36話 元魔王討伐部隊の二人
メルがヴィクスと再会していた頃、そこよりさらに上の階ではコマチとメヴィカが激戦を繰り広げていた。
「【ペネトレイト・ショット】」
コマチはペストレシアに向けて魔力を込めた弓矢を放つ。
「【ベクトルチェンジ】」
しかし、その矢はペストレシアの魔法により、方向を捻じ曲げられた。
続いてメヴィカも自前の電磁砲を構えペストレシアに発射するが。
「【アサルトプラズマ】」
強力なプラズマ粒子を凝縮した電磁砲が彼女に触れる直前、粒子が分解され静かに消え去る。
「【ディサセンブル・マナ】」
それはペストレシアのマナを分解する魔法。
雷属性のマナである電磁砲はいとも容易く分解され打ち消されてしまう。
全く当たらない二人の攻撃だか、なおもコマチは絶えず攻撃を繰り出した。
「【ミリアドコメット】」
微笑を浮かべるペストレシアは再び【ベクトルチェンジ】を唱え。
「数を打てば当たると思った?」
大量に降り注ぐ光弾もすべて方向を捻じ曲げ、コマチのいるほうへ跳ね返す。
だが、そこにコマチの姿はなかった。
「あら?」
コマチは上空から放った矢に注意を向けさせ、その間【インビジブル】で姿を消し、短剣を構えペストレシアの背後まで接近していた。
「思ってねえよ。【コンプレッション・エッジ】!」
そして空気を圧縮した斬撃を、急所を逸らして背中に目掛け斬りかかる。
「【ベリアル・テンプテーション】」
しかしペストレシアに触れる直前、足元からどす黒い沼が現れ、そこから湧き出る無数の黒い手がコマチの足を捕らえた。
「な……気持ち悪っ!」
ガッチリとホールドされた足に身動きが取れなくなったコマチは、ペストレシアに向けるはずだった圧縮剣を黒い手に突き刺し、身体が沈む前に沼から脱出した。
刺された手は液状となって、沼ごとその場から消える。
「今のは危なかったわ。若いのに手数が多いこと……」
未だ余裕を見せるペストレシア。
コマチは一旦ペストレシアから距離を取ると。
「【エリミネート・ディスチャージ】!」
アイコンタクトで合図をしていたメヴィカが武器を持ち替え、先程よりも威力のあるライフル式の銃を放った。
しかしそれすらもペストレシアは読んでいた。
「【エヴィル・グラトニー】
前方から向かってくる電撃砲弾に、大口を開けた化け物をペストレシアは召喚し、迫り来る電撃を食べさせ相殺する。
強力な電撃を食らった黒い化け物だが未だ消滅せず、弱りながらもメヴィカに向かってくるのだ。
「くそっ! 【ラピッドムーヴ】」
コマチはメヴィカを助けるべく、新たに覚えた高速移動のスキルを使い、黒い化け物よりも先にメヴィカの前方に立ち塞がる。
「【コンプレッション・エッジ】!」
そして、向かってくる化け物の大口に自ら乗り込み、体内から斬撃を喰らわせ消滅させた。
しかし代償として、連続使用した圧縮スキルに耐えられなかった短剣が折れてしまう。
「ちっ……」
折れた短剣を放り投げ、再び左腕に装着していた『ガントレットボウガン』を開き、ペストレシアに構える。
お互い攻防を繰り返すが、コマチとメヴィカ二人がかりでも圧倒的に不利な状況である。
奥にいるラジエも、アストと苦しい戦いを強いている。そしてコマチも体力の消耗が激しく、長期戦になれば勝ち目はない。
「どうしてあがくのかしら? 私とあなた達じゃ実力の差は歴然よね?」
そんな中、コマチは戦いの最中でペストレシアとアストを【サーチ】で分析していた。
戦闘方法と共に、妙な違和感をコマチは感じたのだ。
呼吸、胸の鼓動、そんな生の息吹が二人には全くない違和感。
「なんとなく分かったぞ。お前らの正体」
ペストレシアは眉をひそめる。
「どうしてお前も、あっちにいるアストって奴も【サーチ】に反応しなかったのか」
コマチの【サーチ】は生体反応よってサーモグラフィのように生物を色で識別する。
つまり何も反応しないという事は生命体でない物体。
「お前らとっくに死んでるんだろ? その体に脈は通ってない。ゾンビと同じだ」
コマチの推測に、ペストレシアは笑みを浮かべた。
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