大切な人を護る為、翔ける!P-1
無事に魔物氾濫を鎮圧し1日かけて戻って来たエルフィン達。朝を少し過ぎた頃に王都に入る事が出来た。
「十日ぐらい離れただけなのに1ヶ月近く居なかった気がする」
「まぁ今回は内容がかなり濃かったからね」
俺の言葉にアルフィードさんが笑いながら返してくれた
「一旦ギルドによってもらうよ。エルフィン君のAランク昇格の手続きをしないといけないし」
「えぇ構いませんよ」
ギルドについて中に入るとすでに朝のピークを過ぎているので人はまばらだった。受付に居たミミさんが俺達が帰ったのに気づきカウンターからできて
「お帰りなさいませギルドマスター。エルフィンさん、クイナさんミアちゃんも無事で何よりです!」
「ただいまミルミナ君」
「無事に戻りました」
俺達が挨拶していると2階からキサラさんも降りて来て
「お疲れ様でしたギルドマスターそして、皆さんも」
「ご苦労さま、それで私が居ない間何かあったかい?」
「はい、出発時に懸念した通り連邦が皇国の東の国境に攻め入りました。しかし、事前に準備し構えていたので侵入は許してないそうです」
「読み通り攻めてきたのか」
「それに伴い現在皇国の東側にて通信妨害の魔法具が展開されているらしく連絡が取れなくなっています」
「それは変だな」
「何が変なんですかアルフィードさん?」
不意に悩むアルフィードさんに問いかける
「連邦に皇国の通信を妨害する程の魔法具が作れるのに驚いている。正直連邦の錬金技術が皇国より優れているとは到底思えない」
「その為、今現在皇国との連絡手段は魔法具の効果範囲を出るか手紙もしくは口頭でのやり取りとなっています。」
「これは表面上では分からない何かが起こっているのかも」
「それは一体……」
エルフィンがそう言いかけた時、外の通りが騒がしくなる。そして、ギルドの前で何かが止まると勢いよく扉が開かれる
「失礼!エルフィン殿が戻られたと聞いたのだがこちらにいらっしゃいますか?!」
「キース団長!?どうしたんですかそんなに慌てて?」
「よかった!こちらにおられたのですね。申し訳ありません直ぐに私と共に来てください。お連れの方もご一緒!」
あまりの慌てように何か良くないことが起きたのは確か。俺はあとの事をギルドの人に任せキース団長について行く。クイナとミアも只事でない状況に戸惑い気味だ。連れていかれたのは王城の中の一室、その中にはすでに国王陛下を始めカーマインや宰相さん医師団長等の重臣達が集まり皆重苦しい表情をしていて端のソファーの上ではユーフォルディア皇女が泣きじゃくりながら座っており、それを王妃様と侍女のリリアさんが支えている。
「一体何があったのですか!」
部屋の中は明らかに良くない雰囲気が漂っている
「……エルフィンよ心して聞いてくれ」
国王陛下が心苦しい様に説明してくれる
「昨日、エーデルリア皇女が訪れているとされるエア砦が敵軍によって襲撃されたという情報が入った」
「襲撃された?!という事は連邦軍ですか?でも連邦軍は今、東の国境で交戦状態あると、武力に優れる皇国相手に二方向同時進行等無謀でしょ!」
「攻めてきたのは連邦ではない、帝国軍だ」
「!?」
「エア砦兵数5千に対して帝国軍2万強の軍勢で仕掛けてきた」
「なら直ぐに救援に向かわないと!その戦力差ではいくら砦側が防衛に徹しても長くはもたない!」
「…………」
「陛下!!」
陛下は黙り込んでしまった。代わりにカーマインが
「……エルフィン、帝国軍が砦を襲撃したのは5日前だ」
「?!なんで今頃!………通信妨害のせいか?」
「あぁこの情報を伝えた護衛騎士は現状を伝えるため砦を少数精鋭で出て帝国軍の包囲網の目を盗み抜け出して来たそうだ。重症を負い最期の1人になってもこの情報伝えるために命懸けで進んだ護衛騎士も情報を伝えると息を引き取った」
「皇国にも同じ情報が伝えられた、しかし連邦と帝国軍が皇国の援軍の行く手を阻み駆けつけられない状態だ。皇国からの要請で軍を編成しているが、正直砦がどういう状況なのか全く分からん」
「それでも助けに行かないと!」
「余は多くの騎士、兵士の命を預かる者。無策で送り出す事は決して出来ん!辛いと思うが仮に砦がすでに陥落しており皇女も連れ去られていた場合、誘き出された軍は包囲殲滅される!確証なしに強硬策には出れんのだ!」
「クッ!…」
「エル様……」「エル兄様……」
何も出来ない悔しさが感情を絶望へと落として行く。強く握りしめた拳からは血が流れ出し床を紅く染めていく
(くそっ!…………くそっ、ちくしょう!!)
『もう〜エルフィンさん!そんなに慌てないで、もうちょっと落ち着いてくださいな、貴方には便利な能力があるでしょ〜!』
「!!」
唐突にルナさんの声が聞こえた気がした。
(便利な能力………あっ!)
ルナさんの声に冷静になりすぐに行動する
(検索︰エリィの状況と状態!)
すると砦と思われる建物と周辺地図が表示され帝国軍と皇国軍が色分けされる。そして、皇国軍のいる砦の中に1つ緑の点が現れる……それこそ
(エリィ!無事でいる!)
表示された緑の点、エリィは状態こそ疲労が付いているが皇国軍に守られ砦にまだいる!
(なら俺がとる行動はただひとつ!エリィを助ける!!)
俺はこの時ゼスト様の言葉を思い出していた。
{どんな絶望的な状況でも君が行動する事で事態が好転する可能性がある}
絶望へと向かっていた俺に希望の光が灯り出す!
(ありがとうございますルナさん!)
『いいえ〜頑張ってくださいね!』
(はい!)
俺の事を心配したルナさんが応援してくれてる。ならやってやる!
「カーマイン、護衛騎士はどうやって帝国軍の目を盗み情報を持ってきたんだ?」
「護衛騎士の身体の傷は全て魔物によるものだった。おそらく砦の西に広がる高ランクの魔物の住処[暴魔の大森林]を抜けて来たのだろう」
「カーマイン、頼みがある」
「なんだ?」
「その森の入り口まで行く持久力があり脚の速い馬を貸してくれ」
「なに!?エルフィン、お前まさか!」
「陛下、俺がこれから見せる事を今この場にいる者だけの秘密にしていただきたい」
陛下の目を真っ直ぐに見て訴えかける。真剣な眼差しを見て陛下は
「わかった。これよりエルフィンがする事その一切を本人の許可なく他言する事を禁ずるこれは王命である」
「ありがとうございます」
国王陛下の許可が出たので俺は右手を前に突き出す
「【検索】エア砦の状況を皇国軍、帝国軍に色分けして表示。ここにいる者にわかる様に画像ON」
すると目の前の空中に画像が映し出される
「こ、これは一体!?」
「陛下、カーマイン今まで黙っていてすみません!俺は渡り人です。」
「「!!!」」
「色々聞きたいことがあると思いますが今は時間がありません。質問は落ち着いてからでお願いします」
陛下とカーマイン、他の重臣達も了承したように頷く
「追加【検索】現在のエリィの位置を表示」
映し出されている地図に緑の点が現れる。それを見た陛下が
「これはもしや!」
俺はまだ涙を流しながらもこちらを見ているユーフォルディア皇女の方を見て
「エリィは今も皇国軍に守られ砦に居ます!」
ユーフォルディア皇女は先程の絶望の表情から明らかに変わる。
「砦内の青い点が皇国軍、外にいる赤い点が帝国軍です」
「今は守れているとしてもこれは……」
そう、赤い点を示す帝国軍は明らかに皇国軍の4倍はある数で砦を囲んでいる
「えぇかなり皇国軍が不利な状況です。なので俺が先に砦に向かい援軍が到着するまでの時間を稼ぎます」
「無茶だ!いくらお前が強いと言っても相手は軍隊だぞ」
カーマインが俺を心配して止めにくる。だが俺は……
「例え危険だとしても俺は自分の女が窮地に居るのを黙って見ているつもりは無い、時間を稼ぐだけならやり方はある。それに奥の手もある」
「しかし、いくらなんでも1人では」
「カーマイン、お前が俺と逆の立場ならどうする?」
「…制止を振り切っても向かうな」
「だろ?」
「………4日だ、4日後の昼には必ず援軍を率いて砦に行く!」
カーマインは俺の方を見てそう言った
「まさかお前が来るつもりか?」
「当然だ!未来の義妹を見捨てられるか!父上、エルフィンには私の馬を貸します。よろしいですね」
「……よかろう。許可する」
「ありがとうございます。エルフィン直ぐに準備をさせる」
「あぁすまん、それと砦に持ってく物資をできる限り集めてくれ!数に上限は無い、これも俺の能力でいくらでも持って行ける」
「わかった!なら1時間程待ってくれ、急いで用意させる。その能力についてもこれが落ち着いたら説明してもらうぞ」
この会話を聞いていた国王陛下が
「皆、今の話の通りだ!1時間で出来るだけの物資をかき集めてくれ」
「「「はっ!」」」
部屋にいた重臣達が一斉に部屋を出ていく。俺はソファーにいるユーフォルディア皇女のところに行き
「皇女様、エリィは俺が必ず救ってみせます!」
「!!お願いしますエルフィン様、妹をどうかお助け下さい!」
ユーフォルディア皇女は俺の手を握り頭を下げ懇願してる。
「えぇ必ず一緒にここに戻って来ます」
そして、壁際にいるクイナとミアの所に行き
「クイナ、ミア。さすがに今回は連れて行けない。大人しく王城で待っていてくれ」
「はい、わかっております。エル様どうかエリィさんを助けてあげて下さい」
「エル兄様、エリィお姉ちゃんを守ってあげて!」
「あぁ必ず連れて帰る!そして、また家族皆で食事をしよう」
「「はい!」」
「マスター、ボクハ、ツイテイッテイイ?」
ミアの頭の上に座っていたラフィが尋ねてきた
「そうだな、ラフィは俺について来てもらった方がいいかな、向こうで何があるか分からないから」
「ラフィちゃん、エリィさんは大事な家族なの守ってあげて」
「ラフィ!お姉ちゃんをよろしくね!」
「ワカッタ!フタリノカワリニ、ボクガマモルヨ!」
「俺も準備をして来る。陛下、王妃様二人のことよろしくお願いします」
「王家が責任を持って預かろう」
俺は王城を出てそのままガラムの親方の店に駆け込む
「親方!出来てる矢、全部ちょうだい!普通の矢もあるだけ全部!」
「お前はいつも来るなりなんじゃ!」
「ごめん!親方さん、説明している暇がないんだ。他にも武具の在庫があったらちょうだい!」
「何言っとんじゃ!」
「お願い!」
そう言ってガラムの親方に頭を下げてお願いをする
「……まったく!裏の倉庫に在庫がある。いるやつは全部持っていけ!」
「ありがとう!代金はモーノ商会にお金預けてるからそこから貰って!話しとくから」
そう言うと裏の倉庫に行き、持っていく物を従業員にメモして貰いながらアイテム鞄に入れていく。そして、同じようにワールさんの店に行き親方から請求書が来る事を伝えてから食糧を買い漁る。1時間後王城に戻ると広場に大量の物資が積まれていた。
「エルフィン殿、集めれるだけの物資を揃えました。王城にある予備の武具、食糧、回復薬です」
「ありがとうございます、キース団長」
「これぐらいどうということありません。私も殿下と共に駆けつけます。御武運を」
「はい、待ってます。所でカーマインは?」
探していると馬を1頭連れて現れた
「これは立派な馬だな!」
白い馬体にブルーのたてがみをした綺麗な馬が居た
「そうだろ、彼の名は『イルド』水龍様から加護を受けた血統で脚が速く持久力もあり何より賢い」
カーマインがイルドの顔を撫でている。俺はそのイルドの前に行き
「イルド、俺はこれから大切な家族を助けに行かなければならない。その為にはどうしても君の力が必要なんだ。初めて会う俺を乗せるのは嫌かもしれないけど、どうか力を貸してくれ!」
イルドに向かって頭を下げる。イルドはこちらをジッと見たのち顔を擦り付けてくれた。
「ありがとう!よろしく」
擦り付けて来た顔を優しく撫でる。
「彼等は本来、王家の者しか乗せないのだが水龍様の加護を受けたエルフィンなら大丈夫そうだな」
「そう言えばクイナ達は?」
そう言っているとクイナとミア、それにユーフォルディア皇女様が小走りで駆け寄って来ておりその後ろを陛下と王妃様が歩いて来ている
「エル様!お城の厨房を借りて作りました。あちらでエリィさんと一緒にお食べ下さい」
「兄様!こっちも皇女様と一緒に作ったの」
クイナの手にある鍋には特製のシチューが、ミアの持つカゴにはサンドイッチがカゴいっぱいに入っていた。
「皇女様も一緒に?」
「はい、今の私にはこれくらいしかあの子にしてあげられませんから」
「三人ともありがとう!向こうでエリィと一緒に食べさせて貰うよ」
そう言ってからクイナとミアを両腕に抱き寄せる
「必ずエリィと一緒に帰って来る。信じて待っていてくれ」
「はい!お気を付けて行ってらっしゃいませ」
「エリィお姉ちゃんと無事に帰ってきてね」
「あぁ!」
二人と軽くキスを交わしたのち物資を収納に入れイルドに跨る
「エルフィン、国境までの関所には止めることなく通す様に連絡してある。だからそのまま走り抜けて構わん。皇女の事任せたぞ」
「エルフィン君、エリィちゃんは普段皇族として強く有ろうとしている。今もきっとそう、でも心の中は不安でいっぱいのはずだから傍に行って安心させて上げて」
「はい!陛下、王妃様」
「エルフィン」
カーマインが拳を突き出してくる
「お前は私の事をどう思っているかは分からないが私はエルフィンが平民であろうと掃除屋だろうと、果ては渡り人だろうと親友だと思っている」
「あぁ!俺もカーマインの事を最高の親友だと思っているさ!」
俺も拳を出し突き合わせる
「てかさっき陛下が渡り人の事喋るなって言ったばっかじゃん」
「おっと失言だ、次に会った時に文句でも言ってくれ」
「じゃぁそうさせてもらう!」
お互い苦笑する
「では4日後に……」
「砦で会おう」
俺は皆を見渡すと
「行ってきます!イルド、頼む!」
そう言うとイルドは了承する様に嘶き走り出す
「エル様!帰りを待ってます!」
「兄様!ちゃんと帰ってきてね!」
王城の広場を走り抜け城門付近に行くと門の警備兵と騎士が敬礼して見送ってくれる。そして大橋を渡り、城下町に行くとすでに騎士たちが通り道を整理し住民は左右に分けられ中央が空けられていた。
その道を通る際、見知った顔を発見する。アルフィードさんやキサラさん、ミミさん達ギルドの人達、ガラムの親方にフリスさんや鍛冶屋の皆、遠目からでも分かるエリザベス店長といつもの二人の女性従業員、それに高級レストランのあのおじさんスタッフもいた。
「王都に来て結構知り合いができたな」
その事に嬉しさを感じながら必ず生きてエリィと一緒に帰って来る。その意思がさらに強くなる。
「エリィ…俺が行くまで無茶な事するなよ」
そう思いながら最後の城壁をぬけて外へと走り出して行く。
イルドは凄いと言うだけあってさながら高速道路を走るスーパーカーに乗っている気分になる。道中は陛下が言った通り各関所では見えた時には門が開かれ警備する兵士が敬礼して見送ってくれる。国境の関所は王国と皇国の両方の兵士が敬礼していた。
「こりゃ責任重大だな」
イルドの脚もあって日が沈む前には[暴魔の大森林]の入り口に着くことが出来た。
「ありがとう、君のおかげで時間を短縮出来、体力も温存出来た」
イルドは応える様に顔を擦り寄せてくる
「これ体力増強薬、飲めば国境までは疲れずに行けるはずだ」
イルドに薬を飲ませる
「カーマインによろしくな」
そう言うとイルドは嘶いた後、国境に向けて走って行った。
「ヨシ!行くか!」
俺は少しでも魔物に気付かれない様に顔を黒い布で隠しローブも黒い物を着込んで森へと入って行く。
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪
エルフィンが森へと入って行った頃と同時刻、エア砦では対策会議が行われていた
「どうにか皇女様だけでも脱出できないか?」
「包囲網に隙がない、行くなら[暴魔の大森林]を通るしかなくなる」
「ダメだ危険過ぎる!」
「援軍要請に向かった者達は無事に森を抜けられたろうか……」
エア砦はリジット公爵の指揮の元、大軍で押し寄せる帝国軍相手に奮戦していた。連日、公爵とその側近、指揮官級が集まり打開策を話し合っていた。
「帝国軍はなんと言ってきている」
「相変わらずです。エーデルリア姫とリジット公爵様の身柄を引渡せ、そうすれば他の騎士と兵士は命だけは助けてやる、っと言ってきてます」
その要求に側近のひとりが机を叩く
「何が命は助けてやるだ!それに姫様と公爵様を渡せだ!我らが敬愛する公爵様と姫様を渡すなど死んでもさせん!」
「同然だ!そんな事我らが信念に反する!」
白熱する議論に上座に座る男性が手で制し場が静かになる
「みなの気持ち嬉しく思うぞ。だが私の身一つでそなたらの命が救われるなら何時でも投げ出すつもりだ」
「何を言われます閣下!我ら貴方様の為ならこの生命いくらでも盾にしましょうぞ!」
「そうです閣下!」「我らの魂、公爵様と共に!」「最期までお供します!」
「ありがとう、だがその生命どうか皇女の為に使ってくれ。姫はまだ若い、帝国に連れて行かれたらどうなるか火を見るより明らか」
「……御心のままに」
「一旦、休憩にしよう。帝国軍はすでに兵糧切れと降伏待ちに入っている。夜間に攻めてくることはなかろう。見張りだけ強化しみな身体を休めてくれ」
公爵の言葉で一旦会議は閉じられ各々身体を休めに入る。公爵も自室に戻り椅子にドカッと座り大きく溜息をついた。その時ドアがノックされ1人の女性が入ってくる。
「叔父様……」
「おぉエリィか、どうした?」
エーデルリア皇女は公爵の近くによると
「戦況はいかがですか?」
「なぁに、エリィが心配する程ではない。部屋でゆっくり……」
「叔父様!!」
公爵の言葉の途中でエリィが大きな声を出す。そして、公爵を見据え
「叔父様、お願いします。本当のことを教えて下さい。この砦はいつまでもちますか?」
「……おそらく明日には帝国軍も痺れを切らし攻め入ってくるだろう。皇国軍の大半が負傷兵とかしている、そうなれば半日として持たないだろう。」
「………そうですか」
エーデルリア皇女は目を伏せてそう呟いた
「済まないエリィ」
「いえ、叔父様のせいではございません」
「いや謝らせてくれ、この砦が帝国軍に制圧されたらエリィは帝国軍に捕縛され帝国へと連れていかれるだろう。そうなればどうなるか容易に想像が着く。」
「……はい」
「そうなった場合、私にはエリィの尊厳を守ってやる事しか出来ない」
「承知しております」
「もちろんそうならない為に最期まで足掻く。だが皇族として覚悟だけは決めておいてくれ。そして、この様な酷いことしか言えぬ愚かな私を許してくれ」
「そのようなことはありません。叔父様はとても立派な叔父様です」
二人はハグをした後、エリィは自室へと戻った
「カリン、便箋と封筒を用意してくれる?」
「姫様何を……」
「私の想いを綴って残しておきたいの」
その意味を理解したカリンは涙目になりながら用意する。その間、エーデルリア姫は王都のある方を眺め涙を流すのであった。




