表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/38

悪夢、再び フラグP-4

新しい家族、精霊のラファエルを迎えた翌日の朝。魔物氾濫(スタンピード)鎮圧メンバーは朝食後速やかにテントをたたみ目的地に向けて出発する。そして、その道中の馬車の中


「ねぇ()()()


「ナニ?ミア」


風の精霊とじゃれ合うミア


「ラフィちゃん、はい果物」


「ワーイ!アリガトウ、クイナ」


クイナから果物をもらい喜ぶ風の精霊、三人は昨日初めて会ったとは思えないほど仲良くしておりラファエルは愛称もつけてもらっていた


「なぁラフィ」


「ナニ?マスター」


「昨日も話したがこれから魔物の討伐に向かう。もしもの時はラフィが二人を守ってやってくれ」


「よろしくお願いしますラフィちゃん」


「お願い、ラフィ」


「マカセテクダサイ!マスター!フタリハボクガ、マモル!」


両手を上げてやる気を出している。その後は予定通り進み夕方前には着くことが出来た。


「エルフィン君、今現場の指揮をしているAランク掃除屋(スイーパー)と顔合わせをしたいんだが今いいかい?」


「構いませんよアルフィードさん、二人も一緒にいいですか?」


「あぁいいよ」


ということで顔合わせに向かう。現場にいた人に聞くと全体を見渡せる丘の上にいるらしい。アルフィードさんとその場所に向かうと少し背の低い人がたっているのが見えた。近付こうとした時別方向から女性が走ってくる


「キャルちゃん、ギルマスの一行が来たけどどの辺に宿営してもらう?」


「あっち」


「先発隊の西側だね。あとから来る皇国の方は?」


「そっち」


「東側ね、了解!」


指示を聞き離れて行く。すると次にまた女性が来て


「キャル、食糧はどこ置いとく?」


「あっち、こっち、そっち」


「先発隊の後ろとギルマスの連れて来た隊の後ろと皇国の隊の後ろね、1箇所の方が良くない?」


「ダメ、不測」


「あぁ食糧が襲われてもいいように分散させるのね。わかった」


そして、また走って離れて行く


「え?あの短い単語であの女性達理解したの?」


どう考えても理解出来るほど単語が使われてなかったと思うけど


「さっきの彼女達はパーティーメンバーだね。付き合いが長いらしいからわかるんだろう。」


「アルフィードさんは分かります?」


「………とりあえず彼女を紹介しよう」


無理やり話をそらされた気がする


「お疲れ様、キャルシア君」


「……ん」


アルフィードさんが声をかけるとかすかに頷く


「こちら紹介しとくね。有望な新人のエルフィン君だ」


「弓士のエルフィンです。後ろの二人は連れのクイナとミアです、よろしくお願いいたします」


「ん、キャルシア」


自分の名前を言うと手を出してきた


(これは握手でいいのかな?)


ひとまず握手をする、するとかすかに頷く。どうやら正解らしい


「彼女は《沈黙の魔女》と呼ばれる凄腕の魔法術士だ。エルフィン君と一緒に後方支援になるから仲良くやってね」


「えっとキャルシアさんよろしくお願いします」


「……んっ!」


(この人の二つ名、この無口なとこからきてるだろ………)


「ではひとまず顔合わせは終わりで、また皇国の面々が来たら集まるからよろしくね」


そんな訳でとりあえずテントの設置を済ませることになった。昨日と同じようにテントを組み立てて外の所に長椅子の代わりに丸太を少し削って作ったものを置く。そこにガドランが来て


「おーいエルフィン、皇国の奴らが来たから作戦の確認をするってよ。作戦室代わりのテントに来てくれ」


「おう!クイナ達は……」


ガドランに返事をしてクイナ達を見るとミアがクイナの肩に頭を乗せ寝ている所だった。


「起こしますか?エル様」


「いや、いい。馬車での移動とはいえずっと乗ってても疲れるからな、そのまま寝かせておこう。俺は呼ばれてるから行くけど何かあったら直ぐに呼べよ?ラフィ、二人を頼む。誰か絡んできたら様子を見た上で吹き飛びせ」


「はい、分かりましたエル様。行ってらっしゃいませ」


「フタリハマカセテ!マスター」


ラファエルに二人を任せて俺はガドランの後を着いていき大きめのテントの中に入る。そこには二本の剣を背に抱えた歴戦の戦士風の男が立っていた。


「紹介するね、彼はうちのギルドの優秀な新人のエルフィン君だ」


「弓士のエルフィンです。よろしくお願いします」


「双剣士のアイルズだ。一応《銀翼》と呼ばれている。それにしても……弓士のエルフィンか、もしかしてうちの国の姫様を助けたのってお前か?」


「はい、一応そうなります」


「なるほど、てぇ事は第二皇女のハートを射抜いた奴ってぇのもお前だな?」


「ブッ!!なぜその事を?!」


「情報の早いやつの耳には入ってきてるぜ!まぁ一般市民はほとんど知らないだろうがな」


「もう皇国にも入ってるんですか」


「知ってるのと知らないとでは大きな差が出る。情報は早ければ早いほど武器になる、覚えておけ」


「はい、ありがとうございます」


俺が肩を落としている横でガドランは爆笑していた。


「それでは簡単に配置について確認をする」


アルフィードさんが作戦の確認を始める


「まず前線は西を明日到着のルドルフ君が中央をガドラン君とカリア君、東はアイルズ君率いる皇国の掃除屋(スイーパー)が担当し後方は私とキャルシア君、エルフィン君が魔法と弓で前線を援護、さらにエルフィン君は負傷者が出てきて救護班が遅れ出したらそちらも助手二名と一緒に手伝う」


「おめぇ回復もできるのか?」


「はい、できます」


「彼は回復術士と錬金術士の職業(ジョブ)を持っている。腕前は私が保証しよう」


「ギルドマスターのお墨付きか、なら安心だな。続けてくれ」


「従来の魔物氾濫(スタンピード)なら第一波そして第二波と分かれ最初の方は足の速いウルフ型や小鬼(ゴブリン)型、あとは飛行型の蜂や蝙蝠が来るだろう。こいつらは1匹1匹は弱いが数が多い、だがあまり時間をかける訳にもいかない」


アルフィードさんは机の上に引いている地図の上に駒を置きながら説明をしている


「速やかに第一波を排除して第二波に備える。第二波には主に重量級の魔物が多くなるだろう、無理に1人で対応しようとせず必ず複数で攻めるように」


「了解した。しかし今回の魔洞はかなりの魔力を貯めている。第三波も警戒した方がいいんじゃないか?」


「あぁその通り。近年これ程の魔力の溜まった魔洞は記憶にない、第三波が発生した場合強力な個体が出てくる可能性がある。それは頭に入れて置いてくれ」


こうして作戦を確認し話し合いをしている時だった。特定の魔法の波動が伝わって来た


「!………これは!」


「どうしたのですかエルフィン君」


「すみませんアルフィードさん!クイナ達に何かあった様です」


そう言うとテントを急いで出て行く



それはエルフィンが作戦用のテントに向かって少したった頃の事だった。

エルフィンの帰りを待つクイナとその肩でスヤスヤと眠るミア、そして、ラファエルは静かに待っていた。そこに……


「おいおい!こんな所に綺麗な女が二人といいテントがあるぞ」


酒が入っているのか顔を赤くした男が数人近づいて来た。男達が大きい声を出した事でミアも目を覚ます。近くにいる者たちの話し声からどうやら皇国の実力者らしい


「お前ら掃除屋(スイーパー)じゃないな、なのにここにいてしかもいい具合のテントがある。そうか王国のギルドが用意した夜の相手用の女だな!」


「違います。私達はその様な目的でいる訳ではありません」


「はっ!まぁどうでもいい!俺は皇国でCランクの掃除屋(スイーパー)だ。ちょうどいいから俺の相手をしろよ!光栄だろ?」


「お断りします!私達には決めた相手がいますので」


目の前の男が苛立つのを見たミアはアイテムポーチから()()()()を取り出し地面に叩きつける。その間にも男はクイナを掴もうと手を伸ばしてくるが、しかし


「痛っ!!」


その掴もうとした手はブレスレットにより発動した障壁で防がれる


「なんだこれは!魔法具か!」


男は壊そうと足をガンガンと叩きつける。


「この野郎!」


男が力を込めて蹴り出そうとした時だった。男が後ろへと吹き飛びされ引き連れていた別の男達に当たる


「フタリハ、ボクガマモル!」


「ラフィちゃん!ありがとう」


どうやらラファエルが風で男を吹き飛びしたようだ


「クソっやりやがったな」


男は立ち上がりまたこちらに来ようとしていたら


「ちょっとあなた達!何やってるんですか!」


男達が歩いてきた方向から腰に二本の細剣を差した若い女性が走って来る。女性は辺りを見渡し状況を理解したようで


「あなた達は何バカな事をしてるの!」


「うるせぇ、王国の連中が掃除屋(スイーパー)じゃない女を連れてきてるから俺達が有効活用してやるんだよ!」


「女をなんだと思ってるのよ!そんなんだからランクアップ出来ないのよ!」


「なんだと!この(あま)、てめぇから可愛いがってやる!」


そう言って激昂した男は若い女性へ殴り掛かる


「危ない!リン」


ボグッ!!


「ライ君!!」


女性が殴られる前に同じ年代の若い男が間に入り代わりに顔を殴られる


「ライ君!大丈夫?!」


「これくらい平気だよ、それよりリンは怪我はないか?」


「ライ君が庇ってくれたから平気だよ!」


殴られた男は頬を手で押えながら若い女性に返事をしている


「また、お前らか!最近名が売れてきたからって調子に乗るな!!」


殴られてまだ倒れている男へ向かって激昂した男は再度殴りにかかる。

が……


バシッ!!


その振り上げられた腕が放たれることは無かった。


「エル様!!」

「エル兄様!!」


振り上げられた腕はエルフィンによって掴まれていた


「クイナ、ミア大丈夫か?どういう状況だ?」


「はい、エル様が腕を掴まれている男性が私達に絡んできたのをそちらの女性が止めに入ってくれたのです。しかし、怒ったそこの方が女性に殴りかかったのを倒れられている方が庇い代わりに殴られました」


「つまり元凶がコイツか」


「クソってめぇ放しやがれ!」


腕を掴んでいた男は空いている手で殴りにかかる。エルフィンはそれを躱しその腹の部分に拳を叩きつける


「グフッ!オエッァ!」


「どこの国にも腐った奴ってのはいるもんだな」


腹を殴られ後ろに下がった所をさらに蹴り飛ばし後ろにあった木にぶつける。そして、すかさず弓矢を取り出し衣服の部分を矢で縫いつけ木に固定し次に頭に狙いを定める


「ちょっと待て!エルフィン!」


追いかけてきたガドランが慌てて止めに入る


「別にいいだろ?こんなクソ野郎いなくても」


「だから待て!とりあえず殺すのは待て!」


ガドランは全力疾走してきたのか肩で息をする様に呼吸をしている。そして、その後を追うようにアルフィードさんと作戦用のテントにいたAランクメンバーも集まって来た。木に縫いつけた男と一緒に来た者達もその光景にオロオロし始める。


「………チッ!」


男に向かって矢が放たれる


「おい!!」


矢は男の頭から1、2センチの所に刺さっていた。


「ふぅぅ〜!」


ガドランから安堵のため息が出る。俺は弓をしまうとクイナ達の所に行く


「二人とも怪我はないか?」


「はい、このブレスレットが防いでくれましたので」


「それとラフィが吹っ飛ばしてくれたよ」


「そうか、ラフィよく守ってくれた、ありがとう」


「ワーイ!マスターニ、ホメラレタ!」


三人の頭上をクルクル回っている


「それからあちらの二人が止めに入ってくれたのですが代わりに男性の方が殴られてしまいました」


「ならあの二人にもお礼を言わないとな」


みんなでまだ座り込んでいる男性とそれを介抱している女性の所に行く


「うちの二人を助けてくれたらしいな、ありがとう」


「いえ!元を正せばこちらのギルドの人間が悪いので、本当にすみませんでした」


「悪いのはあの気絶している男で君達のせいじゃない」


「それでも私達のギルドの人間がしでかしたことですので謝らせて下さい」


見た感じまだ若いのに中々好まし性格をした2人だな


「立てるか?」


そう言って手を差し伸べる。男性が手を掴んだので立ち上がらせた時だ


バシッーン!!


音のした方を見ると《銀翼》さんが木に縫いつけた男の顔をはたいたようだ。


「起きろ!このボケナスが!」


さっきの男は至近距離に矢が刺さった恐怖で気絶していた


「んっ…えっ!ア、アイルズさん!」


「てめぇ自分が何をしたかわかってんのか?!」


「いや、その、良い女がいたのでつい……」


バシッ!


アイルズさんは再度男を殴る


「相手が嫌がってるのに手ぇ出そうとしたのか?」


「す、すみません」


「いいか、よく聞け!また同じ様なことをしてみろ。その時は俺が指揮官権限で細切れに切り刻む!お前らもわかったか!」


「「「は、はい!」」」


アイルズさんは主犯の男と一緒に来ていた男達に向かって怒鳴った


「ならとっとと自分の寝床に戻れ!!」


騒動を起こした男達は足早に離れて行った。アイルズさんはそのままこちらに来て頭を下げると


「エルフィン殿、皇国のギルドメンバーが大変迷惑をかけてしまった。エルフィン殿並びにお連れの女性二人に深く謝罪したい。大変すまなかった!」


テントの時の態度とは打って変わって真摯に謝罪する姿がそこにはあった。そして、その横では先程の男女二人も頭を下げている。


「わかりました。あなた方の心からの謝罪をお受けします。ただし今後はないようにしてください。俺は大切な女性(ひと)を害する者に容赦しません。それは覚えておいて下さい」


「ご温情に感謝する。すまなかった」


三人は頭を上げると


「それでは俺達も食事の準備があるので自分達の場所に戻ることにする」


「だったらこっちで食べていったらいい、うちの女性達の料理は美味いぞ」


「いや、それは迷惑をかけた手前、悪い気が……」


「そこの二人には庇ってもらったお礼をしたい。クイナとミアもいいよな?」


「はい!」

「うん!」


三人は顔を合わせると


「……ではお言葉に甘えさせていただく」


そこへ後ろからアルフィードさんとカリアさんが来て


「一時はどうなるかと思ったがどうにか収まったようだね」


「エルフィン君の殺気を感じ取った時はどうしようかと思ったよ」


「その辺はこの人達に感謝ですね」


そういった時だった。


「どわっ!」


若い女性の方が男の方を押しのけて前に出てくるなり


「あ、あの!もしかして《魔剣姫》のカリア様ですか?!」


「ん?あたしの事知ってるのかい?」


「もちろんです!私、カリア様に憧れて魔剣士になったんです」


それはもう感動してるとしか言い様がないほど目が輝いていた


「それは嬉しいねぇ!あんたは皇国から来たんだよね?」


「はい!Dランク掃除屋(スイーパー)のリンカと申します!」


「へぇその若さでDランクとは中々優秀だねぇ」


「ありがとうございます!」


「あんたは剣を2本使うんだね」


「はい、剣術はアイルズさんに習っています」


「ふーん、なら戦闘に支障がない程度で稽古をつけてあげようか?」


「本当ですか?!お願いします!」


リンカと名乗った女性はかなりテンションが高くなっていた


「ああ、みんな積もる話もあるだろうが飯にしないか?折角だからこのメンバーで一緒に食べちまおう。クイナ、ミア、俺も手伝うから頼むよ」


「ふふっ、はいエル様!みんなで食べた方が楽しいですからね!」


「うん!頑張って作るよエル兄様!」


「あっ!私も手伝います!」


「ならあたしも手伝おう」


リンカとカリアさんも協力を申し出てくれた。


「なら俺は椅子になりそうな物を探してこよう」


「俺も手伝おう」


「私は焚き火用の木を持ってきましょう」


ガドランとアイルズさん、アルフィードさんも各々手伝いをしてくれて賑やかな夕食になりそうだ。


「後は、そうだ!えぇと………」


「あっ自分はライカと言います!どうぞ呼び捨てにしてください。あなたの方が強いし年上ですから」


「では遠慮なく、ライカはすまないが川から水を汲んできてくれないか?」


「はい!任せてください」


各自が動くことでスムーズに夕食の準備は整っていき、いざ実食!


「うわぁこのシチューすごく美味しい!」


「皇国の料理屋で出るのより遥かに美味しいな!」


ライカとリンカがシチューを食べて感動している


「だろ!俺はもう二人に胃袋掴まれて離れられないんだよ」


「もう!エル様たらっ!」

「あははっ!」


クイナがテレてミアは笑っていた


「昨日も頂いたけど素晴らしい味だね」


「俺はエルフィンの家にキサラとうちの子供を連れてみんなで食事をしたりするが、キサラが二人に味付けを教わってたぐらいだからな」


「キサラも料理は得意な方なんだけどねぇ、これはホントに美味しいよ!」


アルフィードさん、ガドラン、カリアさんからも惜しみない称賛が出される


「クイナさん達は誰に料理を教わったんですか?」


「……あっ」


リンカの何気ない一言で静かになる


「えっ?あ、あれ?」


何も知らないリンカは突然の雰囲気に戸惑ってしまう


「…ミーちゃんには私が、私は少し前まで()()()故郷の村で母から教わりました」


「えっ?()()()?」


「はい、私達の村は王国の王都から南にかなり離れたところにありました。住人はほぼ獣人でしたが行商人の方が来たりと平和に暮らせていました。ですが突発的な魔物氾濫(スタンピード)に会い村は壊滅、家族とも離ればなれになり今は生きているのかさえも………」


「ごめんなさい!何も知らないでこんな事聞いてしまって!」


「いえ!気にしないで下さい。私達は捕まって奴隷に落とされましたがエル様に拾われて今はとても幸せですから」


「拾われてって、じゃぁ二人は」


「はい、私達はエル様の所有奴隷です」


そう言って首に巻いてるスカーフを少し引っ張り奴隷の輪を見せる


「ですがエル様は私達を奴隷扱いした事はなくちゃんと女性として接してくれます。所有奴隷なのも私達には身内がいないので身の安全の為にそうしているだけです」


「クイナもミアも俺にとっては家族同然だからな」


「本当にごめんなさい!失礼な事を聞いてしまって」


クイナもミアも、割り切っている事ではあるけどリンカがいたたまれなくなっているな。

どうしようかと思っていると


バッシーーーン


「いっっでぇっ!」


アイルズさんがライカの背中をおもいッきり叩いた


「ちょっとアイルズさん何するんですか?!」


ライカが突然の衝撃に異議を唱えている


「いや、何となく。リンカを叩く訳にはいかんし」


「ちょ!理不尽!!」


「………プッ!」


ついにミアが堪えきれずに笑い出す。それにつられてクイナも笑っている


「リンカさん本当に気にしないで下さい。私達はエル様に出会えたことをとても幸運だと思っているんです。一生愛して生きたいと思う男性に会えて幸せです。それに私達はまだ家族の事を諦めた訳ではありません。何処かで生きていていつか会えるそう信じているんです」


「わかりました。では私にも協力させて下さい!私もできる範囲で皇国内を調べ何かわかり次第連絡します!」


「はい、よろしくお願いします」


どうにか収まったようで何よりだ。正直王国内はギルドやワールさんに調べてもらったけどあまりいい情報は得られなかったんだよな。ワールさんも範囲を拡げてみるとは言ってたけど、もしかしたら皇国か反対の獣魔国に行ってる可能性もあるからこの協力はありがたい。俺の検索能力では何故か調べられなかったし個人を特定する場合、俺がその人物を認識している必要があるみたいだった。個人情報保護でもあるのかねぇ


「それにしてもこの料理、ホントに美味しいなぁ、私も料理するけどこの味は出せない」


「確かに美味しいけど、僕はリンの作る料理も美味しくて好きだよ」


「やだ!ライ君ったら!恥ずかしい!」


ドバッシーーーン!!


本日2回目の背中ハイタッチが炸裂する。


(つか、さっきのアイルズさんよりすげぇ音したがライカは生きてるか?)


ライカを見ると声も出せずに背中を押えている


「ライカ……生きてるか?」


声をかけると


「…かろうじて生きてます」


「ごめん!ライ君、大丈夫?!」


リンカがライカの背中をさすっている。それを興味深げに見ていたカリアさんが


「ねぇリンカ、今のやつ手に魔力を纏っていたけど意識して?それとも無意識?」


「えっ?えぇとほとんど無意識でやってるみたいです」


「本来は意識してやる部分強化を無意識でかい。これはしばらくしごき………鍛えがいがありそうだねえ」


(今、しごきって言ったよなこの人。あっダメだ、変なスイッチ入ったみたい)


「リンカ!明日から魔物氾濫(スタンピード)の予定前日までたっぷり鍛えてあげるから覚悟おし!」


「は、はい!」


カリアさんのやる気に押されてリンカは返事をしていた。


「ライカはどんな戦い方をするんだ?」


「僕は槍術士で槍と盾を使って戦います。僕が前に出て敵の攻撃を防ぎ、その時できた隙をリンが攻撃するのが僕らの戦闘スタイルです」


背中を擦りながら起き上がってくる


「にしてもすげぇ音したが大丈夫か?」


「回復魔法が使えるので大丈夫です。これが初めてでもないので」


空の彼方を眺めながらそう呟いていた


「苦労してるな…って回復魔法使えるのか?」


「あっはい、初歩的なものですが」


少し考え込む


(足腰も鍛えてる様だしそれで回復魔法も使える、初歩ならいけるか?)


「なぁライカ、リンカちゃんがしご……特訓中は何するんだ?」


「そうですね、見張りの当番以外は自己鍛錬ですかね」


「なら面白い技覚えて見る気ないか?」


エルフィンはニヤッとする


「おい、エルフィン顔が悪巧みしてる顔になってるぞ」


「何を言うガドラン!ライカなら覚えれるかもと試すだけだ」


「試すってだけで言葉が悪いぜ」


「いやいや、覚えれたら確実に役に立つし」


ガドランが不安そうな顔をする、なのでライカも不安そうに


「えっと何を」


「見せた方が早いか、ちょっとガドランあっち立って」


そう言ってガドランを10メートルほど離れた所に立たせる。アルフィードさんやAランク掃除屋(スイーパー)達も面白がって見ている


「ライカ、ちゃんと()()見とけよ」


「えっ?はい」


軽くトントンと飛びはねた次の瞬間


ヒュッ


「え?消えた!」


「えい!」


「ウオッ!」


ガドランの横っ腹をつつく


「い、いつの間に」


ライカが目を見開いて驚いている。


「俺以外使えるヤツがいないから名前を付けてなかったけど前に見せた人があった方がいいって言うから『疾風』と名付けてる」


ちなみに名付け親はエリィです


「どうだ?」


それを見ていたクイナとミアは凄いです!っと喜んでいるが逆にAランク掃除屋(スイーパー)達は冷や汗を浮かべた顔になる


「マジかよ、ギリギリ目で追えるかって動きだぞ」


「ふっ、あの坊やなにもんだい」


アイルズさんとカリアさんは驚きながらも何故か楽しそうな顔をしている。アルフィードさんは悟りを開いた様な顔をしている


「これを使う前提として強靭な足腰に身体強化と回復魔法が必要になる。当然簡単に出来るわけじゃないがやってみるか?」


「そのような技教えていいんですか?」


「教えても使えなきゃ意味ないしな」


「………アイルズさん」


「お前が教わりたかったら構わん」


ライカは少し考えた末に


「エルフィンさんよろしくお願いします」


「わかった、その代わりものに出来るかはライカ次第だからな」


「はい!」


「ということでアルフィードさんいいですか?」


「そこまで決まってて私に聞くかい?空いた時間は好きに使っていいよ。それより」


アルフィードさんが手招きするので近くに行くと小声で


「本当に教えてしまっていいのかい?」


「大丈夫ですよ。今のは『疾風』であって『疾風』じゃないですから」


「どう言うことだい?」


「だって今の()()()()()してないですから『疾風』て言うより『疾走』かな」


その瞬間アルフィードさんの表情にヒビが入った気がした


「つまり今ので全力ではなかったと?」


「全力どころか初歩の初歩って感じですかね」


「そ、そうかい」


もうアルフィードさんは諦めた表情で応えていた


「アルフィードさんから許可も下りたし早速明日から始めるか」


「はい!お願いします!」


翌日から二人は地獄の特訓に入ることになる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ