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百ある世界の片隅で〜幼馴染みと共に世界を救う物語〜  作者: 若取キエフ
動乱の大監獄編 (メルルート)
34/72

34話 始まりの青年


 戦闘不能状態の二人を確認したメルは、息を切らしながら抜けた天井を見上げる。

 そこには顔だけ出したスティオラとテルミラが様子を窺いながらメルの安否確認をする姿。


「メルさん、大丈夫ですか?」


 スティオラが心配そうに声をかけると、メルはニッコリ笑みを浮かべながらグッと親指を突き立て、「余裕!」と一言。


「お姉ちゃんカッコイイ!」


 テルミラはメルの勇士に歓喜の声を上げ、その様子を見たスティオラもため息交じりに笑みを漏らす。


「自力で登れそうですか?」


「大丈夫、空を飛ぶスキル覚えたから。ちょっと待ってて」


 そう言って、メルは自身に浮遊魔法を唱えようとした、その時――。



「アストもペストレシアも、一体何をやっているんだ」



 いつからいたのか、白いローブを羽織った白髪の青年がメルの目の前に立っていた。


「えっ……えっ!」


 突然現れた男の姿よりも、メルはその見慣れた顔に愕驚する。


 目の前にいるその青年は、あの日メルとコマチを異世界へ送った男だった。


「なんでここにあなたがいるの?」


 メルの問いに、青年は不思議そうに聞き返す。


「君は? 俺の事を知っている様だが、どこかで会ったか?」


 白々しさもなく、冗談を言っている様にも見えない青年は、メルの顔を見ても誰なのか分からない素振りを見せる。


「どこかって……あなたがアタシとコマちゃんをこの世界に呼んだんじゃん」


「俺が? 何故?」


「ヴィクスって魔導士からアーティファクトを取り返せって言ってたじゃんか!」


 メルがそう言った時、青年の顔色が変わり、睨むような眼でメルを見つめた。


「……なんだと?」


 突如、場の空気が重くなる。

 正確に言えば、周囲の魔力の源、マナが青年に吸い寄せられるように集まってゆく。

 そして、肌でビリビリと感じる殺気がメルに向けられた。


「……お前も、俺の邪魔をするのか?」


 青年は片手に持っていた丈の長い杖の先に魔力を込める。


「え……ちょっと、なんで攻撃しようとしてるの?」


 メルの問いには答えず、杖の先端をメルに向け。


「世界を渡る力を持つ者が俺以外にもいるとはな。……誰でもいいが、邪魔をする者は全て俺の敵だ」


 容赦なく、メルを葬り去ろうと魔法を唱えた。


「【フレアサークル】」


 メルの体を覆うように、熱量の高い円状の渦が生み出され。


「【イグニッション】」


 続けて放った言葉により、渦の中で爆発が起きる。


「【エンハンス・シールド】!」


 危険を察知したメルは咄嗟に防御魔法を唱えるが、渦の中で連続して起きる爆発に耐え切れず、意識が飛びそうな程の火傷と損傷を被る。


 そんな時、爆発音に気付いたスティオラが天井から声を上げて解呪魔法を唱えた。


「【ディスペル】!」


 スティオラの解呪魔法により、メルにかかっていた円状の渦を消し去ると、解き放たれたメルは全身ボロボロで床に倒れた。


 その姿を見たスティオラは血相を変え天井から飛び降り、メルに駆け寄る。


「ひどい怪我だ……【フルヒーリング】」


 嘆きながらもスティオラはメルに向けて治癒魔法を唱えた。


 すると、全身に受けた火傷と内臓破裂、肋骨鎖骨の骨折、破れた鼓膜に至るまで、スティオラの研ぎ澄まされた治癒魔法によって綺麗に回復した。


 治療が完了した事で一息吐いた後、スティオラはメルに視線を据えたまま、後ろにいる青年に問いただす。


「……どうして関係ない人を巻き込んだんです?」


 青年は表情を変えず、スティオラに返答する。


「関係はあるぞ、スティオラ。この女は別の世界から来た人間だ。おそらく元いた世界のアーティファクトを取り戻す為にこっちの世界に来たのだろう。どうやって来たかは知らないがな」


 淡々と話す青年に、スティオラは握り拳を作り、振り返り様に青年を睨み付ける。


「そんな事を言っているんじゃない! あなたが憎んでいるのは王族や貴族でしょ? どうして罪のない人まで簡単に殺めようとするのですか、ヴィクス兄さん!」


 スティオラがヴィクスと呼ぶ青年は、スティオラ・メギオの実の兄、ヴィクス・メギオだった。





ご覧頂き有難うございます。

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