王都に入るとやっぱりいろいろあるフラグ
そして物語は冒頭へと戻る
「クシュンッ」
クイナが可愛いらしいくしゃみをする
「春先になって暖かくなってきたとはいえ風は少し冷たいなぁ」
そう言いながらアイテム鞄から少し厚めのローブを取り出しクイナに着せてやる。
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして」
クイナは頬を染めながらローブを羽織る
「街に入ったらクイナの服を探さないとな」
「そんな!奴隷の私はこの服だけで十分です」
「いやいや、さすがにそれ1着って訳にはいかないでしょ?クイナは美人なんだからオシャレしないと!というか俺が見たい」
クイナは顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。マンガに出てくる際どい服って程ではないけどそれでも何着かは欲しい。
それを聞いていたワールさんが
「でしたら私の商会系列の服屋に格安で用意させましょう、エルフィン殿は王都は初めてですから宿もこちらで手配します、私がオーナーの宿なので
もちろん代金は結構です」
「何から何まで申し訳ありません」
「私に出来ることならなんでも言ってください!こうやって無事に王都に帰れたのはエルフィン殿のおかげなのですから!」
森から王都への道中に話をしたがこのワールさんが経営するモーノ商会はかなりの規模のグループだった、様々な業種の系列店を持ちこのブルーフォレスト王国でトップの商会の会長している人こそワールさんなのだ
「とりあえず王都の中に入りましょうか、エルフィン殿は先にギルドで登録されますか?」
「そうですね、身分証が欲しいので」
「わかりました。それでしたら誰かに案内させましょう」
「それだったら俺が行きますよ!盗賊団の事も報告しないといけないですし」
後ろで待機していた護衛のガドランが言ってきた
「ではお願いします。私は今回仕入れた物をすぐ納品しなければなりませんので」
「任せて下さい。ワールさん」
「その後、宿への案内もいいですか?宿の者には伝えときますので」
「了解です」
こうして俺たちは王都の中へと向かう。検問所で身元確認があったがワールさんが身元保証人なってくれたのですんなり入ることができた、そしてある程度進んだ所でワールさんと別れてガドランの案内でギルドに向かう、ギルドは中央広場の近くにある
「見えてきた、あれが俺達の仕事斡旋場の掃除屋ギルドだ!」
そう、この世界には冒険者ギルドというのはない。その代わりに掃除屋ギルドがある、内容はほとんど一緒だが登録者のほとんどは拠点を決めてそこで活動する、故に依頼を受けて片づけるから掃除屋なのだそうだ。
「立派な建物だなぁ」
「そりゃ王都のギルドだからな依頼も多種多様で多いからあれぐらいのデカさがいる、まぁ中に資料室があるしな」
「なるほどな」
「で、悪いんだが先に盗賊団の事を報告して来ていいか?あれで全部だと思うが一応な」
「ああ、いいぞ」
「すまん、入って左側に飲み物出す所があるからそこで待っててくれ」
そう言って金を渡してくる
「おう、ゴチになります」
ガドランは急いで報告しに中に入って行く
「それじゃぁ俺達も中に入るか」
「はい!エルフィン様」
横にいるクイナがにこやかに応える
中に入って左側にいくと食堂のような所があった、とりあえず飲み物を二人分頼み飲みながら待つことにするとそこに
「よう、ガキんちょいい女連れてんな」
小悪党っぽいのが絡んでくる
ギルドに初めて入ると絡まれるのはお約束なのか?
「何か用ですか?」
「何その女を貸してくれりゃ何もしねぇよ」
ニヤニヤしながらクイナの方を見ている
その視線を感じてクイナが俺の方にしがみついてくる、
「こいつは俺のなんでそれは無理です!さようなら」
クイナを右手で抱き寄せるとキッパリと言い放つ、それを聞いた小悪党はイラついた顔になり
「いいから寄こせ!!」
怒鳴りながらクイナに手を伸ばしてくる、するとそこに
「おい!何をしている」
「なぁっ!ガ、ガドランさん!!」
話を終えたガドランが戻って来た
「そいつは俺の友人だ、何か用か?」
「いえ!初めて見る顔なので話しかけただけです。それではこれで失礼しゃす」
そう言い残し小悪党はギルドの外に逃げて行く
「命拾いしたな」
「いやぁー助かったよ!ガドラン」
「何言ってやがる。あのバカがだよ!その左手に持ってる物騒なモンとっととしまえ」
呆れたようにガドランが言ってくる、俺は左手に持っていたナイフを見せながら
「さすが!気づいてたか」
「ったく、ギルド内で問題起こすなよ?」
「大丈夫!刺しても治す!」
「余計に怖ぇよ!!それよか、いつまで嬢ちゃん抱き寄せてるつもりだ?」
クイナの方を見ると顔を紅くして固まっていた
「ん、可愛いからつい」
それを聞いたクイナがますます紅くなる
「こんな所でイチャイチャすな、ほれギルド登録行くぞ」
「はーい」
ガドランがため息をつきながら促して受付に案内してくれる
「よう、ミミちゃんお疲れ様」
「あ、ご苦労さまです、ガドランさん」
受付にいたうさ耳の女性にガドランが声をかける
「今回は盗賊団の襲撃があったんですよね?大丈夫でしたか?」
「あぁ、危ないとこだったがコイツのおかげで助かった」
俺の方を親指で指しながらニヤッと笑う
「若いがいい腕前している」
「ガドランさんがそこまで言う方ですか!」
受付嬢さんがへぇー感じで見てくる
「ガドランって有名人?」
「王都じゃぁそこそこな」
ガドランが少し照れたように言うすると受付嬢さんが
「何言ってるんですか!ガドランさんは王都でも数少ないAランク掃除屋じゃないですか!そこは誇って下さい」
「へぇ〜ガドランってすげぇな」
そう言いながら手をぱちぱちと叩く
「……エルフィン、お前イマイチ理解してないだろ?」
「いや、だってまだギルドの仕組み教えて貰ってないし」
俺の反応が素っ気なかったからかガドランがうなだれて少し拗ねてしまった
「ミミちゃんコイツにギルドの仕組み説明してやって」
「はい」
受付嬢さんがガドランを哀れむように見ている
「それではギルドの仕組みについて本日受付嬢ミルミナが簡単に説明させていただきます」
そう言いながら絵などが書かれた紙を取り出す
「ちょうどランクの話がありましたのでランクから説明させていただきます。ランクは最下位がFから始まり最高位がSSとなります。ただ、SSランクは俗に英雄と言われる方々になります、その為歴史を振り返って見ても数える程の人数しかいません。この国にも10年程前まではいらっしゃいましたが現在は引退されています。ですので現状の最上位はSランクとなります」
ミルミナさんがピラミッド型の図で説明してくれる、こう見るとガドランってランク高いんだ
「依頼はあちらのボードに張り出されています」
手で場所を教えてくれる
「依頼には適正ランクがありますのでそのランクに達していないと受けることはできません、パーティ依頼ですと誰か1人ランクに到達していれば受注可能です」
説明用の依頼書を取り出し説明してくれる
「そして依頼にはボードに張り出されている物の他に指名依頼と緊急依頼があります。指名依頼はその名の通り依頼主が掃除屋またはそのパーティーを名指しで依頼する事、緊急依頼はとにかく早急に対応しなければならない案件で魔物氾濫等がこれにあたります」
クイナが魔物氾濫と言う単語に反応して元気を無くす、それを見てクイナの手を握って笑顔を向ける、すると安心したのか笑顔を返してくれる。
次にミルミナさんが細かい規則などを説明してくる、要は自分にあった依頼を受けましょうと言う事だ。失敗すれば違約金が発生する場合もあるし評価も下がる、逆に完璧にこなせば報酬も入り評価も上がるランクも上がればより稼ぎのいい依頼を受けられるという事だ
「……以上で説明を終わらせていただきます。何かわからないことがあれば遠慮なく言ってください。それではギルドへの登録に移ってもよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です。お願いします」
「あ、ちょっと待った」
ガドランが止めてくる
「ミミちゃんこっちの嬢ちゃんはエルフィンの所有奴隷だからそっちの登録も頼む」
それを聞いたミルミナさんがクイナをじっと見ているそして奴隷の輪に目を向ける
「はい、それでは一緒に手続きしますね」
正直同じ獣人族が奴隷にされているの見て俺に嫌悪感を持つと思ったがそんな事はなかった、むしろ若干笑顔になっててちょっと怖い
「それではギルドカードを作りますのでこちらの魔法具の前に来てください」
ミルミナさんが魔法具を作動させると手の平サイズの魔法陣が二つ展開される
「こちらの魔法陣に片手づつ置いてください、今から魔力を身体に通して情報を読み取り記憶します。これにより偽装不可能なギルドカードが作られます」
両手を魔法陣に置くと何かが身体を通る感覚がする、魔法具に何か表示される
「あ、出てきましたね。これでエルフィン様の現在の職業が表示さ……れる……、えっ!」
ミルミナさんがビックリしている
「どうした?ミミちゃん」
ガドランが不思議に思って聞いている
「えっ、いや、すみません!もう一度やってみていいでしょうか?」
そう言われたのでもう一度魔法陣に手を置く
「………申し訳ございません、こちらの魔法具調子が悪いので別ので対応させていただきます」
ミルミナさんが新しい魔法具を持って来る
「こちらの魔法具は最近納品された新しい物なので大丈夫です」
そしてもう一度魔法陣に手を置くのだが結果を見たミルミナさんが泣きそうな顔になっててどうしようと思っていると
「ミルミナ、さっきからどうしたの?」
「センパ〜〜イ」
年上のお姉さん的な女性が奥から出てくるそれを見てミルミナさんが泣きながら助けを求めていた
「もうどうしたの?ってあら」
魔法具に表示されている物を見てこちらのお姉さんも驚いた顔をする
「キサラ、ミミちゃんもさっきからどうした?」
さすがにガドランも受付の二人を見て何があったのか聞いている
「これはその、えっとね」
キサラと呼ばれたお姉さんが俺の方を見てくる
「ガドランだったら俺の事話してもいいですよ」
俺の言葉を聞いてキサラさんが話しかけてくる
「ちょっと場所を変えましょう、ここで言うのはよした方が良さそうだから」
俺とクイナ、ガドランに受付嬢のミルミナ、そしてキサラで応接室のような所で話をする
「実は先程の魔法具でエルフィン様の職業が出たのだけども」
「ええと何か問題でもありました?」
不安になって聞いてみる
「職業が三種類、弓士、回復術師、錬金術師が表示されたの」
「確かに三種類は珍しいがそこまで驚く事か?」
ガドランが不思議がって聞いている
「……王級だったのよ」
「…なんだって」
「だから!三種類の職業が全部!王級だったのよ!」
キサラさんが我慢出来ず大きな声になっている、ガドランは内容を聞いて
あちゃ〜て顔になっていて、ミルミナは半ば呆然としてる、クイナはすごい笑顔になっている
「みんなどうしたの、面白い顔になっているけど」
ガドランが盛大にため息をつく
「いいか、エルフィン。ひとつの職業に対して階級が4段階ある」
指を4本出して説明してくれる
「まず最初に見習い、どの職業もほぼここから始まる、次に1人前これで職業から見習いが取れる、その次が達人級で1人前になってから腕前がずば抜けてきた者達、そのずば抜けてきた者からさらに他を寄せ付けない強さを誇るのが王級だ」
「へぇ〜」
「へぇ〜っじゃない!ひとつでも凄いのにお前は三つも王級なんだぞ」
そんな事言われてもじいちゃんも凄かったしイマイチなぁ
「俺の場合比較対象がじいちゃんしかいなかったし凄いと言われてもなぁ」
「お前のじいちゃんも相当だな、お前の実力をこの目で見てなければ俺も魔法具の故障だと思うぞまったく」
それを聞いたキサラがガドランに問いかける
「ではこの結果は魔法具の故障ではなく事実だと?」
「あぁ、正直この結果が出て妙に納得した自分がいる」
ガドランの答えにキサラが考え込むそして
「分かりました。とりあえずこれでギルド登録をしておきます。詳しい事は会合で不在のギルドマスターがお帰りになってからにしましょう。」
「あっそうだ、さっきミミちゃんには言ったがこの嬢ちゃんの所有奴隷登録とこれモーノ商会のワール会長から手紙だ」
「拝見しても?」
了承を受けてキサラさんが手紙の内容を読む中身が気になったので聞いてみる
「もしかして俺関係ですか?」
「そうですね、簡単に言えばエルフィン様の身元をワール会長が保証人なると言う知らせです」
「ワールさんがですか」
「はい、こちらとしても有名な方が保証人ですと今回の内容が内容なだけに助かります」
「もしかしてワールさんこれを見越してたのかな?」
ガドランに話を振る
「かもな、まぁたんにエルフィンを気に入ってたのもあると思うがワールさんもお前の実力を見てるからなぁ」
手紙を読み終えたキサラさんが話を切り出す
「それではギルド登録とカードの作成をしてきますの少々お待ち下さい。ミルミナこの内容で作ってちょうだいね」
そう言ってミルミナにメモを渡す
「分かりました。作って来ます」
メモを持ってミルミナが部屋を出て行く
「10分ほどで出来上がりますので受付けのあったスペースでお待ち下さい」
「すみません、待っている間に魔物の素材の買取は出来ますか?手持ちの金が少ないので換金したいんですが」
「大丈夫ですよ、では買取カウンターまでご案内します」
キサラさんの案内で買取カウンターまで行き森で狩った魔物を出して査定してもらう、出した魔物を見てガドランが頭を抑えていた
「高ランクの魔物がいるが今更か」
ガドランが自分で疑問をいだいて自分で解決していた。
買取カウンターの人は大慌てになっていて助けを求め人数を増やして査定してる。
全部の査定が終わると結構いい金額になっていたので換金してもらった、そして受付に行くと
「お待たせしました、エルフィン様こちらがギルドカードになります」
ミルミナから金属製のカードを渡される、そこには名前とランクが刻まれていて裏面には所有奴隷クイナと刻印されている
「カードを紛失されますと再発行には無くすなよと意味も込めてかなりの金額がかかりますのでご注意ください、それでは本日のご利用ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございます」
お礼を言いってギルドを後にする
「にしても正直嫌な顔されると思ってたよ」
「急にどうした?」
「クイナみたいな可愛い奴隷を連れ回していてしかも受付の子と同じ獣人だからさもっと嫌悪感みたいなのが出ると思ってた」
「あぁその事か!それは嬢ちゃんの奴隷の輪を見たからさ」
そう言われてクイナの奴隷の輪を見る
「本来の奴隷の輪はもっと無骨な感じになるなぜなら契約時に奴隷に関する感情が輪に反映されるからだ」
ガドランがクイナの奴隷の輪を指さす
「だが嬢ちゃんの輪は綺麗な色に花柄の模様まで付いている言われなければアクセサリーと間違えそうな程にだ、つまり所有者が嬢ちゃんを大切に感じている現れだ」
「そうなのか!」
これはちょっと恥ずかしい
「そうなんだ、だからミミちゃんもキサラも嬢ちゃんの奴隷の輪を見ていたのさ」
「マジかぁ〜まぁそうなんだけどこれは照れるな」
それを聞いてクイナがクスクスと笑っている、なので少し仕返しする
「こんな風に笑っているクイナは可愛いから大切にしたくもなるわな」
途端にクイナの顔が紅くなり照れ出す
「だから俺の前でイチャつくな!それでこれからどうする、夕方までまだ時間はあるが宿に向かうか?」
「クイナの服を買いたいからワールさんが言っていた店に行きたい、後は生産通りも見てみたい」
「わかった、ここからだと生産通りが近いから先にそっちに行くか?」
「ガドランが案内してくれるの?」
「ここまで来たらついでだついでエルフィン達だけにするとまた問題を起こしそうだしな」
「それは助かる!やっぱ持つべきは友人だな」
俺が笑顔で礼を言うと
「はっ言ってろ」
文句を言いながらもガドランは嬉しそうにしていた
ギルドで俺達がワイワイやっている頃ワールさんは……
コンコンっ
「入れ」
「失礼します。モーノ商会のワール会長が来られております」
「おおっ戻ったか、通せ」
許可を得て部屋にワールが入る
「失礼致します、ただいま戻りました」
「うむ、ご苦労。してどうであった?」
「はい、今すぐ手に入る物は全て医師長にお渡ししてきました。ただ特殊な素材は日数がかかる為手に入り次第こちらに届けるよう手配しております」
「そうか」
ワールと同じ年ぐらいの男性が力なく椅子に座る
「容態はあまり宜しくないのですか?」
「あぁ医師長以下医師団が頑張ってくれているが徐々に弱ってきておる、せめて原因だけでも分かればまだ対処方法が出るかもしれんがそれすら判明せん」
それを聞いたワールが考え込むそして
「実は今回の仕入れの帰りに盗賊団の襲撃に会いまして」
「何!それでお前達は大丈夫だったのか、怪我人や死人は出てないか!」
「人数も多く手練の集団でしてかなり危ない状況でしたが偶然通りかかった方の助太刀により撃退出来ました。ですかその時私は敵の矢を首元に受けてしまいました」
「なっそれで大丈夫だったのか!」
「落ち着いて下さい。この通りここに来ているので大丈夫です」
「むっ確かに回復薬で治したのか」
「いえ、回復薬は襲撃で使い果たしてしまったのでありませんでした、しかし助太刀してくれた方が回復魔法の使い手でその方が治してくださいました」
「そうかそれは良かった」
話を聞いていた男性が安堵する
「ここからが本題です、その方はかなりお若い男性の弓士でして腕前は最低でも達人級、そして今回のお礼に奴隷を差し上げたのですが回復魔法も回復薬も効かなかった重度の火傷の奴隷を選び目の前で治してみせました、さらに矢傷で血を流した私に自分で作った造血剤を下さいました、効果はすごいの一言です」
「それ程の人物聞いたことがないぞ!」
「本人曰く最近まで森の奥でおじい様と暮らしていたそうです。そしてその方のお名前なのですがエルフィン・リッパーと名乗られていました」
「リッパーだと!!」
「はい、ですので一度彼に容態を見てもらえば何か糸口が見えてくるかましれません」
それを聞いて男性が考え込む
「今は藁にでもすがりたいところだ、わかった!ワールよ、その者との取り次ぎを頼む、了承を得次第連れて来てくれ」
「心得ました。陛下」
深く一礼してワールが部屋を出て行く
「リッパーか、この出会いが状況の改善に向かえば良いが」
陛下と呼ばれた男性が淡い期待を抱きながら窓から外を眺めていた