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闇夜の追撃  作者: マックス一郎
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謀反

小島は本社に戻り、会長のしたことを知り、幽閉の男と手を組む。

タウレッド王国、首都・トレード市

ワトソン重工本社ビル・地下特別シェルター兼研究所

2025年3月某日 朝9時30分頃


小島は本社に着いて、地下保管庫にダ・ヴィンチの遺産を預けた。

会長は先ほどタウレッド国王宮殿へ出かけて、不在だった。

この国の王族は彼の操り人形であり、実権、決定権、実行権限などは持ってなかった。


小島はまだ新人者ニューボーンだったが、度重なる強化実験と元々持っていた

能力スキルの影響で長寿者エルダーに負けない強さを誇っていた。


本来眠らなければならない時間帯だが、一つの懸念がそれを邪魔していた。

最近会長の様子が日々おかしくなる一方、暴力行為も増えた。

下品で教養のないあの南米人の元主マスターと同様なぐらい不愉快な存在に感じていた。


ヴィクター・フランケンシュタインとドリアン・グレイの裏切りは円卓同盟の脆さを物語っていると彼は思った。

数日前まで盲目的に従っていたノートルダム会長は今、危険な独裁者へと変貌していた。

小島は会長の能力スキルを恐れていたものの、自分が持っている個人の能力スキルには絶対的な自信があったため、会長には自分の考えはばれてないと信じていた。


「強き者よ、余の呼びかけに答えろ。」


突然、小島の頭の中に大きなテレパスが響いた。


「誰だ?」


小島は同じくテレパスで返答した。


「余は不可触民パリヤだ、忌み嫌われる者の王なり。」


「地下にいる、死神族リーパーズの開祖か?」


「そうである。元は呪われた吸血鬼だ。」


「我々、吸血鬼族は皆呪わていると思うが。」


「違う、お前たちはこの世界を見守る使命が授けられた超越者たちだ。」


人間ウォームを糧にしながら守るものなのか?」


「はい。それは人間ウォームを導くために必要な犠牲だ。」


「私に何の用だ?話かけられたは初めてだ。何故だ?」


「お前はノストラダムスの暴走を懸念している。」


「ああ、ここ数日は凄まじい変貌ぶりだ。」


「違う、強き者よ、元々あの性格だ。今まで残虐性を隠していただけだ。」


「ならば、何故今更?」


「世界を手に入れたつもりでいるのだ。本性を隠す必要がなくなった。」


「それはあなたの影響なのでは?人間ウォーム、吸血鬼の血肉を求める本能を植え付けたあなたが原因なのではないか。」


「違うぞ、強き者よ、余の血はノストラダムスとその道化師連盟の本性を引き出しただけだ。」


「嘘だ。」


「嘘じゃない。それでも20世紀初頭、本性に逆らい、余を助けよとした者が3人はいたぞ。」


「知っている、裏切りの3トリニティ騎士ナイツだ。」


「彼らは絶対的な悪になることを拒んだのだ。」


「そして一番残忍な方法で幽閉されたんだね。」


「ああ。そしてあの科学者もそうだ。」


「ヴィクター・フランケンシュタインか。」


「ああ。余の血の【恩恵のろい】を受けても、根が善人の場合、時間をかけてそれに打ち勝ってるぞ。」


「彼らは善人とでも?」


「ああ。余は善人の根本を変えられないのだ。」


「嘘だ。」


「嘘じゃないよ、強き者よ。余はずっと死にたいのだ。」


「でもそれは不可能だろう?」


「そうじゃない、強き者よ。余の手先になれ。余の血の本来の【恩恵】を授ける。」


「私はノートルダム会長に忠実だ。惑わされないぞ。」


「お前はそう思うだろうが、緑という女に会いに行け。」


「何故彼女のことを知っている?」


「余は幽閉されているが、能力スキルを失ったわけではないのだ。」


「彼女に何をした?」


「余は何もしていない。彼女に会いに行け、それから余のいる地下まで来いよ、強き者よ。」


頭の中から不可触民パリヤテレパスが去り、静かになった。

それから小島は耳をすませて、緑を探した。

上の階、会長の寝室から緑の泣き声が聞こえてきた。

急いで階段をかけ登った後、会長の部屋に入った。

緑はベッドの上で休んでいた、血を飲んだおかげで大分怪我と傷を回復したものの、まだ酷い有り様だった。


「小島さん、私、私。。」


緑は小島を見て、立ち上がり、ゆっくりと彼のところへ走って行った。

小島は緑を優しく抱きしめた。


「何があった、緑?」


彼女は小島の目を見て、大きく泣き出した。

それから小島にノートルダムにされたことを赤裸々と伝えた。

酷い仕打ちを受けたファング小隊プラトーンの話も教えた。

内容はあまりも酷く、残虐非道、暴力的で小島の気分は胸糞悪くなった。

緑は死なないのはいいことに恐ろしいことをされた。


小島はノートルダムに対して痛烈な怒り、軽蔑と憎しみを感じた。


「もう終わったのだ、落ち着いて、緑。」


「今夜も楽しませろと言われたの。」


涙を流しながら、緑は小島に伝えた。

また同じことをされれば、精神崩壊し兼ねないと小島が思った。


「着替えて、今すぐ逃げろ、緑。」


「どこに行けばいい?」


「リッスンブール王国へ行け。今すぐ。」


「でもあそこは誰も知らないのよ。」


「かまわん、早く行け、特性日焼け止めクリームを塗って、今すぐ俺のジェット機に乗れ。このバッチを持っていけ、操縦士に見せれば、行きたいところへ連れて行ってくれるから。」


「わかった。でも私がいなかったら、小島さん、あなたが危ないのよ。」


バッチを受け取りながら、緑は小島に答えた。


「心配するな、今すぐ避難しろ、緑、これは命令だ。」


「はい、小島隊長。」


小島は更に2つの大きな輸血パックを会長の保管庫から取り出して、緑に渡した。


「回復を急がせるためだ、全部飲め、まだ酷い状態だ。」


「わかった。ありがとう、小島隊長。」


最後、2人は情熱的なキスを交わし、彼女は部屋から出ていった。


小島は円卓同盟の他のメンバーがコンドミニアムにいると知っていた。

今ここの地下施設にいるのは幽閉されたヴィクター・フランケンシュタイン博士と彼の元助手、イゴールのみだった。


小島はエレベーターに乗り、最下層へ向かった。


「では、不可触民パリヤさんよ、何をすればいい?」


テレパスを地下に幽閉された男へ送った。


「まずは余をここから解放するのだ、強き者よ。」


幽閉された男がテレパスで返事した。


「お安いご用だ。」


エレベーターから下りた小島が会長に忠実な転化人インヒューマン一般戦闘員の警備兵を一瞬で滅ぼした後、幽閉の間に入った。




同時刻

トレード市内

カーサ・デル・レイ宮殿


ノートルダム会長は国王と王妃の寝室に堂々と入った。

ベッドの上にフランス元貴族の末裔の王妃が待っていた。

寝室の大きなソファの隣に国王は立っていた。


「待っていました、父上どの。」


国王はノートルダム会長に挨拶した。


「我が子よ。儀式を開始するぞ。」


ノートルダム会長は国王に伝えた。


タウレッド王国の本当の王族**は**400年前にノートルダムの手により滅ぼされ、

彼の子孫にすり替えられた。表向きは同じ王朝が続いていた。


ノートルダムは血による【恩恵のろい】を受けて以来、子孫を作ることは出来たが、

その子孫は性的不能で両性具有の表向き中性的な男性がほとんどだった。

世界中ではタウレッド王国の王朝の男性は美男子で女性は絶世の美女で有名だった。

生殖機能がないため、新しい王子の誕生にはノートルダムの存在が必要不可欠だった。


王妃は洗脳による個性の排除が施され、インプットされたことを死ぬまで繰り返していた。

今回の王妃はフランスの貴族の中で一番の美女で優れた遺伝を持っていた。

そして何より健康な子どもを生むため、注意深く選ばれていた。


ノートルダムは残忍性、暴力性を持っていたが、子孫作り儀式の前に必ず複数人の人間ウォームの女性を犯し、殺した後、血肉を食した。

今回は緑という新人者ニューボーンの女性で我慢したが、今夜また彼女に対して思う存分本能を解放できると思っていた。

3人の人間ウォームの女性は食用のみとなった。


「次の国王を作るぞ、息子よ。」


ノートルダムは国王に伝えた。


今回の儀式で生を受ける予定の次期国王は現国王の弟であるが、

表向きでは子息となる。


「お願いします、父上どの。」


ベッドの上にいた王妃は目を明けていたが、虚ろで知性も個性もなかった。

ノートルダムは服を脱ぎすて、ベッドに入った。


「儀式が終わったら、お前も可愛がってやるぞ、我が子よ。」


ノートルダムは儀式を見ていた中性的で女性顔の息子に伝えた。

若い国王は笑顔を浮かべながら、服を脱いで、ソファに座った。


「ここでお待ちしています、父上どの。」


どこか狂気が滲む笑顔で国王はノートルダム会長に伝えた。





















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― 新着の感想 ―
[一言] 緑ちゃんが逃げ出せてほっとする自分にびっくりです、身のまわりにはほしくないキャラクターですが、可愛くなってしまいました(笑) そしてノートルダムに疑念を持つ小島、脳内で配役が長谷川博己になり…
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