伯爵と詐欺師
カリオストロはオルロック伯爵に戦いを挑む。
ドイツ連邦共和国・ザクセン州・ポーランド共和国国境付近
オルロック伯爵の城
2025年3月某日 午前10時頃
オルロック伯爵は塔の窓からサングラス越しで森を見ていた。
主になった影響である程度太陽光の元で活動が出来るものの、
体力の消耗が激しかった。
「我が主、恐れ入ります。先ほどの飛行機墜落現場から出て来た怪物が城へ向かって、恐ろしい速さで迫ってきている。」
トーマス・フッター、オルロック伯爵の忠実な眷族が報告した。
「ご苦労、トーマス。ありがとう。」
「我が主、本当によろしいのでしょうか?あの怪物をお1人で相手する
気でしょうか?」
「ああ、それが主としての務めだ。それより早くエレンのところへ行け、命令だ。」
「妻を含む、城の全員が心配しています、我が主。」
「心配いらん、お前の妻が怒るところを見たくないので、早く戻れ。」
トーマスの妻、エレン・フッターは美しい女性の長寿者で途轍もなく気が強い女性でもあった。トーマスは眷族の中で1か2を争う強い吸血鬼だったが、妻には頭が上がらなかった。
「承知しました、我が主。」
「エレンによろしくと伝えてくれ、トーマス。」
「はい、妻が喜びます。それでは失礼します。」
トーマスは部屋を後にし、オルロック伯爵は再び1人となった。
オルロック伯爵は思い出していた。カリオストロは希代の詐欺師で自称錬金術師だった。
1785年ごろ、当時のフランス王国の王妃を騙し、名声を失い、バチカンに目を付けられたため、この城まで出向き、吸血鬼への転化を悲願した。
オルロック伯爵は断った。
カリオストロが怒り狂い、復讐を誓った。
「後悔させてやるぜ!!この老いぼれミイラ吸血鬼め!!」
城の謁見の間でカリオストロは叫び、オルロック伯爵の親衛隊は彼を追い出した。
身長3メーター以上の怪物が森から出て来て、凄まじい速さで城へ目指して、
走っていた。
「後悔させられものならば、させてみろ、カリオストロめ。」
オルロック伯爵はつぶやいた後、塔の窓から飛び降りて、城の入り口前まで飛んで行った。
城目掛けに走っていたカリオストロはオルロック伯爵を見て、彼の前に立った。
「お久しぶりだな、老いぼれ吸血鬼のミイラめ。」
皮肉を込めてカリオストロはオルロック伯爵を侮辱した。
「お久しぶりですね、小者の詐欺師さん。」
青いミイラの外見をしたオルロック伯爵は笑顔を浮かべて、カリオストロの皮肉に応戦した。
「俺を転化人にしなかったこと、後悔するがいい、ミイラめ。」
「転化人にしなくてよかった、本当に醜い怪物になったね。」
「吸血鬼のミイラであるお前に言われたくないぜ!お前とお前の眷族たち、全員食ってやる!!」
「やれるものならやってみたらいい、小者の詐欺師。」
カリオストロの口がX状に開き、牙だらけの口と長い舌が出した。
3メーター以上ある怪物と思えない速さでオルロック伯爵は立っていたところを思い切り上げた腕を振り下ろした。
オルロック伯爵は既にそこにはいなかった。
腕が振り下ろしたところの地面が割れた。
「逃げるな青いミイラめ!!」
カリオストロは怒鳴った。
オルロック伯爵はカリオストロの後ろに立っていた。
ゆっくりとサーベルを鞘から抜き、構えた。
「詐欺師、後ろだ。」
怒りに狂ったカリオストロは振り向いた。
「逃がさないぜ!!!」
「それはこちの台詞だ。」
オルロック伯爵は片眉を上げて、カリオストロに返答した。
怪物と化したカリオストロが素早い動きでオルロック伯爵を拳で殴ろうとした。
空振りに終わった。
オルロック伯爵は距離を取り、再び構えた。
「ちょこまかに動きやがって、ミイラのくせに!!」
カリオストロは怒鳴った。
「来ないなら、こちから行くぞ、詐欺師。」
オルロック伯爵は一瞬消えたように見えた。
カリオストロは左腕に強い痛みを感じた。
触ろうと思ったが、腕はなかった。
彼の左腕は綺麗に切られて、地面に落ちていた。
「貴様!!!老いぼれ!!!」
「泣きわめくのを止めて、かかって来なさい。」
「ミイラめ!!!」
カリオストロの切られた左腕が再生され、数秒で元通りに戻った。
怒り狂うカリオストロは大きなジャンプし、オルロック伯爵を押しつぶそうとした。
オルロック伯爵は素早く動きて、カリオストロの体当たりを軽くかわした。
「後先考えず、私には勝てないぞ。」
カリオストロは大きな雄叫びを上げ、オルロック伯爵に対して、また体当たりをしてきた。
オルロック伯爵はまた軽くかわしたが、カリオストロの長い舌が伯爵の体に巻かれ、動きを止めた。
カリオストロは微笑んだものの、オルロック伯爵は何の躊躇もなく、巻かれた舌をサーベルで舌を切った後、再び距離を取った。
「人を騙す能力が長けていても、戦える能力が足りないようだ。」
カリオストロの切られた舌がまたすぐに再生され、元通りになった。
「再生の能力だけは高いようだ。」
オルロック伯爵はカリオストロを見て、つぶやいた。
カリオストロは一瞬深呼吸をし、また伯爵の前に立った。
「怒りでお前の罠に落ちるところだった。俺が不死身な存在、吸血鬼のお前よりも強い。」
詐欺師の体が更に大きくなった。5メーターまで背が伸びて、手がオルロックを挟めるような大きさまで成長した。
巨体にも関わらず、カリオストロの動きを更に早くなり、構えていたオルロック伯爵を大きな両手で挟むように叩いた。
叩かれたオルロック伯爵の体が潰れたように見えた。
「潰したお前が俺の昼食にするぜ!!」
サーベルが折れて、全身の骨が折れたオルロック伯爵は絶体絶命になったように見えた。
「食ってやるぜ!!!」
絶望的に見えたオルロック伯爵が何故か微笑んでいた。
「笑うな!!老いぼれめ!!」
カリオストロは叫んだ後、ゆっくりと再生し始めたオルロック伯爵の体を掴み、
途轍もなく大きな口を開いて、一口で食べようとした。
オルロックはこれを待っていた。
「不死身であっても、無敵ではないようだ。」
オルロックは微笑みを浮かべて、つぶやいた。
カリオストロはオルロックを口に入れて、飲み込んだように見えた。
「負け惜しみを言いやがって、ミイラめ。」
カリオストロは笑い、城へ入ろうとした。
「お前の主を食ってやった、次はお前たちの番、吸血鬼ども!!」
城の中にいる眷族たちは誰も返事しなかった。
カリオストロは復讐を果たしたと信じていた。
吸血鬼に憧れて、転化を目論んだものの、ミイラのような吸血鬼に拒まれ、
死ぬ寸前にノートルダムに助けられ、死神族になった。
結果的に転化しなくって良かったものの、断られたことがプライドを傷つけた。
城の大きな門を壊して、中へ入った。
その時だった。
急に胸が苦しくなり、激しい痛みに襲われた。
「何なんだ?」
中から焼かれるように感じていた。
「まさか?そんなバカな。死神族の胃酸に耐えられる存在はいないはずだ!」
カリオストロの口から細長いオルロックの手が出て来た。
生きたまま引き裂かれる痛みを感じながら、カリオストロは泣き出した。
口からゆっくりとオルロックは出て来た。
体は半分、霧のような状態になっていた。
「やはり戦闘経験が足りないな、詐欺師。」
カリオストロは涙を流しながら、出てくる吸血鬼を見ていた。
「これが私の能力だ、【死霧】だ。」
オルロックの体は全体的及び部分的に霧のような状態に変える能力だった。
「不死身なら、脳だけになっても、生きられるのだろう?」
口から上半身を出したオルロックは笑いながら、手を伸ばし、その手が霧と化し、鼻から
カリオストロの頭に入って来た。
「やめろ、吸血鬼め、やめろ!」
苦しみながらカリオストロは悲願した。
霧となったオルロックの手が頭蓋骨に入り、脳を掴んだ。
掴まれた脳は能力によって、霧と化し、外へ引っ張られた。
カリオストロの口から出たオルロックの右手にはカリオストロの脳が握られていた。
脳を失った怪物の体が倒れ、悪臭を放つ液体と化した。
オルロックは城へ入り、用意していた鉄の箱にカリオストロの脳を投げ入れた。
「永遠に箱の中でもがいて、苦しめ、詐欺師。」
鍵がかけられ、密閉された箱の中で脳だけとなったカリオストロは全ての感覚が奪われた状態で
発狂した。
「あの少尉が正しかった!!」
何も見えない、感じない中で考えた後、声にならない叫びを上げた。
英国・ロンドン市郊外 南東48キロメートル
ヒーバー城
2025年3月某日 午前9時40分頃
ハイドご一行は城の前に着いた。
開いていた門は罠だとわかったが、ハイドは自信満々で入った。
「あの日本人女とマリアン女史を絶対にものにしてやる!!」
ルスヴン卿は監視カメラでハイドたち4人を見た。
「滅ぼす、イギリスの面汚し犯罪者め。」
ルスヴン卿は席を立ちあがり、地下運動場へ向かった。
日本語未修正。