
「そちらから、誰を出すんだ?」
ハイドは下品な表情で聞いてきた。
「マリアン女史、前へ。」
ルスヴン卿は命令した。
マリアンはゆっくりと前へ出た。
「おい、おい、最初からそんな上玉を出していいのか?」
相変わらず下品な笑顔と仕草でハイドが言った。
「心配いらないです。私は先鋒なので、仕事するだけ。」
マリアンは感情の籠ってない声で淡々と答えた。
「パブロ、滅ぼすなよ、動かないようにしろ、俺がその後可愛がるから。」
マリアンを舐めまわすように見ながら、ハイドはパブロに命令した。
「お任せください、ハイド様。」
パブロは軽快な声のトーンで返答した。
「負けるな、弟よ。」
兄のペドロが声かけた。
「マリアン、容赦なく切れ。」
マリアンの夫であるロビン・フッド隊長は彼女に声かけた。
「すぐに終わるよ、ロビン。」
マリアンは真剣な声に返事した。
パブロはロングソードと短剣を抜き、構えた。
マリアンはサーベルで優雅に構えた。
「女と戦うのは好きじゃないが、悪いけど全力で行くよ、ねえちゃん。」
小ばかにした声でパブロが話し出した。
「ガキと戦うのは趣味じゃないけど、全力で来い、坊や。」
マリアンは穏やかな笑顔で平然と皮肉を返した。
先に動いたのはパブロだった。
右手で握っていたロングソードをマリアンの頭目掛けで振り下ろした。
左手の短剣で彼女の右脇腹を同時に刺そうとした。
マリアンはサーベルでロングソードを止め、右足でパブロの左腕を蹴った。
蹴りの威力でパブロが短剣を落とした。
「甘いよ、坊や。」
パブロは隠し持っていたグロック17を左手で抜き、マリアンの顔へ狙いを定めた。
マリアンは素早く回転しながら、ロングソードを上に退けた後、サーベルを振り下ろし、
パブロの左手を切り落とした。
「このアマ!!」
パブロは叫んだ。
叫んでいる彼の顔にマリアンの右拳をさく裂した。
「黙れ、坊や。」
パブロは後ろへ飛ばされ、鼻と前歯が折れた。
彼は倒れずに踏ん張り、マリアンを睨んだ。
「滅ぼしてやる!!」
悪態を吐いた後、パブロの口が割れて、触手牙1本を出した。
「気持ち悪いものはお持ちで。」
軽蔑な眼差しでマリアンはつぶやいた。
左手が再生されるまで、触手牙とロングソードで
パブロはマリアンを威嚇していた。
「威勢だけがいいみたいだね、坊や。」
マリアンはサーベルを鞘に戻し、ボクシングの構えをした。
パブロはそれを見て、笑った。彼女が油断したと思った。
構えている彼女に向けて、パブロは猛スピードで攻めて来た。
触手牙とロングソードでマリアンを刺した。
「ざまみろ女!!!」
パブロは頭の中でつぶやいた。
その時、異変に気付いた。
刺したと思ったが、感触はなく、血も出てなかった。
マリアンと思っていたものが薄くなって、消えた。
「残念だったね、坊や。」
パブロは後ろへ振り向いた。そこにはマリアンがいた。
彼女の右手が触手牙を根本から引き抜いた。
痛みでパブロが叫んだ。
「確かに刺したはずだ!!」
マリアンは笑顔を浮かべて、引き抜いた触手牙を遠くへ投げた。
たまたまその方向に立っていたポカホンタス中尉が飛んでくる気持ち悪い物体を輪切りにした後、
床へ落とした。
「貴様、女!!」
パブロは怒りと痛みで泣いていた。
「いいか、坊や。これが私の能力、【朧】だ。」
彼女の能力は気配まで感じさせる幻を作るものだった。
「俺は強化された吸血鬼だ!!お前のような女が負けるはずない!!」
怒り狂ったパブロはロングソードで切りかかってきた。
「本当に甘いね、坊や。」
マリアンはパンチの連打をパブロに浴びせた。
あまりにも早く、重いパンチだったため、パブロの両腕が折れて、ロングソードを床に落とした。
折られた腕を下ろしたため、パンチの連打が顔にもろに当たり、変形させた。
パブロの胸骨及び肋骨も粉砕骨折した。
後ろへ飛ばされたパブロが倒れて、動かなくなった。
「寝るのはまだ早いよ、坊や。」
飛んできたマリアンがパブロの腹部を踏んで、彼は口から血を吐いた。
マリアンは倒れているパブロの頭を両手で掴み、引っ張った。
頭と脊椎を一気に抜いた。
パブロは声上げることなく、燃えだして、灰とインプラントになった。
「よくも弟を!!」
兄のペドロが叫びながら、マリアンに襲いかかってきた。
ペドロの前にホームズ司令官が立ち、彼のロングソードをサーベルで止めた。
「選手交代だ、貴様の相手は俺だ。冥途の土産に名前を教えてやる、我が名はシャーロック、シャーロック・ホームズだ。」
「滅ぼしてやるぜ!!お前たち全員だ!!弟の仇だ!!」
怒り狂ったペドロが叫んだ。
マリアンは夫のロビンが立っているところへ戻った。
「ただいま。」
「お帰りハニー。少し休んで。」
ロビンは妻を抱きしめて、キスした。
同時刻
フランス共和国・ナント市
ジル・ド・レの屋敷。
ジルは何の躊躇もなく、血を吸った男児の遺体の首を折った。
彼は転生した後も、ずっと男児を殺し続け、その犠牲者の数は数万人にも及んだ。
ジルは昔ながらのやり方を好み、糧のなる者たちを自分の手で殺していた。
大流行、戦争、民族移動などに隠れて、人間の子どもを糧にして、
フランスを拠点にしていた。
植民地時代にアフリカ大陸やオセアニア地域の植民地から子どもを餌食にし、
現代はフランス本国に移民した人間の子どもを餌食にしていた。
血を吸い、首を折り、遺体を弄んだ。
「我が主、恐れ入ります。ランドリューは例の日本人を連れてきた。」
部屋の外でドア越しに彼の補佐で眷族、フランソワ・プレラーティは報告した。
「わかった。余の前に連れてくるようにしろ、フランソワ。」
「承知しました、我が主。」
ジルはベッドから立ち上がり、バスローブを着て、謁見の間へ歩き出した。
謁見の間のソファに座り、ランドリュー達を待った。
「ランドリュー達を連れてまいりました。」
フランソワがドアを開けた後、案内し、一礼をした後、部屋を出た。
「ただいま、戻りました、我が主。こちらはムッシュ・コウギ・ハタダです。」
アンリ・デジレ・ランドリューは報告した。
「畠田弘義だ。よろしく頼む。」
畠田はジルのオーラに気付かず、上目線で話した。
ジルは怒りの表情を浮かべて、オーラを全開にした。
「余の御前だ。跪け人間め!!」
鳥肌が立つ恐ろしい声でジルが怒鳴った。
威圧感、オーラの風圧と恐怖のあまりに畠田が尿を漏らした。
「ランドリューよ、下がってよい、この人間をここに残せ。」
「仰せの通り、我が主。」
恐怖の表情を浮かべたランドリューは大急ぎで謁見の間を後にした。
「畠田よ、貴様を転化させるぞ。喜べ。餌から捕食者になる。」
ジルは畠田の首を掴み、苦しも彼を持ち上げた。
畠田は思った、こんなことになるなら、来なきゃ良かったと。
「貴様の能力は大いに役に立つ。」
ジル・ド・レは大きな黄色い犬歯を出して、畠田の首を噛んだ。
畠田は噛まれる直前、ジルの口から出る死臭を嗅いで、恐怖でまた尿を漏らした。
噛まれた時に激しい痛みに襲われ、周りが暗くなるのを感じた。
「また死ぬのか。」
畠田がつぶやいて、またもう一度死んだ。
5分後は目覚めた。力がみなぎるように感じた。
「これでお前は我が眷族となった。」
畠田の頭の中でジル・ド・レの声が響いた。
「我が主。」
畠田が弱くつぶやいた。
「お前は我が眷族で奴隷だ。」
悪意に満ちたジル・ド・レの声がまた頭の中で大きく響いた。
日本語未修正。