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百ある世界の片隅で〜幼馴染みと共に世界を救う物語〜  作者: 若取キエフ
動乱の大監獄編 (メルルート)
33/72

33話 ミミックナイトと大魔導士


 スティオラはカウンター狙いでジリジリと迫る大剣の男に掌を向ける。


 と、そこにメルがスティオラの前方に立ち塞がり、錆びたレイピアを抜刀した。


「一人じゃないよ。スティ男君、ここはお姉さんに任せなさい」


「だから歳は僕とそんなに変わらないですよ! それにあの人達、戦い慣れてます。メルさんこそ下がっていて下さい」


「断る! 【ドラゴン・フォース】」


 スティオラの助言に耳を傾けず、メルは身体強化スキルを使い大剣の男に向かってレイピアを突く。


「【グラビティレイド】」


 が、男はメルの一撃が腹部に刺さる直前に大剣を地面に突き刺すと、その瞬間メルの体に急激な負荷がかかり砕ける床と共に地面に叩き付けられた。


「お? 痛っ!」


 攻撃を食らったと同時に、メルの頭に新しいスキル名と効果の記憶が刻まれ、相手が何をしたのか把握した。


「……周囲に重力負荷をかけるスキル……」


「ほう、一度食らっただけで分かるのか。良い勘してやがる」


 メルがスキル効果を呟くと男はニヤリと笑い、再び大剣を振りかざす。


「だが不用意に前に出るのはいただけんな。だからこうなる」


 重みのある剣がメルを捉え、体を両断しようと振り下ろされる。その時――。


「【エンハンス・シールド】」


 メルの体に大剣が触れた瞬間、その剣は金属同士をぶつけたような音を出しながら大きく弾かれた。


「くっ、ただの防御魔法でこの硬度かよ。さすがは『大魔導士』と言ったところか……」


 男は苦虫を噛んだような顔を浮かべスティオラを睨み付ける。


 メルが切られる直前、スティオラはメルに防御魔法を付与していた。

 全身を覆う透明のベールに包まれ、メルは無傷で剣を防ぎそのまま転がりながら後退する。


「だから下がってと言ったじゃないですか」


 コロコロ戻ってくるメルに説教交じりで忠告する。


「んん~先手必勝で一撃浴びせられるかと思い……」


「彼らはそんなに弱くないですよ。だから……【ウィンドブラスト】!」


 メルとの会話の途中、後方にいた、杖を持った男が魔法を唱える素振りをすると、その瞬間を見逃さなかったスティオラは相手よりも先に掌から突風を巻き起こす魔法を生み出し、男を壁際まで吹き飛ばした。


「だからこういう具合に、簡単に隙を作らせてはくれないでしょうね」


「スティ男君意外と強いんだね! ワロタ」


 この世界におけるスティオラの地位がどのくらいのものなのかを知らないメルは、『頼りなさそうな年下の少年』というイメージしか持っておらず、こと戦闘においての冷静な対応に素直な感想を述べる。


「一応僕、『大魔導士』の称号を得ているんですけどね……。意外とって……」


 そしてメルの軽い反応に若干傷つくスティオラ。


「く……ふふ、やはり魔法の精度では勝てませんな。グラムさん、『大魔導士』を引き付けて下さい」


「承知した!」


 壁に叩き付けられていた杖の男は、グラムと呼ばれた大剣の男共々スティオラを警戒しながらフォーメーションを整える。


「シュトロフ、俺に合わせろ! 【ブレイズ・アーマー】」


 グラムはシュトロフと呼ばれた杖の男に号令を出し、グラムは突如、自身の身体に炎を纏わせメルとスティオラに突進してきた。


「【エリアルフェザー】」


 それに合わせ、シュトロフは自分の足に風魔法で作った透明な翼を生やし、上空に飛び上がる。


 シュトロフの行動を気にしながらも、まずは手前のグラムを止める事が先決だと判断したスティオラは、周囲の水の元素を一気に自分の身体に集め、強力な水の魔法を放った。


「【アクアヴォルテクス】」


 凄まじい水流によって、炎を纏っていたグラムは二人に近づく手前で、再び端まで押し流される。


 と、グラムに気を取られていたスティオラは、シュトロフが魔法を唱える隙を許してしまい反応が遅れた。


「ヒヒ、終わりですよ。【サウザンド・アイシクルショット】!」


 シュトロフは上空から無数の氷柱を生み出し、下にいる者達に狙いを定める。

 脳天に鋭い凶器が振り落とされる直前――。


 メルはシュトロフからコピーしたばかりのスキルを使い上空に飛び上がった。


「【エリアルフェザー】!」


 そしてレイピアを天へ掲げ、今度はグラムからコピーしたスキルで身体に炎を纏い、捨て身で氷柱に突進した。


「【ブレイズ・アーマー】!」


 炎を纏わせた身体は上空から降り注ぐ氷柱を一瞬で溶かし、その勢いのまま上空にいるシュトロフまでもを火炙りにする。


「ぐあっちゃああ!」


 たまらずシュトロフは地面に落下し辺りを転げ回ると、同時に無数の氷柱は跡形もなく消えていった。


「うん、【ドラゴン・フォース】のおかげでスキルの性能も底上げされてる。いいね!」


 先程施した身体能力向上のスキルによって、本家に劣るメルのコピー技も効果が上がり十分な威力を発揮する。


 しかし、立て続けにスキルを使用した事でメルの魔力は底を尽きていた。

 スティオラはメルに駆け寄りフラつく体を支える。


「大丈夫ですか! ……ってメルさん、何してるんです?」


 そんなスティオラに、メルは思い切り抱き着いた。


「ちょっ……何ですかいきなり」


「ごめん、ちょっとアタシに魔力分けて」


 そしてメルは有無を言わさずドレイン魔法を唱える。


「【アブソーブ・マナ】」


「えええええ!」


 いきなり魔力を吸い取られたスティオラは貧血したように力が抜け、その場に跪いた。

 十分な魔力を吸い取ったメルは、「ぷはー」と、ドリンクを飲み干したような反応をし、生き返ったような清々しさを見せる。


「ちょっ……えええ、ウソでしょ? まだ戦闘中なんですけど」


「ごちになりました!」


「爽やかな笑顔で言わないで下さいよ!」


 スティオラ的には謝罪を求めていたが、メルの屈託のない笑顔を見せられ諦める。


「まあ、後はアタシに任せて、スティ男君はテルちゃんを守ってて」


 と言って、メルは剣を鞘に戻し。


「【ドラゴン・フォース】!」


 再び身体強化スキルを使用し、奥でよろめきながらも戦闘態勢を崩さぬグラムとシュトロフに向かって行った。


 走行しながらレイピアの鞘を地面に突き刺し、棒高跳びの如くジャンプしながら剣を抜く。

 そして空中で【エリアルフェザー】を唱え、さらに上空へ舞い上がり二人の真上で止まる。


「させるか! 【ブレイズ・アーマー】」


 メルの攻撃を防ごうと、グラムは体に炎を纏うが。


「【エンハンス・リジェクト】」


 スティオラの援護魔法により、グラムに纏っていた炎の渦はかき消される。


「なめるな! 【アイシクルショット】」


 グラムがスティオラによって無力化されると、今度はシュトロフがメルに向けて巨大な氷柱を生み出し上空にいるメルに放つ。


「【エンハンス・シールド】」


 だが、メルはスティオラからコピーした防御魔法を唱えて守りを固め、さらに下へ剣を向ける。そして――。



「グラビティイイレイドォオオオオ!」



 重力負荷をかけるスキルを使い、直撃する氷柱も構わず、二人の元へ落下する。


 グラムからスキルコピーした【グラビティレイド】は、自身の力によって威力が増減する。本来ならばメルが使用しても大した威力は出ないスキルである。


 だが、グラムより力が劣るメルは上空からの落下スピードを利用して、飛躍的に効果が跳ね上げていた。


 その力は絶大。

 地面にレイピアを突き刺した瞬間、広範囲に渡り強力な重力場が生み出される。


 その衝撃で地面は粉々に砕け、足場をなくしたメルは瓦礫共々下層に落下した。




 床が抜けた後、下層には重力負荷による圧力で泡を吹きながら気絶するグラムとシュトロフ、そして、息を切らしながら己の勝利に笑みを浮かべるメルの姿があった。





ご覧頂き有難うございます。

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