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54話 心配するコマチ


 メルが別世界に向かい数時間が経過した頃。


「パルカさん、メルのやつ、遅いですね」


 扉の前で右往左往しながらメルの帰りを待つコマチは、どうにも落ち着かない様子でパルカに尋ねる。


「そうですね、少し帰りが遅いかもしれません」


 その言葉にピタリと止まり。


「ですよね? あの、もう俺も中入っていいですか?」


 グイグイパルカに近寄り、俺も行かせろと目で訴えるコマチ。

 その必死な様子にパルカはクスリと笑い。


「ええ、そろそろ迎えに参りましょうか」


 しびれを切らしたコマチと共に、メルとシュシュのいる世界へ向かった。








 出た先は、戦争でも起きたのかと思う程の荒れた浜辺だった。

 そして前方に目をやると、ボロボロの状態で倒れるメルの姿が……。


「メルっっ!」


 血相を変えてメルの元に駆け寄るコマチは、彼女を抱えると生死の確認を行い、まだ息があることに一先ず安堵した。


 が、メルと対面するように立っている少年を見据えると、コマチは鬼の形相で睨み付けた。


「てめえがやったのか?」


 尋常じゃない様子に、シュシュは困惑する。


「え、いや、たしかに僕だけど……ちょっとその前に話しを――」


「【ペネトレイト・ショット】!」


 有無を言わさず、コマチはシュシュ目がけて弓スキルを放つ。

 寸前でそれを躱し、コマチに弁解を求めるが……。


「【ラピッドムーヴ】」


 シュシュが話すより先に、コマチは高速移動で一気に距離を詰め。


「【コンプレッション・エッジ】!」


 空気を圧縮した刃でシュシュに斬りかかる。

 話の通じないコマチに軽く溜息を吐き。


「……【パニシュメント・エッジ】」


 仕方なく、シュシュはコマチの短剣目がけ、剣先から飛ぶ魔法の斬撃を放った。

 その衝撃によりコマチの短剣は弾かれ、手からすっぽ抜けた短剣は遠くの砂に刺さる。


「くそっ! 隙がねぇ……」


 などと愚痴りながら次の手を考えていると。


「……コマちゃん」


 奥でメルの声がした。


「メル、無事か? 今こいつを倒して治療してやるから――」


「邪魔しないで」


 と、コマチの言葉を遮りメルは立ち上がる。


「……え?」


「アタシの修行の邪魔しないで! シュシュさんに稽古つけてもらってたんだから!」


「…………えぇぇ?」


 突然の怒号にコマチは困惑した。

 メルの敵討ちと思い戦っていた少年が、実はメルに稽古をつけていたのだと知ったコマチは、見開く瞳でシュシュを見つめる。


「……まあ、そういうことです」


 目が合ったシュシュも頬を掻きながら苦笑いを浮かべ、コマチに返した。









「すいませんでした!」


 その後、コマチは砂に顔を埋めながら全力で謝罪した。


「もういいよ、お互いケガもなかったし。……メルちゃんはボロボロだけど」


 誤解が解けて一安心したシュシュは、終始捨て身で突っ込みダメージを負ったメルを心配する。


「んむんむ、アタシは大丈夫、なんか知らんけどこの『アンブロシア』ってフルーツ食べると傷が塞がるんだよね」


 と、メルは野球ボールサイズのブドウの粒を口いっぱいに頬張る。

 この果実は、市販で売られる回復ポーションなどとは比べ物にならない程即効性の治癒効果がある。

 古傷や致命傷でない限り、外傷も病魔も呪いさえもたちまち回復する万能薬である。


 その果実の山を、シュシュは土産用に大袋に詰め込み、そして。


「これを持っていきな。そのままでも効果はあるけど、知り合いに調合士がいるなら薬にしてもらうといい。パルカ様、宜しいですよね?」


「もちろんです。元々緊急時に備え栽培しているものですから」


 と、パルカも容認し、決戦前の餞別に大量の回復アイテムをもらった。







 それからしばらく、二人はこれまでの経緯を簡潔に話し、シュシュは一息吐きながら考察する。


「……そうか、パルカ様から多少話を聞いてはいたけど、ヴィクスが……」


 二人の話を統合して、浮上するのはヴィクスの矛盾。


 ヴィクスの空間魔法によってコマチとメルは別世界へいざなわれた。

 他でもない彼自身が、ヴィクスを止めてくれと、二人に切願したからだ。


 しかし『強欲の巣』で再会した彼は二人を覚えておらず、むしろあからさまな敵意を向けたのだ。


 止めてほしいと言った本人が、自分を御す事を拒む。

 それではわざわざ別世界から二人を送った意味はない。

 何か別の理由でもあるのではないか……シュシュはそう思う。


 かつての親友を憂いながら……。


「……パルカ様、あなたは何か分かりますか?」


 シュシュに振られたパルカは軽く頷くと。


「思い当たるところはございます。別の脅威があると予想したからこそ、シュシュさんをお呼びしたのですから」


 含みのある言い方でシュシュに返した。


「僕はただメルちゃんにスキルを与えただけです。それだけでどうにかなるとは思えませんが……」


「いいえ、決して無駄ではありませんよ。人一人の行動が、世界を変えてしまえるのですから。あなたもそれは知っているでしょう?」


 すると、シュシュは微笑を浮かべ、「そうですね」と返す。


「ええ、だから僕達がいる。陰で世界を見守っている」


 シュシュは自分の使命を思い出したように、パルカに続けて言った。





ご覧頂き有難うございます。

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