王都に入るとやっぱりいろいろあるフラグP-2
「ここから先が生産通りになる」
ガドランの案内で生産通りを見学する
「いろんな店があるんだな」
「そりゃぁ王都で必要な物はだいたいここで作られるからな」
ざっと見ただけでも武器や防具等の鍛冶屋から衣類等を作る服屋それに家具屋など種類は多種多様である
「ここで作った物を商店通りで売ったりする、自分にあった武器が欲しい時は直接こっちで作ってもらうこともできるただオーダーメイドは少し値段が高いけどな」
「じゃぁ何か作ってもらいたい時はここに来たらいいのか」
「あぁそうだな、俺の武器や防具を作ったりメンテナンスしてくれてる鍛冶屋がある、腕もいいしいろんなのを作ってるからそこを紹介してやる」
「助かるよガドラン」
「いいってことよ!もう少し歩いた所にあるからこのまま行ってみるか?」
「お願いします」
こうしてガドランの行きつけの鍛冶屋に行くことになった、しかしその鍛冶屋に近づいた時だった、
「なんか騒がしいな?」
その鍛冶屋の前が妙にザワザワしていた。
ガドランが店の人に声をかけている
「おい、えらい騒がしいがどうした?」
「ガドランさん!実は親方が工房で倒れたんです」
「なんだって!」
どうやらこの店の店主が仕事中に倒れたとの事、で今意識がない状態らしい
「エルフィン、すまない一緒に来てくれ」
「ああ、わかった」
俺とクイナはガドランと一緒に店の中に入って行く、工房らしき所に案内されると
「すごい暑さだな」
工房の中は真夏日のような温度になっていた、そしてある一角で人が集まっている、そこにはいかにもドワーフって感じの男性が倒れていた
「おやっさん!大丈夫か!」
「ガドランか、わからん急にふらついて倒れた」
倒れたドワーフの近くにいた別の男性が答える
「息はしておるが意識がないのでどうしたらいいかわからん」
その男性が倒れたドワーフを見ながら言うとガドランが
「エルフィン頼む、おやっさんを見てやってくれねぇか」
「おいガドラン!そんな若いやつに親方を見させるのか」
「腕は俺が保証する!エルフィン頼むこのとおりだ」
そう言ってガドランが頭を下げてくる
「友人にそこまで頼まれたら見ない訳にはいかないだろう、だから頭を上げてくれ」
ガドランに声をかけてからドワーフを見る、まぁだいたい予想はついているが一様サーチで調べる
「やっぱりか…」
「やっぱりって何かわかったのか」
「あぁ、ガドラン悪いがここに書いてあるものを揃えて来てくれ」
俺はメモに必要な物を書いて渡す
「なんに使うんだこんなもの」
「必要だからいるんだよ、頼んだぞガドラン」
何に使うかわからん状態でガドランが店の人と物を揃えに行く
「おおい、そこのガタイのいい人達ここ暑いからもう少し涼しい所に移動さすよ。あとそこの人、冷たい水と布を用意して」
店の人はガドランが保証すると言ったからか俺の指示に従ってくれる。
親方と言われてた人をさっきの所より涼しい所に移動さすと持ってきた布を冷たい水で濡らし首と脇の下、そして太ももに被せて風魔法で涼しい風を送ってやる、そうしてるうちにガドランが戻って来た
「言われた物を揃えてきぞ。それでおやっさんは結局なんだったんだ?」
「こりゃ熱中症だよ」
「熱中症?」
「そう、この人達の話だとあんな暑い所に長い間いてしかも水分補給もしてなかったらしい」
親方の処置をしながら店の人にいろいろ聞いたから間違いない
「熱中症でなんで塩と砂糖、それにレモンがいるんだよ?」
「熱中症の上に軽く脱水症状も起こしているからな、この配分で水に溶かしておいてくれ」
「水だけじゃだめなのか?」
「汗と一緒に塩分も流れ出ているからな、そういう意味で身体が吸収しやすいようにするんだよ」
要は前世で言うスポーツドリンクだ、水分補給ならあれが1番だろ。
そうこうしていると
「うっ……ん……」
「おっ気がついたか」
「誰だおめぇ?」
「おやっさん!目覚めたか」
「ガドラン、なんでおめぇがいる」
「親方さんあんた熱中症で倒れたんだよ。ちなみに俺はガドランの友人だ」
まだ若干ふらついているが意識が戻ったから大丈夫だろう。
「親方さん脱水症状も起こしてるからこれ飲んで」
そう言って親方にスポーツドリンクもどきを飲ませる
「なんだこれは、変わった味がするぞ」
「水分を吸収しやすいようにしてるんだ、文句言わずに飲んで」
そんなやり取りをしているときだった、入り口の方が騒がしくなり誰か走ってくる
「あんたぁ!大丈夫かい!」
そこにはスタイル抜群の美人女性エルフがいた
「フリス!」
「ガラム!よかった!倒れたって聞いて!」
そう言うとドワーフの親方に思いっきり抱きついていた
「えぇとこの方誰?」
いきなり現れたエルフにびっくりしながらガドランに聞く
「おやっさんの奥さん」
「髭モジャモジャのおっさんとこの美人女性が?」
「あぁ夫婦だ」
「ドワーフとエルフって仲良かったっけ?」
だいたいどんな話も仲悪かった気がするんだが
「いつの話をってそういやぁお前は最近まで森で生活してたんだったな、この国と隣接する同盟国では種族間でのいざこざはほとんどない、特にこの国ではいろんな種族が協力して暮している」
「へぇほんとにいい国だな」
「だろ!」
「それよりあの奥さん止めないと親方揺さぶられてまた目を回してるぞ?」
「ぬおお、フリスさん!おやっさん病み上がりだからその辺にして!」
ガドランと店の人達が止めに入っていた。そして俺が一息ついていると
「お疲れ様ですエルフィン様、お水をどうぞ」
「ありがとう、クイナ」
笑顔を向けながらクイナが水を用意してくれていた。ええ子やぁ。
そして、皆が落ち着いた頃に改めて自己紹介をする
「助けてもらったようでありがとうワシはここの親方のガラムだ」
「私はこの人の妻のフリスです、旦那を助けて頂きありがとうございます」
そう言いながら頭を下げてくる
「すぐに意識が戻って良かったです。ガドランの友人のエルフィンです、こっちはクイナと言います。よろしくお願いいたします」
紹介するとクイナが頭を下げる
「失礼ながらクイナさんはもしかして…」
「あぁはい、いろいろと事情がありますが一応俺の所有奴隷になります」
「やはりそうですか、ですがその奴隷の輪を見る限り……大切にされているようですね」
「まぁ俺としては奴隷というより1人の女性として扱うつもりですけどね」
そう言ってクイナの方を見て、にっと笑いかける。するとクイナが可愛い仕草で照れ始める
「お前らはところ構わずイチャイチャしやがって」
すかさずガドランがツッコミを入れてくる
「仲がよろしいようで、だが夫婦仲ならワシらも負けんぞ!」
「ね〜〜」
ドワーフとエルフ夫婦もにこやかになっていた。それをガドランが呆れたように見ていた
「どいつもこいつもまったく」
「なんじゃガドランえらい突っかかるがキサラとケンカでもしたか?」
「なんでここでキサラさんが出てくるの?」
ガドランと親方さんの話にいきなりキサラさんが出てきた
「出てくるもなにもキサラはガドランの嫁だ」
「はぁっ?」
えっそんなそぶりギルドでしてなかったよな
「キサラさんってギルドで受付してる人だよね?」
「ああ、そのキサラだ」
「おい!ガドラン!ギルドでそんな感じ全然なかったぞ」
「公私はちゃんとしましょう、って言われてるんだ」
「ガドラン、もしかして嫁の尻に敷かれる側か」
「うっさいわい」
あっこれ図星だ。すると親方が
「まぁしょうがなかろうて若い時にガドランがキサラに一目惚れして猛アタックの末やっと結婚したんだからなそりゃ頭が上がらんじゃろうて」
「おやっさん!そう言うのは言わなくてもいいから!」
笑いながらみんなで談笑する
「さてと行かないと行けないところもあるしそろそろお暇しますか」
「いろいろとすまなかったな、何か作って欲しい時はいつでも来てくれ」
「えぇ頼りにさせていただきます。そうそうガラムさん工房に長時間いる時はちゃんと水分補給しっかり取って下さいね。後、野菜なんかを食べる様にして下さい。身体の熱を下げる効果もありますから」
「野菜って草じゃねいか、あんなのを食えってか」
この世界の人、野菜を食べる時は炒めてから食べる、サラダにして食べるにしても塩ぐらいしかなかった、なので
「じゃぁ生野菜食べる時これをかけてから食べてみてよ」
そう言いながらアイテム鞄から容器をふたつ取り出す
「これはなんだ?」
「野菜を食べる時の調味料だよ、緑の印はピリ辛風に赤の印はまろやかにしてあるから試してみてよ」
前世のわさびドレッシングとオニオンドレッシングを思い浮かべたらわかりやすい、じいちゃんはわさびドレッシングが好きだったなぁ
「そこまで言うなら試してみるか」
「面白い物があるのねぇ」
ガラムさんは渋々、フリスさんは興味津々な感じだ
まぁそんなこんなでお礼を言われながら鍛冶屋を後にする
「そういやぁガドラン」
「なんだ?エルフィン」
「この街って井戸が見当たらないが水はどうしてるんだ、噴水っぽいのはよけあるが?」
「あぁその噴水が井戸の代わりだよ」
「どゆこと?」
「この王都は水龍様の庇護を受けていて噴水に取り付けられた水の魔石によって常に清潔な水が流れている。」
「水龍様!そんな人?がいるの!」
「みはらしの丘で王都全体を見た時に湖の真ん中に島と建物が見えたろ」
そう言えばなんか白い神殿みたいなのがあったような気がする
「そこにお住いになられている」
「1人で?」
「まさか!龍巫女と呼ばれる者がお世話をしている」
「へぇそうかぁ井戸がないのにどこから水を持ってきたのかと思ったよ、クイナは知ってた?」
「はい!王都の守護龍様は有名ですから」
「有名なのを知らないとはつくづく俺って田舎者だな」
「いえ、そんな!これから覚えていきましょう!」
クイナが励ましてくれる。ほんとにいい子やぁ
「はっはっはっ、嬢ちゃんの言う通りこれから覚えていけばいいさ、それで次は嬢ちゃんの服を買うのか?」
「そうだな、夕方頃には宿に行きたい、でも余裕を持って選びたいから早めに行くか」
「エルフィン様、私なら適当で結構ですよ」
ガドランと予定を話してるとクイナが遠慮がちに言ってくる
「いいのいいの!せっかくならクイナに似合う服を買わないと!」
「私なんかにお金を使わなくてもご自分にお使いください」
それでもクイナが遠慮してくる。するとガドランが
「嬢ちゃんこう言うのは買わしとけばいいんだよ。こいつが見たいだけなんだから」
「なんだと!てめぇガドラン!正解だ!!」
「ほら見ろ!」
男2人て大笑いする。それを見ていたクイナがクスッと笑って
「それではエルフィン様の為にお眼鏡に叶う服を探します!」
「おう頼んだぞ!クイナ」
そして3人で笑いながらワールさんの言っていた服屋を目指す、目当ての服屋は生産通りを戻って商店通りにある
「見えてきた、あそこがワールさんとこの服屋マーメイドだ」
店先に人魚姫の絵が書かれた看板がある
「この店は主に女性用の服を取り揃えている人気店だから気に入るのがあるはずだワールさんの付き人が伝えているからどんな服がいいか言えば揃えてくれるはずだ、まぁ店長がちょっと変わってるが……」
「変わってる?」
そうやってガドランと話していると男がこちらに走ってくる
「いたいた、ガドランの兄貴〜〜」
「あいつは確かガドランの仲間その1!」
「ヒドイっす!」
「わりぃわりぃ」
俺が謝っているとガドランが
「でっどうした?」
「あっそうだった、あらかたの後始末は済んだんですけど今回持ってた回復薬全部使ったのと防具の痛みが酷いのでその辺の補充の話がしたいそうです。あと知らせが」
そう言って仲間その1さんがガドランに耳打ちしている
「それは確かなのか?」
「キサラの姐さんからなので間違いないです」
「そうかわかった。エルフィンすまん、案内ここまででいいか?急用ができた」
「あぁ、今まで案内ありがとう、助かったよ」
「いいって事よ!ちなみに宿屋はあそこに見える麦を咥えた馬の看板の所がそうだ。それと」
ガドランが耳打ちしてくる
「俺達を襲った盗賊団なんだが連邦と帝国の国境付近を根城にしている奴らだったらしいぞ」
「なんでそんな遠い所の盗賊団がこの辺にいるんだ?」
連邦と帝国はこの国から二つ三つ離れたとこにある国だぞ
「さすがにそこまではわからん、まあまた何か分かったら教えるよ」
「あぁ頼む」
そう言ってガドランと服屋の前で別れた、変わっていると言っていたのが気になるが…
「とりあえず店に入ろうか?」
「はい!」
服屋マーメイドの中に入って行く
「あら?いらっしゃいませ〜〜」
バタンっ
店の扉を閉めた
「目が疲れてるのか?なんか濃ゆい者が見えた気が…」
「エルフィン様!大丈夫ですか」
「店合ってるよな?間違って隣の店に入ってないよな?」
改めて看板を見る、間違いなく服屋マーメイドと書かれている。
「ガドラン、変わっているとはこの事か!」
覚悟を決めて店に入る
「いらっしゃい、もう冷やかしかとおもったじゃなぁい」
いわゆるおネェな人がいた
「はは、すみません。ワールさんの紹介で来たエルフィンと言うものなんですが」
「あら?あなたがワールちゃんが言っていた子なのね!」
大商会の会長をちゃん呼びですか、
「えぇ聞いているわ!私がここの店長のエリザベスよ、それでどんな服をお探しかしら」
いろいろツッコミたいが我慢して
「彼女に似合う服を見繕って欲しいのですが」
「こちらの可愛いお嬢様の服ね!」
クイナの方を見てじっくり観察していた、男が女に向ける視線ではなく完全に仕事モードの目である
「任せてちょうだい!飛びっきりのかわい子ちゃんにしてあげる!」
そう言って手を叩く、すると奥から女性スタッフが二人出てくる
「あなた達、この子がご主人様に褒めて貰えるように可愛くドレスアップするわよ!」
そう言ってクイナを拉致していく
「えっと…エルフィン様!」
「さすがに女性服の知識はないから良さそうなの探して来て」
クイナに手を振りながら見送る、クイナはちょっとオロオロしながらも奥に入って行く、そして店長さんが
「女性の着替えは時間がかかるからこっちに座って待っててね」
そう言いながらウィンクしてきた、
「は〜い、多少高くてもいいので彼女が気に入った物をお願いします」
「わかったわ!任せてちょうだい、フフっあの子大切にして貰えて幸せね」
ウィンクといいこのスマイルといいどう反応していいか困る、そうこうしていると何か小声が聞こえる
「ほんとにこの格好を見せるんですか!?」
「大丈夫よ、これでご主人様を悩殺しちゃいましょ!」
「でもほんとに喜んでくれるでしょうか?」
「こんな可愛い姿男ならイチコロよ!大好きなご主人様にお披露目よ」
「大好きなって確かに優しくて強くてずっと一緒にいたい男性だけど……って私は何を言って!」
小声で何を言っているかまでは聞き取れないけどこれはクイナと女性スタッフの声か?何か楽しく話しているみたいだが…まぁクイナが楽しんでいるならいいか、と思っていると女性スタッフが
「旦那様、お連れのお嬢様の服を確認頂いてもいいですか?」
「はい、いいですよ」
俺が了承の意を出すとクイナが部屋に入って来る
その姿を見た瞬間
「グハッ」
クリティカルヒット!特大ダメージ!効果は抜群だ〜〜!!
なんとクイナが半透明なピンクのネグリジェを着て出てきたのだ!
「エルフィン様!大丈夫ですか!すみませんこんなお姿お見せして」
「大丈夫、突然の魅力的で美しいクイナの姿にビックリしただけ」
「えっとありがとうございます?」
それを見ていた女性スタッフが
「どうですか、この夜の妖精を思わせるお姿は!」
「いや悪くはない、ないんだけどそうじゃなくて普段着に使える服とかがいいんだけど」
「そうなんですか?私達はてっきり…ねぇ?」
女性スタッフ二人が頷きあっている、何を想像しているアンタら
「とにかく動きやすそうな服をお願いします」
「わかりました。……せっかく良い素材なのに」
そう言ってクイナを連れてまた奥に入って行く
小声で不穏な言葉が聞こえた気がしたが聞き流そう、それよりもだ
「ところでお姐さん」
「何かしら?」
「あのネグリジェはお高いの?」
「ふふっ安くしとくわよ、色違いもあと青と緑があるけどどうする?」
「お願いします」
「ご購入ありがとうございます」
お姐さんと密かにネグリジェの売買を成立させている間にクイナが次の服に着替えてくる
「こちらは今流行りのワンピース型の服となっています。薄い青と白をベースに仕上げています。」
「買いで」
「次にこちらは王城で働くメイドさんのメイド服を改良した服で家での家事をするのに適した服装となっています」
「それもいただきます」
「そして、この服は膝丈ほどのスカートと上着には大きめの襟がついていてスカーフを巻くスタイルです」
「いや、それセーラー……ゲフンっゲフンっそれも買います」
こんな風にクイナがちょっと着せ替え人形みたいになっていたけど本人が楽しんでいたからまぁ良しとしよう
「次に下着ですが」
「それはさすがに見せなくていいです。クイナ、自分の身体に合うのを1週間分ぐらい選んできて」
実際は見てみたいけどさすがにここは紳士として我慢する…誰が紳士だよ
「それではお嬢様あちらでサイズを測ってみましょう」
「あっはい」
女性スタッフにクイナがついて行く、すると店長さんが
「あら坊や、2人っきりの時にじっくり見たいのかしら?」
「ノーコメントです」
店長さんのからかいを受け流しながらクイナを待つ、そして下着も買い揃え終わったので会計をすると
「えぇと私達も楽しんでいろいろな服を勧めましたけど合計金額がこちらになります」
「えぇっ」
クイナが金額を見て驚いてる。前世の金銭感覚だと大体100万くらいか?
まぁ魔物を売って金はまだたんまりあるし諭吉さんが1000人は超えてるくらいの金額はある収納の中は時間が止まってるし容量限界もないから使わないのは入れたままにしてたのよねぇ。ギルドに売ってスッキリしたよ
それにワールさんのことだからこれでも割引してくれているんだろうなぁ
「はい大丈夫ですので全部ください」
「エルフィン様すごい金額ですけど」
「いいのいいの魔物売ってだいぶ余裕があるしこんなに似合う服買わなきゃ損でしょ!」
「私なんかがこんないい服着てもいいのでしょうか?」
「私なんかとか言わないの!俺がクイナの可愛い姿を見たいだけだから気にしないで楽しみな」
「はい、ありがとうございます」
ハニカムような顔した後、笑顔でお礼を言ってくる。何この可愛い生き物!
「そうそうクイナのその可愛い笑顔が見れて俺も嬉しいよ」
クイナと話していると店長さんが
「そんな笑顔が素敵なお嬢様にこちらをプレゼントよぉ!」
少し大きめの箱を持ってくる
「何ですかこれは?」
「開けてご覧なさぁい」
そう言われてクイナが箱を開けると中にはブーツが入っていた
「そのブーツには回復効果が付与されていて立ち仕事や長時間歩いても疲れにくくなっているわぁ、そ・れ・に・ある程度のサイズ調整機能もついてるのだから履いてみて」
言われるがままクイナはブーツを履いてみる
「凄いです、サイズピッタリです。ほんとに!」
「こんないい物もらっていいんですか?」
「たくさん買ってくれたあなたへの、お・れ・い・よ」
そう言いながらウィンクしてくる
「こちらこそこんないい物ありがとうございます」
「ありがとうございます」
俺とクイナがお礼を言う
「ふふっいいのよ!今後ともご贔屓に」
こうして買った服をアイテム鞄に入れて店を後にする
「いやぁいい買い物をした!それじゃ宿屋に行こうか、確かあの麦と馬の看板だったよな?」
「はい、あの看板の所が宿屋だとガドランさんは言っていました」
「よし!ではゆっくり行きますか」
宿屋に向かって歩いていく、そして宿屋まであと10mぐらいの時、後をつけてくる気配を察知する
「クイナ、俺の左側を歩いてくれる?」
「?はい、わかりました」
クイナがなぜ急にという感じでいたが素直に俺の左側を歩き出した時だった
後ろから男が走ってきて追い抜きざまに右肩にかけていたアイテム鞄を奪っていく
「貰っていくぜ!」
「エルフィン様!鞄が!!」
「ん、大丈夫」
そうクイナに返事をした時
「ぐばばばばっ」
なかなか変わった悲鳴?が聞こえた。
声のした方を見ると先程鞄を奪った男が電気を流されたように痺れていて周りを歩いていた人達に囲まれている
「この能力初めて試せたなぁ森じゃ使い道なかったし」
ちょうど宿屋の前で痺れている男から鞄を取り返す
「エルフィン様、今のはエルフィン様が?」
「うん、そうだよ」
「今のも錬金術による付与ですか?」
「ちょっと違うから後で説明してあげる」
すると騒ぎを聞きつけた宿屋のスタッフが出てくる。事情を説明するとすぐに警備隊に連絡し男を連行して行ったそしてそのまま宿屋のスタッフに案内される
「エルフィン様、お待ちしておりました、ワール会長より話は聞いております。お部屋はどのような形がよろしいでしょうか?」
「そうですね、ベッドが二つある部屋をお願いします。あとお風呂はありますか?」
「はい、御座います。ただ準備に少々お時間をよろしいでしょうか?」
「大丈夫です。その後に食事もいいですか?」
「はい、かしこまりました。ではまずお部屋の方にご案内します」
執事のような格好のスタッフが部屋へ案内してくれる
「こちらのお部屋になります」
案内された部屋は高級ホテル並の広さがあった
「お風呂の準備が整いましたら伺わせて頂きます。それまで御くつろぎくださいませ。何かごさいましたらそちらのベルをお鳴らし下さい」
失礼しますっと言い残しスタッフが部屋を出て行く
「今日も一日色々あったなぁ、クイナも疲れたろ?座って休みな」
「はい、失礼します」
そう言うとクイナは床に正座して座った
「いやいや、そんな所座ったら足が痛いでしょ?椅子とかそこのベッドとかに座りなよ」
「えっ、でも私は奴隷ですし……」
う〜ん、この世界は奴隷になると遠慮がちと言うか卑屈になると言うかこれはしっかり話し合った方がいいかな
「クイナ、こっち来てここに座って」
ソファーを叩いて座るように促し、その対面のソファーに俺が座る
「えっとね、クイナ、前にも言ったけど俺は君を奴隷として扱うつまりはなく普通の女性として接するつまりだ」
クイナが耳をピクピクさせながら聞いている
「だから嫌なものは嫌と言ってもらって構わないし俺が間違っていると思えば遠慮なく意見して構わない」
姿勢を正して真剣に聞いてくれている
「君の現状を考えると俺と一緒にいる方が安全だし何かあった時でも守ってあげられる、だからそうだなぁまあ家族みたいなものだと思って貰って構わない」
クイナは守ってあげられると言ったら顔を紅くし家族と言ったら照れ出した
ちょっとくさいセリフだったかな
「かしこまる必要もないし遠慮する必要も無い、君のままでいてくれていいからね」
「エルフィン様が望まれるのでしたら」
クイナが笑顔で答えてくれた
「あと別に様は付けなくても」
「いえ!どんな理由があろうと私は奴隷ですのでそこはハッキリさせませんと!」
断固拒否みたいな感じで言われた
「まぁクイナがいいならいいけど、じゃぁせめて愛称の方で呼んで貰える?」
「愛称ですか?」
「そう、俺の家族だったじいちゃんが俺の事をエルって呼んでたんだ、だから君にも呼んで貰えるなら親しみがあっていいかなって思って」
「わかりました。では……エル…様」
クイナに照れながら愛称で呼ばれた
「グゥっ」
やばい照れながら呼ばれるのは思ったより破壊力があった
「?どうしましたエル様?」
「大丈夫、それよりクイナとはこれから一緒に行動するわけだけどその前にクイナには俺の能力について教えておこうと思う」
「能力ですか?」
「そうおそらくこの世界で俺しか持っていない能力」
クイナには俺が渡り人で別世界から来たこと、じいちゃんに拾われて弓、回復魔法等の魔法関連、そして錬金術を教わった事、俺しか持っていない固有能力を教えた。ちなみに女神のせいで死んた事は伏せてある
「私の火傷を治したのも宿屋の前で鞄を盗った人を捕まえたのも…」
「うん、俺の固有能力。クイナの火傷を治したのは完全回復能力、盗人から鞄を守ったのは3つ目の固有能力完全盗難防止能力だね」
そうこの完全盗難防止能力は漫画や小説に出てくるスキル強奪を防ぐのに取った能力である。せっかく貰った能力を盗られるとか最悪だし防犯グッズのない世界ならいろいろ応用が効くだろうと選んだ、これは俺が所有するものならなんでもかけられる今まで使う機会がなかったけど盗人さんのおかげで効果を確かめられた、ありがとう盗人さん!
「こんな重要な事私に教えてよかったのですか?」
「クイナなら大丈夫と判断したから教えたんだ、それに一緒に行動するのに知らなかったらいつかボロが出そうだしね」
「わかりました。殺されそうになっても喋りません!」
「命の方が大切だからその時は喋っていいからね、まぁそうなる前に助けるけど」
俺について話し終えた頃
コンコンっ
扉がノックされる、そして扉越しに
「失礼します、エルフィン様お風呂の準備が整いました」
「はいありがとうございます、すぐ行きます」
スタッフの言葉に返事を返す
「クイナ先に入って来ていいよ。俺は荷物の整理がまだあるから」
そう言いながら今日買った下着類が入った箱と普段着の服をアイテム鞄から取り出す
「それではお先に入らせて頂きます」
「うん!あっそうだクイナ髪を洗う時これ使ってみてよ」
「これは何ですか?」
「髪を洗うための石鹸かな」
クイナはせっかく綺麗な髪なのにちょっとごわついている、そこでこの手作りシャンプー&リンスの登場!原料はシャンプーがココナッツミルクに蜂蜜、精油にオリーブオイル、リンスはレモン汁と酢で作ってある。
材料に使うものがこの世界にもあってよかったよ。というか結構前の世界と同じ物が多い、呼び方は違うかもしれないけどそこは言語解読能力で俺にわかりやすいように変換されているのかもしれない、正直助かる
「へぇこんな石鹸があるんですね」
「それからクイナ、この鞄に触れてくれる?」
俺は持ち歩いているアイテム鞄から三分の一くらいの大きさの鞄を取り出す
「こうですか?」
クイナが鞄に触れてるのを確認し能力を発動する
「これでこのアイテム鞄は俺とクイナ以外は触れなくなったからクイナが使っていいよ、服と石鹸を入れてお風呂に入っておいでこれタオルね」
「ありがとうございます、行ってきますエル様」
軽く頭を下げるとお風呂に入りに行った、その足取りは楽しそうだ。女の子だしやっぱり清潔にしときたいよな
「さてクイナが風呂に入ってる間にアイテム鞄の中とか整理して分かりやすくしとくか」
アイテム鞄の中身を確認整理しながら今後のことを考える
「とりあえずお金は当面心配ないけどいつかは無くなる、まぁギルド登録したし依頼でも受ければ大丈夫だろう。となるとやっぱ住む所だよなぁいつまでもワールさんの世話になる訳にはいかないし」
貸出している家でも探すか?それともある程度安全性のある宿屋を見つけるか?1番いいのはマイホームを手に入れることだが王都だと高いだろうしなぁ
「欲を言えば錬金術のできる環境がいいんだけど」
う〜〜ん、回復薬や毒や病気の治療薬を作るにはある程度器材がいるし
「ダメだ!どっちにしろすぐにどうにかなる問題じゃない。今度ワールさんに相談してみよ」
あれこれ悩んだり考えたりしているとクイナが風呂から帰ってきた、そして開口一番に
「エル様!この石鹸すごいです!髪がツルツルサラサラになりました」
風呂に入る前まではごわついた髪だったのが流れるようなナチュラルヘアーに大変身である
「それは良かった。それより髪が濡れたままだと風邪をひくよ?乾かしてあげるからこっち座って」
クイナを椅子に座らせると風と火の魔法を使い温風を作り出す、これで髪を乾かしてやる
「は〜〜気持ちいいですぅエル様ぁ」
あまりの気持ちよさに顔が緩んでいる。クイナの髪を乾かし終えると
「じゃぁクイナ、俺も風呂に入って来るから、その間にそこに置いてある物を確認しておいてくれる?全部マーメイドで買った服だから、確認したらさっきの鞄にしまっといて」
「はい、わかりました」
そう言ってクイナが笑顔で送り出してくれる。残されたクイナは置かれている箱の中身を確認していく
「こっちは普段着かな?これは下着が入ってる。……あれっ?こんなのエル様鞄に入れてたっけ?」
エル様が服の入った箱をアイテム鞄に入れるのを横で見ていた、でもこんな色の箱を入れるのを私は見ていない
「エル様が間違えて出しちゃったのかなぁ?」
そう思いながらも一応中身を確認しておく
「あれ?これって……」
中身を広げた瞬間、一気に顔が紅くなる。なぜならそれはクイナがエルフィンに最初に見せたあのネグリジェだからだ、マーメイドの店長と密かに購入していたのを間違えて出していたのである
「エッ?えっ?」
クイナはなぜこれがあるのか混乱しながらもひとつの思いに考えつき顔を紅くしながらも嬉しさが込み上げていた
「エル様この服の姿、気にいってくれてたんだ」
でなければ買うわけが無い!しかも三種類、恥ずかしさと嬉しさが一緒に込み上げてくる
「頑張ってお見せしてよかった!」
気分を良くしていたクイナは服を確認して渡されたアイテム鞄に入れていく、もちろんあのネグリジェもだ
そして服を全て鞄に入れた頃、エルフィンが風呂から帰ってきた
「ただいま〜ふぅ!さっぱりした!」
「おかえりなさい!エル様!」
上機嫌なクイナがエルフィンを笑顔で迎える
「?随分機嫌がいいけど何かいいことがあった?」
「はい、買って貰った服を見て嬉しかったです」
「そうそれは良かった」
エルフィンもまさか密かに購入したネグリジェで機嫌が良くなっているとは夢にも思っていなかった。
「髪を乾かしたら下に食事に行こうか?」
「はい!あっ」
「?どうした?」
「いえ、奴隷である私の食事は用意されてないのではと思いまして…」
そうか、この世界では奴隷と主人が一緒に食事をする事はないのか
「まぁその時は俺と同じ食事を用意してもらうよ、なんだったら追加料金を払ってもいいしね」
「えっ!よろしいのですか」
「よろしいんですよ、家族なら一緒に食べないと!だからこれからは一緒に食べれる時は一緒に食べよう、ひとりで食べるのは寂しいしね」
「はい!」
そう話しながら食堂に向かったんだけど、予想とは裏腹に食事は同じ物がちゃんと二人分用意されていた
「二人分用意されている」
するとウェイターらしき人が
「ワール会長よりエルフィン様はきっとお連れのお嬢様と一緒に食事をする事を望むはずだから同じ物を用意するように承っております」
「ははっさすがワールさん、見抜かれてるなぁ」
もう脱帽である、ここはお言葉に甘えて
「それじゃクイナ食べようか」
「はい!」
こうしてクイナと一緒に食事を始める、出てくる料理は見た目が綺麗で味もとても美味しかった、前世ならばえーって写メ撮ってるぞ
「エル様!この料理とっても美味しいです。こんな美味しい料理初めてです」
「ああ、美味いな!」
クイナは料理の美味しさに顔全体が幸せ〜って感じになっている。
そして丁度デザートを食べ終えた時だった
「こちらの料理はお気に召していただけましかな?」
ワールさんが声をかけてきた
「ワールさん!はい、とっても美味しかったです。それにクイナの分も用意していただきありがとうございます」
「ありがとうございます」
俺とクイナがワールさんお礼を言う
「いえいえ、気に言っていただけて良かったです」
ワールさんがにこやかに気遣ってくれる
「エルフィン殿、少し御相談したいことがあるのですがよろしいんですか?」
「えぇ大丈夫ですよ」
するとワールさんがウェイターに飲み物を持ってこさせて人払いをする
「実はエルフィン殿に診ていただきたい患者がいるのです」
「患者……つまり何かご病気の方で?」
「はい、ある身分の高い方なのですが最近容態が良くないのです」
「病名はなんなんですか?」
「それが分からないのです」
「分からない?」
「はい、専属の医師達が懸命に原因を探しているのですが体調をわるくされて既に1ヶ月になりますが未だに判明しません」
高い身分という事はついてる医師もそれなりに優秀なはず、それでも原因が分からないかぁ
「今回私自身で買い付けに出向いたのも実は薬やその原料になる物を集めるためだったのです。現在は医師団の懸命の治療で持ち堪えていますが弱っていくばかりの状態です。どうか診ていただけませんでしょうか」
俺は少し考え込むが
「わかりました。若輩の俺が診てどうなるか分かりませんが、ワールさんには大変お世話になっています。一度見に行きましょう」
「おお、ありがとうございます。今日はもう遅いですので明日の朝私と一緒に来ていただいてよろしいんですか?」
「はい、では明日の朝に出発ということで」
「では明日迎えに来ますのでよろしくお願いします」
そう言ってワールさんは頭を下げ帰って行った
「俺が診て病名が分かればいいが」
「大丈夫です!エル様なら」
横でクイナがキラキラした目で見てくる、まぁいざとなったらサーチで調べるか、そうしてるとウェイター達が戻って来たので
「ご馳走様でした、美味しかったです」
「お口にあったようで何よりです」
「それで明日の朝ワールさんが迎えに来るそうなので俺達はこのまま寝させていただきます」
「かしこまりました」
ウェイターが一礼して見送ってくれる、そして俺達は部屋に戻る
「クイナ、明日ワールさんの知り合いを診に行くわけだけど一緒に来る?」
「いいんですか!」
「問題ないと思うよ、クイナは俺の所有奴隷だしなんだったら助手ってことにすればいいし」
「はい、ついて行きます!」
「じゃぁ今日はもうぐっすり寝て明日朝食を早めにとって待っていよう」
ベッドに入ると
「クイナ、魔法ランプの光消すよ?おやすみ」
「おやすみなさい、エル様」
部屋の光を消す、今日一日いろいろとあったせいかエルフィンはすぐに寝てしまっていた。一方のクイナは
「エル様、寝ちゃった」
もそもそっと動きながらまだ起きていた、獣人なので夜目が効き、暗くてもエルフィンの顔を見ることが出来た
「てっきり一緒のベッドで寝るんだと思ってた」
クイナも年頃の女性、男女がひとつのベッドで寝る意味も十分理解している、だからなのか期待半分安心半分的な内心でいた
「私…エル様なら……」
そこまで言いかけて猛烈に恥ずかしくなって布団を頭まで被る、少し落ち着いて再度エルフィンの顔を見て
「おやすみなさい、大好きなエル様」
こうしてクイナも眠りにつくのだった
一方その頃エルフィンと別れたガドランはというと
「結局今日も遅くなってしまった」
あの後ガドランは今回消費した回復薬の補充、傷ついた武具の修理、護衛任務中に襲ってきた盗賊団の詳細などおう忙しだった
「とりあえず回復薬はワールさん所が都合してくれる、武具はおやっさんに任せてきた、盗賊団について結局活動していた場所しか分からなかったなぁ、ほんとなんでこの辺にいたんだ?」
今日の事など確認しながら自宅に向かっていた
「さすがにこの時間はみんな寝てんだろなぁ」
久しぶりの我が家、家族が起きているうちに帰りたかったけどだいぶ遅くなってしまった。家に着くと案の定明かりがついてなかったので起こさないように静かに入る
「…ただいま〜」
大きな音を立てないように食卓に行き椅子に座る、ふぅっと一息ついた時奥の部屋から扉の開く音がした
「あら、お帰りなさい」
そこには寝間着に肩掛けを羽織ったキサラがいた
「悪い起こしたか?」
「大丈夫、起きてたから」
そう言って魔法ランプの明かりをつける
「夕飯まだなんでしょ?今温めるわ」
「あぁ、ありがとう」
暖炉に火をつけその上に鍋を持っていき料理を温める、そしてガドランの前にコップを置き酒をついであげる
「それにしても今日連れてきた子どうしたの?」
「エルフィンのことか?」
「えぇそうよ、危ないところを助けられたとは聞いたけどかなり若い子だったでしょ?あなた達の報告程の実力者なのかギルド登録の時のステータスを見ていなければとても信じられないわ」
鍋をかき混ぜながらガドランに聞いてくる
「あの時は本当に助かった盗賊団の数もさることながら実力もそこそこだったからな」
「それにあの子、エルフィン・リッパーって名乗ったでしょ?もしかしてあの方の縁者だったりするのかしら」
「どうかな、少なくとも大物ではある。まぁどんな奴であれエルフィンとは仲良くやって行けると思う」
「あら、どうして?」
注がれた酒をぐびぐびと飲む
「ランクが上がるにつれて周りの奴らがよそよそしくなる、昔からの顔見知りのギルド員とかはいつも通り接してくれるが他はそうじゃない、不満がないと言ったら嘘になるがある意味しょうがないっと言う気持ちがあった」
さらに一口飲む
「そんな時エルフィンと出会った、あいつは俺がAランクと知ってもギルドでその説明を聞いても態度を変えず普通に接してくれた、それが嬉しかった」
「そう、いい巡り合わせね」
キサラが笑顔で聞いていた
「あぁ、あいつが助太刀しなければ俺も死んでいた」
そう言った瞬間、キサラの笑顔が凍りつく、ガドランはしまったという顔になる
「ねぇあなた、そんな報告書上がってないわよね?」
(やばい!キサラの後ろに戦鬼がいる)
「いや、そのだなキサラ」
「正座」
「えっ」
「正座」
「ちょっと待て」
「正座」
「はい、すいません」
ガタイのいい男が床に正座する
「ねぇガドラン?報告書には人数の多い盗賊団に襲撃された所を助太刀してもらい危機を脱したって書かれてわよね?」
「はい、そうです」
「その報告の際に私がいたのに詳細を省いたの?」
「いえその!心配かけたくなくて」
キサラの説教コースを受けるガドラン最後には魂が抜けたようになっていた
「まったくもう、心配かけないでよね?」
「はい、以後気をつけます!」
「それじゃ料理も温もったし食べましょ」
お許しが出て立とうとした時、バタンっと前に手を付く
「ちょっとどうしたの」
「足が……」
「足がどうしたの?」
「足が痺れた……」
あまりの事に一瞬沈黙が流れ
「ぷっあはは」
キサラは大笑いしていた、ガドランは足の痺れで悶絶中それを見て後ろに回ったキサラが足をつつく
「ぐわっやめてキサラ」
「うりうり、私を心配させた罰よ」
キサラがガドランで遊んでいると奥の扉が開く
「ママ、さっきから何騒いてるの?」
眠たそうに目を擦りながら男の子と女の子が出てくる
「ごめんなさい、起こしちゃったわね」
子供たちがキサラの方を見ると
「「パパ!!」」
子供たちがガドランに気づき抱きついてくる。足の痺れは残っていたが避ける訳にも行かず我慢して子供たちを支える
「お帰りなさい!パパ」
「おかえりなさい」
小学校低学年ぐらいの子が喜びを全開にしている
「あぁ、ただいま」
こうしてガドランは久しぶりの家族談笑を楽しむのだった