32話 保管庫の戦闘
コマチの元にペストレシアが向かう少し前、メル達一向は保管庫にて装備を整えていた。
「おっ、あったあった! アタシの荷物」
ニンマリ笑いながら、荷物袋に入っているであろう自分の着替えを取り出す。
しかし、入っていたのはコマチの服。
「あっ……あれ? これコマちゃんのだ。やべっ、間違えてコマちゃんの荷物持って来ちゃったんだ」
やっちまったと、自分の頭をポンと叩く。
「まあ、いっか。今度あった時に返せば」
「ずいぶん楽観的ですね……」
細かい事を気にしないメルに、スティオラは少々不安になる。
「でも、どうするんですか? 他に着替えがあればいいのですが」
メルは「う~ん」と唸りながら辺りを見回す。
「とりあえず、ここら辺の物パクッちゃおうか?」
「え、パク……なんですか?」
「勝手に貰っちゃおうって事」
「窃盗じゃないですか! さすがにダメですよ。持ち主が大切にしていた物だってあるかもしれませんし」
「ええ~ダメかぁ」
スティオラに諭され、しょんぼり気味になるメルに、テルミラがメルの服をクイクイと引っ張り奥を指差す。
「お姉ちゃん、あれは?」
それは使えなくなった武具や壊れたアイテムの山。ジャンク品が置いてあった。
「おお~、宝の山発見! ねえスティ男君、あれならいいでしょ?」
「まあ、あれなら……でも廃棄になった物ですし、まともな装備はないと思いますけど」
構わずメルはジャンクボックスを漁りだし、女性物と思われる衣類を引っ張り出す。
「ん~、ちょっと薄汚れてるけど、これでいっか」
そしてすかさず奴隷用の布の服を脱ぎ捨て、手に入れた服に着替える。
「ちょ、ちょっと! こんなところで着替えないで下さいよ! 僕男ですよ?」
「え? ああ、ごめん。わざわざ隅っこで着替えるのが面倒くさくてさ。こんな貧相な体で良ければ別に見てもいいよ?」
「もっと自分を大事にして下さい! 僕は向こうにいますのでお早めに!」
と言って、スティオラは顔を赤く染めながらメル達から離れる。
「シャイな奴め……」
そう呟きながら、適当に選んだ古着を早々に着替えた。
そして適当に武器を漁り、鞘の付いた一本の剣を手にとる。
「う~む、これなんか良さそう」
それは錆び付いてはいるが、木刀よりは殺傷能力がありそうな細長い刃をしたレイピア。
比較的軽量であり、メルの腕力でも容易に振れる突きメインの剣だった。
お色直しが終わった後、奥にいたスティオラの元へ駆け寄る二人。
「お待たせ童貞ボーイ。……何やってんの?」
スティオラは保管庫の入り口付近で外の様子を探っていた。
「敵が来ないか見張っていたんです。……それよりメルさんの格好……」
胸元より下が破れたタンクトップとジャケット、布で腰回りを覆ったようなミニスカート、そして派手なバンダナを頭に巻いた、見た目は女盗賊にしか見えない外見だった。
「保管庫で物を漁る行為も相まって、もう賊にしか見えませんね」
「今年の流行ファッションにならんかね?」
「なりませんよ。この先もずっと」
スティオラはすべからく冷めた反応で返す。
そんな戯れに興じていた時だった。
突如、壮大な爆発音と共に保管庫の壁が崩れる。そして、奥から武装した二人の兵士が現れた。
「やはりここを物色していたか。この賊共め」
バスタードソードと呼ばれる、身の丈程ある巨大な大剣を持った男は、獲物を捉えたように舌なめずりしながら不敵な笑みを浮かべていた。
「どいつもこいつも賊とか言うな!」
ノリで盗賊風なファッションにしたメルは、大剣の男に必死で異論を唱える。
「ヒヒ、『大魔導士』様もご一緒とは。これは、我らと敵対するという意味で宜しいか?」
もう一人の細身の男は愉快に笑いながら、スティオラに向かって杖を突きつける。
男の挑発に動じず、スティオラは静かに片手を男に向け、いつでも魔法を放てる構えをとった。
「ヒヒ、これは面白い。杖も持たずに最強の武具を身に付けた我らと戦おうというのですか? いかに『大魔導士』と言えど、お一人で我らに敵うとでも?」
彼らは『強欲の巣』で手に入れた数々の違法アイテムを身にまとっていた。
さらにアスト、ペストレシアに次ぐ実力者であり他の一兵卒とは比べものにならない戦闘力をほこる、『強欲の巣』の幹部である。
魔法精度だけで言えばスティオラが圧倒的に分があるが、今現在スティオラは魔力の伝導率を底上げする、魔導士には欠かせない杖を持っていない。
加えて大剣の男は見るからに接近戦を好むスタイルであり、後方支援がメインである魔導士のスティオラには相性が悪い。
戦力差を見て余裕の笑みを浮かべる二人の男は、好戦的な目をしながら戦闘態勢に入った。
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