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エピローグ 召喚聖女は話が早い(1)

 オルセイに「決めることが重要」だと助言した日から、三ヶ月後。私は現在、そんな自分に「偉そうな口を利いて」と言ってやりたかった。


(私も……決められないっ!)


 「お好きなものをどうぞ」と私の部屋に運び込まれた、大量のドレス一式。プラス装飾品。すべて、本日催されるパーティーに出席するために用意されたものだ。

 実際に運び込まれたのは数日前だったため、すぐに確認していればこんな土壇場で迷う羽目にはなっていなかった。しかし、元々私の部屋にはどこの劇場の衣装室だというようなドレッシングルームがあった。よって、追加でドレスが来たところで数着だと思ってしまったのだ。


(私の場合はオルセイと違って、普通にどうしたらいいかわからないわ……)


 運ばれたドレスと靴の箱を一応全部開けてはみたところで、私は応接用の椅子に座っていたオルセイを振り返った。

 目が合ったオルセイが、呼んだわけではないのにこちらにやって来て。箱の前に座り込んでいた私の手を取り、立たせてくれる。


「サキには珍しく、悩んでいますね」

「元の世界ではパーティーの趣旨や、出席者を見て決めていたもので……」

「ああ。それで「お好きなものを」と言われて、途方に暮れていたわけですか。ちなみに今日のパーティーは、帰還した騎士団を労うものですよ」

「はい、それは聞いています。オルセイが出ている間、こちらでは毎日のようにオルセイへの称賛の声が上がっていましたよ。まさかあなたまで同行するなんて、思ってもいませんでした」


 結局、あれからオルセイは南回りのルートを選択した。

 南回りは距離的には遠くなるため、北回りより到着に期日を要した。しかし、街道周辺をすべて浄化して行ったため、往復日数では北回りの予定と変わらなかったという。しかも帰路にて、浄化した地で採集した木の実や山菜を持ち帰ってきたというのだから、今国中がオルセイと騎士団の話題で持ちきりだ。


「俺も城に残してきた貴女が、『祝福のドアノブ』なるものを考案して延々製作に励んでいる日々を送っていたとは、思ってもいませんでしたよ。不特定多数が触れる箇所を狙うとは、目の付け所が違うなと感心しました。――ところで、決めかねるならサキのドレスを俺が選んで構いませんか?」

「寧ろ、そうしてもらえると助かります」

「承りました。では……」


 やはりオルセイは前例のあるものに関しては、選択肢が多くても難なく選び取ることができるらしい。三択クイズくらいのシンキングタイムを経て、オルセイはドレスと装飾品を選んだ。それを手にした彼に、「あちらへ」と姿見の前に立つように促される。


「移住希望者を同行させるなんて、よく思い付きましたね」


 姿見がある場所へ向かいながら、私は後ろを付いてくるオルセイに話しかけた。


「人手が物を言うのは、先の経験で知っていましたからね。俺が同行したのも、実は俺の私兵を動かすのが目的でして。私兵なら会議を通さなくとも動かせますから、戦力になりそうな人員を足しておきたいという思惑でした」

「ふふっ。それ、オルセイの方が余程、目の付け所が違うと思います」


 オルセイたちは、浄化しながらトトリスへと向かった。普通に騎士団だけに浄化させたなら、最初に相談された際に彼が言っていたように、かなり時間が掛かっただろう。しかしそれをオルセイは騎士団に先行させ、ある程度浄化したところで祝福付き農具を持たせた一般市民に後を任せたのだ。

 分譲予定の耕作地に購入希望者を募ったところ、思った以上の人数が集まったらしい。現在――そしてしばらくは、食料は高く売れるだろう。一攫千金と考えた住人は多そうだ。


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