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王城でダンスパーティー フラグP-1

翌朝、いつものように目が覚めた俺達はみんなで朝食の準備を食べ始まる


「今日は朝イチでギルドに依頼の報告に行った後そのまま王城で昨日の件の話し合いがあるから昼頃になると思う、場合によっては伸びるかもしれないからお昼ご飯は先に二人で食べちゃってね」


「はい、わかりました。モーノ商会の方が来られたら工事の方に取り掛かってもらっていいですか?」


「あぁ、やってもらって。あとはそうだな…二人が必要と判断したらそれも頼んどいてくれる?俺じゃ気づかない事もあるだろうし、それでモーノ商会の人に見積もりを出してもらって決めたらいいから」


「私達が勝手に決めてよろしいのですか?」


「いいよ、二人のこと信じてるし家の事任せてばかりだからね。二人が楽になるなら構わないよ」


「ありがとうございます!もしありましたらモーノ商会の人に聞いてみます」


「うん、そうして」


こうして今日の日程を確認して俺は出かける準備をしてからギルドに向かって行った。


「ミミさん、おはようございます」


「あ、おはようございますエルフィンさん」


ギルドの中に入ると受付にはミミさんが座っていた


「聞きましたよ、エルフィンさんまたやらかしたそうですね」


むふふ、と笑いながら言われた


「人を問題児みたいに言わないで下さい」


「だって来るたんびに何かやってるじゃないですか!今回も依頼中に隣国の王族を助けるなんて」


ミミさんに笑いを堪えてるような顔で言われた


「そこにいるのはエルフィンか?」


(ん?この声は……)


「おお!ガドラン久しぶり!」


「おう!そう言や聞いたぞ。お前は本当に色々やらかすな」


「……なぁ俺ってもうそういう認識なの?」


大きな溜息をつきながらそう呟いていた


「はははっ!それで今日はどうした?依頼を探しに来たのか」


「逆、依頼の報告」


「今回受けたやつか、で!なんの依頼中にお偉いさん助けてんだ?」


「ここから北東にある隣国との街道に魔物が増えたから間引き作業しに行った」


「あぁ、あの依頼か!それでどこの連中と行ったんだ?」


「?俺一人だけど」


「はぁ?隣国との街道の魔物駆除だよな岩山の多い」


「あぁそうだ」


何かあるのかと思ったらガドランから衝撃の一言


「……俺の記憶が正しければあれはソロじゃなくてパーティークエスト、少なくとも2つのグループで挑むやつだった気が」


「…………どういう事ですかミミさん?」


2つのパーティーつまり大体10人以上で挑む依頼という事になる


「それに関してはギルドマスターから伝言を預かってます」


「なんて?」


「『エルフィン君なら1人でも大丈夫でしょ!』との事です」


受付の所で思いっきり項垂れてしまった


「ガハハ!それだけ実力を認められてるってことだろ?それに考えようによっては1人だったから隣国のお姫さんを助けれたんじゃないのか」


確かに1人で動いてたから皇女様達が襲われてるのに気づけたとも言える

けどなんか腑に落ちない。なら、ちゃんと報酬をもらおうかのう!


「ミミさん依頼の報酬なんですけど討伐数で追加報酬貰えるはずなんですけど?」


「はい、ギルドマスターから聞いてます。どれくらいありますか?」


「200以上は確実にいます」


「…………はい?今なんと」


「200匹以上はいます。途中で数えるのめんどくさくなったので」


受付カウンターに大型のアイテム鞄を3つ置く。昨日家に帰って収納(ストレージ)からアイテム鞄に移しといた。

カウンターの上にあるアイテム鞄を見て顔を引きつっている


「アイテム鞄って高価な品だったはずでは?」


「自分で作りましたから鞄の代金しか材料費はかかってません」


「そうでした…エルフィンさんは錬金術も凄かったですよね……」


今度はミミさんが項垂れていた


「エルフィンさんすみません、さすがにこの数はすぐに査定出来ないので夕方まで待ってもらえますか?」


「いいですよ、魔物は魔石とこの紙に書いてる素材は錬金術で使うのでそれ以外は売る方向でお願いします。それじゃぁまた夕方に来ます」


「さすがエルフィン、ハンパねぇな!それでこれからどうするんだ?また依頼探しか?」


「いや、昨日の件で色々聞きたいらしいからこれから王城に行かないといけないんだ」


「そうか、それは大変だな。また時間があったら飯でも行こうぜ!」


「おう!そうだな。ガドランもなんかあったら家に来てくれ」


「じゃぁまた今度な!」


ガドランと項垂れるミミさんに手を振りながらギルドを出て王城に向かう。


残されたガドランとミミさんは


「なぁミミちゃん前回の街道の駆除は2年前ぐらいだよな」


「えっ?そうですね、確かそれぐらい前だったと思います。どうしました?」


「………魔物の数が多すぎる。2年でこんなに増えるなんて」


「それってもしかして……」


「ギルドマスターはいるか?思い過ごしならいいが確認すべきだろ」


「す、すぐに取り次ぎます!」


慌ただしくなるギルド内であった


一方で王城に向かって行ったエルフィンは王城の門の所まで行くと見知った顔が待っていてくれた


「おはようございます!エルフィン殿」


「あれ?キース団長!おはようございます。どうしたんですか?」


「エルフィン殿を案内するようにとご命令を受けましたのでこちらでお待ちしておりました。」


「団長自らですか!」


「ハハッまぁ私も今回の件の話に同席しますのでついでみたいなものですよ」


そう笑いながら今回の襲撃に関する報告をする部屋に案内される。部屋には陛下に宰相さん、カーマインにジュリアン隊長がすでに待っていた


「すみません、遅くなりました」


すると陛下が


「なに気にする事はない、お主が来るまでは別の事について話し合っていたからな、さて全員揃ったなでは今回の件について報告を聞こう」


今回の事件について始まりから終わりまでの経緯をついて話し合っていく。

話の中で俺が驚いたのは


「盗賊の襲撃あれが2回目だったんですか?!」


「はい、1度目は皇国の領土内にて襲われました、数は2回目と同じぐらいでしたが質が低かったので大した負傷者を出さずに殲滅できました。」


ジュリアン隊長から王国内に入る前の状況を話してくれる


「その後、途中の街で1泊したのち王国内に入りましてあの場所で再び盗賊に襲われました。そこからはエルフィン殿も知っての通りです」


そこで宰相さんが話に入ってきて


「それにしても精強で知られる皇国しかも皇女の護衛を務めるほどの騎士団がそんな簡単に盗賊ごときに遅れを取るものですか?あ、別に騎士団を馬鹿にしている訳ではありませんよ」


「わかっております。まぁエルフィン殿がいなければ最悪の事態になっていたでしょうからそう言われても致し方ありません。ただあの時の盗賊は何故かこちらの動きを読んでいたかのような気がします」


「と言いますと?」


「我々はまず姫様の身の安全を優先するため防陣を引きます。その後こちらが優勢になったので攻めに転じたところ後方から敵の増援、攻め手が戻ろうとした所にさらに増援が間に入り行く手を阻んでいる間に姫様の守りを突破されました。我々がどう動くか知っていないとこうも上手くやられません」


「確かに言われてみれば先手先手を打たれたような感じですな」


「う〜ん」


「どうしました?エルフィン殿」


この話を聞いていてふとある考えが出てきた


「思い過ごしかもしれませんが最初の盗賊の襲撃は捨て駒、様子見ではなかったのではないかと」


「なんですと!なぜそのように思うのです」


俺の言葉にジュリアン隊長が反応する


「まず同じ数の盗賊に襲撃させ騎士団がどう動くのか確認する、そしてどのタイミングで増援を入れればいいか読み的確に投入する。でないと今回のように騎士団の動きを先読みして増援なんて配置できませんよ」


「む、確かに!ですが盗賊にそこまでの知恵がありますか?」


「どうでしょう、たまたま知恵者が盗賊になったとも有り得ますし、どこぞのバカが知恵を貸したとも考えられます」


「しかし盗賊に知恵を与える者と言いますと……」


「王国と皇国の関係が悪化して利益を得る者というとです」


俺がそう言うと陛下が


「連邦もしくは帝国の関係者辺りか……」


「確証がないのでなんとも言えませんが……」


そう言うと全員が黙り込んでしまった。


「なぁカーマイン、皇女様達はいつまで王都に居るんだ?」


「ユディは王城で王太子妃となる為1年間花嫁修業をする、エリィはユディが王城での生活に慣れるまでという事で1ヶ月程滞在する予定だ」


「ユーフォルディア皇女は大丈夫としてエーデルリア皇女が帰る時は念の為護衛を増やした方がいいかもな」


「エルフィン殿の言う通りですな、王国からも騎士団をつけ送った方が良いかもしれません陛下」


「そうだな、今回の件がどの様な陰謀にせよ安全に届けるにはそれがよかろう。ジュリアン殿もそれでよいか?」


「御心遣い感謝します国王陛下」


「では宰相、皇王殿にもそのように知らせてくれ」


「かしこまりました陛下」


「エルフィンも今回の件よくぞ皇女を救ってくれた余の方からも礼を申す」


「もったいなきお言葉、当然の事をしたまでです」


「この件について引き続き調査をし何か分かり次第追って報告する」


こうして今回の件は一旦ここまでという事で解散となった


俺とカーマイン以外はまだ話し合う事があるそうなので部屋に残り俺とカーマインは部屋の外に出る


「俺はいいとしてカーマインはいなくていいのか?」


「あぁ私はこの後用事があるからな」


「将来の嫁さんとイチャつくのか?」


「バカタレ!まぁユディも関係あるがな、これからユディと水龍様の神殿に行き正式な婚約の報告と紹介をしに行く」


「湖の真ん中にある神殿か」


「王国の守護龍様だからなちゃんと紹介して認めてもらわないといけない。」


そんな話をしながら王城の廊下を歩いていると後ろから


「エルフィン様!」


後ろを振り向くと


「こんにちは、エーデルリア皇女様」


「御機嫌よう、エルフィン様!」


優雅にカーテシーで挨拶された後


「今お話が終わったのですか?」


「ええ今終わってこれから帰るところです」


するとエーデルリア皇女が近づいて来て


「あ、あのエルフィン様お願いしたいことがあるのですが……」


「はい、何でしょうか?俺に出来ることでしたら」


若干恥ずかしそうにしながら


「今度のパーティーで1曲目のダンスを私と踊っていただけませんか!」


エーデルリア皇女の言葉にカーマインがニヤついていた、正直踊ってあげたいが問題がある


「皇女様、大変嬉しいお誘いなのですが……すみません」


俺のその言葉に一気にテンションが下がり


「そ、そうですよね、急にこんなお誘い嫌ですよね……」


「嫌な訳ではないんです……その、俺はダンスを踊ったことがないんです」


そう言うとエーデルリア皇女とカーマインが『あっそうか』的な表情になり、後ろの方で隠れているつもりのユーフォルディア皇女とマーガレット王妃が『しまった』的な表情をしている。王侯貴族にとってダンスは必須でできて当たり前のことだったので王妃も皇女もその可能性を考えてなかったのだ


「も、申し訳ございません!無理な事をお頼みして……」


一緒にダンスを踊りたかったエーデルリア皇女は目に見えて意気消沈していた。どうにかしてやりたいが…


「なぁカーマイン、ダンスの曲の順番って決まってるの?」


「?あぁもうその辺の催しは準備されている」


「1曲目のダンスって難しい?」


そう言うとカーマインが


「お前もしかして……」


「パーティーまで日数はあるからな」


「エルフィン様もしかしてこれから覚えられるのですか!」


エーデルリア皇女がびっくりしながらこちらを見てくる


「難しい曲目ではないからダンス自体は難しくはないが本当に覚えられるのか?」


「俺の天才的な身体能力と記憶力で覚えてやる!」


「実際にエルフィンの能力は凄いが、なんかムカつく……」


カーマインに細目で睨まれた


「あとは努力と根性だな」


「えっと…エルフィン様、私と踊って頂けるのですか?」


エーデルリア皇女の方に向き直し


「こんな俺でよろしければ喜んで!」


「ありがとうございます!よろしくお願い致します!」


エーデルリア皇女の顔が笑顔で喜びいっぱいになる


「という事でカーマイン誰かいい先生紹介して」


「ったくしょうがないな、すぐに手配してやる、午後には用意できるだろうからこのままここで昼食をしていけ」


「助かる、そうだ!家に連絡しないとクイナ達が心配する」


「だったらクイナちゃん達も城に呼んでパーティーの日まで練習しましょう」


いつの間にか近くまで来ていたマーガレット王妃に提案される


「実は今、家の改装をしてましてワールさんの所の業者が家を出入りしてるんですよ」


「あらそうなの?では信頼のおける城の者を代わりに行かせるわよ。それならどう?」


「それなら大丈夫そうですね、ならクイナ達を連れに行かないと」


お城に入るのにさすがに誰か立場のある人がいないと入れないだろう


「それは医師団長に頼みましょう。ちょうど今日は午後から城に来るはずだから一緒に居れば問題なく入れるはずよ」


「わかりました。それでお願い致します」


王妃様にクイナ達の事をお願いし、とりあえずお昼までカーマインの部屋で休む事に


「それではマーガレット王妃様、ユーフォルディア皇女様、エーデルリア皇女様失礼します」


「はい!また後程、エルフィン様申し入れを受けて頂きありがとうございます」


俺とカーマインはその場を離れていく


「よかったわね!エリィちゃん」


「はい!ありがとうございます王妃様」


「でもエルフィン様、独身女性とパーティーで1曲目を踊る意味わかってるのかしら」


「やっぱりお教えした方がいいでしょうかユディ姉様?」


「うーん、エルフィン様には悪いけどこのまま踊り終えるまで言わない方がいいかもそれにエリィがそれだけ本気だと伝わるだろうし、あとは……」


「そうね、クイナちゃんにはちゃんと話を通して置くべきね、いくらこちらの身分が高かろうと人として通すものは通さないと。ちょうどクイナちゃん達も城に来るから二人で話せる機会は作って見せるわ」


「はい、ありがとうございます王妃様。私もクイナ様としっかり話し合いたいです」


そして、昼食をいただいた後ダンスの講師が少し時間がかかるそうなので城の馬車が止まるところでクイナ達が来るのを待っていた。


「あれかな?」


しばらく待っていると医師団長の家の家紋をつけた馬車が到着した。馬車からは予想どおりクイナ達が降りてくる


「エル様!」「エル兄様!」


「クイナ!ミア!」


馬車から降りた二人の後ろから医師団長も降りてくる


「マリアロスさん、すみません!ありがとうございます」


「いえ、ちょうど城に行く時間でしたので」


二人が俺の近くに寄ってくる


「あれ?その首のは?」


二人の奴隷の輪の所にクイナにはスカーフがミアには大きめのリボンが巻かれていた


「マリアロス様からいただきました」


クイナがそう答えたら


「すみません、勝手な事とは思ったのですが今は他国の者が来ています。皇女様達は気にしないでしょうがそれを護る騎士達がどう反応するか分かりませんのでクイナさん達の安全のため一応隠させていただきました」


「お気遣いいただきありがとうございます。スカーフとリボンの方は……」


「それは御二人へのプレゼントですので気になさらないでください」


「ありがとうございます」


クイナ達二人と一緒に医師団長さんにお礼を言った後、王城に入って行く


「エ、エル兄様!本当に王城に入るのですか!」


「そりゃその為に呼んだんだし」


「マリアロス様から少し聞きましたけどなぜ急にダンスを?」


「あぁ実は皇国の第二皇女様に今度のパーティーのダンスを一緒に踊って下さいって頼まれてね、最初は踊ったことがないと断ったんだけどそしたら凄い落ち込んでしまってなんか申し訳なくなって習うことにした」


「エル兄様、ダンスってそんなすぐに覚えられるものなんですか?」


俺の説明にミアが質問してくる


「まだ日にちはあるし大丈夫だろ」


こんな話をしながら用意された部屋に向かっていると


「あら、クイナちゃん!」


後ろから声がかかる


「王妃様!この度はお招きいただきありがとうございます」


「いいのよ、そちらの子が新しい子?」


王妃様はミアの方を見る、ミアは突然の事で固まってしまった


「はい、ミアと言います。ほらミアご挨拶を」


「は、は、初めましてミアです!」


「初めまして!この国の王妃をしているマーガレットよ、よろしくね」


ミアはもうガッチガチである


「そうだ、クイナちゃん紹介しておくわね」


そう言うと廊下のちょうど死角になっている分かれ道の所から女性が二人現れる


「初めましてグリーンウィンド皇国第一皇女ユーフォルディア・エメラルド・グリーンウィンドです」


「初めまして同じくグリーンウィンド皇国第二皇女エーデルリア・エメラルド・グリーンウィンドです」


皇女様二人が優雅にカーテシーをして自己紹介をする


「は、初めまして皇女様、クイナです」


「ミ、ミアです!」


さすがにクイナも他国のお姫様には緊張したようだ、ミアは……うん、頑張れ!


「どうぞ、気にせず普通になさってください。女性同士ですし」


「いえ、さすがに皇女様にそのような態度は………」


気が引けたのかクイナが遠慮しようとしたら


「大丈夫よ、クイナちゃん!この二人は細かい事は気にしないわよ。望んでるようにしてあげてね」


「分かりました。王妃様」


「ところでクイナちゃんはエルフィン君の練習中は何するの?もし良かったらお願いしたいことがあるのだけど」


クイナは一応俺の方を見て確認してくる、俺は了承の意を込め頷く


「はい、私に出来ることでしたら」


「この後ユディちゃんはカーマインと神殿に行ってしまうの、私もやらないといけないことがあるからエリィちゃん1人になってしまうの、だから話し相手になって欲しいの」


「私なんかでよろしければ喜んで」


「それじゃ、クイナちゃんを借りるわねエルフィン君」


「あ、ミーちゃんはどうする?」


「私はエル兄様の練習を見てます」


ミアは即答で応えていた


「クイナ、それじゃまた後でな」


「はい、エル様」


こうして俺とミアはカーマインの案内でダンスの練習をする部屋に向かう


「それでは私達も行きましょうか、クイナ様」


「はい、皇女様」


クイナとエーデルリア皇女は庭園が良く見えるテラスに向かって行く、着いた時にはすでにお茶菓子が用意してありクイナと皇女が座るとメイドがお茶を入れてくれた、だがお茶を入れるとメイドも居なくなりテラスにはクイナとエーデルリア皇女だけになる


「あの……皇女様、もしかして私に何かお聞きしたい事があるのではないですか?」


「ど、どうしてそう思うのですか?」


エーデルリア皇女が少し慌てる


「いえ、王妃様に顔を覚えて頂いているとはいえ隣国の皇女様と二人っきりにするのはさすがに不用心といいますか」


「……はい、申し訳ごさいませんクイナ様、私が頼んで人払いをして頂きました。その……クイナ様」


「はい、何でしょう?」


エーデルリア皇女は少し俯きながら


「クイナ様はエルフィン様と…その…恋人同士なのですか?」


「…そうですね、そうで有りそうで無いとも言えます」


エーデルリア皇女は首を傾げ


「それはどう言う意味ですか?」


「私は……」


クイナは自分の首に手を持っていき巻かれているスカーフを外す


「それは!?」


「はい、私はエル様の所有奴隷です」


クイナは自分のこれまでの経緯を話した、魔物氾濫(スタンピード)の事、住んでいた村が壊滅して家族が生きているかも分からず一人になった事、火傷の事、その後どのようにしてエルフィンと出会ったか。


「私は魔物氾濫(スタンピード)で火傷を負い森をさ迷っている所を捕まり奴隷商に売られました。火傷が治る見込みがないと知るとその奴隷商は私を処分しようとした所でモーノ商会のワール会長様に引き取られました」


あまりに過酷な話にエーデルリア皇女も若干青ざめているが真剣に聞いている


「そしてワール会長様が盗賊に襲われている所をエル様が助けワール会長様はその御礼に森から出てきたばかりのエル様の補佐をさせる為に奴隷をという話になりました。でもエル様は健康な人ではなく重度の火傷を負って絶望の果て死を待つだけだった私を選び誰も治せなかった火傷を治してくださいました」


その時の事を思い出しているのかクイナは目を瞑りにこやかな顔をしていた


「その後も私を奴隷から解放すると言う話になりましたが身内もどこにいるか分からない状態で1人になるのは危険という事でエル様の所有奴隷になりました。」


「そのような事があったのですね……」


「はい、そしてその後もエル様は私を奴隷としてではなく女性として扱って下さいました。そんなエル様に惹かれ好きになっていました、不幸中の幸いと言いますか火傷のおかげで私を捕まえた人も奴隷商にも汚されることなく純潔を守る事が出来エル様に捧げることができました。私は絶望から救い出してくれたエル様が大好きです」


真剣にハッキリと言い切る、そして…


「私がそうであるように皇女様もエル様に惹かれているのではないですか?」


「!?……はい…クイナ様には申し訳なく思うのですが盗賊と魔物から救ってくれた光景が頭から離れずエルフィン様の事を思い出しているうちにその…お慕いしていました」


「やっぱりそうですか!」


クイナはにこやかな笑顔になる


「えっ?怒られないのですか?」


そう言うとクイナは


「私はエル様を愛してますしエル様も私を愛して下さっているのも分かります。ですが私はエル様を独り占めしようとは思いません」


「それは何故ですか?」


「エル様は素晴らしい御方そしてとてもお優しい人なので想いを寄せる方はいると思います。そして私と同じようにあの御方を全てをかけて支えたいと思う女性も…なら私は同じ男性を好きになった者同士で協力して支えて行きたい。私一人では無理でも同じ想いの方と協力すれば支えられると信じています」


クイナはエーデルリア皇女を真っ直ぐに目を向ける


「皇女様、私達は協力できますか?」


「はい!私もクイナ様の想いに協力させて下さい」


二人は両手で手を握りしめ合う


「あっ!すみませんクイナ様そのお詫びしなければいけないことがあるのですが、今回のダンスの事なのですが」


「ダンスですか?何か問題でも」


「その実は――――――」


クイナにある事の説明をする


「そのような意味があったのですね」


「すみません!クイナ様にお断りもなく」


「いえ、気になさらずにそれだけ皇女様が本気だと私にもわかりましたから」


「クイナ様……ありがとうございます」


「あと私は奴隷ですので敬称は不要ですよ?」


「それでしたら私の事もエリィとお呼び下さい。クイナさんと私は同じ方を想う協力者、身分など関係ありません」


「はい、わかりましたエリィさん」


「はい、クイナさん」


二人は見つめ合うと不意に笑い出すのだった



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