つかの間の休息 P-2
家で話した後、皆で建築中の屋敷へと向かう
屋敷の玄関前には噴水があってその周りを馬車が通過出来るようになっている。身分の高い人が来ても馬車から乗り降りが出来るようにとエリィからの提案だ。俺の知り合いはこの国の王族を筆頭に身分の高い人が多いから必要との事だった。
「屋敷の後ろ側には庭も有りますので後ほど案内します」
立派な扉を開き中に入ると
「皆様お待ちしておりました」
カリンさんが出迎えてくれた。
「あら、早かったのね」
「はい、リリアさんが残りの事はやっとくからと言ってくれましたので」
エリィとカリンさんが仲良く話している。砦で本人が言っていたがついでなのでさっきまで話していた事を聞いてみる。
「カリンさん」
「はい、何でしょう?」
「実は――――」
先程の話を説明すると
「もちろんついて行きます。指導の方もお任せ下さい」
「ありがとうございます」
「つきましてはもうひとつの方もよろしくお願いします」
「もうひとつ?」
砦での事を思い出す
「あぁ乳母の件ですか?ならカリンさんの相手の方も・・・ん?」
乳母をするならカリンさんも妊娠して母乳が出るようにならないといけない訳でそう思っているとカリンさんがこっちをじーーっと見てニコッと笑った
「ん!?」
思わず俺はクイナ達の方を見るとこちらもニコッと笑った
「既に皆様からは御了承いだだきました」
「いつの間に!?」
手回しの良さにビックリした
「エルフィン様は私が相手ではお嫌ですか?」
「いやいや、カリンさん美人だし皆と仲良いし不満は無いですけど俺なんかでいいんですか?」
「むしろエルフィン様以上の殿方はなかなか見つからないと思いますよ?という事で今後ともよろしくお願いします」
「あ、はい。こちらこそ」
なんだかんだで色々話がついてしまった。
「これはうかうかしてられませんな」
成り行きを見ていたワールさんが小声でポツリと何かささやいた
「ワールさん何か言いました?」
「いえ、こちらの話ですのでお構いなく。早速ですがまずここが屋敷のエントランスになります」
中央に女神像が有り、その両脇に軽くカーブする様に階段が設置され2階まで吹き抜けになっていてとても広く感じる。女神像はもちろん感謝を込めてルナさんを作って貰った。神殿からもちゃんと許可を得てるので問題なし。本人にも一応確認したら照れていたけどOKを貰った。
「豊穣の女神様、とても素敵ですね」
「はい、エル様に巡り合わせてくれたことに感謝を」
女性陣が女神像に向けて祈りを捧げ始めた。
「本当に愛されてますなぁエルフィン殿」
「俺こそ皆に会えた事は幸運ですよ」
祈りを終えたのを見計らって説明が再開する
「全体で4階建てになっておりまして1階部分には調理場に食材の保管庫、男性使用人の住み込み用の部屋が数部屋。2階部分には中規模程度のパーティーが開ける会場に応接室に書庫や書類等を保管管理する部屋があります」
1階から2階に上がり広い会場を見ながら説明される
「と言ってもパーティーを開く予定ないですけど?」
「お嬢様方の誕生日祝いとかはどうですか?」
「それは絶対に必要ですね!」
ワールさんの言葉に即答で答えて女性陣にクスクス笑われた。
「3階部分には来客用の寝室に女性使用人の2人部屋が複数部屋、4階が皆様の私室と寝室になりクイナさんの御要望で少し小さめの調理場を設けております」
調理場を見たクイナはワールさんに御礼を言っていた。
「個人個人に小部屋を用意してありましてこちらが寝室になります」
寝室に入ると何故か目を擦ってしまった。何故かと言うと
「でっか!てか、ひろ!」
超ビックサイズ、キングサイズを鼻で笑い飛ばす程のベッドが置かれていた。
「こちら特注で作らせて頂きました。頑丈に作ってありますので何人乗っても大丈夫です!」
どこぞの物置のCMみたいに言われても
「これなら皆で一緒に眠れますね!」
エリィがそう声を出しクイナ達も満更でもない様なので良しとしよう。
「そしてこちらの寝室からは屋敷の裏側にある庭が一望できます」
窓へと促され覗くとまだ未完成ながらも立派な庭が出来つつあった。特に目を見張ったのは
「ワールさん庭の中央にある木はもしかして」
「はい、どうにか丁度いい物を見つけまして」
屋敷を出て庭に向かい木の前に
「エル様、この木ってもしかして」
「あぁ森の中のじいちゃんの家にあってクイナの輪にも刻まれている俺の好きな花が咲く木だ」
そう桜によく似た花が咲く木をワールさんは見つけ出し植えてくれたのだ
「ワールさんありがとうございます。思いれのある木なので嬉しいです」
「喜んで頂けたようで何よりです」
その桜の木を眺めていると木の枝に腰掛ける者が
「ご主人様この木とてもいい子だね」
ラフィが現れて木の枝に座って枝をさすっている。精霊だからか何か感じるのだろう
「ラフィも気に入ったか?」
「うん!」
嬉しいのは顔を見れば分かる
「羨ましいですわ。クイナさん」
「ちなみに皆に贈った花も植える予定だからね」
エリィがクイナのマークと言っていい花が植えてあるのをいいなぁ的な顔をしていたので教えてあげた
「それは楽しみです。待ちどうしいですね」
「エル兄様、私のも?」
「もちろん!」
エリィもミアも笑顔になって良かった。しかし、この世界は機械やコンピュータが無い代わりに魔法と錬金術、魔法具が発達しているのでこの規模の家を建てるのに短期間でほぼ完成まじかなのは凄い。
「全体が完成するのは後ひと月程度で出来ると思います」
「わかりました」
「…ねぇ兄様、あっちの建物は?」
ミアが屋敷から通路で繋がっている建物を指さして聞いてくる
「よくぞ聞いたミア、あれこそ俺が考えた桃源郷、心と体を癒す場所だ。ワールさん中に入っても?」
「大丈夫です。こちらも八割方終わってますので」
「ではでは行きますか」
ミアが気になった建物に入るとそこは
「わぁ〜!」「凄いですね」
「エル様、もしかしてここは……」
「あぁここは皆で入れる大浴場だ」
広々とした室内に10人ぐらい入ってものびのび出来る大きな浴槽、壺を持った女性像から温水が常に流れる仕組みになっている。そして植物なんかも植えられている。外から覗く事は出来ないが中からは庭園が一望出来るようになっている。
「エル様、確かにすごいですがその…こんなに水を使っても大丈夫なのでしょうか?」
王都の水はシャロンさんの湖から供給されるので贅沢な使い方をして後々問題にならないかクイナは心配しているようだが
「その辺は大丈夫、浴槽から流れ出たお湯は排水溝を通じて浄水装置に行きそこで綺麗に浄化されてまた浴槽に流れ込む様になっている。だから見た目ほど水は消費してないから大丈夫。水晶龍様にもこの方法なる問題なしと許可して貰ったから」
「でしたら心配せず入れますね!」
その後、ひと通り進捗具合を聞いたところで皆で街中に繰り出す事にした。カリンさんにもメイド服から普段着に着替えてもらった。何故かって?目立つから。エリィにもフードコートで髪を隠しながら訪れたのは
「あら〜!エルフィンちゃんじゃない!」
「お久しぶりです、おネエ様」
「無事に戻ってなによりよ!」
「ご心配おかけしました。今日はおネエ様1人なんですか?いつもの2人は?」
いつものノリのいい店員さん2人が今日は見当たらない
「あの子達は今日はおうちのお手伝いでお休みなの。それよりもエルフィンちゃんま〜た恋人増やしちゃったの?もう〜隅に置けないだから」
普段着のカリンさんを見てエリザベス店長がからかいだす。
「ハハ、それよりもおネエ様に頼みがあるんだけど」
「あら、何かしら?」
「今、家を建てるんだけどそこで働く使用人の服を統一しようと思っておネエ様にそのデザインと発注をお願いしたいんだけどいいかな?」
「なんだそんな事ならお易い御用よ!」
エリザベス店長に快く快諾してくれたので実際に着るカリンや皆の意見をエリザベス店長がメモしていく
「わかったわ。とりあえずこれで考えて見るわ、そちらのお嬢ちゃんのサイズで作ってみて他の使用人さんは決まったらサイズを取りましょう。というわけでサイズ図らせてね」
「時間かかるだろうから皆は好きな服を選んどいてくれ、俺はちょっと用事を済ませてくるから」
カリンさんの採寸と皆の服選びの合間にある所に行き用事を済ませて戻る
「あれ?皆どこ行った?」
探していると
「エルフィンちゃんこっちこっちよ」
奥の部屋から声がしたので部屋に入ると
「ぬおっ!」
下着姿のウチの女性陣達が並んでいた
「どう?最新モデルの下着よ!可愛いでしょう!」
エリザベス店長が誇らしげに声を出している。当の本人達は
「どうですか?エル様」
「兄様、可愛い?」
「こんな可愛い下着があるのですね」
「さすがに少し恥ずかしいですね」
クイナとミアはすでに慣れているせいか平然としている。エリィも大丈夫そうだがカリンさんが若干顔を赤くして恥ずかしそうにしている。皇女が他の男と一緒、しかも下着姿なのは本来大問題だがエリザベス店長は心は乙女だから俺たちが言わなきゃ大丈夫だろう。そして、その下着はもちろん全買いで!他にも数点服を買った。試作ができたら連絡してくれるとの事なので完成してから改めて使用人の採寸をして作ることになる
「夕飯は何処にしようか?」
予め王城には外で食べてくると伝えていたので何処にしようか考える
「エルさん私、久しぶりにあそこに行きたいです」
エリィのリクエストである場所に向かうと
「エルフィンに嬢ちゃん達、久しぶりじゃないかい!」
「久しぶり女将さん」
訪れたのは以前に連れて行った大衆食堂で入るなり店の女将さんに迎えられた。俺が挨拶しクイナ達も頭を下げて挨拶している
「丁度いいタイミングだったね。いつもの席が空いたからそこに座りな!アンタっ、エルフィンと嬢ちゃん達が来たよ」
厨房に向かって女将さんが声をかけている。するとバンダナを巻いたオッサンが顔を出し
「よぉ色男!今日も美人さん引き連れて来たな!全然来ねぇからくたばったのかと思ったぜ!てかっ一人増えてるじゃねえか!羨ましいこって」
カリンさんの方を見てそう言い放つ
「大将、久しぶり!大将には女将さんがいるじゃん」
「おうよ!ウチの女房はいつだって元気で美人だ!」
「客の前で何言ってんの!エルフィン達は何食べるんだい?」
「そうだな、大将のおまかせで!みんなもそれでいい?」
皆が頷くのを確認して女将さんに注文する
「だってよアンタ!」
「おう!任せな!」
「じゃぁみんな少し待ってなよ」
そう言って女将さんは給仕に戻って行った
「ふふっこの雰囲気、最初は驚いたけど賑やかで良いですね」
「姫様は以前来られたのですよね?」
「えぇ、料理もお城で食べる料理と違ってとても新鮮な感覚だったわよ。あっ、別にカリンの料理が嫌な訳じゃないのよ。貴女の料理は美味しくてとっても好きよ」
「わかってますよ姫様、作り手がかわれば味も微妙に変化しますからね。他の人の料理を食べるのはとても勉強になります。クイナさん達の料理がまさにいい例です。あのような味付けの仕方があるのを初めて知りましたし」
「それは私達もですよ、カリンさん。おかげさまで私も料理の幅がひろがりました」
女性陣達が楽しく話をする中、邪魔をする者が現れる
「よぉ兄ちゃん、ずいぶんべっぴんさんを連れてるな」
明らかに酒に酔った風貌の男が二人近づいて来た。見た感じ掃除屋っぽい体格をしている
「そんなに連れてるなら俺達にも分けてくれや」
「ダメに決まってるだろ。向こうで勝手に酔っ払ってろ」
すると明らかに不機嫌な表情になる
「若造が生意気いいやがって、嬢ちゃん達もこんな奴より俺達の方が色々楽しく過ごせるぜ」
下心丸出しでクイナ達の方を見ている
「私の全てはエル様だけの物ですからお断りします」
「兄様以外興味無い」
「私の心にはエルさんしか男性はいませんの」
「汚物にエルフィン様を侮辱して欲しくないですね」
色々な断り方が出たがカリンさんが意外とキツい毒を吐いたのには驚いた
「この女ども!無理矢理でも連れっぐあ!」
今にも掴みかかろうかという男の頭にカポーンという音と共にお盆が当たる
「あんた達、ウチの大事な客に何してんだい」
凄い形相の女将さんがゆっくり歩み寄ってくる
「何するはこちらの台詞だババア!」
もう1人の男も食って掛かろうとした時、男の頬を何かがかすめていく。すると頬に赤い線がにじみ出る。その後ろの柱には包丁が突き刺さっていた
「この糞ガキ共、ウチの愛する女房に向かってなんて言いやがった?」
両手に包丁を構えた大将がこれまた鬼の形相で出てきた。その2人を見た男二人はタジタジである。それを見かねて近くに座ってた客が声をかける
「あんたら見ない顔だけど最近来た新顔だろ?ここの大将と女将さんは元Bランク掃除屋で続けてたらAランク確実と言われてた2人だぞ?」
その言葉に男達は青ざめていく、さらに別の人が
「それとあんたらが喧嘩を売ったあの兄ちゃんはついこないだの魔物氾濫で竜を倒し竜殺しの称号を持つ人でAランク昇格確定って聞いたぞ」
(正確には今日Aランクになりました)
男達は完全に酔いが覚めたようで、ものすごい顔色になっている。そして
「すみませんでしたーー!!」
そう言ってお金を置いて行くと走って逃げていった。その様子を店内にいた客達は笑いながら見送っていた。
「すみません大将、女将さん迷惑かけて」
「いいんだよ。あんた達が悪いんじゃないんだから」
女将さんがそう言って大将は手を振りながら厨房に戻って行った。このままじゃ申し訳ないので売り上げに貢献する事にする。俺は立ち上がり店内の客に向けて
「みんな!迷惑かけた詫びだ、今日の代金は俺が持つからじゃんじゃん飲んで食ってくれ!大将に美味い料理をどんどん作らせて筋肉痛にしてやろう!」
店内の客達から一斉に歓声が上がる。女将さんはしょうがないねぇ的な顔で見ていた。
「言ったなてめぇ!腹が破裂するぐらい食わせてやるよ!」
厨房からは気合いの入った声が聞こえた。その後は大盛り上がりになりあまりに忙しくなりすぎたのでクイナとミア、カリンさんが手伝いに行ったほどだ。エリィはさすがにバレるといけないので俺の横に一緒にいる。そして
「いや〜食った食った!にしてもクイナ達も悪かったな俺が変な事言ったせいで」
「いえ、給仕なんてしたことなかったのでとても良い経験が出来ました」
「カリンさんは流石でしたね。流れる様に注文取ったり料理運んだり」
「あれぐらいでしたらまだパーティー準備の方が大変ですから大丈夫ですよ」
「ミアもお疲れさん」
「疲れた〜」
「すみません、私も手伝えたら良かったのですが」
「それはしょうがないよ、バレるといけないし」
「そうですよ姫様」
エリィが申し訳なさそうな顔をしている
「まぁ大将と女将さん、あと数人はおそらくわかってて気づいてないふりをしてるだろうけどな」
「えっ?そうなんですか?」
「大将達はそんなに鈍感じゃないだろ?そんな店だから気軽に行けるんだけどね」
「私としてはありがたいですね」
「その分エリィに手伝いをさせたりすることはないだろうな、それはそうとラフィの方はそろそろ終わってるのかな」
「どうでしょう?」
「結構会話がはずんでたように感じましたのでまだかかるかもしれませんよエル様」
ラフィは新しい屋敷の庭園が気に入ったようでそこの植物達とおしゃべりに興じている。
「まぁ腹が減ったら帰ってくるだろ。俺達も城に帰ろうか」
「はい」「はーい」「そう致しましょう」「かしこまりました」
ゆっくり歩きながらお城へと帰った。そして、今日はお城の大浴場で汗を流して部屋に戻るとエリィとカリンさんが待っていた
「あれ?2人だけでどうしたの?クイナ達は?」
「クイナさん達は今日は私の部屋で眠られるとの事です」
「エルフィン様、本日は私に御情けを頂きとうございます」
カリンさんはそう言うとバスローブを脱ぎ今日買った下着姿へとなる。エリィもバスローブを脱ぎ捨てる
「どうぞ、御存分に御堪能ください」
という事で主従丼をいただく事になりました。正直カリンさんの技術が凄すぎてヤバかったです。
「カリンさん、ホントに初めてですよね?」
「あら?こちらの純潔の証が証明ですが?」
そう言ってベッドにある赤い染みに目線を落とす
「いや、物凄く気持ちよくて」
「ふふっそれはよう御座いました」
汗を浮かべるカリンさんの顔はなかなか妖艶な雰囲気をかもし出していた。
「私も忘れたら嫌ですよエルさん」
抱きつきながらキスをしてくるエリィが負けまいと絡みついてくる。そんなエリィにカリンさんは
「可愛らしい姫様」
エリィにもその技術を発揮するのだった。そして、数刻後ベッドの上で休憩していると
「ただいま〜」
「ん?お帰りラフィ」
「ご主人様ただいま!あれ?エリィとカリンだ!」
俺の両脇にいる2人を見て声を出している
「そっかー!カリンもご主人様と仲良しになったんだ!」
「今後ともよろしくお願いしますラフィ様」
「こちらこそ!ところでご主人様僕お腹すいちゃった」
「さすがに今は厨房に誰もいないわよね」
「でしたら私が何か作りましょうか?」
「大丈夫!ご主人様にもろうから」
「俺から?」
何だ?フルーツジュースが飲みたいのかな
「ご主人様のとっても美味しい白いクリームを貰うから」
「……あ〜」
ということでラフィも参戦する事となり
「もうお腹いっぱい〜〜!」
ラフィが満腹になった所で就寝についたのだった。
果たしてこの日喰われたのは誰だったのだろうか?
本格的に精力剤の開発に取り掛かるかな
あっ、ちなみにエリィとカリンには避妊魔法がかかってます。何故かって?両親である皇王様と皇妃様に挨拶もしてないのに先に妊娠しましたなんてさすがに合わせる顔がない。カリンは乳母になる為エリィと同じ時期に子供を作りたいからかけて欲しいとの事。クイナとミア、ラフィは異種族の為受精率が低いので授かる為にかけてないです。




