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37話 人間まがい


 コマチの感知スキルで死人しびとであることが判明したペストレシア。


「よく気が付いたわね。そう、この体はただの入れ物。死者蘇生の魔法を自分にかけたの。もっとも、正確には蘇生じゃなく修繕だけどね」


 しかし彼女は隠すことなく己の正体を打ち明ける。


「自分の体と魂を無理やり括り付けて、操り人形のように動かすの。一度壊れたものを完全に元に戻す事は出来ないなら、その場しのぎの応急処置をするしかないでしょ?」


 正体を明かしたところで自分が有利な状況は変わらない。だからこそペストレシアは二人に情報を与えた。


「それにしても酷い話だわ。同じ体に同じ魂を戻しただけなのに、一度分離したら人間と認識されないのだから」


 しかしその余裕は自身の首を絞めることとなる。


「それで? その事実を知ったところであなた達に何が出来るというの――」


 と、ペストレシアが話している途中で、広い空間に銃声が響き渡る。


 突如放ったメヴィカの弾丸が、彼女の右肩を貫通させたのだ。


「う……うぐあああ!」


 撃ち抜かれた右肩は焼けたように煙を立たせ、ペストレシアはその場で怯んだ。


「なるほど、相手がアンデッドなら話が早い」


 メヴィカはリボルバー式の片手拳銃を取り出し、ペストレシアに向ける。


「『ホーリー・パーフィケーション』。私の錬金術と聖職者の魔力を込めて作った、邪気を払う神聖な弾丸です。悪魔やアンデッドに絶大な効果を発揮します」


 と、メヴィカは自前の銃を自慢気に解説する。


「お前、ホントなんにでも対応出来るのな」


「『高度錬金ハイクラフター』に不可能はないんです。とは言えこの弾、一発に銀貨一枚かかってますからあまり多用したくはないです」


「今は命がかかってるから諦めろ」


 と、コマチがメヴィカに諭している時、壁を砕く轟音が鳴り響き、奥で戦っていたラジエとアストは終局を迎えていた。


 岩盤に打ち付けられたラジエはもはや立つ事もままならない。

幾度となく斬撃を浴び続け体力は限界、それに伴い兵士から受けた麻酔矢の効果も今頃になって効き始める。


『おのれ、よもやわしが人間に後れを取るとは……』


「そうやって、自分が他種族より優れていると思いあがるとこが、忌々しい貴族共にそっくりだな。調子に乗るなよ、トカゲ風情が」


 対するアストはまだ余力を残し、剣を肩に担ぎながらゆっくりとラジエに近づく。

 その様子を遠目で見ていたコマチは向こうへ助けに行きたいものの、ペストレシアがいる手前メヴィカを置いてはいけない。


(どうする……先にこの女を倒すか?)


 そんな選択を迫られるコマチ。

 するとメヴィカは、おもむろに鞄から短剣を取り出し、コマチに放り投げた。


「……何これ?」


「『セイクリッド・バゼラード』。これも聖なる加護が付与された、破邪のナイフです」


 刃渡りは三十センチ程。鞘を引き抜くと、洗礼された刃が神々しく輝く。


「ラジエさんを助けるんでしょ? ここは私が引き受けますから行って下さい」


 コマチの考えを読んでいたメヴィカは、ペストレシアに銃口を向けたまま、ラジエの援護を促した。


「お前一人で大丈夫か?」


「私、こう見えてコマチさんよりも戦闘経験あるんですよ。大抵負けてましたけど」


「ダメじゃん!」


 全く後押しにならないメヴィカの自信にコマチは躊躇してしてしまう。


「けど、今まで生き延びて来れたんで、きっと大丈夫です。……私の事が心配だったらさっさと向こうを片付けて助けに来て下さい。いやホントお願いします! 実際恐いです」


 文明の利器を使ってペストレシアを権勢しつつも、メヴィカの手元はカタカタと震えていた。


「ええ……何だろう、この後ろ髪引かれる思い。行っていいの? 行くよ?」


「いいい行って下さいって言ってるでしょ! 早くして下さい。そして早く助けて下さい」


 若干不安を残しながら、今まさにトドメを刺さんとするアストに向けて、クラウチングの姿勢をとるコマチ。


「じゃあ、すぐ終わらせるから持ちこたえろよ。【ラピッドムーヴ】!」


 高速移動のスキルを発動させ、助走をつけながらアストの元へ駆け出した。


 そしてその場に残ったメヴィカとペストレシア。

 二人のやり取りを黙って見ていたペストレシアは、撃ち抜かれた右肩を押さえながら微笑を浮かべる。


「わざわざ回復する暇を与えてくれてありがとう」


 気づくと、先程ペストレシアに空いた風穴は綺麗に修復されていた。


「この体はね、治癒魔法が全く効かない代わりに自然治癒が優れているの。その程度の威力なら数分あれば完全に再生――」


 と、最後まで言い切る前に、メヴィカは再び浄化の弾丸を撃ち込んだ。


「それを聞いて安心しました。アンデッドとは言え、あなたの命を奪うのは後味が悪いので、これで気兼ねなく撃てます」


 メヴィカはリボルバーに弾をつめながら、今度は躊躇なく二度、三度とペストレシアの体を撃ち抜く。


「ぐっ……く、あ、あなた……いい性格してるわね……嫌いよ!」


 苦笑いを浮かべながら、ペストレシアは怒りを露わにしてメヴィカに杖を向ける。


「【サモン・デビル】!」


 突如地面から三体の小型の悪魔が召喚され、メヴィカに向けて飛び掛かる。


「奇遇ですね。私もです!」


 小悪魔の突進を避けながら、メヴィカは一発ずつ脳天に弾を撃ち込み、消滅させる。


「属性が分かれば大した事ないですね」


「そうかしら? どんどんいくわよ。【サモン・デビル】」


 その後もペストレシアは次々と召喚魔法を繰り出しメヴィカを襲うが、そのすべてを一発一発確実に仕留めてゆく。


 しかし、弾丸である以上限りがある。それを見越してペストレシアは消耗戦を狙っていた。





ご覧頂き有難うございます。

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