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6話 異世界への旅立ち……?


 新たな力を得たコマチとメルは、パルカからのサービスとして、ゲームのチュートリアルよろしく補助金と簡易的な生活用品や傷薬、武器や防具の無料配布、さらにはどの世界でも自分の慣れ親しんだ言語が共通化する自動翻訳魔法【オートスペル】の特典も受けた。


 そして二人は屋敷の衣装部屋にて、それぞれ自分に合った装備を整え、万全な状態でこれから行く世界の扉の前に立つ。


「コマちゃん、ずいぶん厨二の琴線に触れる格好だね」


 コマチは自身の装備を影に溶け込みやすいように、黒を基調とした闇コーデで揃えていた。


「そんな厨二病おつだったっけ?」


「ちげえよ、これは隠密行動する為に必要な装備なの! そういうお前はずいぶん軽装だな」


 コマチの装備を指摘していたメルはと言うと、鉄製の胸当てに布製のインナー、動き易さを重視したショートパンツとレギンス、そして武器は木刀だった。


「今から魔物と命の取り合いをするかも知れないのに、ちょっと身軽過ぎやしませんかね?」


「いやー、カッコイイ鎧や剣もあったんだけど、重くてヤメた。それに身体が軽くなったとはいえ、足は治らないみたいだから動きやすいほうがいいと思って」


 メルは木刀を支えにして右足をぎこちなくパタパタしていた。


「なあメル、思ったんだけどさ……」


 そんなメルを見ながら、何気なくコマチはメルに尋ねた。


「ついさっき坂の上で会った男にこんな場所に飛ばされちゃったわけじゃん? 何でお前、見ず知らずの人間に言われるがまま話に乗っかっちゃったの?」


 コマチの疑問にメルは首を傾げながら考える素振りを見せ。


「だって、アタシ達がヴィクスって魔導士を止めなきゃ、またどこかでさっきの化け物が現れるんでしょ?」


 当たり前のようにコマチに返す。


「それに、コマちゃんだってついて来たじゃん」


「それはお前一人じゃ心配だから。それに……」


 足が不自由なうえに運動神経ゼロのメルでは戦う事はおろか、逃げる事すら出来ない、そう言いそうになる口を寸前のところで止めた。


「何でもない。まあ、なっちまったもんは仕方がないから、お前も危ない行動はしないで俺のそばを離れるなよ?」


「ダイジョブダイジョブ! ちゃんとアタシが守ってあげるからコマちゃんこそアタシのそばを離れるなよ?」


「お前が言うんだ、それ」


 と、そんな戯れを繰り広げている中、見送りに来たパルカが一冊の本を持って現れた。


「コマチさん、メルさん、すみませんが一つ頼まれ事を聞いて頂けませんか?」


 二人は同時に首を傾げる。


「実は今から向かわれる世界に、以前より別の世界から転生なされたお客様がいらっしゃいまして、その方にこの本を渡してほしいのです」


「それは?」


 コマチが見たところ、何かの古い辞書に映った。


「様々な電子機器や武具、薬剤の作り方が記された作成書です。あの方の能力に役立つ物ですので、旅立たれる際に渡そうとしたのですがうっかり忘れてしまい……」


「ああ、そういう理由なら別に構いませんけど、どこにいるか分かります? あと、その人の特徴も分かれば探しやすいんですけど」


 するとパルカは世界地図を広げ、ある大陸を指差す。


「この大陸に大きな国がありまして、その城下町のどこかに住んでいると思われます。彼女の名はメヴィカ・アンサークロン。そして空間転移したお二人とは違い、彼女は一度お亡くなりになったのちの転生ですので、特典としてユニークスキルなるものを獲得しております」


「ユニークスキル?」


 コマチはピンと来ない様子でパルカに聞き返す。


「私がお二人に与えた職業による戦闘技能とは異なり、ユニークスキルとは女神様から授かる特別な権能です。転生される方により良いセカンドライフを満喫して頂く為に作られた制度ですね」


 パルカの説明にメルは「おお~!」と興奮した様子で返し。


「まさに王道の異世界転生じゃん! アタシもゴートゥーヘブンしたら神様からユニークスキルもらおっと」


「縁起でもないこと言うなよ……」


 などとメルの発言をたしなめるようにツッコむコマチだが、それとは別に、人知を超えた力を持ち、当たり前のように神を語るパルカは一体何者なのか……。

 そんな得体の知れなさが彼の不安を誘う。


 そんなコマチの気持ちなど露知らず、パルカはメヴィカなる人物の説明を続ける。


「彼女のユニークスキルは『高度錬術ハイクラフター』と呼ばれるもので、武具や薬品などの生成を得意とする力です。おそらくはこのスキルを用いて、城下町のどこかで商業を営んでおられるかも知れません」


「なるほど、それなら人づてに聞いて回れば探し出せるかも」


 そう思い、コマチはパルカから作業本を預かった。


「それでは、この扉を出来るだけメヴィカさんの近くに転移出来るよう設定致します。本来の目的とは逸れますが、どうかお願いしますね」


 そんなやり取りを交わした後、コマチは扉のドアノブに手をかける。


「じゃあパルカさん、色々お世話になりました。メヴィカって人にはちゃんとこれ渡しとくんで」


「はい、宜しくお願いします。あと、鍵穴のある扉ならどこでもいいので、今持っている鍵を差し込めばいつでもこの部屋に繋がります。お帰りの際はそのように」


 パルカの補足説明に頷き、コマチはゆっくりと異世界への扉を開ける。



 人生初の異世界の旅に二人は息を呑み、目の前に広がる景色を凝視した。

 だが、扉を開けた瞬間、中から大量の霧が溢れ出て、コマチの視界を塞ぐ。

しばらく一面に広がる霧を流していると、近くに人影が現れるのをコマチは確認した。

そしてその人影はゆっくりとコマチに近づき……。




「…………あっ」




 お互いの姿が見えた瞬間、コマチは呆然と立ち尽くす。


 目の前に現れたのは、全身を水で濡らした裸の女性だった。





ご覧頂き有難うございます。

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