68話 最終決戦
朽ちた屍から息を吹き返した三人は、突然場面が変わった現状に困惑していた。
「はっ! ……なんだ、俺、どうなったんだ?」
コマチの感覚ではわずか数秒。その間の記憶はなく、気づけば目の前でメルとリルテスタがゴーレムの上に乗り攻防を繰り広げている姿。
三人の様子に気づいたリルテスタは、ゴーレムの魔力を吸収し続けるメルの肩をゆすり、コマチ達のほうへ指を差す。
「メル、もうよい、皆の意識が戻ったようじゃ」
メヴィカも、スティオラも、そしてコマチも、元の姿に戻っている。
ちゃんと生きている。
それだけで、メルは嬉しさから涙が零れた。
「…………やった」
純粋な笑顔を見せるメルに、リルテスタも釣られて微笑を浮かべた。
「わしらも一度撤退するぞ。掴まれ」
と、メルを担いでゴーレムの頭部から飛び降りる。
その瞬間――。
『鬱陶しいのよアンタ達はっ!』
バチンと、二人の体を覆い尽くす程の巨大な手の平が彼女達に直撃した。
二人は強烈な一撃により地面に強く叩きつけられる。
「メルっ!」
青ざめた表情でコマチは二人の元へ駆け寄ると……。
「おい、大丈夫か二人共!」
「コマちゃん……アタシは大丈夫だけど、リルがっ…………」
咄嗟にメルを庇いダメージを肩代わりしたリルテスタは、全身の骨が砕け、さらに身体強化魔法も解けた影響により、反動で筋線維も断裂、ボロボロの状態で二人を見つめる。
「わしは……問題ない……少し休めば回復するわい。メル、コマチ……後はお前達に任せるぞ」
それだけ言うと、リルテスタはそのまま意識を失った。
二人は一度態勢を立て直す為、尚も迫り来るイズリスの攻撃を躱しながら、リルテスタを担ぎヴィクスの防御壁の中へ避難した。
「くそっ、あの巨人、いつの間に腕が増えたんだよ。しかもフレキシブルに伸び縮みするし……あとすごい疑問に思ったんだけど……」
と、コマチはヴィクスを見ながら。
「なんでナチュラルにお前がいるの? 敵、だったよね?」
何故しれっと輪の中に加わっているのか甚だ疑問に思う。
無反応でコマチから視線を逸らすヴィクスに、パルカはフォローを入れた。
「ヴィクスさんは皆様を蘇生させる為に尽力して下さったのですよ。今もこうして私達を守っているのですから、冷たい言い方したらダメです」
「めっ!」と、優しく叱咤するパルカに、コマチは動揺しながら再びヴィクスを窺うと。
「イズリスにいい様に丸め込まれた、愚かな俺の責任だからだ」
感謝も謝罪も心の距離も、間違っても自分に向けてくるなよと、ヴィクスはそう言っているような冷めた物言いで返す。
その言葉を汲み取ったコマチも理解し、それ以上何も言わなかった。
一方、パルカの指揮で状況が一変した事に苛立ちを見せるイズリスは、残りの魔力を使い防御壁を破壊しようと熱光線を浴びせ続ける。
ヴィクスも先程から魔力を消費し続け、精神の疲労が激しい。
「それより、俺のプロテクトは長くはもたない。……スティオラ」
と、ヴィクスは不意にスティオラに話しを振る。
「もうすぐ俺の魔力は尽きる。俺の代わりに、お前の力でゴーレムに纏っているプロテクションを解除しろ。その後は残りの者で一気に叩くんだ。もうお前達しか戦える者はいない。だから……頼む」
そう告げるヴィクスは、命を捨てる覚悟でいた。
マナで構成されている自分の身体は、歳を取らない代わりに自身の魔力が尽きればその器は滅びる。
すでにギリギリのマナを防御壁に消費しながら、ヴィクスは後の事をスティオラに託すのだ。
「兄さん…………」
この場所が自分の墓場だと、彼はそう決めていた。
死にゆく者の目をしていた彼を、スティオラは複雑そうに見つめる。
しかし、そんなヴィクスの元にメルが近づき。
「ヴィクス、あなたはもう休んでて。あなたを含めて、アタシがみんなを守ってみせるから」
そんな、覚悟を揺るがす事を言うのだ。
「…………何故? 俺は君を殺そうとした。守られる理由はないが」
メルは首を振り、そして。
「あなたに一度助けられたから。あなたは覚えてないかもしれないけど、アタシとコマちゃんはあなたと出会ったからこうして生きてる。だから、その借りを返すだけ」
初めて出会った日を思い出し、彼への恩返しをメルはずっと考えていた。
当のヴィクスは未だに二人を助けた記憶はなく、何故二人は自分を知っているのか疑問に思うが。
しかし、なんとなく予想はしていた。彼らの事を、そして自分の事を。
深く考え込むヴィクスに、メヴィカは回復ポーションを渡した。
「……これは?」
「『アンブロシア』っていう果実を調合して作った回復ポーションです。巷で売っているものと比較にならない程の高品質ですよ」
メルが守ると決めたから。
メヴィカはメルを信じて、無表情に見つめる彼に「グイっとどうぞ」とポーションを勧める。
そうこうしているうちに、メルは大剣を肩で持ち。
「【ドラゴン・フォース】【フォース・リベレーション】【エンハンス・アーマー】」
身体強化、能力限定解除、身体硬化のスキルを付与し、特攻の準備を図る。
「それじゃあ、あいつに一発ブチかましてきますわ!」
そう言ってメルは大きく踏み込み。
「【ラピッドムーヴ】!」
コマチからコピーした高速移動スキルで、ビル程ある巨人へ単身駆け出した。
ご覧頂き有難うございます。
申し訳ありませんが、明日はお休みさせて頂きます。
本作もそろそろ最終回が近づいて参りました。
宜しければ最後までお付き合い頂けると幸いです。




