表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/38

悪夢、再び フラグP-5

特訓は朝から開始した。見張りの当番は同じ時間にしてもらったので片方が見張りで特訓できないということはなくなった。リンカはカリアさんが指導しライカは俺と訓練する事に


「そいじゃ始めるぞ、ライカは部分強化を意識してできるんだよな?」


「はい、出来ます」


「なら脚に集中してかけてみな」


「わかりました。でも脚に強化をかけてあれほど早く動けるものなんですか?」


「普通のやり方じゃ無理だ。人は無意識に肉体にあった強化を施してしまう」


「ではどうやって」


「意識して強めの強化を脚にかけ限界を越えさせる」


「それって脚は大丈夫なんですか!」


「大丈夫じゃない!足のアキレス腱が切れたり筋肉断裂を起こす、俺の実体験だ」


あの時は万能回復能力を取っといて良かったと心底思った


「ダメじゃないですか!」


「その為に回復魔法を予め脚にかけてアキレス腱や筋肉がちぎれ出す前に修復させるんだよ」


「簡単に言ってますけどそれって強化魔法と回復魔法の二重がけをするって事ですか?」


「そうなるな、言ったろ、ライカ次第だって。ほれ!まずは二つ発動させるとこからな、二つの比重を間違えると足痛めたり上手くいかなかったりするから気をつけろ」


「……はい」


ライカは思った以上の難易度にげんなりしてるがそれでも俺の言葉を聞き真剣に覚えようとしているのがわかるのでなるべく丁寧に教える事数時間、日が傾きかける前に今日の特訓を終了した。そして、二人は


「あ、脚がもげる!」


「身体の関節がぁ………」


クイナ達が料理を作っている横でライカとリンカは激戦を越えた様な状態になっている。ライカ達は元のテントを設営していた場所からこちらに移動させていた。なので今日も一緒に食事となっている


「ずいぶんきつい特訓をしたようだね」


「いやいやカリアさんの方がすごいんじゃないですか?」


「何言ってるんだい!ホントにきついのはここからだよ」


「俺の方も基礎をしているとこですからこれからってとこですかね」


ライカとリンカが精神的にダメージを受けていた


「ほらライカその脚も自分の回復魔法で治療しろよ。そうすりゃ回復魔法の腕も上がって一石二鳥ってな」


「エルフィンさんって結構スパルタですよね」


「俺の修行時代はこんなもんじゃなかったぞ?しょうがないから今日は俺が治してやるよ」


仕方ないので今日だけ特別に治してやった、ついでにリンカも


「ありがとうございます、エルフィンさんは回復魔法の実力も凄いですね」


「本当に、もう関節の痛みがほとんどないです」


「回復魔法の上達にはまず数をこなせ、自分についた傷も自分で治すことでどれだけ魔力がいるかどう治せばいいかと自分で感覚を見つけるんだ。それだけで治りはかなり変わる、特に今の技は自分の身体の構造を把握する事も重要な要素だからな」


「わかりました。明日からは自分で治します」


「だったらライ君、私もお願いね。練習にもなるでしょ」


「ありがとう、リン」


「なら明日の特訓は一段と厳しく行こうかね」


その瞬間リンカが絶望の表情をしていた。


「が、頑張ります」


「ライカもな」


「は、はい」


「エルフィンも厳しくないか?」


ちょうど見張りの当番から戻って来たガドランが合流する


「使い方を間違えたら大怪我じゃ済まないからな、厳しくもなるさ」


「なるほど」


「でも、疲れを残したまま明日練習すると怪我するからライカとリンカちゃん、これを寝る前に飲んでおくように」


小瓶をライカに渡す


「なんですか?これ」


「体力増強薬、それを寝る前にスプーン1杯だけ飲んで寝れば翌日に疲れを残さないで済む、まぁ本来は動く前に飲むものなんだがな」


「それは凄いですね」


「1杯だけにしとけよ、1瓶飲むと丸一日全力で動けるが1日経つか増えた分の体力が無くなるとしばらく寝込むことになるぞ」


「おいそんなの飲ませて大丈夫なのか?」


ガドランが効き目とリスクを知って聞いてきた


「1杯だけならな、昨日も寝床に入る前に俺達も飲んだから平気だ」


「昨日、そんなに疲れてたんですか?エルフィンさん」


リンカがそう質問してきた時、料理を持ってきたクイナとミアが()()()を思い出し表情を赤くして顔を背けてしまった。

その反応にガドランとカリアさんは


「……あぁ、なるほどな」


「若いねぇ」


「えっ?何がです?」


ライカは意味がわかったようだがリンカがまだわかってなかったので


「あのね、リン……――――」


ライカがリンカに教えてあげている


「――――!!」


意味を知ったリンカも顔が赤くなり下を向いてしまった


「ガドランとカリアさんもいります?」


()()()方面はともかく魔物と殺り合う前に飲んどくといいかもねぇ」


「そうだな、魔物氾濫(スタンピード)は常に連戦になるからな体力が続くのはありがたい」


なのでガドランとカリアさんにも渡した


「後、ライカとリンカちゃんには回復薬もやるよ。二人はアイテム鞄かポーチを持ってるのか?」


「僕は父さんから貰ったものが」


そう言って使い古されているがよく手入れのされたアイテムポーチを見せてくれた


「私は持ってないです。あれ結構値段が高いので……」


「あぁ確かに買おうとしたら高いかな……じゃぁ俺の持ってる予備をやろう」


するとリンカが慌て出す


「いえ!いいですよ、体力増強薬だけでなく回復薬にアイテムポーチまで貰らうなんて普通に買ったら金貨十数枚はなくなりますよ!」


「それは気にしなくていい、全部俺が作った物だから」


「……えっ?全部」


「おう、全部」


驚愕の事実にライカとリンカは驚く


「なんだい、坊やは錬金術もやってるのかい」


「えぇいろいろ作ってる内に上達しました」


「ちょっと待って下さい!そうだとしてもこんなにいい物を貰う訳には」


「まぁこれは依頼料だと思ってくれ」


「依頼料…ですか?」


ライカとリンカは依頼料という言葉に困惑している


「昨日クイナと約束した村人達の情報調達、その前払いとでも思ってくれ」


「情報を得られるか分からないのに先にもらうなんて」


「皇国に情報がないという事は獣魔国に逃れたかも知れないと考えられるから行き先を絞ることができるしな」


「で、でも……」


まだ遠慮するリンカにカリアさんが


「リンカ、貰っときな。命に繋がる物だしこんないい品滅多に手に入らないよ」


ガドランも


「そうしな嬢ちゃん、それにこいつにとって金貨数十枚は損にならない。十分稼いでるからな」


「ま、そういう事だ。死なれたりしたら皇国での情報が貰えなくなるし気にせず取っといてくれ」


「わかりました。ありがたくいただきます、その代わり何かしらの情報は見つけてみます」


「あぁ頼んだ」


そこからは集まったメンバーで食事をし各自のテントに戻る


「あっ、ライカ」


「はい?なんですか」


「薬飲んだら休めよ?」


「どういう意味ですか!?」


ライカとリンカは同じテントで寝ている、つまりそういう事だ。


「ちょっとエルフィンさん!?」


ライカとリンカが慌て出す


「『押すなよ!押すなよ!』の真理じゃないからな」


「何処の世界の真理ですか!」


逃げるようにライカ達はテントに帰って行った。俺達もテントに帰ると


「そう言えばエル様」


「どうした?クイナ」


「先程のライカさんが仰ってた『スパルタ』てどういう意味ですか?」


「えっ?スパルタって知らない?」


「はい、少なくとも私は知りません。ミーちゃん知ってる?」


「うーん、知らない」


(どういう事だ?クイナ達が知らないだけ?いや、そもそもこちらの世界にない言葉なのか、だとするとライカは……もしかしてリンカもか)


「エル様?」


「ん?あぁごめんごめん、スパルタとは厳しい指導をする人の事だよ」


「へぇそうなんですか」


(仮にライカ達がそうだとしてもわざわざ聞くことではないな、知られると嫌な事もあるだろうし必要になったら聞けばいいか)


少しばかりの疑問を抱きながらも今日も()()()()()にして眠りについた。

翌日も朝から特訓をしているとアルフィードさんが見に来た


「今日も頑張っているようだね」


「アルフィードさん、魔物氾濫(スタンピード)の方はどうですか?」


「現在の魔力の膨張具合からおおよそ予定通りか誤差1日と言った所かな」


「そうですか、なら特訓はあと二日にして置いた方がいいですね。ところでアルフィードさん魔物氾濫(スタンピード)はなぜ弱い魔物から出てくるんですか?」


「そうか、君は渡り人だから知らないんだったね。魔物氾濫(スタンピード)には大まかに分けて突発型と蓄積型の2つある。今回のは蓄積型なるが発生する要因は世界に張り巡らされている魔力道、龍脈とも言われる地中にある魔力の流れが地震などにより分断されたりズレたりして魔力が滞り行き場をなくした魔力が塊になったのが魔洞となる」


アルフィードさんは俺の横に来てライカが特訓するのを見ながら説明してくれる


「そして、なぜ弱い魔物から来るのかというと例えば魔洞を大きな水瓶としよう。水瓶にどんどん魔力が入る、そしてヒビができてそこから魔力がこぼれ出す、これが魔物氾濫(スタンピード)の第一波、ヒビが大きくなり穴が空き大量に魔力が流れ出すこれが第二波、大体はこれで治まるんだけど今回は魔力がかなり蓄積されているから魔洞自体つまり水瓶自体が壊れてさらに強力な個体が現れる可能性がある」


「なら最後まで気が抜けないですね。突発型と言うのは?」


「発生原因は同じだがその規模は蓄積型に比べかなり小さい、魔力が溜まる前に魔物が生成されるからね。要は魔力を貯める為の器が小さいんだ、でもその分溜まり始めて魔物氾濫(スタンピード)が起こるまでの期間が極めて短い、その為発見が遅れることが多い……小さいとはいえ魔物氾濫(スタンピード)に分類されるものだから危険な案件だ。クイナさん達の村を襲ったのもこの突発型によるものだよ」


「そうですか………」


「すまないね」


アルフィードさんにいきなり謝られた


「えっ?どうしたんですか」


「クイナさん達の御家族の行方は調べてるんだがなかなか足取りが掴めないんだ」


「それは別にアルフィードさんが悪い訳ではないですよ」


「いや、魔物氾濫(スタンピード)の被害を受けた村人の保護も掃除屋(スイーパー)の仕事だよ。だけど森に放たれた火の勢いが強くてなかなか捜索ができなかったそうだ。火が収まってから焼け跡を捜索したが焼死体らしき物は見当たらなかったかので何処かに逃げてるとは思うんだけど、これも火事のせいで痕跡が消えてしまっているんだ」


「王国内で見つからないとなるとやっぱり皇国か獣魔国に行ってる可能性がありますね」


「そうだね、その時期は村と王都の間に盗賊が出ると噂が流れていたからそれを避けたかもしれないね」


「あぁ、ワールさん達を襲ったあの盗賊達ですね」


「そう、逃げるのが上手いヤツらだったけどエルフィン君のおかげで壊滅できたから今は安全に通行出来ようになったよ」


「皇国の方の捜査はライカ達が調べてくれる事になったけど獣魔国側はどうやって調べてみようかな…」


「ギルドの方からも獣魔国のギルドに情報提供をお願いしてみるよ」


「ありがとうございますアルフィードさん、依頼料は出しますので」


「それはいいよ、その代わり魔物氾濫(スタンピード)での活躍を期待してますよ」


「はは、それは当然です!ランクを上げないといけませんから」


「頼もしいな、君なら今回の活躍でAランクに昇格させる事も可能だから頑張ってくれ」


「了解です!」


(AランクになればSランクまで残り一つ待ってろよエリィ)


また四人、今はラフィが増えて四人と精霊一体で暮らせる様に頑張ろうと思う今日この頃である。

そして特訓開始から数日、予定より一日早い段階で異変が見られた。早朝というよりまだ夜中という時間に魔洞の魔力が膨張を始めた。その為、皆が一斉に準備体制に移行する。


「今し方、魔洞の魔力の膨張を確認した。このまま行けば日の出と共に魔物氾濫(スタンピード)が開始するだろう」


アルフィードさんが主だった者を集め最終確認をしている


「第一波を速やかに排除する為予定通り魔法部隊による一斉射撃をし、魔物の勢いが削がれた所を前衛部隊が殲滅。第二波に備える。第二波は予想通りなら重量級の魔物が多数現れるはずだから1人で相手をせず周りと協力し複数で対処する様に。後衛部隊は飛行型の魔物と前衛の援護をして防衛戦の維持を!」


「オオッーー!!」


各自が事前に割り当てられた場所へと移動を開始する


「エルフィン君とクイナさんミアさんは私といるように、そうすればエルフィン君が離れたとしても彼女達は私が守れるからね」


「アルフィードさん有難うございます!」


各自が自分の場所に移動しその時を待つ。


そして、その時は日の出と共にやって来た。前方に広がる森の奥から地鳴りがなり始め遠くに砂煙が見え始める。


「おめぇらーーー!!気合い入れてけ!ここを突破されるとこの先にある町や村に被害が出る!ここで食い止めるぞ!!」


「「「ウオオォォーーー!!!」」」


ガドランが前衛の士気をを高めている。


「やっぱり彼に前衛の指揮を頼んで正解だね」


「そうですね、とても頼り甲斐のある友人(ダチ)ですよ」


アルフィードさんと一緒にガドランの頼もしさを話していた


「それではキャルシア君、頼めるかい?」


同じく後衛部隊として待機しているキャルシアさんにアルフィードさんが先制攻撃を指示する


「ん!任せて」


相変わらず言葉数が少ないと思っていると


“爆炎よ 其の炎をもって 眼前の敵を 燃え爆ぜよ”


長めの言葉が出てきた!

俺みたいな付与魔法を主軸にした戦いをする者は基本無詠唱で戦闘するが、純粋な魔法術士はイメージを言葉にすることでさらに鮮明に魔法を放つ。キャルシアさんもその手に持つ魔杖に魔力を注いでいく。そして、魔物が森を出てくるなり魔法を放つ


ドゴゴゴッーーーン!!!


「よし!魔物の足が止まってるうちに叩くぞ!」

「オオッーー!!」


ガドランの号令と共に前衛部隊が魔物へと攻撃を開始する。


「こりゃ俺の出番はないかな」


爆炎により倒された魔物が後続の魔物の進行を遅らせる壁になり速度の落ちた魔物をガドラン達がドンドン倒していく。


「ここで時間をとる訳には行かないからね。少し時間を置いて第二波が来る、早く倒して少しでも休息をとって備えた方がいい」


ガドランが率いる前方の部隊、左右の皇国の部隊に《破岩》のルドルフさんも早いスピードで魔物殲滅していく


「魔物って一体なんなんですかね?」


ふと疑問に思った事をアルフィードさんに聞いてみた


「それについては色々と諸説あってある者は生きる者を脅かす混沌(カオス)だと言い、またある者は人々に恵みをもたらす恩恵(ギフト)だという者もいる」


混沌(カオス)恩恵(ギフト)ですか……」


「魔物とはこの大陸、世界に生きる者の命を奪う災害であると同時にその毛皮や肉、魔石は人々の生活を支える資源でもある。魔物がいなくなれば命の危険は減るだろう、だが新しく資源を得ることが出来なくなる。そうなれば人々は残された資源を奪い合い、果てには人同士で殺し合いを始めるだろう」


「難しい問題ですね」


「そうだね」


アルフィードさんと話している内に第一波の殲滅が完了していた。前衛部隊は第二波が来るまでの間に負傷者の手当てや水分補給等を取っている。幸いまだ死者は出てないようだ。


「おめぇらー、準備運動は終わりだ。ここからが本番だぞ!」


ガドランが士気が落ちないように激を入れている


「なんつーか、ガドラン慣れてますね」


「彼はこれまでに何度も魔物氾濫(スタンピード)を経験しているからね。彼の言う様にまだ漏れ出た魔力が魔物化しただけだからこれからは上位の魔物も出てくる。油断は直ぐに死へと繋がるからね」


「物見より報告!魔洞より魔力の膨張を確認!」


第一波が終わったのも束の間、直ぐに第二波の報告が入る


「情報早いですね」


一応俺も検索能力で魔物の動向を確認しているけど情報がタイムリーで入って来る


「魔洞が見える位置に偵察と魔力感知が得意な者を向かわせている。本人の魔力感知と魔法具で確認してもらってるんだ。さらに中間地点にも視力のいい獣人の者を配置しておおよその数と種類を見てもらって通信魔法具で報告してもらっている」


すると直ぐに


「中間地点より数確認!およそ三千強!Cクラス多数、少数ですがBクラスも確認!」


「やはり通常より強力な個体が多いね」


「さらに飛行型の魔物も確認!大型の魔鳥も複数来ます!」


「てことは俺にも出番が来そうですね」


「あぁ頼むよ。飛行型は前衛部隊にはきついからね」


報告を聞いて前衛部隊も迎撃準備に移行する。目視でも確認出来る距離まで来た。第一波に比べて遥かに数も質も上だ。


「では早速仕事しますか〜ねっと!」


森から出てきた大型の魔鳥を弓矢を使って一発で仕留める


「さすがの腕前だね」


「まだまだこれからですって!!」


続けて二匹の魔鳥目掛けて矢を放ち一発ずつで撃ち落とす。その様子を見ていたキャルシアさんも


「負けない」


そう言って魔法を放っている。一方その頃前衛部隊も


「相変わらずとんでもない腕をしてるなアイツは……」


飛んでくる大型の魔鳥を次々に撃ち落とす様子を見てガドランがボヤいていた


「上空の魔物は位置だけ把握して攻撃が当たる範囲だけ迎撃しろ!それ以外はエルフィンがどうにかする!ただ落ちてくる魔物には気をつけろ、下敷きになるぞ!」


ガドランが率いている部隊に号令を出している。そこに


「坊やが戦う所を初めて見たがとんでもないね」


「よう、カリア。もうへばったか!」


「坊やのくれた薬でまだまだ元気だよ!魔物に硬いやつらが多いのが面倒くさいけどねぇ」


「確かに岩亀(ロックタートル)が多い、他にも防御が硬いのがいるな」


「倒せない事はないんだが時間がかかっていけないよ。キャルシアがなるべく減らしてくれているみたいだけど」


「こればっかりは愚痴っても仕方ないだろ?とりあえず死ぬなよカリア!」


「あんたもねガドラン!」


そして、二人は二手に割れて魔物へと進んでいく。順調そうに見える討伐、しかし突然の報告に自体は急変する


「急報!魔洞から魔力膨張を確認!第三波来ます!!」


「来るとは思っていたが間隔が早い!直ぐに前衛部隊にも連絡を!」


「はい!」


「中間地点から規模の概要は?」


「現在確認中!…………来ました!…えっ?こ、これは!?」


「どうしました?」


中間地点から連絡を受けた連絡員が明らかに動揺をし始まる。


「Bクラスの魔物を複数確認、さらに…………亜竜(ワイバーン)を確認したとの事…です」


連絡員は状況を報告しながら青ざめていく


亜竜(ワイバーン)!?」


亜竜(ワイバーン)出現という報告を聞いて後方部隊に動揺が走る


「数は何体ですか?1体、それとも2体ですか?」


連絡員はまだ青ざめた表情で


「全部で………6体確認との事です」


その瞬間アルフィードさんが険しい表情なる。後衛部隊にいる掃除屋(スイーパー)達も恐怖の表情へと変わっていく。亜竜(ワイバーン)はAクラスに分類される魔物で一体に対してガドランの様なAランク掃除屋(スイーパー)がパーティーを組んで万全を期して相手をする(たぐい)の魔物である。それが6体、さらにBクラスの魔物も複数いる上に魔物氾濫(スタンピード)中である事を含めて絶望的である。……本来であればだが


周りの恐怖の表情に不安になったクイナとミアがエルフィンの所に行く


「エル様……」「エル兄様…」


二人が見たエルフィンの表情は……


亜竜(ワイバーン)かぁ〜〜」


とても嬉しそうな顔をしていた


「え、えっとエル様?」


「ん?あぁクイナどうした?」


「いや、あの亜竜(ワイバーン)が………」


「あぁ来てるな、あれ塩付けて焼くと美味しいんだよ!」


「えっ?いや、その、えぇ?」


「でも俺のおすすめはピリ辛のドレッシングを付けて食べると美味い!あの辛みが最高なんだよ」


「エル兄様、怖くないの?」


「なんで?」


「だって皆、怖がってるよ」


「いやいや、ただの羽の生えたトカゲじゃん」


「いやトカゲじゃないから兄様」


あまりに予想外れ的外れな返答にクイナもミアも恐怖と不安がすっ飛んでいた。そのやり取りを見ていたアルフィードさんは


「エルフィン君、あれをどうにかできるのかい?」


「えっ?普通に撃ち落としますよ。じいちゃんなんて亜竜(ワイバーン)見た瞬間『ご馳走じゃぁ!』って我先に仕留めに行ってましたよ」


「いや、あの人はって…そうだった(きみ)はあの人の孫だったね。つまり問題ないと」


「問題にならないほど問題ないですね」


「そ、そうかい……」


アルフィードさんの気が抜けている頃、前衛部隊にも情報が入る


「ガドランさん!ギルマスから緊急報告です!」


「どうした!?」


魔物を相手にしながらガドランが報告を聞く


「第3波が発生、Bクラスが多数さらに亜竜(ワイバーン)が現れたとの事」


亜竜(ワイバーン)だぁ!?」


「はい!全部で6体、ルドルフさんのいる西に1体、皇国の方に2体、こちらに3体向かってきてます」


「ここが一番多いじゃねぇか!?それでギルマスはなんて」


「えっとギルマスではなくてそばにいた弓士からなのですが」


「弓士?エルフィンか、なんだって?」


「はい、そのまま伝えます『ガドランちょっとそこに敵を止めておいて、それとちゃんと()()()()』との事です」


「止めとけだ!?それに避けろってどういう事だよ!?」


ガドランが指示の意味が分からずボヤきながら魔物を倒している


「兄貴どうします?」


ガドランのパーティーメンバーが指示を待っている


「んなもん決まってるだろ!あいつのやる事なんて考えてもしょうがねぇ、言われた通りやるだけだ」


するとガドランは前衛部隊に向けて


「今から亜竜(ワイバーン)が来るが俺の友人(ダチ)がどうにかするらしい!おめぇら戦線を維持しろ!おめぇらはあいつをまだ信用出来なねぇかもしれねぇが俺は信用している!だからあいつを信じている俺を信じろ!!」


その声は後衛部隊まで届き


「ずいぶんガドラン君に信頼されているね」


「まったく恥ずかし事を大声で言いやがって」


悪態を着くがその表情はとてもうれしそうなエルフィンである。そうこうしている間に亜竜(ワイバーン)が目視できるまで接近して来る


「兄貴、あれ本当に大丈夫なんですか」


亜竜(ワイバーン)が見えた事で前衛部隊にも緊張が走る。


「お前ら一応警戒だけしとけ!」


そうガドランが言った時だ。


「ギャオォォォーー!!」


亜竜(ワイバーン)が咆哮を上げる。

そして、ガドラン達目掛けて急降下……いや、()()してくる


「おい、待て…まてまてまて、ちょっと待てぇぇえ!!!前衛部隊全員後退しろ!!!」


亜竜(ワイバーン)はさっきまでガドラン達が戦っていた魔物の頭上へと落ち複数の魔物を下敷きにしていた。残りの2頭も続いて降り注いで魔物を下敷きにしている。その光景にガドランは


「くぅおらァーー!!エルフィン!俺達まで下敷きにする気か!!」


丘の上にいるエルフィンに向かってガドランが大声で叫んでいる。肝心のエルフィンは笑いながら手を振っていた。


「ったくあの野郎は…」


そう言いながら亜竜(ワイバーン)の方を見る、すると眉間の所に1本だけ矢が刺さっていた


(まったくとんでもねぇな亜竜(ワイバーン)さえ一撃かよ)


「兄貴大変だ!カリア姐さん所に鉄亀(アイアンタートル)が出て苦戦してる」


「よし!援護に向かうぞ!」


(負けてられねぇな)


カリアの所に向かおうとした時だ


「ガドラン!!!亜竜(ワイバーン)の影に魔物がいるぞ!!」


エルフィンの声が聞こえた時にはすでに大型の熊の魔物が接近していてその爪が振り下ろされていた。ガドランは不意を突かれ体勢を取れず威力を流すことが出来ずに大剣でモロに受けてしまう。そして、大剣はその威力に耐えきれず折れ爪はガドランを深々と抉っていく。


(くそぉっ!!やっちまった……わりぃ…キサラ)


「ガドラン!!!」


深手を負ったガドランはその場に倒れ込むのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ