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大切な人を護る為、翔ける!P-4

(ここはどこだ?………)


水の中を漂うように意識が朦朧とする。


(俺はここで何してるんだ?)


まるで夢を見ているかのような感覚になる


(わからない……このまま流されて行けば楽になるか……)


意識が薄れていく


「起きなさぁぁぁい!!」


「いったぁぁ!!」


おでこに猛烈な衝撃をくらい一気に目が覚める。


「あれ?ここは確か……」


「もう!やっと起きましたね!」


「……ルナさん?」


「そうですよ!」


どうやらルナさんにおでこデコピンを喰らったようだ。

辺りを見回すとそこは神殿でお祈りした時に来るいつもの花畑だった。


「何でここに?俺は砦で戦っていて………」


そこまで言って全て思い出す。薬で無理やり動かしていた身体もその効果が切れると身体に激痛が戻り始めカーマインが着くのと同時に限界を迎えた。


「ルナさん、俺もしかして死にました?」


かなり無茶な事をやり過ぎて身体がもつわけない。そう思ったが


「ギリギリのギリで生きてますよ」


「じゃあ何で俺はここに?」


「あのままだとエルフィンさんの身体はショック死する所だったので一時的に肉体と魂を分離しました。肉体も酷いですが魂にも損傷があったので私の神域に連れて来て魂の治療していたのです」


「そうなんですか、ありがとうございます。でも魂が良くても肉体がダメなら戻れないのでは?」


「そちらは妹と従姉妹が修復していますので大丈夫ですよ」


「妹と従姉妹?ルナさんの妹は確か戦女神のアテロス様ですよね」


「えぇそうです、もう1人は愛と絆の女神アプロティアと言います」


「なぜその御二人が俺の肉体の治療を?」


「妹のアテロスは自身を信仰する国の皇女を助けたのとエルフィンさんの武勇に感銘を受けて、アプロティアは自分が加護を与えた二人につい最近エルフィンさんが接触して興味が湧いたと、そして愛する人を助ける為に限界に挑んだ事に感動して協力を申し出てくれました。」


(加護を与えた二人?)


愛と絆の女神様で()()()与えたと言われたら皇国のあの二人しか思い浮かばない。最近出会って仲のいい二人はアイツらだけだ


「そうなんですか……あっルナさん」


俺は姿勢を正すとルナさんに頭を下げて


「あの時は助言をいただきありがとうございました!おかげでエリィを救うことが出来ました」


「どういたしまして!でもエルフィンさん、ちゃんと落ち着いて考えてくださいね。御父様も仰りましたがエルフィンさんには絶望を変える事ができるのですから」


「はい、ありがとうございます。ルナさん達のおかげで命拾いしました」


「あっ、その事なんですが……あれ?」


ルナさんが何かを感じ取って


「どうしたんですかルナさん?」


「私の神域に誰か侵入したようです」


「えっ!?」


「無理に侵入すると魂から消滅するのですがこの気配はもしかして」


ルナさんの目線が俺の後ろに向けられたと思うと急に背後から抱きつかれた


「……主様(マスター)、見つけた」


「ラフィ!!」


そこにはボロボロの姿のラファエルがいた。


「どうしてここに!?てか大丈夫か!」


「私の神域に張られている結界を無理やり通ってきたようですね」


「何でそんな無茶を!」


今にも力尽きそうな身体を座らせ背中を支えてやる


主様(マスター)の身体は女神様が力を貸してくれて治せたけどその中に主様(マスター)がいなかった」


ラフィは魂の事を言っているのだろう。


「この子も無茶しますね、私の神力を組み込んだ弓の神気とエルフィンさんの魔力を吸収して昇華してなかったら完全な異物として消滅させてました」


ルナさんはそう言いながらラフィの治療をしてくれる


「エルフィンさん、彼女に感謝して下さいね。彼女ともう1人のおかげで私達の治療が間に合ったのですから」


「どう言う事です?」


「こちらの精霊の彼女がエルフィンさんに回復魔法をかけ続けていたおかげでエルフィンさんの肉体は木っ端微塵にならずに済んだんです」


「え!木っ端!?」


「神技の連発で肉体が限界に達し崩壊するのを回復魔法で繋ぎ止めていたのですよ。それがなければエルフィンさんの身体は爆散してましたね」


「マジで!」


「マジです。危うく血の海が出来上がるとこでした。まぁそれもあるのですがエルフィンさんの心臓は1度止まったんですよ。それをもう1人の方が再鼓動してくれたおかげでどうにかなりました。心臓が止まると私との繋がりも切れてしまうのであの時はさすがに焦りました」


ルナさんが身振り手振りで説明してくれる


「誰だろ?あとで御礼を言わないと」


「エルフィンさんその前に御礼を言うべき方が目の前にいるのでは?」


「そうだった!ごめんラフィ!俺の為にありがとう!でもなんでこんな無茶を……」


主様(マスター)はもうひと月も目を覚ましてない。」


「ひと月!?そんなにたってるの!?」


ルナさんの方を見て確認する


「そうですよ!やっと魂の修復が終わったのにエルフィンさんまた深い眠りに入りそうだったから起こしたんです!」


そう言ってルナさんは指を弾いてデコピンをしている。デコピンの衝撃ではなかった気がするが…


「エリィはずっと泣いてる。人前では笑顔を作ってるけど無理してる。最近は食事も睡眠も取れてない」


「エリィにも心配かけてしまったな」


俺の意識が戻らない事でみんなに心配をかけてるようだ


「ルナさん、ラフィの治療はどれくらいかかりますか?」


「そうですね、霊核……人で言う心臓に損傷があるのでもうしばらくかかります。大丈夫、元通りに治ります。むしろ神域の結界に触れてよくこの程度で済んだと思います。」


「じゃぁ治るまでここに………」


主様(マスター)、エリィの所に帰ってあげて」


残ろうとしたがラフィに止められた


「エリィはこのままだと心が壊れてしまう。だから早く安心させてあげて」


「……わかった、ありがとう。ルナさん俺はもう帰れるんですか?」


「えぇ大丈夫です。肉体の治療も彼女を媒介に女神二人が修復しています。ただひと月も魂と肉体を分離していたので感覚にズレがあると思います。時間が経てば元に戻るのでしばらくは軽めの運動で慣らしてください。」


「わかりました。まぁ休暇と思ってリハビリします」


「では送りますね!」


すると足元に魔法陣が出てくる。このパターンは……


「これは()()ですか?」


()()です」


ルナさんらしいと言うか


「とにかくルナさん、ありがとうございましたぁぁぁぁ―――――」


御礼を言ったと思ったら足元に穴が空き落ちて行く


「お気を付けて〜〜」


手を振って見送る


「さてと、ラフィさんでしたね?」


「はい、ルナフレア様」


「あなたはなぜこんなにも苦しい思いをしてまでここに来たのですか?」


女神様はラフィに笑顔で質問している


「それはボクが主様(マスター)と契約している精霊で」


「それだけですか?」


治療しながらも覗き込むように聞いてくる


「………主様(マスター)ともっと一緒にいたいから…クイナやミア、エリィも優しいし一緒にいて楽しいです。でもそれ以上に主様(マスター)のそばにずっといたいからです。そして、できる事なら三人のように愛されたい」


「素直でよろしい!頑張った貴女には私からご褒美をあげましょう」


「ご褒美?」


「楽しみにしていてくださいな!」


楽しそうにする女神様とご褒美が気になるラファエルだった


■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪


砦の防衛戦からひと月が経ち落ち着きを取り戻した皇国軍。しかし、皇国東の国境であった連邦との戦いの後処理が長引いてる為、王国軍は砦に駐留しているが理由はそれだけではない。


コンコンッ


「入るぞ、エリィ」


「どうぞ、カーマイン様」


エーデルリア皇女が応え、部屋の扉をカリンが開ける。


「どうだ?様子は」


エーデルリア皇女はベッドの上で眠るエルフィンの傍に椅子を置き座っている


「容態は安定しています。今日は顔色が良さそうです」


エルフィンの顔を濡れた布で拭いている。


「……エリィ、君も少し休んだ方がいい。だいぶ疲れているだろう」


「私なら大丈夫です。こんなのエルさんに比べたら大した事ありません」


そうは言うがエーデルリア皇女の顔には疲れが出ており少しやつれた感じがする


「だが最近は食事も睡眠も取れてないのだろう?少しは食べないとエルフィンが起きた時心配するぞ」


「御心配ありがとうございます。でも私は大丈夫です」


「…そうか、無理をするなよ」


カーマインは今のエリィにはどんな言葉も届かないと感じた。


「なにか合ったらいつでもいい呼んでくれ」


「はい、カーマイン様」


エルフィンから目を離さないエリィを見てどうしたものかと思う。


「姫様、お水の換えを取ってきます」


「お願いカリン」


カーマインと侍女のカリンが部屋を出ていく


「エリィはずっとあの調子か?」


「はい…一応食事は取られていますが少しずつ食べられる量が減っています。このままでは姫様も体調を悪くされます」


「あぁわかっている。だが今のエリィには私達が何を言っても無駄だろう」


「……そうでございますね」


二人は閉じられたエーデルリア皇女の部屋を見つめていた。



「エルさん……」


エーデルリア皇女はエルフィンの手を両手で握りしめて話しかける


「ねえエルさん、あなたがお休みになられてもうひと月も経ちましたよ?」


握りしめた手を自身の頬に持っていき触れさせる


「あなたはいつになったら起きて私との約束を果たしてくれるのかしら?」


問いかけるが返事は返ってこない。そのまま眠るエルフィンに近づきキスをして


「ねえエルさん、あなたの声が聞きたい」


眠るエルフィンの顔を見て涙がこぼれてくる。


「どうしたらあなたは目を覚ましてくれるの?あなたが起きてくれるなら私はなんだってするわ。私はどうしたらいいの?」


溜まった涙がエルフィンの頬に零れ落ちる。その時


「え……」


自身の頬に触れさせていたエルフィンの指が微かに動いたように感じた


「………エルさん?」


エーデルリア皇女がエルフィンに呼びかける。すると少しずつエルフィンのまぶたが開いていく。


「……エリィ…少しやつれたか?」


「エルさん!!」


エーデルリア皇女はベッドに横になるエルフィンへと抱きついて泣き始める


「心配かけたようだなエリィ、ごめんな」


「よかった、目を覚ましてくれて。本当に良かった!」


そこに慌ただしく入ってくる者がいる


「エリィ!何かあったのか!」

「姫様!大丈夫ですか!」


カーマインとカリンさんが心配して入ってきたようだ


「よう、カーマイン。それにカリンさんも」


「エルフィン!!」

「エルフィン様!!」


二人も俺が起きたのに気づき急いで近くに来る


「やっと目を覚ましたか!身体はどうだ?大丈夫か?」


カーマインが心配して身体の調子を聞いてくる


「バッチリ!と言いたいところだが、ダメだなどうにも感覚が鈍い。まぁ何か異常を起こしている訳ではないようだから少しずつ慣らすしかないな」


「そうか、まぁひと月も寝ていたからなしょうがないだろう」


「エルフィン様、お腹は空かれていますか?何か用意した方がよろしいですか?」


「そうですね……ん?エリィ?」


抱きついているエリィから反応がないのでその顔を覗くと


「スぅ〜、スぅ〜」


エリィは俺に抱きついたまま眠ってしまったようだ。その顔は安心した様に穏やかだ


「エルフィンが倒れてからずっと付きっきりで看病していたからな、お前が目を覚まして安心したのだろう」


「そうか、……カリンさん食事はまだ後でいいです。エリィをこのまま寝かせてあげたいので」


「はい、かしこまりました」


カリンさんはそのまま近づきエリィを俺の横に寝かせる


「これいいのか?」


「しょうがないだろう?お前はまだ動けないしエリィを起こすのも可哀想だ。それに起きた時にお前がいないと不安がるぞ?」


「そうだな、このままエリィの寝顔を眺めるのもいいかもな」


「そうしとけ、私は公爵に報告してくる。何か用事が合ったら呼んでくれ」


「あぁありがとうカーマイン」


手を振りながらカーマインは部屋を出ていった。


「ではエルフィン様、私も胃に優しい物を時間をかけて作ってきます」


「ありがとうございますカリンさん、貴女にも御心配をおかけしました」


「目が覚められて本当に良かったです」


カリンさんも涙目になりながら喜んでくれている。カリンさんが料理を作りに部屋を出たあと腕を上げて手を開いたり閉じたりして感覚を確かめる


「ん〜、鈍いと言うより肉体に感覚が追いついていない感じなんだよな」


これも肉体と魂が離れていた影響かなと思いながら動かしていると静かにドアがノックされカーマインとリジット公爵が入ってきた


「エルフィン殿、意識が戻られて良かったです」


「御心配おかけしました」


「いえ、私共がエルフィン殿に負担をかけ過ぎたのがいけなかったのです」


「俺が自分でした事です。気にしないでください」


「ありがとうございます。意識が戻られてすぐで申し訳ないのですが、エルフィン殿にその後の報告と幾つか確認をお願いしたくて来ました」


「はい、なんでしょう?」


「エルフィン殿が倒れられて危険な状態だったのですがラファエル様と王太子殿下がお連れになった治療部隊の方の尽力で止まった心臓を動かすことが出来ました。」


「その人にも御礼を言わないといけないな」


「お前も知っている人だ」


「俺も知ってる?もしかして医師団長?」


「いや、以前私が()()の時に部屋に来た人物を覚えているか?」


カーマインはあえて()()と言った。医師団長ではなく医師団にいる人でカーマインの部屋で会ったのは1人だけ


「キース団長と一緒に入ってきたあの時の女医さんか?」


「正解、彼女がお前との知識交換で得た事を利用し作った魔法具でお前の心臓を動かした。原理については私はわからん。」


それは是非とも見てみたいな


「しかしあの時のエリィは見てられなかった。エルフィンの心臓が止まった時はパニック状態で心が壊れる寸前だった。心臓が動いてどうにか治まったがエルフィンの看病は自分がみると譲らなくてな、カリンを付けることを条件に承諾した」


「そうか…、それで彼女は今どこに、砦にいるなら御礼を言いたいんだが」


「彼女は治療部隊数人と周辺の町や村をまわっている。帝国軍が荒らした所もあるのでな、住民の治療にまわっている。2、3日で戻る予定だ」


カーマインが説明するとリジット公爵が次を話し始める


「実はこのままエルフィン殿の意識が戻らない場合、皇都にお連れする予定でした。」


「皇都に?」


「はい、帝国軍の撤退後10日ほどして通信が直りましたので皇都の皇王陛下に連絡を取りましたところアンジェリカ皇妃様がエルフィン殿の治療をされるとの事でしたので」


「皇妃様が俺を?なんで?」


「アンジェリカ皇妃様は皇国で随一の回復魔法の使い手です。今回の事で是非ともやらせて欲しいと」


「ちなみにアンジェリカ皇妃様はエリィの実母だ」


「エリィの母親!?」


「ああ、エリィを助けた事を誰よりも感謝している。それ故にエルフィンの意識が戻らない事に皇国をあげて治療をさせて欲しいとな」


「しかしエルフィン殿の意識が戻りましたのでとりあえず動けるようになるまで王国軍共に砦への滞在を許させています。もちろんその間にかかる食事等も皇国が負担させていただきます」


「そういう訳なんでな、エルフィンは身体を治すことに専念しろ。皇国から砦への増員部隊が来たら王国軍の兵士は私の護衛部隊を除いて帰国させるが私はお前についていてやる。それとエリィも一旦王都に戻り静養した後、安全になった北東の街道を通って帰ることになった。」


「北東の街道は大丈夫か?」


魔物氾濫(スタンピード)が制圧されて魔物も落ち着いているから大丈夫だ。」


「そして、皇王陛下から御礼が言いたいのでその時にエーデルリア皇女と共に皇都に来て欲しいとの事です。」


「エリィとの事をちゃんと話すいい機会かもな、わかりました。伺わせて頂きます」


「ではその様に伝えておきます。それともうひとつ、ラファエル様なのですが」


「ラフィがどうしました?」


「ここ数日御姿を見かけません。エルフィン殿の身体が安定するまでは皇女と共にそばについていたのですが」


それは俺を探しに出たからだな、そして、今は神域で治療中だ


「大丈夫です、今は身体を癒している所です」


「そうですか、ラファエル様についても皇都にはまだ報告しておりません。エルフィン殿が精霊様を用いた交渉は嫌がっておられましたので。皇国軍には箝口令を強いております。王国軍も王太子殿下の協力で黙ってもらってます」


「ありがとうございます。俺自身を見てエリィとの事を認めて欲しいので」


リジット公爵とラフィについて話しているとカーマインが


「あれは私の幻覚では無いのだな」


「そういや魔物氾濫(スタンピード)から戻って紹介してなかったな。道中に契約してたんだが砦での防衛中に昇華して風の上位精霊になった」


「お前は……サラッと言ってるがどれほどの事かわかってるか」


「エリィと公爵殿に聞いたけどなる様にしかならん!」


「それでどうするんだ?」


「ひとまず国王陛下と王妃様には話しとく、それと第1皇女にもかな」


「ユディにもか?」


「あぁラフィが姿を消しても皇族の血を引く者には分かるらしい。なら話した方がいいだろう。他はギルドマスターには伝えた方がいいだろうな。」


「そう言えば皇族は風の精霊の血筋らしいな」


「知ってるのか?」


「皇族との付き合いは国として長いからな」


「ふーん」


「お前の事、王国側には父上母上、宰相と医師団長にだけ正しく伝えている。クイナとミアには事後処理が長引いてる為に帰国が遅れていると言ってある。本当の事を伝えると二人だけでこちらに向かいかねないからな」


「そうだな、助かる」


そして、今後の予定を話したら


「さて、それでは女性が寝ている所にいつまでも男が複数集まっても良くない。ここらで退散しようか」


「そうですな。エルフィン殿、細かい所はまた今度で」


そう言うと二人は部屋を出ていった。俺は起こしていた上半身を横にして寝そべる。横ではエリィが規則正しい寝息をつきながら眠っている。


「俺もなんだか眠くなってきた」


大きなあくびをするとまぶたが重くなる。


数時間後……


「……ル……」


(ん〜?)


「……ル……ん」


(なんか聞こえる……眠い…)


「エルさん」


呼ばれたので目を開ける


「……エリィ?」


なんか顔が近い気がする


「良かった、また深い眠りについたのかと」


「ん〜……大丈夫……」


(まだ眠い…頭がぼ〜とする)


「えっと、その…手を離していただけると……まだ明るいですしこの状態嬉しいのですが誰かに見られたら恥ずかしいので」


どうやらエリィの腰に手を回し抱き寄せている様だが寝ぼけているせいで頭が回らない


「……エリィ、いい匂いするな」


「ちょ!ちょっとエルさん!」


その首筋に顔を近づけ匂いを嗅ぐ


「やだ!私、最近湯浴みしてない!」


スンスンッ


「あんっ!エルさん!寝ぼけてます!?寝ぼけてますよね!」


「それに抱き心地も良い……」


エリィをさらに抱き寄せる


「ひゃうっ!!」


「気持ちいい………」


エリィは顔を赤くして混乱中である


「エルさん起きて!襲ってもいいって言ったけど今はダメ!今は誰か来ちゃうから!!」


「グゥ〜〜」


「この体勢で寝ちゃダメぇっ!!」


現在エルフィンはエリィの胸元に顔をつけた状態で寝てしまっている。しかも手はエリィの腰に回し抱き寄せているのでエリィは身動きが取れなくなっている。


「息が当たって……やぁんっ!?」


「姫様、何やら声が聞こえますがどうされました?」


カリンさんが部屋に帰ってきた。けどそこで見たのはエルフィンがエリィを抱きしめている様子である


「どうも私はタイミングが悪いようですみません」


「ま、待ってカリン!」


「ドアに逢い引き中と紙を貼っときますのでどうぞごゆっくりと」


「カリン!行かないで!エルさんこの状態で寝て動けないの!」


「あら、姫様は嬉しそうですが?」


「確かに嬉しいけど恥ずかしいの!!」


「ですから紙を貼っときますのでご堪能下さい」


「カリン!意地悪しないで助けて!」


カリンはいつもの調子を取り戻したエーデルリア皇女を見て嬉しかった。でも時間をかけ過ぎてしまい


「姫様!何やら声が!」


ジュリアンまで来てしまった。ベッドの上の様子を確認すると


「これは失礼しました。周りには誰も来ないようにしときますのでどうぞ続きを」


「違うから!ジュリアンも誤解しないで助けてよ」


「そうは言われましてもその様に嬉しそうな顔をされますと」


「ちょっと!カリンもジュリアンも意地悪ですよ!?」


これ以上はさすがに皇女の機嫌が悪くなりそうなのでどうにかエルフィンを起こして皇女を解放するのだった。


「あれ?カリンさんにジュリアンさん、どうしたの?エリィもなんでそんなに顔赤いの?」


「なんでもないです!」


「なんか怒ってる?」


「怒ってません!」


「そうですよね、むしろ嬉しかったですよね」


「そうね!ってカリン!!」


起きてすぐ、賑やかだ。まぁエリィがいつもの元気を取り戻した様で良かった。


「ところでエルフィン様、食事はどうされますか?」


「いただきます。起きたらお腹が空いて」


「ではお持ちしますね。姫様も一緒にちゃんと食べて下さいね」


「わかったわよ、カリン」


エリィも少し申し訳なさそうに言っている。どうやら最近食べてない事で心配をかけていたのを気にしているようだ。カリンさんは部屋を出て行き数分後に食事を持って帰ってきた


「エルフィン様はひと月寝てらしたので急に固形物を食べられると胃に良くないですしこちらを用意させて頂きました。」


お粥のようなリゾットのような食事が出される。


「見た目は質素ですが味は付けておりますので食べやすいと思います」


「ありがとうございます。いただきます」


置いてあるスプーンを取ろうとしたが指先が上手く動かず掴めない。


「エルさん、無理なさらないでください」


そう言うとエリィがスプーンを取り料理をすくうとエルフィンの口に運ぶ。要するにアーン状態である。正直恥ずかしいが貴重な体験なのでこれに乗る


「あむっ」


「美味しいですか?」


「あぁ美味しい、エリィに食べさせて貰ってるからかさらに美味しい」


「まぁ!お上手ですこと!」


エーデルリア皇女はエルフィンの世話が出来ることがとにかく嬉しいようだ。


「私達はお邪魔ですし出ましょうか」


「そうですね」


カリンさんとジュリアンさんが微笑ましいものを見るように笑い部屋を出ていった。それをエリィは固まって見ていた。


(これは完全に二人がいるのを忘れていたな)


「……エリィには本当に心配をかけてすまなかったな」


「いえ、目を覚まされて本当に良かったです」


「しかし、腹は減るもんだな!次ちょうだい!」


「もうエルさんったら、はい、どうぞ」


嬉しそうに料理を運ぶエリィ。


エリィの事だから俺がこうなったのは自分のせいだとか思ってそうだな。それは違うと聞かせてやらないといつまでも引っ張りそうだけど今はこの楽しいひと時を満喫しよう。


食事を食べ終えるのを見計らった様にカリンさんが入ってきた。手にはお湯の入った桶と布が用意されている


「エルフィン様、ついでですのでこのままお身体の方をお拭きしますね」


「いえ、それは自分で、悪いですから」


「そのお身体では難しいでしょう。それに()()ですよ」


「えっ?」


「エルフィン様が眠られている間、誰が拭いていたと思います?」


「もしかして……」


「はい!私と姫様で拭かさせていただきました。それはもう隅々まで」


バッとエリィの方を見ると既に近くにあったクッションで顔を覆い隠している


「ですので気になさらずに。しかしエルフィン様は大変()()()()()()をお持ちで」


そう言って俺の下半身の方に視線を落とす。


「これは姫様も大変ですね」


顔を隠していたエリィがベッドに撃沈した。


「鍛えられた肉体、眼福でした」


「言ってる事、酒場で酔ってるおっさん達と一緒ですよカリンさん!?」


「まぁそういう事ですから、姫様も早くしないと全部私だけで終わらせますよ?」


「それは嫌!」


何故かその言葉に復活したエリィとカリンさんによって身体を拭かれていく。とりあえず大事な所だけは死守して自分で拭いた。


この様な騒がしい日を2、3日過ごしながら身体を動かしているとどうにか歩くぐらいは出来るようになった。


「エルさん、無理しないでくださいね。辛かったらすぐに言ってください」


「大丈夫だって」


今日はエリィを連れて砦内を散歩という名のリハビリをする。その道中すれ違う兵士や騎士が頭を下げてくる。最初はエリィに対してしているんだと思ったが向きが明らかに俺に向かれていた。


「皆さん、エルさんに感謝してるんですよ」


とエリィの言葉だ。砦の皇国軍は俺が身体が壊れるまで戦ったのを知っているようで敬意を表しているそうだ。そして、以前物資を出した広場に到着すると見知った顔を発見する。向こうも気づいた様で


「エルフィンさん、もう歩ける様になったのですね!」


「その節はありがとうございました。貴女のおかげで生き残る事が出来ました。レミーアさん」


「いえ、元々はエルフィンさんの知識があればこそ作ることができた魔法具です。」


そう言って魔法具を取り出す。見た目はアイロンの様な形をしている


「それが例の魔法具ですか?」


「はい、雷撃魔法を付与し注入した魔力量で威力が変化する様にしてます」


要するになんなのかというと電気ショックだ。以前おこなった医師団との知識交換で心臓が止まった際に弱めた雷撃でショックを与える事で再鼓動させる事ができると話した事がある。もちろん絶対に動く保証はないが可能性はあると


「レミーアさんの発明で俺はこうして今いる事ができる、ありがとうございます」


「私からも御礼申し上げます。貴女のおかげで大切な人を失わなくて済みました」


俺とエリィはレミーアさんに向かって頭を下げて御礼を言う


「そんな!皇女様どうか頭をお上げください。エルフィンさんも!私にはエルフィンさんにお返し出来ないほどの恩があるのですから」


レミーアさんは頭を下げた俺達に言ってくる


「私はエルフィンさんのおかげで大きな罪を犯さずに済み、今は大切な家族と一緒に暮らせるのです。これで少しはその恩を返せたのなら幸いです」


「はい、これからも貴女のその知識と技術でどうかカーマインを支えてあげて下さい。俺はそうして貰えるだけで十分です」


「もちろんです!寛大なお心に感謝します」


レミーアさんと別れるとそのまま砦を周りながら身体を動かす。能力(スキル)のおかげなのか日に日に身体が治っていくのがわかる。肉体自体は女神様とラフィのおかげで治っているらしいから魂との繋がりだけらしいし、王国に帰る頃にはいつも通りになってるかな


「おーい!エルフィン、ここにいたか」


「ん?カーマインどうした」


「部屋に行ったら散歩してるとカリンがな、しかしもう動けるとはすごいな」


「私としてはまだ早いと思うのですが、エルさんが大丈夫と聞いてくれなくて」


「悪かったって!でもたまには外をデートするのもいいだろ?」


「………その言い方はズルくないですか」


「エリィ、こいつには常識は通用しないからな、治りも早いのだろう」


「でも心配なものは心配なんです!」


「それでどうしたんだ?」


「そうだった、皇国の増員部隊が5日後に来る予定になったから引き継ぎ等の作業を考えて7日後を目安に帰国する事になるからそのつもりでいてくれ」


「おう!わかった」


「私は引き継ぎの指示をしてくるからな、あまりエリィを心配させるなよ」


そう言ってカーマインは王国軍がいる所に向かって行った。7日後ならこの調子で行けば普通に動くくらいはいけるかな



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