出会いそれは幸せへのフラグ Part1-4
じいちゃんとの生活もそろそろ3年ぐらいたとうとしていた
「よし!今日の朝練は終わり!」
日課になった弓矢の練習、的撃ち500本!最初の頃は腕がパンパンで疲れまくってたけど今じゃ全然疲れないいい準備運動程度である
「さてと朝飯を作るとしますか!」
この世界にも四季があり今は春先ぐらいで少し暖かくなってきている、こちらに飛ばされた時が15才ぐらいだったのが三年経って18才に、毎日の訓練で身体もしっかりした体格になってきている、基礎能力はとんでもなく伸びているこれもじいちゃんの教育のおかげである
俺は軽く汗を拭くと朝食の準備を始める、パンを焼き、目玉焼きを作り、サラダを作るドレッシングは自作である、そして錬金術で作ったミキサーにフルーツを入れて特製ミックスフルーツジュースを作る、それらを二人分作るとある部屋に持って行くそして扉をノックする
「じいちゃんおはよう、朝飯できたよ!」
そう声をかけて部屋に入って行く
「おはようエル坊、今日も美味しそうだな」
じいちゃんは半年ぐらい前から体調を崩し始めて今は一日の大半をベットで過ごしていて調子のいい時は俺の訓練を見たりしている。俺の固有能力で治そうとしたけど歳によるものだと拒否された。
「春先になって暖かくなってきているなぁ、ララが好きだった花ももう少しで咲きそうだ」
ララとはじいちゃんの連れ添った奥さんの事、そしてじいちゃんのベットからはちょうどその奥さんが好きだった桜の花に似た花の咲く木が見える
「今、蕾がついてるからそろそろ咲き始めると思うよ」
「そうか…楽しみじゃなぁ」
「じいちゃん、朝食が冷めないうちに食べよう」
「おお、そうじゃな」
こうして朝はじいちゃんの部屋で朝食をとるのが最近は多くなっている
「この後はまた弓の練習か?」
「うん、そうだよ!早くこの弓にも慣れないとね」
「だいぶ使いこなせるようになって来たみたいだな」
「ハハ、まだまだだよ」
俺は今、じいちゃんが使っていた愛用の弓で練習している。この弓はかなりの業物らしく練習を始めた頃は弦を引くことすらできなかった。
この三年の鍛錬で最近はまともに扱えるようになってきている。
「どんな事にも終わりはない、日々精進する事じゃ」
「はいよ!すぐにじいちゃんに追いついてやるからな、行ってきます」
そう言って食べ終わった食器を持って出ていく
「すでにお前はわしに追いついてるよ」
エルフィンの出て行った部屋でミハエルは1人嬉しそうにつぶやいていた。
それから5日ほどたった頃いつものように朝練を終え朝食を作りじいちゃんの部屋に行く、そして声をかけて部屋に入るとすでにじいちゃんは起きていて窓の外を眺めていた。ものすごく嫌な予感がしたけど振り払っていつも通りにする。
「じいちゃんおはよう!今日は早起きだね。」
「あぁ、今日は早くに目が覚めてねぇ、外を眺めていたよ」
「そうなんだぁ」
「エル坊、今日は調子がいいから外で話さないか?」
「うん!いいよ」
そうして朝食を食べ終わった後、長椅子を準備して、じいちゃんに肩を貸しながら座らせるその横に俺が座る。
「エル坊が来てもう三年経つのか」
「この三年じいちゃんの世話になりっぱなしだよ」
と、いろんな話をするじいちゃんが王都に住んでいた頃の事、その時弟子を育ててた事、歳をとって奥さんと静かな森に移住してのんびり暮らしてた事、奥さんを亡くして1年後に俺と出会った事、そしてこの三年間の事…
「この三年間エル坊との暮らしは楽しかった…ララ《妻》を亡くして寂しい1人暮らしをしていたわしに孫ができた」
「俺もだよ、じいちゃんの事本当の家族のように思ってる血は繋がってなくてもじいちゃんは俺の大切な家族だよ」
「ふふっ、ありがとう、ではわしの大切な孫の鍛錬の成果をじいちゃんに見せくれんか?」
「もちろん!」
そう言うとじいちゃんは魔法を使いだしたすると竜巻のような風が吹き始め用意した的を呑み飲む、的は竜巻の中をものすごい勢いで動いている
「これは今までで最高の難易度だね」
「今のエル坊ならこれくらい大丈夫だろ?」
じいちゃんはからかうように、でも楽しそうに言ってくる
「じいちゃんの期待には応えないとね!」
俺はじいちゃん愛用の弓を構えて集中して的を見る、軌道を読み矢を放つ、放たれた矢は目標へと向かっていき…
「お見事!」
じいちゃんが褒めてくれる、矢はカンッと音を立て的ごと後ろにあった大木に突き刺さっている
「その弓もエル坊を認めたようじゃな」
「そうかな?そうだと嬉しいけど…」
「そうとも!矢を放つ時の音で分かるさ」
じいちゃんの近くに戻るとそんなふうに言ってきた。
「エル坊、弓をこちらに」
じいちゃんに言われて弓を両手で出す
「少しそのままで」
じいちゃんは差し出した弓に手を添える、そして
『宝弓星の女神よ、我ミハエル・リッパーは我が孫エルフィンにこの力を託す、この者に幸福を』
すると弓が光り輝き出す、眩しいほどの光が収まった時そこには純白だった弓から漆黒の夜空に輝く星を散りばめたような色彩の弓があった。
「じいちゃん今の何?!何が起こったの?」
「エル坊がこの弓の真の所有者として認められた証じゃよ」
「真の所有者?」
「そう、この弓は認められた者にしか扱う事ができん、だからエル坊も最初は弦を引くことすら出来なかっただろう」
「確かに最初は全然引けなかったけど…この弓は一体なんってわぁー」
急に弓が光り輝き出すと今度は小さくなり手首に移動して漆黒の腕輪に変化していた!
「え!ちょ!じいちゃんなにこれ!」
「弓に認められるとそのように腕輪に変わる、エル坊が使いたいと思うと瞬時に弓に変化するぞ」
試しに腕輪に念じると瞬時に弓に変わった
「その弓は神によって作られたとされる星の女神と言う名の宝弓じゃ、本体が神の金属とされるオリハルコン、弦の部分には純度の高いミスリルと女神の聖髪が使われているとの言い伝えじゃ」
「この弓そんな凄い弓だったの!」
「そうとも、認められたことによって様々な恩恵を受ける事が出来る」
じいちゃんが言うには命中精度向上、腕力上昇、視力強化と言った身体能力が強化されるらしい、しかも基礎能力が高いほどその補正も高くなる、夜目も鋭くなり暗闇でも問題なく見えるようになるとの事
「さて、エル坊に頼みがあるんじゃが?」
「何?じいちゃん」
「リッパーの名を継いでもらえるか?」
「そんな事なら喜んで!むしろプレゼントや褒美みたいに嬉しいけど急にどうしたの?」
そう言うとじいちゃんが長椅子の空いたとこをポンポンと叩いて座るように促してくる。俺はそれに従いじいちゃんに隣に座る。
「お前はまだ若い、この森を出れば様々な経験をし、いろんな人々に会い、そのうち守りたいと思う女性も見つかるだろう、お前の場合複数になりそうだが?」
クックックと笑いながら言ってくる、俺は頬を指でポリポリとかきながら話を聞く
「ワシはお前と一緒に行くことは出来ん、せめてリッパーの名をエル坊に贈ることでお前の将来を見守っていきたいんじゃ」
「じいちゃんこれで最期みたいに言わないでよ」
朝のじいちゃんを見て何となく感じてはいたでも認めたくなかった
「ふふっ自分の身体の事じゃ、ワシが一番ようわかっとるわい」
涙が出そうになるのを必死にこらえる、それでも目から一粒二粒涙が流れる
「エル坊はわしがいなくても十分やっていける、リッパーを名乗ることでわしの親しい者達も手助けしてくれるじゃろう、それに人助けも出来るぐらいには鍛えたつもりだがわしの言うことが信用出来んか?」
「じいちゃん、その言い方はずるいよ」
俺とじいちゃんは顔を合わせて笑う
「エル坊と出会ってからの三年間本当に楽しい毎日じゃった、妻にいい土産話ができたよ」
「俺もじいちゃんと暮らせてよかった、まだまだじいちゃん孝行したいよ」
「十分じゃ、こうして残りの時間を一緒にいてくれるただそれだけで」
その時何かがヒラヒラと落ちてくる見上げるとそこにはじいちゃんの奥さんが好きだった花の咲く木が花を咲かせていた
「まるで妻も祝福しているようじゃな」
「あぁ綺麗だね、じいちゃん」
「少し魔法を使いすぎたかな、眠くなってきたよ、エル坊ワシは寝させてもらうぞ」
「うん、じいちゃんお休み」
「エル坊、ありがとうよ」
そう言うとじいちゃんは俺の方へと倒れ込む、俺はそれを優しく受け止める。
「じいちゃん?」
じいちゃんことミハエル・リッパーは嬉しそうにそして満足したかのように笑顔で旅立って逝った。
「じいちゃん今までありがとうございました!」
泣いた、恥も外見も関係なく泣いた、それほどまでにじいちゃんへの感謝と悲しさが深かった、じいちゃんはとても大切な家族だったのだ…
日が陰り出した頃じいちゃんをベットまで運んで寝かせてやる、この日はじいちゃんの部屋で寝た、そして次の日の日の出と共にじいちゃんを埋葬する為にある場所を掘る。魔法で掘ることもできたが自分の手できちんと埋葬したかった。
じいちゃんの奥さんが好きだった花の咲く木の下にはある物がある
【我が最愛の妻 ラーアイラ・リッパー ここに眠る】
そうじいちゃんの奥さんが眠っている墓がある。
俺はそのすぐ横に埋葬する為に穴を掘っている。少しでも二人が近くにいることができるように。穴を掘り終えるとじいちゃんを清潔なシーツで包みその上に奥さんが生前に編んだ膝掛けをかけて埋めてやる。
【我が最愛の家族 ミハエル・リッパー ここに眠る】
二人の墓前に花を添え祈りを捧げるじいちゃんが奥さんに無事に会えるように…
祈りを終えると俺は家の中の整理を始める、それと並行せて旅支度持って始める、じいちゃんに言われたように経験を積むために。
結局一日仕事になったがどうにか準備ができたじいちゃんとの思い出の場所を明日旅立つ。野盗に荒らされないようにいろいろな仕掛けをしたがたまには帰ってくるようにしよう。じいちゃんに会いに…
次の日の朝、朝食をとると二人の墓前に行く
「じいちゃん、俺森を出ていろんな経験をしに行くよ。じいちゃんに言われたよう自分の幸せを探しに」
じいちゃんの墓の前で話しかける
「じいちゃんは無事に奥さんに会えたかな?ここを離れてもたまにはじいちゃんに会いに帰ってくるからね、じいちゃん寂しがり屋だから」
じいちゃんが聞いてたら、余計なお世話じゃいって言いそうだなと思いながら笑う
「じゃぁ二人共、行って来るね」
そう言って墓に背を向けて歩き出そうとした時だった
「「 行ってらっしゃい 」」
じいちゃんと女性の声が聞こえた気がした、後ろを振り向くとあの花がまるで桜吹雪のように舞って祝福しているようだった、
「行ってきます!じいちゃん、ばあちゃん!」
二人の墓に笑顔で手を振りながら旅立つ。不思議と二人に手を振ってもらっているような気分で家を後にした。