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プロローグ 親の顔より見た光景(2)

(ん?)


 不意に視線を感じ、私は真後ろを振り返った。するとそこには、青年の他にも十数人の男女の姿があった。視線も小さなざわめきも、好意的に見える。どうやら歓迎されているようだ。

 言ってしまえば召喚は立派な誘拐なわけだが、誘拐されてしまったのなら大事にされる方がいい。怒ったところでどうにもならないのなら、最初から心証を悪くしない方がいい。悪くして人間関係の修復から事を始めるのは、時間の無駄だ。


「申し遅れました。俺はオルセイ・リンドガルといいます。どうぞオルセイと呼び捨てて下さい」


 ニコニコした顔で、私に名乗る青年。あちらもあちらで、第一印象の良さで人選したと思われる。


「わかりました、オルセイ。私は(はや)()()()です。私の方もサキと呼んで下さい」


 オルセイの希望するように先にその名を呼び、次いで私は自分も呼び捨てるよう彼に言った。

 面食らった感じの彼に、つい可愛いと思ってしまう。


「それは……いえ、わかりました。そのようにさせていただきます」

「――ああ、私の要望をできる限り叶えるのが、オルセイに与えられた仕事なんですね」


 断る素振りを見せた直後にハッとした感じで言い直した彼に、私はそう予想した。図星だったのだろう、オルセイが気恥ずかしそうな顔をする。


「その『できる限り』には、役目を終えた私の元の世界への帰還は含まれますか?」


 そう尋ねれば、今度は彼はシュンと耳が垂れた子犬のような感じになった。表情がコロコロ変わり、見ていて楽しい。


「それは…………大変申し訳ありません。心よりお詫びいたします……」


 オルセイの一存で決めたわけではないだろうに。彼から言葉通りの「心よりのお詫び」が伝わってきて、残酷なことを言われたはずが好感すら持てた。


「いえ、そうだろうなとも思っていました。念のため聞いただけです」

「そうでしたか。その……それ以外では、本当にできる限り貴女の意向に沿いたいと思っています」

「ありがとうございます。そう言っていただけると助かります」


 異世界召喚ものの大半は帰れないパターンだ。彼に気を遣ったわけでなく、私は本当に念のため聞いただけだった。


(さて、実際にはできる限りとはどこまでなのか……)


 とにもかくにも、私は早いところ役目を果たして身軽になりたい。


(よし、駄目元で一度は何でも言ってみる方向で)


 私は一人頷き、気合いを入れるとともに立ち上がった。


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