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45話 幼馴染の喧嘩


 突然の帰還宣言に、メルは呆気にとられたようにコマチを見つめ、そして。


「何、言ってんの? 本気?」


 受け入れられない様子でコマチに返答する。


「本気だよ。お前も身をもって体験しただろ。この世界は日本と違って治安は最悪だ。簡単に人を奴隷にして、虫のように躊躇いなく殺める。結果的に助かったからいいものの、あの奴隷収容施設に連れてかれたお前はいつ死んでもおかしくない状況だったんだ。こんな事が続くなら、俺はこれ以上許容出来ない」


 コマチは『強欲の巣』での一件から、いつまたメルがさらわれるか分からない現状に気が気でなかった。


「もう大丈夫だよ! アタシあれから結構強くなったもん。不安だったらアタシがコマちゃんを守ってあげるから――」


「軽いんだよお前はいつもいつもっ! 俺がどれだけ心配したと思ってんだ!」


 メルの発言を遮って、コマチは激高する。


「もう少し自分の命を大事にしろ。お前が無茶する度に、お前の家族が心配するんだぞ」


「…………ごめん」


 珍しく自分を怒鳴りつけるコマチに、メルはビクリと身をしぼませた。

 その様子にコマチも言い過ぎたと気持ちを落ち着かせ、改めてメルに言う。


「そもそもお前は身体が不自由なんだ。こんな争いにまみれた世界にいたら身がもたねえよ。俺がお前を守れるのも限界がある。だから、もう帰るぞ」


 しかし、コマチの言葉は新たな火種に変わってしまった。


「……何、それ」


 メルは俯きながら身を震わせ、怒りを露わにする。


「アタシがいつコマちゃんに守ってほしいなんて言ったのさ?」


「……えっ?」


 突如雰囲気が変わったメルに、コマチは焦りを覚えた。


「なに保護者面してカッコつけてんだって言ってんだよ! 本音も言えない臆病者のくせしてさ!」


「な……んだよそれ、本音ってなんだよ?」


 その焦りはさらに加速する。

 メルにだけは勘付かれたくなかった気持ち、言われたくなかった弱い自分を。


「コマちゃんさ、アタシの事どう見てた?」


「どうって……」


 不意なメルの一言に、コマチは一瞬固まった。


「毎日アタシの家にあしげもなく通ってさ、特にやる事ないのにずっといるじゃん? それってどういう意図があってやってんのかなって」


「それは……」


 コマチは言葉に詰まった。メルにここまで言い辛い質問を受けたのは初めてだった。


「アタシに対して罪悪感があったからだよね?」


 コマチは言葉に詰まる。


「毎日一緒にいるんだから分かるよ。……アタシに付き合ってるのは、単なる自分の罪滅ぼしの為なんだって」


「ち、違……」


「違うの? 違うって言いきれる?」


 メルは徐々に興奮し出す。


「結局コマちゃんも周りと同じ、アタシのことを可哀想だとか思ってるんでしょ? もっと言えば、幼馴染に庇われた自分が情けなくて、アタシの世話をしたつもりで罪悪感から逃げてるだけなんだよね? 逃げて逃げて、自分の記憶から消し去りたいんだよね?」


「違えよ! 俺はただお前と一緒に――」


「だったらアタシを守るとか言わないでよ! アタシはコマちゃんに守られる筋合いなんてないんだから!」


 そしてコマチにぶつける、長年の不満を。


 当のコマチは歯を食いしばり、言い返せない自分に腹を立てる。

 何より、メルに言われた言葉が強く胸に刺さるのだ。


「…………ああそうかよ! じゃあもう勝手にしろっ!」


 一秒でも早くこの場から離れたかったコマチは、逃げるように怒鳴り散らしながら部屋を出て行った。


「……メルよ」


 二人の喧嘩を見ていたリルテスタは、静かにメルに声をかける。


「……ふぐぅ……ぅぅぅ~」


 ポロポロと涙を流しながら、メルはリルテスタの顔を見ずに窓に向かって。


「コマちゃんのバカあああああ!」


 腹から叫び、やがて子供のように泣きじゃくる始末。

 そんなメルの頭を、リルテスタは優しく撫でた。


 と、そこへノックの音と共に使用人の女性が部屋に入って来た。


「リルテスタ様、先程のお客様が出ていかれましたが、呼び止めますか?」


 すると彼女は軽く息を吐き、首を横に振った。


「よい、後でわしが連れ帰る」


 使用人は「かしこまりました」と一言加え、淡々と持ち場へ戻って行った。

 そして再びメルに視線を向けると。


「メル、喧嘩は別に悪い事ではない。わしもこの国の女王とは古くからの付き合いでな、若い頃はよく喧嘩をしたものじゃ」


 諭すようにメルをなだめる。


「互いの気持ちをさらけ出すのは良いことじゃ。付き合いが長ければ不満もあろう。だからわしはお前達を責めたりせんよ。ただ、付き合いが長いならばしっかり相手と向き合い、その後ちゃんと仲を戻せ。つまらない意地で絶交しても、なんの得もないからの」


「…………うん」


 ぐずり泣くメルから小さく了承の言葉を聞くと、リルテスタは微笑を浮かべ。


「ではわしは小僧を連れてくるかの。メル、お前はちとある場所で待っていろ」


「ある場所?」


 首を傾げるメルに手招きしながら、リルテスタはその場所へ案内した。





ご覧頂き有難うございます。

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