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52話 かつての英雄


 屋敷へ戻ると、まるで二人の帰りを待っていたかのようにパルカが待ち構えていた。


「お帰りなさいませ、久々の里帰りはいかがでしたでしょうか?」


 畏まった態度でパルカは二人に尋ねる。


「やっぱり向こうもブラックホールみたいなの浮かんでたよ」


「けど、リルテスタ達の世界と比べて被害は少なそうでした」


 と、互いに感想を述べる二人をまじまじと見ながら、パルカは微笑を浮かべた。


「今の状況で不謹慎かもしれませんが……何かいいことでもありました?」


 パルカに言われ、コマチとメルはお互いに目を合わせる。


「お二人とも、迷いがなくなったような、スッキリしたご様子でしたので」


 そしてパルカに釣られて二人も同時に笑った。


「まあ色々と……決戦前の意気込みなんかを語ったりしたので」


 少し照れ臭そうに話すコマチの言葉に、「それは何よりです」とパルカは笑顔で返す。


「ところでパルカさん、扉の前にいたけど、もしかしてアタシ達に用があって待ってたの?」


 と、メルはパルカに尋ねると、彼女は軽く頷き、メルを見ながら本題を告げた。


「実は私のほうからメルさんに折り入ってお願いがございまして……」


「アタシに?」


 キョトンとした表情で見つめるメルに、パルカは続ける。


「只今別室にて私の知り合い……というより同業者を招いておりまして、一度メルさんとご対面して頂きたいのです」


「ふぇ? ……もう一度言うけど、アタシに?」


 さらに疑問符が浮かび上がるメルに、パルカは頷く。

 二人の話を聞きながら、コマチは尋ねた。


「あの、なんでパルカさんの同業者の元にメルが呼ばれるんですか?」


「メルさんの能力が必要ですので。……私の勘ですが、おそらく今回の戦いの鍵を握るのはメルさんだと予想しております。なのでその準備をと思いまして」


 メルの主な能力といえば【スキルコピー】である。

 それが必要ということは、何かしらのスキルをメルにコピーさせる為の用事で間違いないとコマチは推測する。


「ちなみに俺は?」


「コマチさんには申し訳ないのですが、その方とメルさんの二人だけでご対面させたいので、今回は私と一緒にお留守番しましょうね」


 そしてコマチの出番はやんわり断られるのだ。

 メルはシュンとするコマチの肩を叩き。


「大丈夫、すぐ戻ってくるからちょっとだけ待ってて。ね?」


 元気づけるような笑顔を見せ、パルカに案内を頼んだ。








 そして向かったのが、025号室と書かれた扉の前。


「ここって……この扉の向こうも異世界に繋がってるの?」


「はい。と言っても、この先にある世界はわずかなスペースしか存在しない小さな空間です。そこで私の同業者が待っておりますので、どうぞ中へお入り下さい」


 メルは後ろにいるコマチに「行ってくる」と目で合図を送り、そして扉を開けた。






 扉の向こう側に広がるのは、辺り一面の砂浜だった。


「…………キレイな海」


 砂浜の真ん中にポツンと建てられた扉を閉め、メルはぐるりと周囲を見渡す。


 見たところ、この場所以外に陸地はなく生物の気配も感じない。

 あるのはビーチと、奥にある小さな森林。そして、今ここは無人島のような場所にいるのだと予想する。


 メルの体感時間では真夜中だというのに、空からの照り付ける太陽に当てられ、まるで真夏のような気候が感じられた。


「ふむ……それにしても」


 人の気配を感じない。

 見た限り周囲に誰の姿もなく、本当にパルカの知り合いがここにいるのだろうかと疑念が生まれる。


「…………砂の要塞でも作って時間を潰すか」


 そう呟きながら、メルは地面の砂で山を作り始めた。








「ふう……我ながら力作を作ってしまった」


 それから数十分、思いの外砂遊びにハマったメルは、自身の作品を眺め自画自賛していると。



「これは、誰かのオマージュかな?」



 突然の声にハッと後ろを振り向くメル。

 すると、いつからいたのか、メルのすぐ背後にはカラフルな果実を抱えた少年が穏やかな顔を浮かべ立っていた。


「えっ、うそ……いつからいたの?」


 全く気配に気づかなかったメルは動揺しながら少年に尋ねる。


「ほんの少し前からだよ。声をかけようとしたけど、あまりに夢中だったから邪魔しちゃ悪いと思ってここで待ってたんだ」


 見た目は自分と変わらないような外見、中性的な顔立ちで、どこか守ってあげたくなるような気持がメルに湧き上がる。


 しかし直に見ると感じる底知れない強さが確かにあり、だがそれは恐怖ではなく、その場にいると安心するような、守護者のような存在を彷彿とさせる。

 メルはそんな気配を少年から感じた。


「遅くなってごめんね。せっかくだから、君にもこのフルーツをご馳走しようと思って森から採ってきたんだ」


 両手いっぱいに抱えたカラフルな果実を地面に置き、「ところで……」と少年はメルの作った作品を見て尋ねる。


「もしかしてと思うけれど、それは男性の裸体かな?」


 それは等身大の人間が寝そべり、股に位置する部分の砂が異常に高く積まれている砂人形である。


「これはアタシの幼馴染をモチーフにした砂の要塞です」


「そうなんだ……個性的な作品だね」


 要塞とは? と疑問を抱く少年。

 そんな少年の気持ちを他所に、メルは彼に尋ねた。


「あなたがパルカさんの同業者の人ですか?」


 そう言えばと、少年は遅ればせながら自己紹介をする。


「僕はシュゼルシュタ・ミュゼット。みんなからはシュシュと呼ばれているよ」


 その名前に、メルは聞き覚えがあった。

 それは以前スティオラから聞いた、ヴィクスの過去に出てきた、英雄の名。


「あなたがスティ男君の言ってた……世界を救った英雄?」


「英雄なんかじゃないよ。僕は世界を救うどころか、新たな火種を生んでしまったのだから」


 若干浮かない顔をしながら答えるシュシュ。そして。


「……少し場所を変えようか。ここの日差しは太陽光よりも紫外線が強いから、直射日光は君の身体に良くない」


 そう言いながら、シュシュは森の中へと案内した。





ご覧頂き有難うございます。

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