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時は金なり(1)

 城の中に在る時点で予想は付いたが、私に宛がわれた部屋は豪華だった。

 居室と寝室が分かれていたのは、素直に喜べた。しかし、磨かれた大理石が眩しいパウダールームで目が点になり、(きら)びやかなドレスが詰まったドレッシングルームに至っては扉を開けた瞬間に閉じた。

 聖女の仕事が一段落したら、身の丈に合った住居に引っ越そう。そう心に決めたのが、二十分ほど前。現在、私は居室にてオルセイと向かい合ってテーブルに着いていた。

 テーブルには、メイドさん(で合ってたらしい)が運んできてくれた紅茶のカップが載っている。高級そうなティーセットでティータイム……とはなっていない。私が早々に、『飲み物片手に仕事をする企業戦士たち』な構図に変えてしまった。重ね重ね申し訳ない。


「うーん……聖女の浄化は一時的な措置に過ぎない感じですね」


 オルセイが纏めたという聖女に関する文献のメモ(書類の束)に目を通しながら、私は感想を述べた。

 ちなみに初見で文字は読めた。自動言語学習チート万歳である。


「数年掛けて国を巡って浄化して。でもその数年後にはまた瘴気が発生する。聖女を喚べるのは百年ごと……完全にじり貧な印象です」

「俺もそう思います。そこにあるように、二百年前にはシュレット以外にも国が存在していました。その時代の聖女様は、友好国も巡っていたようです」

「召喚の間隔は変えられないんですよね?」

「そうですね。異界へ繋がる門は天体の配置に左右されますので」

「となると状況を良くするには、浄化の速度を上げる……もしくは発生原因を特定して根本から改善するか」

「原因の究明と対策については、研究機関があります。が、今そこは瘴気を消すことより瘴気の中でも正常に育つ食料の研究で手一杯です」

「確かにそちらの方が緊急性のある課題ですね」


 聖女が浄化しても、結局は数年で再び瘴気が発生する。瘴気は常に在るという前提で考え準備するのは正しい。

 なら私が考えるべきは、浄化の速度を上げる方法か。――と、その前に……


「私の浄化の力を試すことはできますか?」


 実際に聖女の力とやらを見てみないことにはね。オルセイに尋ねれば、彼は「はい、こちらで」と隅に置いてあった細長い金属板をテーブルの中央へと移動させた。

 片端に宝石ぽい物が付いた金細工に見えたので、てっきりお洒落な文鎮と思っていたが、そんな特別な器具だったとは。


「これは測定器です。この宝石部分に手で触れて下さい。サキの現在の浄化力が1から9で数値化されます。8以上になれば、安定して力が使えるそうです」


 オルセイが言って、お洒落文鎮――もとい測定器をさらに私の前まで移動させる。

 早速測定器に触れて……と行きたいところだが、その前に私はもう一度オルセイに目を遣った。


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