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立っているものは王族でも使え(2)

 オルセイと二人歩き始めて思ったのが、道すがら説明を聞くと言って大正解だったこと。でなければ絶対、間が持たず気まずかった。


(どんだけ広いのよ、この建物……)


 見るからに城なのでそんな気はしていたが、案の定だった。もうかれこれ二十分は歩いていると思う。屋外ならともかく、屋内の中を二十分とか……。

 召喚が行われたのが離れの建物だったので、普段の生活ではここまで歩くことはそうないらしい。そこはホッとした。


(これ、部屋に着く前に説明が終わったりして)


 ここまでの話は、この国の名前がシュレット王国だということ。聖女召喚は、国主体で行われたこと。聖女の役目は「祝福の力で瘴気を払う」こと。瘴気は水を腐らせ、動植物の健康状態を害して魔物化させる……そしてその発生原因は不明だということ。


「前の聖女様が召喚されたのは九十年前。そこから三年かけて、勇者様と国中を巡ったようです。役目を終えた後、聖女様は勇者様とご結婚なさいました。ですが子宝には恵まれなかったようで、お二人の子孫はおられません」


 私が希望した通り、先程からオルセイは喋りっぱなしである。歩きながら長々と話す機会なんてこれまでなかっただろうに、申し訳ない。と思いつつも、「では後は部屋で」とは言い出さないわけですが。


「巡るのはこの国の中だけなんですか? 他の国でも、それぞれ聖女を召喚しているとか?」

「いえ、召喚を行っているのはシュレットだけです。というより、シュレット以外の国が存在しません」

「ここは島国ということ?」

「いえ、大陸です。我々の知らない国が存在する可能性はありますが、少なくともシュレットと交流があった国はすべて地図上から消えました」

「えっ……それはやはり?」

「はい、瘴気が原因です」

「…………」


 思った以上に深刻なんですけれども!?

 異世界召喚は、料理したり店始めたりな話も多かったけれど、私のところはやっぱりそんなのやってる場合じゃないわ。聖女の仕事に一点集中必須だわ。


「着きました。この部屋です」


 オルセイが歩みを止め、重厚な扉を手で指し示す。部屋の前には、先程の女性と同じ服装をした女性が二人立っていた。

 こちらは私よりやや年上くらいだろうか。二人が一瞬驚いた表情になって、次いでお辞儀の体勢になる。彼女たちが驚いたのは勿論、オルセイ自ら案内していたからだろう。私のせいです、ごめんなさい。


「どうぞ」


 しかも扉までオルセイに開けさせてしまいました。本当にごめんなさい。

 さすがに二人がオロオロし出し、そんな彼女たちにオルセイは茶の用意を申し付けた。それを受け、ぎりぎり走っていないレベルの早足で去って行く女性たち。

 その姿に「プロだ」と感じながら、私は部屋の中へと入った。


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