王都に入るとやっぱりいろいろあるフラグP-3
朝日が昇ると同時にエルフィンは目を覚ました
「ふぁ〜〜久しぶりのベッドはやっぱ寝起き良いね」
大きく伸びをする、隣のベッドを見るとクイナは気持ちよさそうに寝ていた
「ゆっくり寝させてやるか」
クイナを起こさないようにベッドを抜け出しリビングルームに行きアイテム鞄から桶をだし水魔法で水を入れて顔を洗う、そしてじいちゃん家の時は日課だった朝練、ストレッチに腕立て伏せ、背筋、スクワット等をやる
「さすがにここじゃ弓の練習は無理だな、どっか見つけないと」
1時間程した頃、汗を拭いて水を飲んで一息ついた時奥のベッドの方が慌ただしくなる、そして
「おはようございます!エル様、すみません私寝坊しました!」
勢いよく謝ってきた
「おはよう、クイナ。別に気にしなくていいよ」
「いえ!奴隷である私が御主人様より遅くなるなんて」
「俺の場合、森での生活習慣で朝日が昇ると同時に起きて朝練してたからその癖がついてしまってるんだ、それに寝坊っていう程遅くないからね」
「それでもエル様より早く起きていたかったです」
「そこまで言うなら徐々に慣らせばいいよ、急に生活習慣変えると体調を崩すから無理しないでね?」
「はい!頑張ります!」
なぜ俺より早く起きたいのか不思議に思うがまぁ本人がやる気を出しているからとやかく言うまい
「クイナそこの桶に水を入れてるから顔を洗って身支度を整えたら朝食を食べに行こう」
「はい!」
今日はワールさんが朝に迎えに来るそうなので早めに朝食を食べに行く、見に行く患者さんは身分の高い人らしいので恥ずかしくない格好に着替えて昨日の食堂に降りて行く、すると昨日の夜のウェイターさんがいた
「おはようございますエルフィン様、朝食の準備は出来ております」
「ありがとうございます」
椅子に座るとすぐに料理が出てきた、高級ホテルの朝食って感じで見た目が綺麗に盛り付けてあるもちろん味も美味しい
「あっさりした味わいで美味しいな」
「はい!エル様」
昨日の夜の料理は濃厚な味わいでよかったがこのあっさり味も美味い!
そして、朝食を食べ終わり食後の飲み物を飲んでいると
「おはようございますエルフィン殿」
「おはようございますワールさん」
ワールさんが迎えに来た
「さっそくですがこれから向かってもよろしいんですか?」
「大丈夫なんですけどクイナは一緒について来てもいいですか?」
「クイナさんはエルフィン殿の所有奴隷ですので構いませんよ」
ワールさんから許可が出たので俺とクイナはワールさんに着いて外に出て馬車に乗り込んで行く。店を出る時に先程のウェイターさんが行ってらっしゃいませと優雅に一礼して見送ってくれた。俺達が出た後の店では
「あのお客様は店長自ら接客しなければならない方なのですか?」
エルフィン達の接客をしていたウェイターに女性スタッフが問いかける
「えぇワール会長より最上級のおもてなしをしなさいと厳命でしたから私が直接接客した方が確実でしょう」
「あのお客様は何者なのでしょうか?ワール会長がそこまでされる程高貴な方には見えませんでしたが」
「見た目で判断してはいけませんよ、それに高貴な方とは限りませんワール会長の目利きはこの国1番なのですから何か感じ取ったのでしょう」
そう言って店長と呼ばれたウェイターも女性スタッフも仕事に戻って行った
そして、ワールと患者の元に向かうエルフィン達は
「ところでワールさんこれから診る患者はどういった方なのですか?高貴な方という事でしたが」
「身分については到着してからお話します、ただこの国にとってとても大切な方なのです」
「ちなみにどう言った症状出ているのですか?」
「私の知る範囲ではおよそ1ヶ月程前から体調を崩し始めたそうです」
「1ヶ月……結構前ですね」
「はい…最初は軽い倦怠感や、目眩だったそうです。そこから手足の指の痺れから始まり半月後には腕や足全体に痺れが広がり今はベッドから起き上がれない状態です。」
「それは身体全体に影響が出てると言う事ですか?」
「はい…最近では内臓にまで症状が出始めろくに食事も取れず衰弱しているとの事です。医師団が栄養剤を投与したりできる範囲の治療をしてどうにか持っている状態です」
「かなりやばい状態ですね」
「医師団も懸命に原因を探しているのですが今だ判明しません」
患者の状態をワールさんに聞いていると
「あれ?これ王城に向かってません?もしかして患者は王族ですか?」
「……はい、これから診て頂くのはこの国の王太子殿下です」
隣で大人しくしていたクイナも王太子と聞いてビックリしていた
「王太子ですか!」
俺もいきなりの大物にビックリである
「申し訳ございません、相手が王太子では受けて頂けないかもしれないと黙っておりました。ですがどうかお願いします、全ての責任は私が取りますので診ていただきたい!」
そう言ってワールさんが頭を下げてくる
「頭を上げてください、ワールさん」
あまりに必死な態度に驚くが
「ワールさんには色々とお世話になっています、治せるかどうかは分かりませんができる限りの事はやってみます」
「ありがとうございます」
「それにしてもワールさんはなぜそんなにも必死なのですか」
「殿下のことは赤ん坊の頃から知っておりますので」
「なるほど」
王太子は確か今年で18歳、今の俺と同年代か…赤ん坊の頃から知っているとそれは助けたいよな
そうこうしている間に王城の中に入っていく
「エルフィン殿、殿下を診て頂く前に会って頂きたい方がいます」
「分かりました」
そう言われてワールさんについて行く、するとメイドが出てきて何か伝えているどうやら診に来たのを誰かに伝えるよう頼んだようだ。もう1人メイドが来て応接室に案内される、しばらく待っていると数人が部屋に入ってきた
1人は何となくわかるだって頭に王冠があるし、残り2人も位の高い人っぽい
「陛下、この者が昨日話した人物で御座います」
「エルフィン・リッパーです、そしてこちらは同伴者のクイナです。2人とも礼儀作法を習ってないので無作法で申し訳ありません」
そう言って二人で頭を下げる
「よい、公の場ではないので気にするな、余が国王ルゲイン・サファイア・ブルーフォレストである」
冠をのせた人が名乗り出る
「余の隣にいる男の方がこの国の宰相、女性の方が医師団長である」
「宰相を務めているグラント・マグノスです」
「医師団を率いているマリアロス・ガーネットです」
国王に続いて宰相と医師団長が自己紹介をしてくる
「よろしくお願い致します」
2人と挨拶を交わす
「してエルフィンよ、さっそくだがワールより聞いていよう」
全員椅子に座ると本題に入る
「はい…大体のことはワールさんから聞きました、なのでもう少し詳しく状態を聞いてもいいですか」
そう言うと医師団長が説明してくれた、これによりだいぶ全体の把握が出来た
「エルフィン殿はどう思われますか?」
医師団長が意見を聞いてくる
「実際に診て見ないと断言できませんが俺は病気ではなく毒ではないかと」
「毒ですか!」
俺の言葉に全員が驚いている
「警備の固い王城で毒が使われたと!」
「えぇ病気にしてはあまりに不自然な所が多いので…」
「ですがどのような毒が使われたと」
「それは検査しないと分かりません、毒の中には特別な方法でないと見つける事のできない物もありますので」
「そうですか、陛下やはり直接診て頂くのが一番かと」
医師団長が国王に進言する
「そうじゃな、それがよいか。宰相もそれでよいか」
「私も直に診て頂くのがよいかと」
「ふむ、ではエルフィンよ王太子の部屋までついてきてくれ」
「はい、かしこまりました」
王太子の部屋に案内され中に入っていくとベッドに王太子が寝かされていた
「今は睡眠薬で眠っています」
銀髪の男性が寝息を立てているがその身体は同年代とは思えないほど痩せていた
「最近は食事もまともに取れず流動食をかろうじて飲み込んでいます」
「そうですか…陛下、王太子に触れてもいいですか?」
「許可しよう」
「ありがとうございます、クイナちょっと手伝って」
「は、はい!」
「私も手伝いましょう」
いきなり呼ばれてビックリしていたクイナと、医師団長さんが手伝ってくれる
「クイナ、この葉っぱを細かくすり潰してくれる?」
「はい!分かりました」
クイナにすり鉢と乾燥させたある葉っぱを渡す
「マリアロスさん、殿下の上半身が診たいので上の服を脱がします」
「分かりました」
王太子の身体を調べる、そして
「陛下、殿下の血を数滴採取してもよろしいですか?」
「必要な事であるなら許そう」
陛下の許可を取り、王太子の指に針を刺して血を取る
「かなり赤黒いですね」
王太子の血は健康な人に比べかなり赤黒く変色している
「クイナ、出来た?」
「これくらいですか?エル様?」
「大丈夫、ありがとう」
クイナから粉状にした葉っぱを受け取る
「エルフィンよ、それで何かわかるのか?」
「はい、俺の予想が正しければ…」
そう言って先程採取していた王太子の血に粉をかける、すると赤黒かった血が綺麗な赤に変わる
「やっぱり…にしてもまためんどうな物を……」
「エルフィン!何かわかっのか!」
陛下が問い詰めてくる
「落ち着いて下さい陛下、これは枯死毒です」
「枯死毒?初めて聞きますね」
「そりゃそうです、この辺では入手困難ですから」
「してどんな毒なのだ?」
全員が俺に注目を集める
「原料は死人の木、死肉や流れた血を栄養にして育つ植物で、主に連邦と帝国の国境付近の小競り合いが多い地域に生息する魔物です。その木を乾燥させ成分を抽出したのが枯死毒です」
「それが王太子に使われたと?」
「はい、この毒は時間をかけて対象の体力や栄養を吸い取っていきます、まさに王太子のように」
「それで治療法はあるのか?」
「ございます。ただ材料が必要です」
そう言って先程の葉っぱの粉末を見せる
「これは毒を判別するのに使用したものですが治療にも必要になるものです。ワールさん今回仕入れた物に聖なる葉はありますか?」
「少量ですが仕入れています」
「なら俺が持っているのと合わせて数日は持ちます、完治させるにはまだ量が要ります。計算するので手配して頂けますか?」
「分かりました、早急に手配しましょう」
「あと問題の毒ですが…」
そう言ってベッドの横にある物を見る
「その水差しは誰が用意を?」
「それはうちの医師団の者が替えているはずですが」
「クイナ、水差しを持ってきてくれるかい」
「はい!」
そして俺は手を切って受皿に血を流す
「エル様!」
いきなりの俺の行動に全員が驚く
「大丈夫!その水差し貸して」
傷を回復魔法で治し水差しを受け取る、そして少量流し込むと血が徐々に赤黒く変色していく
「これは!もしかして」
「えぇ毒はこの水差しに混入されています。この毒の厄介な所は無味無臭なんです」
「では犯人は医師団に?」
「その辺の捜査はお任せします、とりあえず俺は王太子の容態が悪化しないように応急処置に取り掛かります。よろしいですか陛下?」
「あぁ頼んだ」
回復魔法を発動させて毒の成分を抜いていく、能力ですぐ治す事もできるがそれは奥の手、できるだけ通常の方法で治す。でないと目をつけられてしまうかもしれないからね
「まだ油断はできませんがとりあえず危険な状態は抜けたと思います」
「そうか」
陛下達が安堵した表情になる
「ところで毒を混入した犯人についてなのですが」
「なにか思い当たることでも?」
宰相さんが聞いてくる
「はい、ワールさん。襲ってきた盗賊団のこと覚えていますか」
「もちろんです、死にかけましたしエルフィン殿にお会いした日ですから」
「先程も言いましたがこの毒は連邦と帝国の国境付近で取れます。そしてあの盗賊団はその付近を縄張りにしていました。」
「もしやその盗賊団が!」
「毒を持ち込んだと言う意味では多分、盗賊団の存在が確認された時期も重なりますし、それに奴らの頭目がガドランとの一騎打ちの時にひと仕事終えた後と言っていたので誰かに毒を売ったのでしょう」
「その売った相手が分かればよいが…」
「手がかりになるか分かりませんがあの盗賊団は1ヶ月近く潜伏していました、おそらく何処かに根城があるはずです。何か証拠になる物があるかもしれません」
「うむ、すぐ捜索隊を出そう」
陛下が宰相さんの方を見ると宰相が頷き外で待機していた兵士に指示を出していた、そしてそばに居た医師団長さんが話しかけてくる
「エルフィンさん、今の治療法は従来の方法と違った様に見えたのですが?出来ればやり方を教えて下さいませんか?」
「えぇ構いませんよ、ただこの方法は錬金術の知識も必要になります」
「錬金術の知識ですか?」
「はい、錬金術に使われる成分の抽出を応用した治療法になります。身体に入った毒を素材に入った成分に置き換えて使うやり方で今回のような毒の応急処置に有効です」
「そのようなやり方があるとは……」
医師団長を初め皆が感心している
「全部の毒を取り出すことはできません、あくまで応急処置ですのでその後毒に合った治療をする必要があります」
「それでも手遅れになる事を考えたらかなり有効な対処法ですね」
陛下に宰相、医師団長が集まって話し合いを初めてしまった
「クイナもお疲れ様、疲れてない?」
隣に立っているクイナに話しかける
「エル様お疲れ様です、私は簡単なことしかしてないので大丈夫です」
そう言って笑顔で答えてくれる。あぁ癒されるー
クイナと話していると陛下たちの話も終わったようで
「エルフィンよ、すまないがしばらく王城に滞在し王太子を診てはくれぬか?もちろんそれなりの待遇は約束する。それと出来れば医師団と知識交流も頼みたい、そなたの知識は大変貴重だ」
「はい、構いませんよ。その代わり彼女も同じ待遇でお願いします、彼女は俺の奴隷ですが家族みたいな者なので差別しないで頂きたいです」
そこだけは譲らないと強い意志を持って陛下に告げる、クイナは相手がさすがに国王陛下と合ってかなり動揺してオロオロしている。
しかし、当の陛下はニヤっと笑うと
「よかろう!二人とも格別の待遇でもてなすと誓おう」
俺たち二人を差別なく扱うと陛下自ら宣言した
にしてもこの人達……
「…ひとつお伺いしても宜しいですか?」
「何かな?」
陛下を初め宰相と医師団長もこちらを向く
「いくらワールさんの紹介だからと言って一般人である俺をそこまで信用してくれるんですか?陛下たちにとって俺は見ず知らずの人間、そんな者に王太子を疑いもなく診せるなど…失礼ながら何か裏があるのではと考えてしまいます」
「うむ、お主の考えは最もであるな。だがお主を信用するのにはいくつか理由がある」
陛下が近くに来る
「まず余が信頼するワールの紹介であることが一つ、そして盗賊団の襲撃時に瀕死のワールを治しさらに回復薬でも治らない重度の火傷も綺麗に治した回復魔法の実力」
陛下がクイナの方を見る
「本来奴隷は主人の指示があるまで動かない、しかしその娘はお主の役に立とうとしているのが見て取れる。強制ではなく自らの意志で、されだけでも人柄がわかる」
クイナは俺が顔を向けるとニコッと笑顔を返してくれた
「そしてお主はエルフィン・リッパーと名乗った…ミハエル・リッパーの縁者ではないのか?」
「じいちゃんを知っているのですか!」
「当然だ、ミハエルはこの国の英雄にしてSS掃除屋だったのだからな」
じいちゃん!大したことないって超有名人じゃん!
「ゆえにこの国でリッパーの名を知らぬ者は居るまい、まぁお主の実力を知らなければ繋がりがあるとは誰も思うまい。そして医師団長は…」
「私はミハエル先生の直弟子になります」
「じいちゃんの弟子!」
「ふふっあなたは先生の事をじいちゃんと呼んでるんですね」
医師団長が笑いながら話しかけてくる
「いやっその孫の世話をしとるようだと言われたのをきっかけにですね」
「あぁ別に怒ってる訳では無いですよ、先生の直弟子は皆孤児でして厳しくも優しく接してくれる先生達を本当の両親のように思っていましたから」
「先生達って言うと…」
「えぇ先生の奥様にも大変良くして頂きました。お二人に子供が出来なかった事もあってか自分達の子供のように接してくれているのが子供ながらに感じていました。まぁ貴方のように面と向かっては言えませんでしたけど」
「そうですか、あなた方がじいちゃんが言っていた息子や娘達ですか」
「えっ先生がですか」
「はい、じいちゃんから自分が育てた弟子について聞いています。自分達の子供のように思っていた弟子達がいる血は繋がっていなくても大切な家族だ、結局恥ずかしくて言えなかったそうですけど」
「そうですか、先生もそんな風に思ってくれていたのですね…」
医師団長が涙ぐんでしまった、すると陛下が
「さてひとまず王太子の方は大丈夫のようだ。宰相も医師団長も各々自分の仕事に戻るとしよう、エルフィンも疲れたろう直ぐに部屋を準備させよう。その娘も部屋は一緒の方がよかろう」
「お気遣いありがとうございます」
クイナと二人で頭を下げる
「礼を言うのはこちらの方だ、感謝する」
「勿体なきお言葉」
「では治療の方は頼んだぞ」
「はい、お任せ下さい」
陛下と宰相が部屋を出ていく、残ったワールさんと医師団長と一緒に今後の治療方針を固めていく。しばらくするとメイドさんが迎えに来たので一旦部屋に行くことにした。と言っても王太子に何かあった時に直ぐに駆けつけられるように近くの部屋だったが
「エル様とても広いですね!」
「あぁすごいな」
前世だと宝くじでも当たらなければ絶対泊まれないとても豪華な部屋だったのだが問題が発生した
「ベッドがひとつしかない」
そう部屋に大きなベッドがひとつしかなかったのだ、メイドさんにベッドがふたつの部屋に変えてもらおうとしたけど、どの部屋もベッドはひとつしかないそうだ。なんでも王族や貴族の夫婦は基本同じベッドで寝る、独身貴族は異性と同じ部屋で寝ると問題があるそうなので一人で寝るのだそうだ
「あぁクイナ、俺はソファーで寝るからベッド使っていいよ」
「いえエル様私がソファーで寝ますのでどうぞベッドで寝て下さい」
「いやっ女の子をソファーでなんて寝かせられないよ」
「私こそエル様を差し置いてベッドで寝れません」
お互いに譲り合いになり膠着してしまう、どうしようかと悩んでいると
「あのぉエル様一緒にベッドで寝ませんか?」
「ふぁいっ!?」
やべぇっ急な提案に変な声出てしもうた
「ベッドは広いですし二人寝ても狭くないでしょうから」
う〜〜んこの辺が落とし所か?このまま譲り合ってもクイナは引かなそうだし、問題は俺の理性か?いいだろう俺の理性よ!頑張れ
「わかった、それでいこう」
「はい!エル様」
そんなに喜ばれるといろいろ期待してしまう、いやここは王城!頑張って我慢しろ俺!
俺が決意を決めているとメイドさんが来た
「失礼します、エルフィン様」
「はい、なんでしょうか?」
「国王陛下が一緒に食事でもどうだと申せられております」
「それはクイナも一緒で大丈夫ですか?」
「はい、ご一緒にお連れしてよろしいとのことです」
「分かりました、ご一緒させて頂きます。行こうクイナ」
「はい!」
メイドさんの案内で陛下が食事をされる部屋に連れていかれる
「おお、来たか」
「陛下、この度はご一緒に食事させて頂きありがとうございます」
「気にするな、堅苦しいのは無しだ。まぁ座りなさい」
メイドさんに席に案内されて座る
「急に誘ってすまなかったな、余はそなたと話がしたかったのだ」
「俺とですか?」
「そう例えば晩年ミハエルはどう過ごしていたのかな」
「じいちゃんですか?」
「あぁ叔母上が生きておられた頃は手紙が届いていたのだがここ数年は数える程しか来ていないのでな」
「叔母上?」
「なんだ聞いてなかったのか?ミハエルの妻は余の父である先王の妹なのだ」
「ラーライアさんが!?」
「知っておるのか?」
「名前だけは…じいちゃんの家の近くにお墓があったので」
「なるほどな」
てことはじいちゃんは英雄!ばあちゃんはお姫様だったてこと!
「ミハエルは自分の事をどう言っていたのだ?」
「ちょっと有名なぐらいしか言ってなかったです」
それを聞いて陛下が笑いを必死に堪えていた
「数々の偉業を達成しておいてちょっと……くっ」
笑いを我慢しているがしきれてない気がする
「でもじいちゃんは一般人ですよね?よく王族と結婚できましてね」
「それは叔母上が王族の地位を放棄したからだ」
「こう言ってはなんですけどよく許可が出ましたね」
「色々と問題はあったそうだが当時の国王である祖父が叔母上の圧に折れたそうだ、二人の事を知っていた我が父も叔母上の味方だったそうだしな」
「よくもまあ王族から一般人に大丈夫だったのですか」
「元々叔母上は気さくな方でとても明るい人だったからなすぐに周りと打ち解けたらしい」
「それがなんであんな森の中で生活を?」
「まぁ英雄と元姫では周囲がうるさかったのだろう。急に森でのんびり暮らすと言ってきたからな」
「あぁじいちゃんなら言いそうです」
そんなこんなでじいちゃんの昔話から俺との森での生活などを陛下と話し、食事会は終わった。ちなみにクイナは出される絶品料理に夢中だった
「ではエルフィン明日からの王太子の治療任せたぞ」
「はい!」
そして部屋に戻って来た所で思い出した、そうベッドの事である。
まぁ腹を括るしかない
明日から忙しくなるので今日は早めに寝る事にした
「クイナ、寝る前に治療の下準備しとくから先にメイドさんが用意してくれた風呂に入っておいで」
「はい、ではお先に入らせていただきます」
そう言ってクイナは風呂に向かうっと言っても同じ部屋の中にあるのだが
「明日には睡眠薬がきれるって言ってたから意識も戻るだろうし本格的に治療ができる」
下準備がちょうど終わった頃クイナが戻って来た
「エル様、戻りました」
風呂上がりの女の子ってなんでこんなに色っぽいんだろう…しかも渡した石鹸のいい匂いが流れてくる
「エル様?」
「おぉう!」
いかんいかん意識が飛んでいた
「おかえり、俺も下準備が終わったから入るかな、クイナはベッドに入って寝てていいからね」
「は、はい!分かりました」
なんか顔が紅かったような…風呂上がりだからだな!…だよな?
とりあえず風呂に入りに行ってくる、湯で身体を洗った後
「だぁぁ〜今日も色々合ったな」
おっさんみたいな声をあげながら湯船につかり身体を温めて出る、そしてラフな格好に着替え戻る
「クイナは寝たかな?」
寝てて欲しいが半分、待ってて欲しいが半分となんとも言えない感じでベッドに向かう。するとベッドの上が微かに動いた
「クイナ、まだ起きて……」
ベッドに近づくとクイナは静かに寝息を立てていた。
「王族、しかも国王や宰相みたいな普通なら会えない人達に立て続けに会って緊張してたもんな…そりゃ疲れるか」
クイナの寝顔を見ていたら俺も安心してきた
「俺も寝るか…」
ベッドに入ろうとした時だった、クイナがもそっと動き
「…エル様………大好き…」
「ぐふっ」
不意打ちとはまさにこの事!平常心からの特大アッパーをくらった
クイナを見る、寝ている…寝言だった
頑張れ俺!平常心だ!理性を保て!
正直ソファーで寝ようかなとも思ったけどそれだとクイナが起きた時問題になる。観念して再びベッドに入るそして悶々としながら夜は深けていく